【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ASIANSTARは昨年来高値に接近、15年12月期減額だが成長に向けた積極投資を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ASIANSTAR(エイシアンスター)<8946>(JQS)(15年4月、陽光都市開発から商号変更)は不動産関連事業を展開している。財務基盤が改善して中国でのワンルーム賃貸事業や国内でのリゾート開発事業を推進する。15年12月期業績予想を減額したが、株価の反応は限定的で1月14日の戻り高値264円、そして15年2月の昨年来高値265円に接近している。財務基盤改善や中期成長に向けた積極投資を評価する流れに変化はなく、15年2月の昨年来高値265円、そして14年11月高値291円を目指す展開だろう。

■国内と中国で不動産事業を展開

 15年4月1日付で、陽光都市開発からASIANSTAR(エイシアンスター)に商号変更した。

 投資用マンション「グリフィンシリーズ」の企画・販売事業を一旦縮小し、国内の不動産管理・賃貸・仲介事業のストック型フィービジネスへ事業構造を転換した。そして13年8月にアパマンショップホールディングス<8889>の子会社アパマンショップネットワークとFC加盟契約締結、13年10月にストライダーズ<9816>と資本業務提携した。

 その後、11年12月の上海徳威グループとの資本提携効果などで財務基盤改善が進展し、さらに国内不動産管理・賃貸・仲介事業の安定的な収益体系が構築できたとして、14年2月に中国における不動産関連事業(サービスアパートメント運営管理事業、ワンルームマンション賃貸事業)へ進出した。

 さらに15年2月には、一層の事業規模拡大を図ることを経営課題として、一旦縮小した国内不動産販売事業をあらためて拡大する方針を打ち出し、新規事業としてリゾート開発事業を開始すると発表した。

■中国でワンルーム賃貸事業を推進

 中国における不動産関連事業に関しては、14年2月に香港柏雅および子会社でサービスアパートメント運営・管理コンサルティングを展開する柏雅酒店管理(上海)などベルグラビアグループ3社を連結子会社化した。このうち上海柏雅投資管理については14年6月に売却した。また14年7月には香港柏雅の子会社として陽光智寓(香港)を設立した。

 14年11月には15年後半開業予定の世界有数の大型テーマパークから約5km圏内に位置する上海市周浦エリアにおいて、周浦印象春城サービスアパートメント1棟(220戸)の管理受託契約を締結した。14年12月には陽光智寓(香港)が中国上海市で新規事業の実務を行うため上海陽光智寓を設立した。

 15年7月には、連結子会社の柏雅酒店管理と東急不動産上海が中国に合弁会社の上海雅東企業発展有限公司を設立(15年8月、柏雅酒店管理の出資比率55%)すると発表した。柏雅酒店管理が持つ数多くのサービスアパートメント運営管理実績、中国国内の物件情報開発力および許認可取得交渉力と、東急不動産上海が持つ日本人向けサービスアパートメント運営ノウハウ、東急不動産グループの企画・設計力ならびに信用力・知名度を活用し、両社の強みを融合したサービスアパートメント運営管理事業を展開する。

 15年9月には投資用マンション「グリフィンシリーズ」を視察するため、中国・上海のメディア大手である上海文化広播影視集団有限公司傘下の上海東方明珠房地産有限公司の総経理、および開発担当マネージャー等計5名が当社を訪問した。上海東方明珠房地産有限公司は上海市中心部において住宅、ホテル、オフィスビル等の開発を行っており、今後は小規模住宅の開発にも乗り出す予定のため、今後も継続して協議を行っていくとしている。

 15年11月には中国ワンルーム賃貸事業の進捗状況をリリースした。中国蘇州市人民路所在の中古建物を賃借し、マンション用に内装工事を施して賃貸するワンルーム賃貸事業当該物件の計画(地上4階・地下2階のうち地上2~4階部分を賃貸予定、賃貸部屋数80室予定、投資金額は約56百万円予定)を策定した。そして16年1月の賃貸募集開始に向けて当該物件の内装工事を進めている。

 また中国上海市においてもワンルームマンションの賃貸権を購入し、賃貸事業を開始することになった。当該案件は当社の資本提携先である上海徳威企業発展有限公司の連結子会社である上海布科投資管理有限公司からワンルームマンションの賃貸事業を譲り受ける。

■国内リゾート開発事業を開始方針

 一層の事業規模拡大を図ることを経営課題として、一旦縮小した国内不動産販売事業をあらためて拡大する方針を打ち出し、15年2月には新規事業としてリゾート開発事業を開始すると発表した。

