【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エスプールの16年11月期は大幅増益予想、成長軌道へ回帰

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 エスプール<2471>(JQS)はロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援、コールセンター向け人材派遣などを中心に人材サービス事業を展開し、新規分野として電力スマートメーター設置業務などを拡大している。16年11月期はロジスティクスの低収益案件の減少や、電力スマートメーター設置業務の収益化も寄与して大幅増益予想だ。改正労働者派遣法も追い風であり、成長軌道への回帰が期待される。株価は13年8月急伸前以来の安値圏だが、調整が一巡して反発のタイミングだろう。

■ロジスティクス、障がい者雇用支援、コールセンターなどの人材サービス事業

 ビジネスソリューション事業(ロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、フィールドマーケティングサービス、マーチャンダイジングサービス、販売促進支援業務、顧問派遣サービスなど)、人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、携帯電話販売員派遣、ストアスタッフ派遣など)を展開している。

■ロジスティクス分野はネット通販市場拡大が追い風

 ロジスティクスアウトソーシングサービスは、子会社エスプールロジスティクスがECサイト出店企業などの物流センター運営・発送代行サービスで新規顧客獲得を推進している。ネット通販市場の拡大やインバウンド需要の増加を背景として物流センターの稼働率は高水準である。

■障がい者雇用支援サービスを拡大

 障がい者雇用支援サービスは、障がい者雇用促進法に基づいて大企業の障がい者雇用をサポートしている。子会社エスプールプラスが運営する企業向け賃貸農園「わーくはぴねす農園」の栽培設備販売収入と農園運営管理収入を収益柱としている。高付加価値サービスとして千葉県を中心に事業規模を拡大する方針だ。

 千葉県市原市「わーくはぴねす農園 市原ファーム」では23社の企業がサービスを利用し、14年6月新設の千葉県長南町「わーくはぴねす農園 茂原ファーム」も完売した。15年2月には第3農園となる山武農園を開設した。また15年4月には知的障がい者の雇用を促進するため、年内に「わーくはぴねす農園」を3ヶ所増設すると発表した。

 15年2月には就労移行支援事業所「障がい者就職塾」千葉校を開設すると発表している。千葉校開設で「障がい者就職塾」のネットワークは5拠点となる。これまで4年間で約150名の知的障がい者が就職し、退職率が1%未満という高い定着率を誇っている。

■電力会社のスマートメーター関連業務を拡大

 フィールドマーケティングサービスでは、新規分野として電力会社が推進するスマートメーター関連業務を拡大する。14年9月に子会社エスプールエコロジーが一般建設業(電気工事業、電気通信工事業)の許可を取得し、移動通信キャリアの通信・ネットワーク機器の設置業務、電力計のスマートメーター化に関連したサポート業務を開始した。

 15年3月には子会社エスプールエンジニアリングを設立し、大規模な工事を請け負うことができる特定建設業(電気工事業、管工事業)の許可を取得した。エスプールエコロジーが行っていた業務についても新会社に順次移管する。

 15年5月には、エスプールエンジニアリングが東京電力<9501>からスマートメーター設置業務を受注した。東京電力は20年度までに約2700万台のスマートメーター設置を予定しており、このうち約540万台分の入札で約24億円分の業務(工事履行期間15年7月1日~17年3月20日)を受注した。今回の受注を皮切りに、確実に実績を積み上げて全国各地域での受注を目指す。

 なお除染業務などのフィールドサービスを提供していたエスプールエコロジーについては、現在は事業活動を行っていないため15年12月に解散および清算を発表した。16年5月に清算手続終了予定である。

■グループのセールスサポート関連を集約

 14年11月には販売促進支援業務に特化した子会社エスプールセールスサポートを設立した。マーチャンダイジング業務、クレジットカードなどの会員獲得業務、販売イベントブースの運営業務などの販売促進支援業務を集約(ビジネスソリューション事業)し、事業拡大と収益性向上を目指す。

