【アナリスト水田雅展の銘柄分析】松田産業は16年3月期業績予想を減額したが、連続増配予想は据え置き

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 松田産業<7456>(東1)は貴金属リサイクル事業を主力として農林水産品販売事業も展開している。16年3月期第3四半期累計が計画を下回り、通期業績予想を減額修正した。これを嫌気して株価は急落したが売り一巡感を強めている。16年3月期連続増配予想は据え置いた。0.6倍近辺の低PBRに割安感があり、積極還元姿勢も評価して反発展開だろう。

■貴金属リサイクルや農林水産品販売を展開

 貴金属リサイクルや産業廃棄物処理の貴金属関連事業、および農林水産品を扱う食品関連事業を展開している。

 貴金属リサイクルでは、半導体・電子材料部材・化成品などの貴金属製品をエレクトロニクス業界へ販売するとともに、半導体や電子部品を製造する過程で規格外となった部品(スペックアウト品)などの貴金属含有スクラップを国内外のメーカーから回収・処理・製錬することで、貴金属(金・プラチナ・パラジウムなど)をリサイクルする。

 産業廃棄物処理では、写真の感光材料からの銀の回収、廃酸や廃アルカリの無害化中間処理など、産業廃棄物の回収・処理を行っている。無害化処理技術に強みを持ち、全国47都道府県での収集運搬業許可を得ている。

 貴金属関連事業では「東アジアNO.1リファイナー」を目指し、国内外の拠点拡充、貴金属原料の確保と化成品などの製品販売強化、および製品・技術開発強化を推進している。海外は中国、台湾、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムに展開し、ベトナムでは貴金属製錬工場の建設を進めている。

 食品関連事業では、すりみ・エビ・貝類などの水産品、鶏卵・鶏肉・ポーク・ビーフなどの畜産品、乾燥野菜・冷凍野菜などの農産品を取り扱っている。取扱商品の豊富さとグローバルな調達ネットワークが強みだ。海外は中国、タイに拠点展開している。

 なお1月29日にガルフ食品の全株式を取得(16年2月8日)すると発表した。同社は水産品の専門商社として長年の輸入実績とノウハウがあり、当社の水産品販売とのシナジー効果が期待できるとしている。

■エレクトロニクス業界の生産動向や貴金属・食品市況が影響する収益構造

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)429億40百万円、第2四半期(7月~9月)446億83百万円、第3四半期(10月~12月)469億16百万円、第4四半期(1月~3月)449億84百万円、営業利益は第1四半期9億31百万円、第2四半期10億79百万円、第3四半期16億86百万円、第4四半期17億14百万円だった。

 半導体・電子部品などエレクトロニクス業界の生産動向や、貴金属および食品市況の影響を受ける収益構造である。15年3月期の売上総利益率は9.4%で14年3月期比0.1ポイント低下、販管費比率は6.4%で同0.4ポイント低下、ROEは6.8%で同0.1ポイント低下、自己資本比率は69.7%で同1.8ポイント低下した。配当性向は19.9%だった。

■16年3月期第3四半期累計は減収減益

 2月10日発表した今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比6.3%減の1261億35百万円となり、営業利益が同25.4%減の27億56百万円、経常利益が同17.8%減の32億96百万円、純利益が同19.4%減の22億39百万円だった。

 エレクトロニクス産業の低迷や貴金属相場の下落で売上総利益が減少した。売上総利益率は9.4%で同0.3ポイント上昇、販管費比率は7.2%で同0.9ポイント上昇した。営業外収益では持分法投資利益が増加(前期3億13百万円計上、今期4億80百万円計上)した。営業外費用では為替差損が縮小(前期43百万円計上、今期0百万円計上)した。

 セグメント別に見ると、貴金属関連事業は売上高が同12.7%減の808億64百万円、営業利益が同32.1%減の18億96百万円だった。貴金属リサイクルおよび産業廃棄物処理の取扱数量が減少し、貴金属製品および電子材料等の販売数量も減少した。金を除いた価格下落も影響して減収減益だった。

 食品関連事業は売上高が同7.9%増の453億23百万円、営業利益が同4.6%減の8億59百万円だった。水産品の販売数量や価格上昇で増収だったが、営業減益だった。

 なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)450億14百万円、第2四半期(7月~9月)403億52百万円、第3四半期(10月~12月)407億69百万円、営業利益は第1四半期9億68百万円、第2四半期10億79百万円、第3四半期7億09百万円だった。

■16年3月期業績予想を減額修正だが、連続増配予想は据え置き

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想は2月10日に減額修正した。前回予想(11月13日に減額修正)に対して売上高を200億円、営業利益を16億円、経常利益を15億円、純利益を9億円減額した。

 修正後の通期連結業績予想は、売上高が前期比9.2%減の1630億円、営業利益が同44.6%減の30億円、経常利益が同38.3%減の36億円、純利益が同25.2%減の25億円とした。

 第3四半期累計業績が計画を下回り、貴金属関連事業が対象とするエレクトロニクス産業等の低迷、貴金属相場の下落基調などを考慮した。なお修正後の通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が77.4%、営業利益が91.9%、経常利益が91.6%、純利益が89.6%である。

 配当予想については前回予想(5月11日公表)を据え置き、普通配当26円に株式公開20周年記念配当2円を加えて、15年3月期比3円増配の年間28円(第2四半期末14円、期末14円)としている。連続増配で予想配当性向は29.7%となる。

■自己株式取得も実施して積極還元姿勢

 11月13日に発表した自己株式取得(取得株式総数の上限7万株、取得価額総額の上限1億円、取得期間15年11月16日~16年1月15日)については、12月9日時点で累計取得株式総数6万6400株、取得価額総額9992万3300円となって終了した。

■株価は16年3月期業績予想の減額修正を嫌気したが売り一巡感

 株価の動きを見ると、16年3月期業績予想の減額修正を嫌気して急落した。2月12日に1168円、2月24日には1141円まで下押した。その後は1200円台に戻して売り一巡感を強めている。

 2月26日の終値1210円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS94円32銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間28円で算出)は2.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1923円86銭で算出)は0.6倍近辺である。なお時価総額は約350億円である。

 週足チャートで見ると直近安値圏の下ヒゲで売り一巡感を強めている。0.6倍近辺の低PBRに割安感があり、16年3月期連続増配や自己株式取得といった積極還元姿勢も評価して反発展開だろう。

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