【アナリスト水田雅展の銘柄分析】クリーク・アンド・リバー社は東証2部に市場変更、16年2月期業績減額したが事業領域拡大戦略加速

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東2)は、クリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開し、事業領域拡大戦略を加速している。2月26日付でJASDAQから東証2部に市場変更した。戦略的な先行投資負担で16年2月期業績予想を減額修正(2月19日発表)したが、事業領域拡大戦略を加速して中期成長シナリオに変化はないだろう。株価は調整一巡感を強めている。16年2月期業績予想の減額修正を織り込んで出直り展開だろう。

■クリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 日本のクリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版などの制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業、およびプロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業を主力としている。また韓国のクリエイティブ分野、および医療・IT・法曹・会計などの分野におけるエージェンシー事業も展開し、事業領域拡大戦略を加速している。

 日本のクリエイティブ分野では、13年8月公開のテレビ朝日開局55周年記念劇場公開映画「少年H」(モスクワ映画祭特別賞受賞)の制作を担当したことが評価されて、TV番組制作受託事業が急拡大している。15年2月期の当社制作番組はレギュラーと特番を合わせて24本となった。

 また当社が制作協力した、日本人の老後の現実と希望を描いたドキュメンタリー映画「抱擁」が、平成27年度文化庁映画賞(文化記録映画部門)文化記録映画優秀賞を受賞した。

 さらに当社、白組(東京都)およびハウステンボス(長崎県)が共同制作した劇場公開用3DCGアニメ「GAMBAガンバと仲間たち」が、15年10月から全国東映系列劇場で公開された。小さなネズミ「ガンバ」を主人公とした壮大な冒険物語である。そして「GAMBAガンバと仲間たち」の公開に合わせて、当映画のキャラクターと世界観を共有したスマートフォンゲームアプリ「GAMBA RACER」の配信を開始した。

■新規分野に積極展開して事業領域拡大戦略を加速

 新規事業分野として電子書籍取次事業、および作家、オンラインクリエイター、建築、ファッションクリエイター、シェフ、プロフェッサー分野のエージェンシー事業へ展開している。そしてM&Aも積極活用している。当面は人件費などの費用が先行するが、12年開始した電子書籍取次事業については、ダウンロード数・売上高とも順調に増加して黒字が定着した。

 15年3月には中国最大の電子マンガプラットフォーム「布〓漫画」において一迅社のコミック雑誌「コミック百合姫」中国語電子版の配信を開始した。一迅社の人気コミック単行本の中国語電子版を制作して同プラットフォームで順次配信する。またサイブリッジが運営するWebデザイナーのためのギャラリーサイト「ikesai.com」内において、Web業界に特化した「キャリア・求人情報」サービスの運営を開始した。

 15年4月にはプロフェッショナルメディア(トータルブレーンが運営する人材紹介・派遣事業および広告業界特化型情報事業「広告転職.com」「クリエイティブ派遣.com」を新設分割して設立)を連結子会社化した。広告分野における人材事業を強化する。

 また子会社C&R上海と中国のエンターテインメント企業DragonPRCの共同出資で、中国市場に向けたコミック・ゲームの配信取次事業を行う合弁会社を立ち上げる。日本企業として初めてスマホ中国1位の小米に日本マンガをプリインストール配信する。

 15年5月にはエコノミックインデックスの第三者割当増資を引き受けて持分法適用関連会社化した。同社のデータ解析技術を活かし、当社グループのクライアントに対して商品やサービスの販売促進、広告効果の検証、企業イメージの動向把握と維持向上、ブランド価値の定量化などを提供する。

 15年6月にはベトナム最大のマルチチャンネルネットワーク(MCN)であるPOPSと業務提携した。海外のMCNとの提携は国内企業として初めてとなる。日越両国の企業が行うOnline動画を使用したプロモーション支援などを推進する。

