【アナリスト水田雅展の銘柄分析】サンコーテクノの16年3月期第3四半期累計は減収減益だったが、中期的な事業環境は良好

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 サンコーテクノ<3435>(東2)は建設用あと施工アンカーの最大手である。16年3月期第3四半期累計は太陽光発電関連の市場縮小などで減収減益だったが、20年東京五輪などで建設関連の中期的な事業環境は良好だ。株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げたが、売られ過ぎ感を強めている。そして指標面の割安感も台頭している。16年3月期減収減益予想の織り込みが完了して反発のタイミングだろう。

■あと施工アンカーの最大手

 16年3月期から組織変更を実施して事業セグメント区分を変更し、ファスニング事業(あと施工アンカーやドリルビットの開発・製造・販売、太陽光関連・土木建築関連の工事管理など)と、機能材事業(電動油圧工具関連、FRP関連、電子プリント基板関連、各種測定器関連の製造・販売など)を展開している。あと施工アンカー(コンクリート用特殊ネジ・釘類)の最大手である。

 あと施工アンカー、アンカー打込み機、FRPシートなどは震災復興関連、都市再開発関連、耐震補強関連、老朽化インフラ補修・更新関連、20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設工事の増加が追い風となるため、中期的に事業環境は良好だ。

■センサー事業も強化

 センサー事業も強化している。14年11月にドコモ・システムズと業務提携し、15年3月には自動車運送事業法の対象企業に向けたクラウド型点呼サービス「docoですcar Guardian」の提供を開始した。ドコモ・システムズが当社の呼気アルコール測定システムを利用したクラウド型サービスを提供する。

 15年2月には「燃料電池式業務用呼気アルコール測定器ST-3000」の発売を発表した。燃料電池センサーの技術を持つタニタ(東京都)と共同開発した新製品で、これまでの接触燃焼式から燃料電池式にすることによりガス選択性の向上と測定時間の短縮を実現する。

■期後半の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)37億61百万円、第2四半期(7月~9月)46億72百万円、第3四半期(10月~12月)46億13百万円、第4四半期(1月~3月)47億89百万円、営業利益は第1四半期2億45百万円、第2四半期4億65百万円、第3四半期3億88百万円、第4四半期4億13百万円だった。

 建設関連で期後半の構成比が高い収益構造である。また15年3月期の売上高に対する新製品比率は14年3月期比1.0ポイント上昇して17.0%となった。ROEは0.7ポイント上昇して12.6%、自己資本比率は同6.5ポイント上昇して61.4%、配当性向は11.0%だった。

■16年3月期第3四半期累計は減収減益、太陽光発電関連の市場縮小

 2月10日発表の今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比5.8%減の122億87百万円、営業利益が同18.7%減の8億92百万円、経常利益が同20.2%減の8億51百万円、そして純利益が同19.8%減の5億49百万円だった。

 建設現場での人手不足による工期遅れも影響して建設用ファスニング製品の需要が鈍化し、太陽光発電関連の市場縮小も影響して減収減益だった。なお売上総利益率は31.9%で同0.2ポイント上昇したが、販管費比率は24.6%で同1.3ポイント上昇した。特別利益では投資有価証券売却益が減少(前期20百万円計上、今期0百万円計上)した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、ファスニング事業は売上高が同7.0%減の92億43百万円、営業利益が同13.8%減の12億01百万円だった。公共事業などの需要が減少し、太陽光発電関連の市場縮小の影響を受けて、主力の金属系・接着系あと施工アンカーの販売が低調だった。

 機能材事業は売上高が同2.2%減の30億44百万円、営業利益が同10.5%減の3億80百万円だった。電子基板関連やアルコール測定器関連は好調だったが、電動油圧工具関連の国内販売やFRPシート関連が減少した。

 なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)35億46百万円、第2四半期(7月~9月)43億80百万円、第3四半期(10月~12月)43億61百万円、営業利益は第1四半期1億57百万円、第2四半期3億83百万円、第3四半期3億52百万円だった。

■16年3月期通期も減収減益予想

 今期(16年3月期)通期連結業績予想については前回予想(11月6日に減額修正)を据え置いて、売上高が前期比0.8%減の177億円、営業利益が同4.7%減の14億40百万円、経常利益が同7.2%減の14億円、純利益が同18.3%減の9億10百万円としている。

 太陽光発電関連が市場縮小の影響で引き続き低調に推移する見込みだ。さらに建設投資の先行きに不透明感があるとしている。売上総利益率は同0.3ポイント上昇の31.9%、販管費比率は同0.5ポイント上昇の23.7%の想定としている。

 なお9月29日に、当社が加入している東京金属事業厚生年金基金において解散の方針が決議(9月18日付)されたと発表している。現時点では同基金の解散が当社業績に与える影響はないものと予想されるが、今後の同基金の清算結了までには不確定要素もあるため、当社業績に重大な影響が生じる場合には判明次第開示するとしている。

 配当予想(5月14日公表)は同3円増配の年間18円(期末一括)としている。予想配当性向は16.1%となる。利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続していくことを基本方針としている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が69.4%、営業利益が62.0%、経常利益が60.8%、純利益が60.3%である。低水準の形だが期後半の構成比が高い収益構造であり、挽回が期待される。

■中期ビジョンで売上高成長率5%以上を目指す

 新中期経営ビジョンでは「独自のファスニング(締結)システムで安全・安心を提供するモノづくり集団の追究」を掲げ、成長企業(優良企業)、ブランド力アップ、業務力アップ、チーム人財力アップを目指す方針だ。そして目標数値には売上高成長率5.0%以上、営業利益率8.0%以上、ROA8.0%以上を掲げている。

 中期成長に向けて組織変更を実施した。ファスニング事業以外を一つの事業に集約して営業体制を強化するとともに、事務作業を集約して収益改善を推進する。また一気通貫体制・フレキシブル体制で安定供給・安定品質・市場創出を促進する。

 建設現場では現場作業の省力化・機械化ニーズの高まりや非熟練作業者の増加が予想され、現場での使いやすさを高めた施工ツール、あと基礎アンカー、アンカー打込み機、紫外線硬化FRPシートといった製品の採用が一段と増加する。新製品や高付加価値製品の拡販も寄与して収益拡大が期待される。

■株主優待制度は3月末に実施

 なお12月11日に「内部統制システム構築に関する基本方針」改定、および「サンコーテクノグループ コーポレートガバナンス基本方針」制定を発表した。持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行う体制の充実・強化に継続して取り組むとしている。

 株主優待制度については15年3月期から実施している。毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してQUOカード500円分を贈呈する。

■株価は売られ過ぎ感

 株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して水準を切り下げ、2月23日には13年11月780円以来の安値水準となる790円まで調整した。ただし売られ過ぎ感を強めている。

 2月23日の終値790円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS111円81銭で算出)は7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は2.3%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1146円57銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約69億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。そして指標面の割安感も台頭している。20年東京五輪などで中期的な事業環境は良好であり、16年3月期減収減益予想の織り込みが完了して反発のタイミングだろう。

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