【小倉正男の経済羅針盤】トランプ氏が大統領になったら世界経済は・・・

■ローマ法王が批判しても勢いは止まらず

 ドナルド・トランプ氏は、倒産・破産は数知れずという経営者である。リーマンショックの不動産不況時ももちろん破産している。
 それでもいまや共和党の大統領候補になろうという勢いである。

 アメリカでは、倒産・破産はさほど問題にされない模様だ。それは凄いことだが、トランプ氏の場合、1回や2回のことではないようだから、あまりにも凄すぎる。

 アメリカのメディアは、トランプ氏には批判的だ。「共和党のリーダーはトランプを大統領候補から降ろせ」――そんな露骨な論調を打ち出している。しかし、選挙で決めることなので、勝手に降ろしたり引っ込めたりはできるわけもない。

 ローマ法王まで、「壁をつくるのはキリスト教徒ではない」とトランプ氏を批判した。異例の批判である。しかし、それでトランプ氏の支持が低下したわけではない。むしろ、勢いを増している。

■「イラク戦争」の後遺症・反動を背負って支持を増やす

 トランプ氏が言っていることは内向きなことだ。メキシコ国境に「万里の長城」を築いて、メキシコからの移民を許さない。メキシコからの移民は「麻薬密売人」や「レイプ犯」だから、万里の長城で足止めするというのである。

 トランプ氏は、万里の長城を建築する費用はメキシコが負担しろ、と主張している。メキシコは、トランプ氏は大金持ちなのだから、自分で負担しろ、と――。

 「イラク戦争」――アメリカが過剰に世界に介入したその後遺症が癒されていない。アメリカは、「イラク戦争」に3兆ドルの戦費を費やした、といわれている。ひどく贅沢に税金を食ったわけである。膨大な財政赤字が止まらない。

 トランプ氏は、その後遺症や反動を背負って発言している。アメリカは自国のことだけを考えていればよい――。日米安保も、アメリカを守らないのに日本だけを守るのはおかしい。日本を守ってやっているのだから、おカネをもっと払わせろ。
経済においてもTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)には反対している。保護主義的な考えを基調としている。一国だけで繁栄できるわけではないというのに。

■大統領になったら金利を下げるのか上げるのか

 トランプ氏は、本来は「イラク戦争」を犯しかねないものを感じるが、皮肉にも「イラク戦争」の後遺症や反動から支持を受けている。過激であるのは間違いないが、アメリカ一国が身勝手に繁栄したいという気分に満ちた過激さにみえる。

 トランプ氏は、大統領になったら、どのような経済政策を採るのか――。例えば、金利は下げるのか、上げるのか。

 不動産王だから、金利は下げるのではないか。大統領なのにまたまた破産をするわけにもいかないから・・・。いや、単純な推測は控えなければならない。
 しかし、どちらにせよ、世界経済全体よりはアメリカ一国に身もふたもなく重心を置くのは間違いない。

 仮にトランプ氏にアメリカを任せれば、世界経済が長期のスランプになりかねないのではないか。中国の巨大バブル崩壊が避けられないいま世界はトランプ氏という「不確実性」まで抱えたくないものだが・・・。

(経済ジャーナリスト 『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社編集局・金融証券部長、企業情報部長,名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事など歴任して現職)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■レジレス無人店舗やスマート案内など、デジタル施策を集約した初の次世代店  ホームセンターのカイン…
  2. ■読書感想文から見えるヒット本動向、新作首位は『イン・ザ・メガチャーチ』  note<5243>(…
  3. ■耐衝撃性と高平坦性を備えた次世代AR材料  三井化学<4183>(東証プライム)は12月10日、…
2026年1月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

ピックアップ記事

  1. ■上場来高値更新の金先物、産金・再資源化・再販株に資金集結  当コラムでは昨年来、何度も金関連株を…
  2. ■地政学リスクの影が迫る市場、ヘッジ先は金関連株にあり  しばしばニュースで報じられる高齢ドライバ…
  3. ■金融政策転換が映す相場の地殻変動、投資視点は次の段階へ  長期にわたり株式市場を押し上げてきた金…
  4. ■為替が握る業績相場の行方、円安継続が選別相場を加速  株式市場が金融環境主導の相場から業績重視の…
  5.  再生可能エネルギーの次を見据えた次世代エネルギー分野では、実用化への距離が縮まりつつある核融合発電…
  6. ■AI圏外で存在感を増すディープ・テック、次世代エネルギー関連株に再評価余地  ハイテク株市場では…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る