【アナリスト水田雅展の銘柄診断】フライトHDは16年3月期減額修正だが、次世代決済装置新製品の収益寄与期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 フライトホールディングス<3753>(東2)はシステム開発や電子決済ソリューションなどを展開している。16年3月期通期業績予想を減額修正したが、次世代型マルチ決済装置の新製品「incredist premium」の販売開始を発表した。17年3月期収益への寄与が期待される。株価は調整が一巡して切り返しの動きを強めている。出直り展開だろう。

■システム開発や電子決済ソリューションなどを展開

 フライトシステムコンサルティングが13年10月、持株会社に移行してフライトホールディングスに商号変更した。システム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、電子決済ソリューションなどのサービス事業、B2B向けECサイト構築パッケージなどのECソリューション事業を展開している。

 電子決済ソリューションの分野では、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末「インクレディスト」およびスマートデバイス決済専用アプリケーション「ペイメント・マスター」の展開を強化している。

 スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マスター」は、10年9月に提供開始した国内初のBtoB向け決済ソリューションで、高級ホテル、レストラン、観光タクシー、旅行代理店などに導入されている。

 14年10月には、ECサイト構築パッケージソフト「イーシー・ライダー」のDRAGON TECHNOLOGYを子会社化(14年11月イーシー・ライダーに商号変更)して、ECソリューション事業も強化している。

■アライアンスも活用して事業展開

 14年9月には、スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マスター」に関して、フォウカスとスマートデバイスを用いたモバイルPOS決済システムで協業した。

 15年4月にはスマートデバイスを活用したクレジットカード・銀聯カードなど複数の決済処理が可能な新サービス「ペイメント・マスター for J-Mups(ジェイマップス)」を開発し、加盟店向けに提供開始した。接続先決済センターを三菱UFJニコスとJR東日本メカトロニクスが共同で運営する「J-Mups(ジェイマップス)」として、顧客ニーズに合わせたさまざまな拡張性の高い決済を実現する。

 15年11月には「ペイメント・マスター for J-Mups」のバージョンアップを行い、訪日外国人向けの外貨建てカード決済サービスに対応した。

 15年9月には、子会社イーシー・ライダーがラクーン<3031>と業務提携して、イーシー・ライダーのBtoB向けECサイト構築ASP「EC-Rider B2B」と、ラクーンのBtoB掛売り・請求書決済代行サービス「Paid」との連携を開始した。

 15年12月には導入事例として、子会社イーシー・ライダーのBtoB向けECサイト構築ASP「EC-Rider B2B」が、ニトムズ(愛知県名古屋市)の「ニトムズオンラインストア」の基盤システムに採用されたことを紹介している。

 15年12月には、子会社フライトシステムコンサルティングが、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」の法人モデル「Pepper for Biz」向けロボアプリの開発者などを総合的に支援する「Pepperパートナープログラム」においてロボアプリパートナーとして認定された。そして1月19日には事例紹介として「Pepper」によるフライトグループ受付を公開している。

■海外展開も加速

 14年12月には海外での「ペイメント・マスター」および「インクレディスト」の拡販に向けて米国子会社FLIGHT SYSTEM USAを設立した。今後のICチップ付きクレジットカード決済(EMV決済)および、Apple PayなどのNFC決済においてグローバル展開を推進する。

 また15年12月にはアジアを中心とした海外での電子決済ソリューション事業の展開に向けて台湾に100%子会社(FLIGHT台湾)を設立した。

■決済端末の新製品「incredist premium」を発表

 15年10月には、子会社フライトシステムコンサルティングが米国子会社FLIGHT SYSTEM USAを通じて、北米市場向けタブレット連動型クレジットカード決済装置incredistの新製品「incredist premium」を発表した。磁気クレジットカード、接触型ICクレジットカード(EMV)、非接触型ICクレジットカード(コンタクトレスEMV)、日本独自の電子マネーに対応した決済端末である。

