【アナリスト水田雅展の銘柄分析】スターティアは電子ブック作成ソフトやITインフラソリューションなどを展開

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 スターティア<3393>(東1)は電子ブック作成ソフト開発・販売やITインフラソリューションなどを展開している。ストック型収益の拡大とともに、中期成長に向けてM&A・アライアンス戦略を積極推進している。株価は昨年来安値圏だが、16年3月期業績予想下振れ懸念の織り込みが完了して反発のタイミングだろう。なお1月29日に第3四半期累計(4月~12月)の業績発表を予定している。

■電子ブック作成ソフトやITインフラソリューションなどを展開

 オフィスのインターネット関連トータルソリューションカンパニーとして、電子ブック作成ソフト「ActiBook」やWebアプリケーションを開発・販売するウェブソリューション(WS)関連事業、ネットワークアウトソーシング環境やクラウドサービスを提供するネットワークソリューション(NS)関連事業、ビジネスホンやMFP(複合機)などOA機器を販売するビジネスソリューション(BS)関連事業、その他事業(16年3月期開始のコーポレートベンチャーキャピタル事業)を展開している。

 主力の電子ブック作成ソフト「ActiBook」は、書籍、雑誌、IR資料などといった紙媒体を、簡単に電子ブックに変換できる電子ブック制作ソフトである。一つのソフトでマルチデバイスへの書き出しが可能な「ワンオーサリングマルチデバイス」を実現し、拠点間で利用可能なSaaS型サービスを提供している。導入実績は出版社を中心に15年6月末現在で2438社に達し、15年9月には伊藤忠商事<8001>のアニュアルレポート閲覧ソフトとして採用された。

 クラウドサービスの分野では、1100社以上の導入実績がある法人向けクラウドストレージサービス「セキュアSAMBA(サンバ)」などを提供している。15年7月には中堅・中小企業を対象として、マイナンバー対策に役立つセキュリティ機能がセットになったファイルサーバーの提供を開始した。15年9月にはマイナンバーの収集・保管に特化した専用サービス「セキュアMyNUMBER(マイナンバー)」の提供を開始した。

 15年7月にはインターネット接続サービス(ISP)「Tialink(ティアリンク)」の提供を開始した。NTT東日本・西日本が事業者向けに提供する光コラボレーションモデルの光回線「スターティア光」とセットにしたインターネット接続プランを提供する。

 コーポレートベンチャーキャピタル事業では、15年6月に勉強ノートまとめ共有アプリ「Clear(クリア)」を開発・運営しているアルクテラスにリードベンチャーとして出資した。

■ストック型収益の拡大を推進

 大手との競合が少ない従業員300人未満の中堅・中小企業(全国約555万社)をターゲットとして、ITインフラのワンストップソリューションを提供するとともに、ストック型収益の拡大を推進している。アジア市場へも本格的に事業展開する方針だ。無借金経営という財務面の健全性の高さも特徴である。

■中期成長に向けてM&A・アライアンス戦略を積極推進

 中期成長に向けてM&A・アライアンス戦略を積極推進している。14年8月にはホスティングサービス運用などのエーティーワークスと資本業務提携(17年3月末までに株式25%取得予定)し、個人・法人向けPCトラブル訪問サービスの日本PCサービス<6025>と業務提携した。

 14年11月には回線敷設代行業務や一括請求サービスを展開する子会社クロスチェックを設立し、サービス販路開拓に向けてリボルバーと資本業務提携した。14年12月にはシステムインテグレーションのネクストイットの技術本部の一部事業(常駐派遣事業など)および技術者21名を承継した。

 15年3月にはオウンドメディア構築事業のリボルバーとの資本業務提携の一環として、企業が低価格で簡単にオウンドメディアを発刊できる企業向けWEBマーケティング戦略支援サービスを開始した。オウンドメディアは企業自らの情報公開や大量コンテンツ配信が可能となるため、マスメディア、ソーシャルメディアに続く第三のメディアとして企業のマーケティングやブランディングへの応用が期待されている。

 15年5月には東京・横浜・大阪に40拠点以上のレンタルオフィスを提供するアセットデザインと業務提携した。同社はレンタルオフィスへの新規入居者に対して、当社の法人向けオンラインストレージを無料で提供する。両社の事業を組み合わせることで起業家の支援および事業シナジーを生み出す狙いだ。

 15年10月にはエヌオーエス(鹿児島県)を子会社化した。同社は鹿児島県を中心としてエリア企業向けにMFPのリース販売・レンタルサービスなどを展開しているため、南九州地域における新規顧客獲得などが期待できるとしている。

 1月22日には、江崎グリコが提供する「アーモンドピーク」と、コロプラ<3668>が運営するスマホゲーム「クイズRPG魔法使いと黒猫のウィズ」「白猫プロジェクト」がコラボレーションしたキャンペーン商品に、当社子会社スターティアラボ開発のAR(拡張現実)アプリ「COCOAR2(ココアル)」が16年3月1日から活用されると発表した。本キャンペーン商品に封入されているカードの表面を「COCOAR2」で読み込むとキャラクターが飛び出す仕組みになっている。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)19億11百万円、第2四半期(7月~9月)21億34百万円、第3四半期(10月~12月)20億21百万円、第4四半期(1月~3月)26億16百万円、営業利益は第1四半期6百万円、第2四半期2億47百万円、第3四半期42百万円、第4四半期4億52百万円だった。