■人材ソリューション事業はコールセンター業務向け人材派遣が主力

 人材ソリューション事業(子会社エスプールヒューマンソリューションズ)は、コールセンター業務や携帯電話販売業務向けの人材派遣を主力としている。

 またファミリーマート<8028>のFC店舗向けに人材提供を一括で行う「人材サポートセンター」を設立し、コンビニエンスストア向けストアスタッフサービスを強化している。

 15年6月にはフルキャストホールディングス<4848>と業務提携した。当社の各種アウトソーシングノウハウとフルキャストの全国規模での採用力を組み合わせることで競争力のあるサービスを提供し、大規模アウトソーシング案件の受注に向けて営業協力を開始する。調査・キャンペーン業務、セールスプロモーション業務の分野を中心に初年度10社の受注を目指すとしている。

 また新規事業として、小売・飲食・サービス業などアルバイトを多く採用する企業を対象に「アルバイト応募受付代行サービス」を開始する。飲食チェーンなど大手企業数社からの受注が決定し、16年11月期中に30社の受注を目指す。

■15年11月期は大幅減益、電力スマートメーター関連の費用が先行

 1月13日発表の前期(15年11月期)連結業績は売上高が前々期比10.0%増の72億67百万円だが、営業利益が同71.3%減の59百万円、経常利益が同74.2%減の49百万円、純利益が68百万円の赤字(前々期は1億65百万円の黒字)だった。配当は前々期と同額の年間10円(期末一括)とした。

 人材派遣サービスや障がい者雇用支援サービスが伸長し、電力スマートメーター設置業務関連の稼働も寄与して売上高は過去最高を更新したが、積極的な人員増員による人件費の増加、電力スマートメーター設置業務関連の費用先行で大幅減益だった。

 売上総利益率は25.3%で同0.5ポイント上昇、販管費比率は24.5%で同2.8ポイント上昇した。特別損失では本社移転費用40百万円を計上した。またROEはマイナス9.7%で同44.9ポイント低下、自己資本比率は24.7%で同10.4ポイント低下した。配当は前々期と同額の年間10円(期末一括)とした。配当の基本方針は、中長期的な企業価値の向上と継続的・安定的な配当の両立を目指し、連結ベースでの株主資本配当率(DOE)5%を目安として実施する。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同10.9%増の30億円、営業利益が同41.7%減の1億63百万円だった。障がい者雇用支援サービスで新たに3農園の建設が進み、前々期の約2倍の区画を販売した。新規取引は23社で、新たに107名の障がい者雇用、37名のシルバー雇用の創出に成功した。グループ内業務を集約したセールスサポート関連は大型調査案件が増加した。

 ロジスティクスアウトソーシングサービスの物流センター運営代行業務は、低収益案件の取引見直しなどで縮小している。そしてネット通販の発送代行業務は、取り扱い品目を高単価の健康食品・化粧品にシフトして収益力向上を推進している。

 電力スマートメーター設置業務は、15年7月業務開始前の人件費、採用費、研修費、拠点設置費用、備品等の費用支出が先行し、稼働後も業務習得に想定以上の時間を要した。電力スマートメーター設置業務関連が営業利益2億63百万円の押し下げ要因となった。

 人材ソリューション事業は売上高が同8.1%増の43億02百万円、営業利益が同16.3%増の3億60百万円だった。主力のコールセンター業務向け人材派遣(前々期比45.4%増収)が好調に推移した。携帯電話販売業務向け(同10.3%減収)は成長が鈍化した。コスト面では業務の長期化に伴って社会保険料負担が増加したが、利益率が高い人材紹介の好調や増収効果で吸収した。

 なお15年11月期業績の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(12月~2月)16億61百万円、第2四半期(3月~5月)17億77百万円、第3四半期(6月~8月)18億円、第4四半期(9月~11月)20億29百万円、営業利益は第1四半期22百万円の赤字、第2四半期53百万円、第3四半期90百万円の赤字、第4四半期1億18百万円だった。電力スマートメーター設置業務の稼働本格化で営業損益は改善基調だろう。

