【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ミロク情報サービスは16年3月期配当予想を増額、英フィンテックベンチャーと資本業務提携

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ミロク情報サービス<9928>(東1)は財務・会計ソフトの開発・販売やコンサルティングサービスなどを展開し、M&Aやアライアンスを活用して新規事業も強化している。3日発表の16年3月期第3四半期累計連結業績は増収増益だった。また3日には16年3月期配当予想増額と自己株式取得、4日には英国のフィンテックベンチャーとの資本業務提携を発表した。株価は高値圏で堅調に推移している。上値追いの展開で99年の上場来高値1284円が視野に入りそうだ。

■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス収入が収益柱

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなど業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。

 収益柱は、システム導入契約売上高(システム導入契約時のハードウェア、ソフトウェア、およびシステム導入支援サービスなどのユースウェアの販売)と、サービス収入(会計事務所向け総合保守サービスTVS、ソフト使用料収入、企業向けソフトウェア運用支援サービス、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入など継続的な役務の対価)である。

 会計事務所が抱えている課題を解決することで中堅・中小企業支援にも繫がるトータルソリューションが強みである。全国約8400の会計事務所ユーザーおよび約1万7000社の中堅・中小企業ユーザーを有し、サービス収入などのストック型収益構造を特徴としている。13年10月には、連結会計システム開発のプライマルと資本・業務提携して、連結会計や連結納税までグループ経営支援ソリューションの提供を強化している。

■中期計画でROE17年3月期15%、21年3月期30%目指す

 第3次中期経営計画(15年3月期~17年3月期)では、経営目標値として17年3月期売上高260億円、経常利益40億円、純利益24億50百万円、売上高経常利益率15%、ROE15%を掲げている。さらに新たな成長ステージとなる21年3月期には売上高500億円、経常利益率30%、ROE30%を目指している。

 重点戦略としては、顧客基盤拡大に向けた販売戦力増強と販路拡大(市場ポテンシャルに合わせた人的リソース配分適正化、販社M&Aも活用したエリア拡大、顧客サポート体制と経営情報サービスの充実など)、新規顧客を創造する新製品・サービス開発(マルチデバイス対応クラウドサービスなど)、新規事業による新たな収益基盤確立(利益率向上に向けた事業ポートフォリオ再設計、中小企業の事業承継・事業再生支援サービスへの参入など)を推進する。

■M&A・アライアンス戦略も活用して新規事業を強化

 新規事業関連では、登録会員数約130万人の中小・ベンチャー企業支援ビジネス情報サイト「bizocean(ビズオーシャン)」のクラウド拡充とネットビジネスへの展開、マルチデバイス対応お金管理アプリ「マネトラ」による消費者間取引(CtoC)市場への参入、経済団体・FC企業への会計クラウドサービスの提供などを推進している。

 14年5月には全国商工会連合会の会員事業者向け「会計・税務のクラウド型アプリケーションソフト」を開発し、14年8月にはソフトテックス社から完全Web対応クラウド販売管理システム「商い哲人EX」を譲り受け、14年9月には中小企業の事業承継や事業再生を支援する子会社MJS M&Aパートナーズを設立した。

 14年10月にはCtoC向けクラウド型会計アプリ「フリビズbyマネトラ」の提供を開始した。また韓国の電子金融専門企業Webcash(ウェブキャッシュ)社と資本業務提携した。韓国Webcash社と日本法人(14年11月MWI社に社名変更)の株式を取得し、新たなクラウドサービスを共同開発して日本国内で事業展開する。14年12月にはクラウド型POSシステムのオフィス24グループと業務提携した。

 15年1月には次世代サービス共同開発を目的として、次世代Web標準言語HTML5を活用したWebソリューション開発に強みを持つニューフォリアに出資して資本提携した。

 15年4月には一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)へ加盟した。税理士・公認会計士事務所と中堅・中小企業の経営革新を推進し、その繁栄に寄与するという経営方針のもと、日本経済の発展に貢献できるよう企業としての社会的責任を果たせるよう努めるとしている。