 日本国内で約70ヶ所合計約46万坪の事業用地を取得し、ログハウスを開発・建設して日本国内および海外セカンドハウス・移住者向け住宅として販売する事業、概ね10年を目途に別荘地として区画分譲する事業、開発や区画分譲を開始するまでの期間を固定資産として賃貸する事業を計画している。事業運営は連結子会社の合同会社TYインベスターズ(15年2月設立)が行う。

■15年12月期第3四半期累計は竣工・販売物件がなく大幅減益

 前期(15年12月期)第3四半期累計(1月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比55.7%減の8億40百万円、営業利益が同80.0%減の30百万円、経常利益が同83.8%減の26百万円、純利益が同89.3%減の15百万円だった。

 セグメント別売上高は、不動産販売事業が同92.7%減の77百万円、不動産管理事業が同6.5%減の3億89百万円、不動産賃貸事業が同8.9%減の2億54百万円、そして不動産仲介事業が同5.1%増の1億18百万円だった。不動産販売事業において竣工・販売物件がなく大幅減収減益だった。売上総利益率は36.8%で同15.2ポイント上昇、販管費比率は33.1%で同19.6ポイント上昇した。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)2億77百万円、第2四半期(4月~6月)3億26百万円、第3四半期(7月~9月)2億37百万円、営業利益は第1四半期22百万円、第2四半期15百万円、第3四半期7百万円の赤字だった。

■15年12月期予想を減額だが、中期的に収益改善基調

 前期(15年12月期)通期の連結業績予想について1月22日に減額修正を発表した。前回予想(2月16日公表)に対して売上高を2億57百万円減額、営業利益を6百万円減額、経常利益を1百万円減額した。純利益は前回予想を据え置いた。

 第4四半期(10月~12月)に見込んでいた不動産販売事業の販売件数が計画を下回ったようだ。ただし不動産販売事業においては利益率の高い物件を販売し、不動産管理事業などが順調に推移しているため、営業利益と経常利益の減額は小幅にとどまった。

 修正後の連結業績予想は、売上高が前々期比45.1%減の11億87百万円、営業利益が同59.3%減の61百万円、経常利益が同66.7%減の58百万円、純利益が同65.4%減の47百万円で、配当予想は無配継続としている。

 中期的には不動産管理事業の安定収益に加えて、中国ワンルーム賃貸事業や国内新規リゾート開発事業も寄与して収益改善基調が期待される。

■財務基盤改善も進展

 新株予約権行使や第三者割当増資などで財務面の改善も進展している。自己資本比率は13年12月期末9.0%から14年12月期末46.7%、さらに15年12月期第1四半期末58.5%、第2四半期末59.1%、第3四半期末59.9%に改善した。

 また1株当たり純資産(BPS)は13年12月期末19円92銭から14年12月期末72円12銭、さらに15年12月期第1四半期末100円86銭、第2四半期末102円25銭、第3四半期末101円00銭に改善した。

 なお13年10月21日に第三者割当により発行した第1回新株予約権について、15年10月7日に行った行使指定に基づき、本新株予約権を所有する徳威国際発展有限公司が15年10月16日付で本新株予約権の権利を行使した。行使個数10個(交付株式数50万株)で、本新株予約権の未行使個数は0個となった。

 さらに1月20日には、14年7月14日に第三者割当により発行した第3回新株予約権について、本新株予約権を所有するHong Kong Wealthyが、1月20日付で本新株予約権5個(50万株)を権利行使して、本新株予約権の未行使個数が10個(100万株)になったと発表している。

■株価は昨年来高値に接近

 株価の動きを見ると1月14日に戻り高値となる264円まで上伸した。その後は利益確定売りや地合い悪化の影響で18日に202円まで調整する場面があったが、素早く切り返して27日には254円まで上伸し、14日の戻り高値264円、15年2月の昨年来高値265円に接近している。15年12月期減額修正の影響は限定的で上値を試す勢いだ。

 1月27日の終値250円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS3円60銭で算出)は69倍近辺、実績連結PBR(15年12月期第3四半期実績の連結BPS101円00銭で算出)は2.5倍近辺である。時価総額は約41億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると26週移動平均線が上向きに転じた。そして13週移動平均線がサポートラインの上昇トレンドの形だ。財務基盤改善や中期成長に向けた積極投資を評価する流れに変化はなく、15年2月の昨年来高値265円、そして14年11月高値291円を目指す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る