【アナリスト水田雅展の銘柄分析】イワキは16年11月期大幅増益予想で収益改善、有機EL関連も注目

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 イワキ<8095>(東1)は医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社である。15年11月期は減益だったが、16年11月期は大幅増益予想で収益改善が期待される。1月14日にはグループ中長期ビジョンおよび新中期経営計画を発表した。後発医薬品(ジェネリック)の数量ベース普及率を80%以上に引き上げる政府方針やインバウンド需要が追い風であり、化学品分野では有機EL関連も注目される。3%近辺の予想配当利回りや0.4倍近辺の低PBRと指標面の割安感も強い。株価は地合い悪化も影響して安値圏だが調整一巡して出直り展開だろう。

■医薬品・医薬品原料・表面処理薬品などを主力とする専門商社

 1914年創業の医薬品商社である。医薬品事業(医療用・一般用・動物用医薬品の製造・販売、調剤薬局経営)、医薬品原料・香粧品原料事業(医薬品・香粧品原料の製造・販売、化粧品OEM製造)、化成品事業(電子工業用薬品・表面処理用薬品・化成品の製造・販売)、食品原料・機能性食品事業(食品原料の製造・販売、サプリメントのOEM製造)、その他事業(医療機器の販売、化粧品の製造・販売)を展開している。

 なお16年11月期から事業を再構成して、医薬・FC(Fine Chemical)事業(医薬品・医薬品原料の製造・販売、体外診断薬・研究用試薬の卸売、医療機器の販売など)、HBC(Health & Beauty Care)事業(化粧品原料・機能性食品原料の販売、一般用医薬品および関連商品の卸売、化粧品の通信販売など)、化学品事業(表面処理薬品・電子工業薬品・化成品の製造・販売など)、食品事業(食品原料の製造・販売など)の4事業とする。

■中期成長に向けて卸売・商社・メーカー機能の連携を強化

 全国の医薬品卸・医療機関・ドラッグストアなどに医薬品や機能性食品などを供給する卸売機能、国内外のメーカーなどを開拓して輸出入する商社機能、そしてグループ内の岩城製薬(後発医薬品・医薬品原料、医療機関向け化粧品など)とメルテックス(表面処理薬品など)のメーカー機能を併せ持つことが強みで、卸売・商社・メーカー機能の連携を強化している。

 中期的な事業基盤強化と収益拡大に向けて、医薬品事業での共同開発・受託品の拡大、ドラッグストア向けPB商品など自社企画商品の開発強化、医薬品原料事業での市場シェア拡大、インド・グレンマーク社など海外サプライヤーとの連携強化、岩城製薬の生産能力増強と新製品開発、メルテックスの新製品拡販、海外(タイ、韓国、中国)展開強化、日立化成<4217>とのアライアンスによる拡販などを推進している。

 15年10月にはベトナム駐在員事務所の開設を発表した。海外展開強化の一環として、ベトナムおよび周辺国における市場調査や営業支援等を推進する。

 15年12月には、当社の化成品事業における表面処理薬品原料等の販売事業を、当社の完全子会社であるメルテックスに承継した。グループ内の重複業務の解消、迅速な事業戦略の実行、グループ経営資源の効率的活用を実現させて事業基盤強化を図る方針だ。

■子会社元役員による不正発覚で過去決算を訂正、再発防止に取り組む

 15年11月に子会社ホクヤクの元役員による不正行為(総額約1億26百万円の着服)発覚を発表した。そして1月13日に第三者調査委員会による調査報告書、過年度(10年11月期~15年11月期)訂正決算短信および訂正有価証券報告書を公表した。回収不能見込み額は過年度に遡って各期の営業外費用として計上した。

 当該不正行為は当社および当社グループの財務基盤に重大な影響を及ぼすものではないが、調査委員会からの調査結果を踏まえて、グループ全社をあげて再発防止および内部管理体制のさらなる強化に取り組むとしている。なお本件不正行為の発生を厳粛に受け止め、経営責任を明確にするため16年1月分から、代表取締役社長、取締役副社長、常務取締役(ホクヤク担当)、ホクヤク代表取締役が役員報酬を自主返上する。