 15年10月にはオンラインクリエイター分野において、YouTuberと企業のマッチング・分析を行う新ソーシャルクリエイターマッチング・分析プラットフォーム「EUREKA(エウレカ)」をリリースした。動画共有サービスYouTubeに自作動画を投稿するクリエイターと、YouTube動画によるプロモーションを行う企業とを繋ぐプラットフォームだ。

 また15年10月には、教授や準教授をはじめとする研究者に特化したエージェンシー事業の本格的始動を発表した。研究者の生涯価値の向上と企業の新しい価値創造に貢献すべく、高度な専門性を有する研究者をバックアップするとともに、日本の優れた研究を世界へと広める機会を創出する。

 なお法曹分野では、世界中の弁護士を繋ぐオンラインプラットフォームを構築中である。16年3月リリース予定としている。

■日本クリエイティブ分野は拡大基調、医療分野は期前半に利益偏重の特性

 15年2月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)60億92百万円、第2四半期(6月~8月)56億97百万円、第3四半期(9月~11月)55億42百万円、第4四半期(12月~2月)55億95百万円で、営業利益は第1四半期5億78百万円、第2四半期3億50百万円、第3四半期1億69百万円、第4四半期1億99百万円だった。

 医療分野が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重し、第3四半期と第4四半期は赤字となるため、全体として上期の構成比が高くなる収益構造だ。主力の日本のクリエイティブ分野は売上・営業利益とも四半期ベースで拡大基調である。

 15年2月期の売上総利益率は31.6%で14年2月期比0.6ポイント上昇、販管費比率は25.9%で同0.2ポイント上昇、ROEは17.0%で同3.9ポイント上昇、自己資本比率は52.6%で同5.8ポイント上昇した。また配当性向は19.9%だった。

 なお韓国のクリエイティブ分野はクリーク・アンド・リバー韓国、医療分野はメディカル・プリンシプル、IT分野はリーディング・エッジ、法曹分野はC&Rリーガル・エージェンシー、会計分野はジャスネットコミュニケーションズ、ファッション分野はインター・ベル(13年12月子会社化)、広告分野はプロフェッショナルメディア(15年4月子会社化)の各連結子会社が事業展開している。

■16年2月期第3四半期累計は費用先行で減益だが、増収基調

今期(16年2月期)第3四半期累計(3月~11月)の連結業績は、売上高が前年同期比7.2%増の185億79百万円、営業利益が同8.0%減の10億10百万円、経常利益が同12.9%減の9億72百万円、純利益が同21.2%減の4億87百万円だった。積極的な人材投資やプロフェッショナルメディア新規連結の影響などで減益だったが、主力の日本のクリエイティブ分野を中心に既存事業分野が好調に推移して増収基調だ。

  売上総利益率は32.8%で同0.6ポイント上昇した。ゲーム・Web分野を中心に自社制作強化・利益率向上を目的とした内制化の推進が寄与した。販管費比率は27.4%で同1.5ポイント上昇した。グループ全体で需要増に対応した積極的な人材投資を実施したため人件費が増加し、自社開発ゲーム「戦国修羅SOUL」の配信開始(12月7日)に向けて販促費用が増加した。また営業外費用では、期初時点では計画していなかったエコノミックインデックスの持分法適用関連会社化に伴って、持分法投資損失40百万円を計上した。特別損失では出資金評価損13百万円を計上した。

 新規領域では、電子書籍取次事業はダウンロード数・売上高とも順調に増加して黒字定着した。オンラインクリエイター事業は動画再生回数が順調に増加して黒字化メドとなった。なお新規領域である作家、建築、ファッション、シェフ、プロフェッサーの各エージェンシー事業における先行投資負担の営業利益への影響額は約1億40百万円(前年同期は約1億20百万円)でほぼ計画水準だった。

 セグメント別(連結調整前)動向を見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が同7.9%増の114億42百万円、営業利益が同8.9%減の5億69百万円だった。戦略的な人件費の増加や広告宣伝費の増加で減益だったが、売上面はTV番組・Web・ゲーム関連など各分野が増収と好調だった。