 15年11月にはMWI社の株式取得および第三者割当増資引き受けによって連結子会社化した。出資比率40%が55.0%に高まる。銀行口座やクレジットカードの利用明細等を会計処理の元データとして取り込むことができるスクレイピング機能を当社製品に組み込んで製品競争力強化を図る。

 また15年11月には子会社のMJS M&Aパートナーズ(mmap)が、中小企業の事業承継・事業再生の支援体制を強化するために、16年3月までに会計事務所500所とのパートナー契約の実現を目指すとのリリースを公表した。15年11月現在で287事務所とのパートナーシップ契約を締結している。

 15年12月にはSAPジャパンと、同社が有する自己管理型データベースにおいて包括的なOEMパートナー契約を締結した。当社が自社製品に同データベースを搭載して販売する際に、同社が当社に対して一定金額で無制限の配布ライセンスを提供する国内初の包括契約となる。

 また15年12月には、会計事務所向けに記帳代行サービスを提供するクラウドインボイスの株式を取得して完全子会社化した。同社はOCR(光学文字認識)に頼らない独自の文字解析システムを活用して、会計事務所向けに低価格かつ高品質な記帳代行サービスを提供し、中小企業向けに請求書の作成から受送信、入金・支払管理までをサポートするクラウドサービス「Cloud Invoice」を開発・提供している。

■英ベンチャーとの資本業務提携でフィンテック分野に参入

 2月4日には、英国における中小企業向け融資仲介のフィンテックベンチャーであるSkwile(スクワイル)社との資本業務提携を発表した。同社が発行予定の優先株式引き受けに関する投資契約および業務提携契約を16年2月中に締結し、フィンテック分野に参入する。なお同社は資金管理やリスク管理をはじめとする金融分野のノウハウとITを融合し、独自の指標やリスクモデルによる金融プラットフォーム「FundlinQ(ファンドリンク)」や「Skwile-CaFE(スクワイルカフェ:Cash Flow Engine)」の開発・提供を予定している。

■サービス収入が拡大するストック型の収益構造

 15年3月期の四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)56億22百万円、第2四半期(7月~9月)56億41百万円、第3四半期(10月~12月)54億77百万円、第4四半期(1月~3月)56億43百万円、営業利益は第1四半期5億96百万円、第2四半期7億06百万円、第3四半期4億56百万円、第4四半期7億66百万円だった。

 ソフト保守サービス契約率の上昇などでストック型のサービス収入が積み上がる収益構造だ。15年3月期の差引売上総利益率は64.0%で14年3月期比1.9ポイント上昇、販管費比率は52.7%で同1.4ポイント上昇、ROEは13.7%で同1.0ポイント上昇、自己資本比率は67.8%で同4.2ポイント上昇した。配当性向は26.9%だった。

■16年3月期第3四半期累計は増収増益

 2月3日に発表した今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.5%増の178億31百万円となり、営業利益が同28.0%増の22億49百万円、経常利益が同25.1%増の22億77百万円、純利益が同9.5%増の13億62百万円だった。

 顧客基盤拡大に向けた多彩なセミナー・研修会の継続的開催、クラウドコンピューティングに関する総合イベントへの主力製品の出展など、積極的な販促活動を展開した。また主力システムの機能強化に加えて、15年9月にはマイナンバー制度施行に向けた新製品「MJSマイナンバー」の販売、15年10月にはマイナンバーの収集・登録・保管・廃棄までの一連の業務を代行する「MJSマイナンバーBPO」サービスを開始した。さらに新規事業の一つとして中小企業における事業承継・事業再生の支援事業にも積極的に取り組んだ。

 こうした施策が奏功してシステム導入契約売上高、サービス収入とも好調に推移した。ストック型収益であるサービス収入の売上構成比上昇も寄与して2桁営業増益だった。売上総利益率は65.0%で同1.3ポイント上昇、販管費比率は52.3%で同0.9ポイント低下した。なお営業外では持分法投資損益が悪化(前期は利益2百万円計上、今期は損失7百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益が一巡(前期2億25百万円計上)し、段階取得に係る差益8百万円を計上した。特別損失では投資有価証券評価損58百万円を計上した。

