【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ASIANSTARは昨年来高値更新の展開、16年12月期増収増益予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ASIANSTAR(エイシアンスター)<8946>(JQS)(15年4月、陽光都市開発から商号変更)は不動産関連事業を展開している。財務基盤が改善して中国でのワンルーム賃貸事業や国内でのリゾート開発事業を推進する。15年12月期は大型物件の販売がなく減収減益だったが、16年12月期は増収増益予想である。株価は300円台に乗せて昨年来高値更新の展開だ。財務基盤改善や中期成長に向けた積極投資を評価する流れに変化はなく、13年4月高値372円を目指す展開だろう。

■国内と中国で不動産事業を展開

 15年4月1日付で、陽光都市開発からASIANSTAR(エイシアンスター)に商号変更した。

 投資用マンション「グリフィンシリーズ」の企画・販売事業を一旦縮小し、国内の不動産管理・賃貸・仲介事業のストック型フィービジネスへ事業構造を転換した。そして13年8月にアパマンショップホールディングス<8889>の子会社アパマンショップネットワークとFC加盟契約締結、13年10月にストライダーズ<9816>と資本業務提携した。

 その後、11年12月の上海徳威グループとの資本提携効果などで財務基盤改善が進展し、さらに国内不動産管理・賃貸・仲介事業の安定的な収益体系が構築できたとして、14年2月に中国における不動産関連事業(サービスアパートメント運営管理事業、ワンルームマンション賃貸事業)へ進出した。

 さらに15年2月には、一層の事業規模拡大を図ることを経営課題として、一旦縮小した国内不動産販売事業をあらためて拡大する方針を打ち出し、新規事業としてリゾート開発事業を開始すると発表した。

■中国でワンルーム賃貸事業を推進

 中国における不動産関連事業に関しては、14年2月に香港柏雅および子会社でサービスアパートメント運営・管理コンサルティングを展開する柏雅酒店管理(上海)などベルグラビアグループ3社を連結子会社化した。このうち上海柏雅投資管理については14年6月に売却した。また14年7月には香港柏雅の子会社として陽光智寓(香港)を設立した。

 14年11月には15年後半開業予定の世界有数の大型テーマパークから約5km圏内に位置する上海市周浦エリアにおいて、周浦印象春城サービスアパートメント1棟(220戸)の管理受託契約を締結した。14年12月には陽光智寓(香港)が中国上海市で新規事業の実務を行うため上海陽光智寓を設立した。

 15年7月には、連結子会社の柏雅酒店管理と東急不動産上海が中国に合弁会社の上海雅東企業発展有限公司を設立(15年8月、柏雅酒店管理の出資比率55%)すると発表した。柏雅酒店管理が持つ数多くのサービスアパートメント運営管理実績、中国国内の物件情報開発力および許認可取得交渉力と、東急不動産上海が持つ日本人向けサービスアパートメント運営ノウハウ、東急不動産グループの企画・設計力ならびに信用力・知名度を活用し、両社の強みを融合したサービスアパートメント運営管理事業を展開する。

 15年9月には投資用マンション「グリフィンシリーズ」を視察するため、中国・上海のメディア大手である上海文化広播影視集団有限公司傘下の上海東方明珠房地産有限公司の総経理、および開発担当マネージャー等計5名が当社を訪問した。上海東方明珠房地産有限公司は上海市中心部において住宅、ホテル、オフィスビル等の開発を行っており、今後は小規模住宅の開発にも乗り出す予定のため、今後も継続して協議を行っていくとしている。

 15年11月には中国ワンルーム賃貸事業の進捗状況をリリースした。中国蘇州市人民路所在の中古建物を賃借し、マンション用に内装工事を施して賃貸するワンルーム賃貸事業当該物件の計画(地上4階・地下2階のうち地上2~4階部分を賃貸予定、賃貸部屋数80室予定、投資金額は約56百万円予定)を策定した。そして16年1月の賃貸募集開始に向けて当該物件の内装工事を進めている。

 また中国上海市においてもワンルームマンションの賃貸権を購入し、賃貸事業を開始することになった。当該案件は当社の資本提携先である上海徳威企業発展有限公司の連結子会社である上海布科投資管理有限公司からワンルームマンションの賃貸事業を譲り受ける。

■国内リゾート開発事業を開始方針

 一層の事業規模拡大を図ることを経営課題として、一旦縮小した国内不動産販売事業をあらためて拡大する方針を打ち出し、15年2月には新規事業としてリゾート開発事業を開始すると発表した。