 韓国のクリエイティブ分野は売上高が同6.3%増の26億04百万円、営業利益が同12.0%減の15百万円だった。累計ベースでは減益だが、派遣から請負にシフトしている効果で第3四半期(9月~11月)は増益となったようだ。医療分野は売上高が同6.2%増の24億10百万円、営業利益が同10.6%増の4億22百万円だった。全国各地での慢性的な医師不足や地域偏在を背景として、医師紹介事業が好調に推移している。

 その他事業は売上高が同5.3%増の21億41百万円、営業利益が同98.2%減の1百万円だった。IT分野における大型案件一巡、プロフェッショナルメディアの新規連結が影響して減益だった。なお第1四半期にシェフ・エージェンシー事業、第2四半期にプロフェッサー・エージェンシー事業を立ち上げた。

 なお四半期別業績の推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)63億69百万円、第2四半期(6月~8月)65億03百万円、第3四半期(9月~11月)57億07百万円、営業利益は第1四半期4億58百万円、第2四半期4億49百万円、第3四半期1億03百万円だった。

■16年2月期通期予想を減額修正、増配予想は据え置き

 今期(16年2月期)通期の連結業績予想について、2月19日に減額修正を発表した。前回予想(4月8日公表)に対して売上高を4億円、営業利益を2億85百万円、経常利益を3億50百万円、純利益を1億60百万円、それぞれ減額した。

 修正後の通期連結業績予想は売上高が前期比7.3%増の246億円、営業利益が同6.2%減の12億15百万円、経常利益が同12.9%減の11億50百万円、純利益が同14.0%減の6億40百万円とした。増益予想から一転して減益予想となった。配当予想は前回予想(4月8日公表)を据え置いて前期比1円増配の年間8円(期末一括)としている。予想配当性向は26.5%となる。

 売上面では日本のクリエイティブ分野を中心に既存事業分野が好調に推移するが、利益面では建築・ファッション・シェフ・プロデューサーなど新規エージェンシー事業の立ち上げ費用、既存事業分野における需要増加に伴う人員増強、当社オリジナルゲーム「戦国修羅SOUL」リリースに伴う広告宣伝・販売促進費の投下などが影響して販管費が期初計画を上回るようだ。

 また15年4月に連結子会社化したプロフェッショナルメディアは広告分野に特化した求人メディア全面リニューアルに伴う費用が先行し、15年5月に持分法適用関連会社化したエコノミックインデックスはサービス開発に伴う先行投資段階にあるため持分法投資損失を計上することも影響する。

 ゲーム分野では、15年12月7日配信開始した自社開発3DリアルタイムバトルRPG武将英雄伝「戦国修羅SOUL」の合計ダウンロード数は、2月22日時点で80万ダウンロードを突破している。第4四半期(12月~2月)に売上が本格化する。

 来期(17年2月期)については戦略的投資の効果や新規事業領域の収益化進展も期待される。事業領域拡大戦略を加速して中期成長シナリオに変化はないだろう。

■中期成長戦略で18年2月期営業利益30億円をイメージ

 中期成長戦略では既存事業で年率10~15%の成長を見込み、新規事業分野の積み上げや収益化も寄与して、18年2月期売上高300億円、営業利益30億円をイメージしている。

 ロボット、バイオ、ファイナンシャルなどの分野への進出も想定しているようだ。中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、地合い悪化の影響で2月12日の昨年来安値350円まで下押したが、その後は切り返して400円台を回復している。調整が一巡したようだ。なお2月19日に発表した東証2部への市場変更、および16年2月期業績予想の減額修正という好悪2つの材料に対しては、22日に427円まで上伸する場面があったが、その後はやや反応薄の形だ。

 月26日の終値409円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS30円18銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は2.0%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS229円00銭で算出)は1.8倍近辺である。なお時価総額は約92億円である。

 週足チャートで見ると14年5月安値348円を割り込まずに反発し、350円近辺で下値支持線を形成したようだ。16年2月期業績予想の減額修正を織り込んで出直り展開だろう。

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