 品目別の売上高は、システム導入契約売上高が同4.7%増の111億87百万円(内訳はハードウェアが同5.9%増の22億07百万円、ソフトウェアが同3.0%増の68億56百万円、ユースウェアが同9.2%増の21億23百万円)だった。サービス収入が同8.3%増の61億72百万円(内訳は会計事務所向け総合保守サービスTVSが同2.1%増の13億89百万円、ソフト使用料収入が同15.9%増の7億23百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービスが同8.4%増の26億33百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が同6.6%増の8億97百万円、サプライ・オフィス用品が同20.0%増の5億28百万円)だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)58億88百万円、第2四半期(7月~9月)59億45百万円、第3四半期(10月~12月)59億98百万円、営業利益は第1四半期6億86百万円、第2四半期7億47百万円、第3四半期8億16百万円だった。ストック型収益であるサービス収入の売上構成比上昇も寄与して営業利益は拡大基調だ。

■16年3月期通期も増収増益基調で増額余地、配当予想は増額

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想については前回予想(5月12日公表)を据え置いて、売上高が前期比5.4%増の236億円、営業利益が同18.8%増の30億円、経常利益が同16.0%増の30億円、純利益が同3.0%増の18億10百万円としている。

 純利益は投資有価証券売却益の一巡で伸び率が鈍化するが、売上面ではシステム導入契約の受注残高が高水準であり、中堅・中小企業向けERPシステムの拡販、新規顧客の開拓、ソフト保守サービス契約率の上昇などで、システム導入契約売上高およびサービス収入とも順調に拡大する。売上総利益率の計画は同1.9ポイント上昇の65.9%としている。人件費増加などを吸収して増収増益基調だ。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.6%、営業利益が75.0%、経常利益が75.9%、純利益が75.3%と順調な水準である。期後半に向けて収益が積み上がるストック型の収益構造を考慮すれば、通期業績の会社予想に増額余地があるだろう。

 なお配当予想については2月3日に増額修正を発表した。前回予想(5月12日公表)に対して、期末2円増額して年間17円(期末一括)とした。前期との比較でも2円増配となる。予想配当性向は29.6%となる。

■マイナンバー制度への対応も強化、中期的に収益拡大基調

 16年1月施行マイナンバー制度関連需要の拡大も期待されるため、マイナンバー対応サービスを強化している。15年9月にはマイナンバー管理システム「MJSマイナンバー」(オンプレミス版・クラウド版)を開始、15年10月には中堅・中小企業向けにマイナンバー収集・保管など一連の業務を代行する「MJSマイナンバーBPO」サービスを開始した。

 既存のソフトウェア関連事業の拡大に向けて、新規顧客の拡大と収益基盤の強化に注力するとともに、クラウドサービスやマルチデバイス対応など新たな製品・サービス、中小企業の事業承継・事業再生を支援するサービスも強化している。ストック型の収益構造であり、サービス収入の好調で売上総利益率の上昇も期待される。中期的にも収益拡大基調だろう。

■自己株式取得

 2月3日に自己株式取得を発表した。取得株式総数の上限40万株(自己株式除く発行済株式総数に対する割合1.26%)、取得価額総額の上限3億円、取得期間16年2月4日~16年3月31日としている。

■株価は高値圏で堅調、99年の上場来高値が視野

 株価の動きを見ると高値圏で堅調に推移している。地合い悪化の影響で1月6日の昨年来高値1016円から一旦反落したが、1月21日の800円から切り返している。2月4日には前日比97円(10.95%)高の983円まで上伸する場面があった。第3四半期累計の増収増益、配当予想の増額、自己株式取得も好感した。

 2月4日の終値946円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS57円42銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は1.8%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS411円46銭で算出)は2.3倍近辺である。なお時価総額は約329億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返して13週移動平均線を回復した。サポートラインを確認して強基調の形だ。上値追いの展開で99年の上場来高値1284円が視野に入りそうだ。

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