■医薬品事業、医薬品原料・香粧品原料事業が拡大基調

 なお14年11月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(12月~2月)125億44百万円、第2四半期(3月~5月)141億92百万円、第3四半期(6月~8月)131億90百万円、第4四半期(9月~11月)142億19百万円、営業利益は第1四半期1億90百万円、第2四半期4億24百万円、第3四半期23百万円の赤字、第4四半期2億99百万円だった。

 医薬品事業や医薬品原料・香粧品原料事業は好調だったが、化成品事業の収益が悪化した。また14年11月期のROEは2.9%で13年11月期比1.7ポイント低下、自己資本比率は43.8%で同1.0ポイント低下した。配当性向は50.1%だった。

■15年11月期は増収減益、化成品事業が低調

 1月14日発表の前期(15年11月期)連結業績は、売上高が前々期比2.4%増の554億22百万円、営業利益が同37.2%減の5億59百万円、経常利益が同27.8%減の6億94百万円、純利益が1億43百万円の赤字(前期は4億96百万円の利益)だった。配当は前々期比1円50銭減配の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)とした。

 ジェネリック医薬品関連(医薬品、医薬品原料で同6.6%増収)や、インバウンド需要関連(医薬品、香粧品原料、機能性食品で同10.3%増収)が伸長し、医薬品原料・香粧品原料事業や化粧品通信販売事業が増益だったが、化成品事業の営業赤字が拡大した。

 売上総利益率は19.4%で同1.2ポイント低下、販管費比率は18.4%で同0.6ポイント低下した。営業外では持分法投資損益が悪化(14年11月期は利益7百万円計上、15年11月期は損失12百万円計上)した。特別利益では固定資産売却益80百万円が一巡し、特別損失では減損損失51百万円が一巡した。また子会社メルテックスにおける繰延税金資産取崩も影響して最終赤字だった。

 前回予想値(10月9日に売上高を増額、利益を減額修正)との比較では、売上高は4億22百万円上回ったが、営業利益は80百万円、経常利益は75百万円、純利益は1億43百万円それぞれ下回った。売上総利益率が低下して販管費が増加した。また子会社の課税所得が想定以上に増加したため全体の税金費用が増加した。なお当社子会社元役員による不正行為に関して、不適切な会計処理に係る影響額は営業外費用で8百万円だった。

 セグメント別(連結調整前)動向を見ると、医薬品事業は売上高が前期比5.0%増の183億03百万円、営業利益が同3.4%減の1億01百万円だった。ジェネリック医薬品では外皮用剤の抗真菌剤やアトピー性皮膚炎治療剤の新規採用が増加した。一般用医薬品および関連商品では、インバウンド需要拡大などでドラッグストア免税店向けが伸長した。

 医薬品原料・香粧品原料事業は、売上高が同1.9%増の171億82百万円、営業利益が同4.5%増の10億44百万円だった。ジェネリック医薬品の需要拡大に伴って抗アレルギー剤原料や不整脈用剤原料などが好調に推移した。

 化成品事業は、売上高が同13.4%減の70億05百万円、営業利益が5億65百万円の赤字(前期は94百万円の赤字)だった。国内半導体向け薬品は生産量が増加して好調だったが、車載部品向けは自動車生産台数の減少で低調だった。海外はチップ部品向けが、アジアにおけるスマートフォン・タブレット端末の生産鈍化で低調だった。

 食品原料・機能性食品事業は、売上高が同11.5%増の89億85百万円、営業利益が同11.0%増の3億54百万円だった。機能性表示食品制度や美容・エイジングケア市場の拡大も背景として、取り扱い原料の新規採用や既存品の拡販などで全体として好調に推移した。

 化粧品通信販売事業は、売上高が同0.0%増の18億80百万円、営業利益が同3.4倍の2億11百万円だった。メイク・スキンケアなど新規商品投入効果などで主力の化粧下地品を中心に伸長した。モンドセレクション金賞を2年連続受賞した主力製品「シルキーカバーオイルブロック」の累計販売実績は150万個を突破した。その他事業は売上高が同12.7%増の20億65百万円、営業利益が同26.3%増の13百万円だった。

 なお15年11月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(12月~2月)130億01百万円、第2四半期(3月~5月)145億15百万円、第3四半期(6月~8月)139億58百万円、第4四半期(9月~11月)139億48百万円、営業利益は第1四半期90百万円、第2四半期3億08百万円、第3四半期1億46百万円、第4四半期15百万円だった。