 そして米国子会社FLIGHT SYSTEM USAと米国の大手決済センター事業者PIVOTALとの業務提携を発表した。PIVOTALのGlobalOneサービスと協業して新製品「incredist premium」の北米での販売を強化する。

 そして2月9日には、新製品「incredist premium」の日本国内での販売を16年3月14日から開始すると発表した。同様に米国子会社FLIGHT SYSTEM USAを通じて米国での出荷も開始する。

■大型案件も影響する収益構造

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)3億59百万円、第2四半期(7月~9月)3億円、第3四半期(10月~12月)2億38百万円、第4四半期(1月~3月)6億95百万円、営業利益は第1四半期7百万円の赤字、第2四半期58百万円の赤字、第3四半期77百万円の赤字、第4四半期83百万円の黒字だった。

 サービス事業における大型案件の売上計上有無も影響する収益構造で、15年3月期は新規大型案件の先送りが影響した。ただし第4四半期に黒字化して営業損益は改善基調だ。

■16年3月期第3四半期累計は大型案件一巡で減収、赤字拡大

 2月9日発表した今期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)連結業績は、売上高が前年同期比31.1%減の6億17百万円、営業利益が3億55百万円の赤字(前年同期は1億42百万円の赤字)、経常利益が3億82百万円の赤字(同1億34百万円の赤字)、純利益が4億13百万円の赤字(同1億34百万円の赤字)だった。

 サービス事業における大型案件の一巡、マルチ電子決済端末incredistの次世代機「incredist premium」の開発・販売開始遅れなどで大幅減収となり、ECソリューション事業の先行費用や「incredist premium」開発費用も影響して利益は赤字が拡大した。純利益はECソリューション事業に係る減損損失18百万円計上、ソフトウェア評価損10百万円計上も影響した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、C&S事業は売上高が前年同期比3.4%減の4億12百万円で営業利益が10百万円の赤字(前年同期は0百万円)、サービス事業は売上高が同57.4%減の1億93百万円で営業利益が1億19百万円の赤字(同22百万円の黒字)、ECソリューション事業は売上高が同3.1倍の21百万円で営業利益が43百万円の赤字(同8百万円の赤字)だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)1億83百万円、第2四半期(7月~9月)2億61百万円、第3四半期(10月~12月)1億73百万円、営業利益は第1四半期1億43百万円の赤字、第2四半期79百万円の赤字、第3四半期1億33百万円だった。

■16年3月期通期予想を減額修正

 今期(16年3月期)通期の連結業績予想については2月9日に減額修正を発表した。前回予想(5月19日公表)に対して売上高を1億60百万円減額、営業利益を2億円減額、経常利益を2億円増額、純利益を2億25百万円減額した。

 修正後の通期連結業績予想は、売上高が前期比21.8%増の19億40百万円、営業利益が1億40百万円の赤字(前期は59百万円の赤字)、経常利益が1億70百万円の赤字(同62百万円の赤字)、純利益が2億円の赤字(同84百万円の赤字)としている。配当は無配継続としている。

 C&S事業において引き合いに十分対応する人員体制を確保できなかったこと、サービス事業においてマルチ電子決済端末incredistの次世代機「incredist premium」の開発・販売開始が遅れたこと、ECソリューション事業の立ち上がりが遅れていることなどを要因として減額修正した。

 ただし「incredist premium」に関して3月に大型案件の納品を控えており、第4四半期(1月~3月)に約13億円の売上を計上する予定としている。また「incredist premium」販売開始によって、来期(17年3月期)収益への寄与も期待される。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して2月12日の昨年来安値236円まで下押したが、その後は切り返しの動きを強めている。25日には329円まで上伸する場面があった。調整が一巡したようだ。

 2月26日の終値は313円で、時価総額は約30億円である。日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。16年3月期業績予想を減額修正したが、17年3月期はマルチ電子決済端末incredistの次世代機「incredist premium」の収益寄与が期待される。週足チャートで13週移動平均線を突破すれば出直りの動きが本格化しそうだ。

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