■16年11月期は大幅増益予想、成長軌道へ回帰

 今期(16年11月期)の連結業績予想(1月13日公表)については、売上高が前期比13.1%増の82億20百万円、営業利益が同4.5倍の2億70百万円、経常利益が同5.2倍の2億58百万円、純利益が1億83百万円(前期は68百万円の赤字)としている。2桁増収・大幅増益予想で、売上高・利益とも過去最高更新の見込みだ。配当予想は前期と同額の年間10円(期末一括)としている。配当性向は16.4%となる。

 人材派遣サービスや障がい者雇用支援サービスが好調に推移し、電力スマートメーター設置業務関連の収益化も寄与する。ロジスティクスアウトソーシングサービスでは低収益の物流センター運営代行業務を縮小するため大幅減収となるが、低収益案件の減少で売上総利益率が改善する。継続的な収益の確保が期待できるストック型サービスの構成比を高めることで収益構造の抜本的な改善も推進する方針だ。売上総利益率は28.4%で同3.1ポイント上昇、販管費比率は25.1%で同0.6ポイント上昇の計画としている。

 なおセグメント別(連結調整前)の計画は、ビジネスソリューション事業の売上高が同20.0%増の35億99百万円、営業利益が同2.7倍の4億39百万円、人材ソリューション事業の売上高が同10.2%増の47億40百万円、営業利益が同2.8%増の3億70百万円としている。

 またビジネスソリューション事業の売上高のうち、ロジスティクスアウトソーシングサービスは同41.6%減の10億円、障がい者雇用支援サービスは同53.5%増の8億72百万円、セールスサポートサービスは同44.6%増の5億15としている。電力スマートメーター設置業務は売上高が10億21百万円で、第2四半期での単月黒字化を計画している。

 15年11月期は大幅減益だったが、16年11月期は大幅増益予想だ。なお障がい者雇用支援サービスの農園販売が下期に集中し、電力スマートメーター設置業務の収益貢献が下期からとなるため、下期偏重の期初計画となっている。人材派遣サービスや障がい者雇用支援サービスの好調推移、ロジスティクスアウトソーシングサービスの低収益案件減少による売上総利益率改善、電力スマートメーター設置業務の収益化、そして改正労働者派遣法も追い風となって成長軌道への回帰が予想される。

■中期経営計画で「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」目指す

 15年1月発表の新中期経営計画「Next2020-変化への挑戦」では、中期ビジョンとして「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」を掲げている。

 社会貢献性が高い分野、景気変化に強い分野、参入障壁が高い分野でバランスの取れたポートフォリオ経営を推進し、ストック型ビジネスの強化、低収益事業の改善、新たな収益柱の構築を目指す方針だ。

 経営目標値は、営業利益率5%の早期達成と20年度までに業界最高水準10%の達成、安定的かつ継続的な配当の実施、ROE最低5%堅持としている。人材確保が課題だが、アウトソーシング需要は高水準であり、高付加価値サービスが牽引して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して反発のタイミング

 株価の動きを見ると、15年11月期大幅減益を嫌気し、さらに地合い悪化も影響して水準を切り下げ、1月18日には641円まで調整した。13年8月急伸前以来の安値圏だ。その後は650円~700円近辺で推移して下げ渋る動きだ。調整が一巡したようだ。

 1月29日の終値665円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS61円05銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.5%近辺、前期実績の連結PBR(前期実績の連結BPS218円74銭で算出)は3.0倍近辺である。時価総額は約20億円である。

 週足チャートで見ると52週移動平均線近辺から大陰線を引いて調整局面だが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感の強い水準だ。16年11月期は成長軌道への回帰が期待される。改正労働者派遣法も追い風だ。調整が一巡して反発のタイミングだろう。

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