■16年11月期は大幅増益予想で収益改善

 今期(16年11月期)通期の連結業績予想(1月14日公表)については、売上高が前期比1.0%増の560億円、営業利益が同51.9%増の8億50百万円、経常利益が同29.6%増の9億円、純利益が4億50百万円(前期は1億43百万円の赤字)としている。配当予想は前期と同額の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)で、予想配当性向は45.0%となる。

 医薬・FC事業では、引き続きジェネリック医薬品の伸長を見込むが、16年4月予定の薬価改定の影響で厳しい環境も予想されるとしている。HBC事業では、インバウンド需要や機能性表示食品制度に対応した新商品投入などで、一般用医薬品、化粧品、機能性食品が堅調に推移する見込みだ。海外売上の拡大にも取り組む。化学品事業では、中国市場におけるスマートフォンの販売鈍化など全体として厳しい環境だが、新製品拡販効果などでメルテックスの収益改善を見込んでいる。食品事業では輸入原材料価格などコスト上昇圧力が強いが、商品開発効率化、生産コスト低減、既存原料の拡販などに取り組む。

 後発医薬品の数量ベース普及率を80%以上に引き上げる政府の骨太方針や、インバウンド需要も追い風だ。収益が悪化していた化学品事業は、ライセンス生産が終了して利益率が高い自社製品生産へシフトし、新製品の投入・拡販などで今期(16年11月期)後半の黒字化を目指している。また韓国の大手メーカー向けに有機EL関連の大型案件を受注したことも注目される。収益は改善基調だろう。

■グループ中長期ビジョンおよび新中期経営計画を発表

 1月14日に、創業111年を迎える25年11月期に向けたグループ中長期ビジョン「Vision i-111」および新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)を発表した。

 グループ中長期ビジョン「Vision i-111」では、基本戦略に(1)策揃え企業になる(Intelligent)、(2)ナンバーワン製品・事業に注力する(Innovative)、(3)海外市場への事業展開を図る(International)、(4)資本効率を意識した事業運営を行う(Investment)として、数値目標には創業111周年25年11月期の連結売上高1000億円、ROIC10.0%以上を掲げた。

 新中期経営計画(16年11月期~18年11月期)では、これまで独立的に運営されていた事業部門をプロダクツごとのバリューチェーンに従って統合・運営するため、組織体系を4事業(医薬・FC事業、HBC事業、化学品事業、食品事業)に再構成し、数値目標には18年11月期売上高600億円、営業利益10億円、ROIC4.0%以上を掲げた。

 医薬・FC事業(イワキ、岩城製薬)では、原料の選定から最終製品の提供までを「策揃え」で提供するほか、国内外の医薬関連企業との協業を通して、さらなる市場拡大に努める。HBC事業(イワキ、アプロス)では、OEMやプライベート・ブランド製品の自社企画・提案を通して、国内の健康食品原料市場における高シェアを維持・拡大する。海外市場の開拓も推進する。化粧品通信販売では「シルキーカバーオイルブロック」のさらなる拡販を図る。

 化学品事業(メルテックス)では、高い技術力・ブランド力を持つIチップ抵抗向けスズめっき「メルプレートSNシリーズ」などの世界市場シェアNO.1を確保するとともに、15年から販売開始した大型新製品のプリント配線板向け硫酸銅めっき「ルーセントシリーズ」などの拡販を図る。食品事業(イワキ、持分法適用会社のボーエン化成)では、商品開発の効率化、生産コストの低減、ボーエン化成における国産・高付加価値原料の受託加工強化などを推進する。海外展開に関しては、ハラル対応原料に特化したマーケティングを開始し、マレーシア、インドネシア、中近東諸国の市場開拓に注力する。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して水準を切り下げ、1月21日には14年3月以来の安値水準となる188円まで調整した。その後は28日に201円まで戻す場面があった。調整が一巡したようだ。

 1月28日の終値198円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS13円33銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は3.0%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS514円23銭で算出)は0.4倍近辺である。なお時価総額は約68億円である。

 週足チャートで見ると安値圏の下ヒゲで調整一巡感を強めている。そして日足チャートで見ると25日移動平均線突破の動きを強めている。3%近辺の予想配当利回りや0.4倍近辺の低PBRと指標面の割安感も強い。調整が一巡して出直り展開だろう。

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