【鈴木雅光の投信Now】MMFの取扱い中止相次ぎ、今後の焦点はMRFに

 日銀のマイナス金利導入を受け、MMFの運用を行っている投資信託会社が、相次いでMMFやフリー・ファイナンシャル・ファンド(FFF)、中期国債ファンドの新規設定を一時停止しました。

 FFFは、中期国債ファンドの大口版ですが、運用の中身はほぼ同じ。なかでも中期国債ファンド、MMFはかつて、個人マネーを投資信託に招き入れるための導入剤として用いられていたもので、いずれも元本安全性が極めて高く、30日が経過すれば信託財産留保額なしで解約でき、現金化は翌営業日。分配率は総じて1年物定期預金よりも高いことから、高い人気を集めました。ちなみに中期国債ファンドの純資産残高は、1989年以降で見ると2001年2月がピークで7兆9368億円。MMFは2000年5月がピークで21兆8973億円でした。低金利が続くなか、相対的に高めの分配率を提示していた両ファンドに人気が集まったのです。

 中期国債ファンドも、MMFも、そもそも預貯金に近い元本安全性を維持するため、厳しい運用ルールが課せられていました。

 ところが、市場金利の水準が低下していくなか、利回りを確保するべく、運用ルールには抵触しない範囲で、ややリスクの高いCPやSBを組み入れて運用したのが、裏目に出ました。大成火災海上保険の会社更生法申請、米エネルギー会社エンロン社の破綻などを受け、資金回収難に陥った中期国債ファンド、および複数社が運用していたMMFに元本割れが生じたのです。

 そこから両ファンドから資金流出が続き、直近、2015年12月時点における中期国債ファンドの純資産残高は1923億円、MMFのそれは1兆6427億円まで目減りしました。その意味では両ファンドとも、ほぼ終焉を迎えようとしたところを、マイナス金利導入によってダメを押された形になったわけです。かつて人気を誇った「業界統一商品」ではありましたが、すでに相当以前から「終わったファンド」ではあったのです。

 ただ、マイナス金利が公社債投信に及ぼす影響について、最も懸念するべきなのはMRFでしょう。MRFは証券総合口座において、株式や債券、投資信託などの購入・売却資金を一時的にプールする場として運用されています。その性質上、MRFは、中期国債ファンドやMMFよりも、さらに厳格な運用ルールが適用され、元本割れが起こらないように配慮された運用が行われています。しかし、マイナス金利の導入で、中期国債ファンドやMMFの運用が苦境に立たされた以上、MRFだけがそこから無縁で済まされるはずがありません。

 たとえば野村アセットマネジメントが設定・運用しているMMFとMRFのポートフォリオを比べてみましょう。

 組入債券のうち、償還までの残存期間が1年以内のものの比率は、MMFが38.1%で、MRFが30.8%。

 組入短期金融資産のうち、CPの組入比率はMMFが48.3%、MRFが37.7%で、MMFの方が若干、発行者リスクを取っています。

 一方、コール・ローンは、翌日物と期日物を合わせた数字で比較すると、MMFが10.1%で、MRFが21.8%。現先・レポについてはMMFが3.5%で、MRFが9.8%です。そして、これらすべての資産についての平均残存日数は、MMFが48日で、MRFが35日です。これが意味するのは、MRFの方がより短い資産を組み入れて運用しているということです。

 ところで、黒田日銀総裁は、「イールドカーブの起点を引き下げ、短期金融市場に幅広くマイナス金利が浸透することになると考えられます」と、1月29日の記者会見で説明しました。短期金融市場に幅広くマイナス金利が浸透すれば、MRFも分配率をプラスに維持しながらの運用が困難になる恐れがあります。

 現状、MRFについては元本を割り込んだ時、損失分を補てんできるルールが設けられています。したがって、追加設定が困難になるなどの事態には陥らないと思われますが、損失補てん分はそのままMRFを運用している投資信託会社のコスト負担増につながる恐れがあります。MRFを運用している投資信託会社は、MRFで運用している資金を日銀当座預金に移す際、マイナス金利を適用しないよう求めたと報道されていますが、現状、MRFに滞留している11兆円超の資金の行方が気になるところです。

(証券会社、公社債新聞社、金融データシステム勤務を経て2004年にJOYntを設立、代表取締役に就任、著書多数)

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