 第4四半期の構成比が高い収益構造である。また15年3月期のROEは14年3月期比2.7ポイント上昇して15.9%、自己資本比率は同2.6ポイント上昇して70.2%となった。配当性向は17.2%だった。

■16年3月期第2四半期累計は大幅減益

 今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比17.7%増の47億61百万円、営業利益が同65.9%減の86百万円、経常利益が同66.6%減の1億07百万円、純利益が5百万円の赤字(前年同期は2億37百万円の黒字)だった。売上高は期初計画を上回り大幅増収だったが、利益は期初計画を下回り大幅減益だった。

 WS事業において、電子ブック作成ソフト「ActiBook」および「ActiBook AR COCOAR」の販売が苦戦した。NS事業およびBS事業は大幅増収だったが、いずれも先行投資負担で減益だった。ストック売上高は同24.9%増の17億39百万円で、ストック売上比率は同2.1ポイント上昇して36.5%となった。

 なお売上総利益率は45.7%で同4.2ポイント低下、販管費比率は43.9%で同0.3ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前期は差益17百万円計上、今期は差損6百万円計上)し、持分法投資利益が減少した。また資本・業務提携先において、当初目論んでいた業績と乖離した結果が散見されている状況を鑑み、特別損失に関係会社株式売却損20百万円、投資有価証券評価損24百万円を計上した。

 セグメント別には、WS事業の売上高が同0.5%増の9億15百万円、営業利益が7百万円の赤字(前年同期は97百万円の黒字)、NS事業の売上高が同32.8%増の14億06百万円、営業利益が同5.2%減の92百万円、BS事業の売上高が同30.2%増の31億37百万円、営業利益が同34.9%減の52百万円、その他事業(第1四半期から開始したコーポレートベンチャーキャピタル事業)の売上高が0百万円、営業利益が15百万円の赤字だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)22億53百万円、第2四半期(7月~9月)25億08百万円、営業利益は第1四半期1億07百万円の赤字、第2四半期1億93百万円だった。

■16年3月期通期は増収増益予想

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想(5月8日公表)については、売上高が前期比15.2%増の100億円、営業利益が同51.8%増の11億34百万円、経常利益が同29.2%増の11億34百万円、純利益が同4.2%減の5億67百万円としている。

 新卒70名の採用、ホスティングサービスにおけるセキュリティ強化、アジア地域への事業展開など、中期成長に向けた大規模な先行投資を継続するが、ストック型収益の拡大、海外事業の収益均衡化などで増収・営業増益予想だ。スターティア光の売上計上方法変更も増収に寄与する。純利益は投資有価証券売却益や保険解約返戻金が一巡して減益予想としている。

 セグメント別売上高は、WS事業が同23.6%増の25億23百万円、NS事業が同0.2%減の24億29百万円、BS事業が同18.5%増の49億86百万円の計画としている。ストック売上高は同10.1%増の32億円、ストック売上比率は同1.5ポイント低下の32.0%の計画としている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は、売上高が47.6%、営業利益が7.6%、経常利益が9.4%である。利益進捗率が低水準のため通期予想の下振れに注意が必要だが、第4四半期の構成比が高い収益構造のため挽回を期待したい。

■配当方針を変更して16年3月期配当は実質的に増配予想

 9月17日に配当方針の変更および配当予想の修正(増配)を発表した。利益還元重視の姿勢を明確にするとともに株主層の拡大を図るため、配当性向の基本方針を、従来の1株あたり当期純利益の15%相当額から、5ポイント引き上げて1株あたり当期純利益の20%相当額に変更した。

 これによって16年3月期の配当予想を第2四半期末8円、期末7円50銭に修正した。15年10月1日付株式2分割を考慮して期末7円50銭を15円に換算すると年間23円となり、前回予想(15年10月1日付株式2分割に伴って7月31日に修正)の年間17円に対して実質6円増額、前期の年間20円(記念配当2円57銭含む)に対して実質3円増配となる。予想配当性向は20.7%となる。

■中期経営計画で17年3月期経常利益14億円目指す

 14年8月発表の「新・中期3ヵ年利益計画」では、連結経常利益の目標値として15年3月期8億66百万円、16年3月期11億34百万円、17年3月期14億円を掲げている。

 初年度15年3月期の実績経常利益は8億78百万円で計画を達成した。2年目の16年3月期は新サービス投入による経常利益成長段階に入り、ホスティングなどの先行投資を継続しながら、海外事業を含めて収益回収段階に入るとしている。規模拡大や継続的成長に向けてM&A・アライアンス戦略も積極推進する。中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は16年3月期業績予想下振れ懸念の織り込み完了

 株価の動き(15年10月1日付で株式2分割)を見ると、地合い悪化も影響して水準を切り下げ、1月22日には昨年来安値となる499円まで下押した。13年6月以来の安値水準だ。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 1月22日の終値514円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS55円62銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(株式2分割で第2四半期末の8円を4円に換算した年間11円50銭で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績に株式2分割を考慮した連結BPS389円90銭で算出)は1.3倍近辺である。時価総額は約53億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感の強い水準だ。16年3月期業績予想下振れ懸念の織り込みが完了して反発のタイミングだろう。

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