 日本国内で約70ヶ所合計約46万坪の事業用地を取得し、ログハウスを開発・建設して日本国内および海外セカンドハウス・移住者向け住宅として販売する事業、概ね10年を目途に別荘地として区画分譲する事業、開発や区画分譲を開始するまでの期間を固定資産として賃貸する事業を計画している。事業運営は連結子会社の合同会社TYインベスターズ(15年2月設立)が行う。

■15年12月期は大型の竣工・販売物件がなく大幅減益

 2月16日発表した前期(15年12月期)連結業績は、売上高が前々期(14年12月期)比45.0%減の11億88百万円、営業利益が同61.2%減の58百万円、経常利益が同68.7%減の54百万円、純利益が同69.5%減の41百万円だった。

 不動産管理・賃貸・仲介事業は堅調に推移したが、不動産販売事業において大型の竣工・販売物件がなく大幅減収減益だった。売上総利益率は37.2%で同14.6ポイント上昇、販管費比率は32.3%で同16.6ポイント上昇した。

 営業外収益では為替差益が減少(前々期は19百万円計上、前期は0百万円計上)し、還付消費税等が減少(前々期は27百万円計上、前期は0百万円計上)した。営業外費用では支払利息が減少(前々期は18百万円計上、前期は10百万円計上)し、前々期計上した新株予約権発行費9百万円が一巡した。また特別損失では前々期計上した減損損失16百万円、関係会社株式評価損13百万円が一巡した。

 なお配当は無配継続とした。ROEは3.1%で同21.1ポイント低下、自己資本比率は60.0%で同12.3ポイント上昇した。

 セグメント別に見ると、不動産販売事業は売上高が同84.3%減の1億70百万円、営業利益(連結調整前)が同81.8%減の19百万円、不動産管理事業は売上高が同0.7%減の5億25百万円、営業利益が同2.5%増の2億15百万円、不動産賃貸事業は売上高が同9.8%減の3億31百万円、営業利益が同16.4%減の38百万円、不動産仲介事業の売上高が同9.9%増の1億62百万円、営業利益が同3.4倍の40百万円だった。不動産ファンド事業は休止状態となって売上高、営業利益とも0百万円、その他事業は売上高がなく、営業利益が0百万円の赤字だった。

 なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)2億77百万円、第2四半期(4月~6月)3億26百万円、第3四半期(7月~9月)2億37百万円、第4四半期(10月~12月)3億48百万円、営業利益は第1四半期22百万円、第2四半期15百万円、第3四半期7百万円の赤字、第4四半期26百万円だった。

■16年12月期は増収増益予想、中期的に収益改善基調

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想(2月16日公表)は、売上高が前期(15年12月期)比26.2%増の15億円、営業利益が同11.0%増の65百万円、経常利益が同9.7%増の60百万円、純利益が同20.7%増の50百万円としている。配当は無配を継続する。

 不動産販売事業では、全国リゾート地における土地の販売および首都圏の戸建開発によって収益の積み上げを目指す。安定した収益が見込める不動産管理事業では、日本国内および中国においてサービスの向上や管理戸数の増加による収益拡大を図る。不動産賃貸事業では、現状の稼働率維持によって収益を確保する。不動産仲介事業では、国内顧客および海外投資家に向けた物件斡旋等を積極的に展開して収益拡大を図るとしている。

 中期的には不動産管理事業の安定収益に加えて、中国ワンルーム賃貸事業や国内新規リゾート開発事業も寄与して収益改善基調が期待される。

■財務基盤改善も進展

 新株予約権行使、第三者割当増資、利益積み上げなどで財務基盤改善も進展している。自己資本比率は13年12月期末9.0%、14年12月期末46.7%から、15年12月期末に60.0%に改善した。また1株当たり純資産(BPS)は13年12月期末19円92銭、14年12月期末72円12銭から、15年12月期末104円45銭に改善した。

 なお13年10月21日に第三者割当により発行した第1回新株予約権について、15年10月7日に行った行使指定に基づき、本新株予約権を所有する徳威国際発展有限公司が15年10月16日付で本新株予約権の権利を行使した。行使個数10個(交付株式数50万株)で、本新株予約権の未行使個数は0個となった。

 また14年7月14日に第三者割当により発行した第3回新株予約権について、本新株予約権を所有するストライダーズが2月1日付で本新株予約権1個(10万株)を権利行使、2月8日付で本新株予約権を所有するHong Kong Wealthy Future Investmentが本新株予約権9個(90万株)を権利行使して、本新株予約権の権利行使が全て完了した。

 なお2月16日に、繰越利益剰余金の欠損額を解消して財務体質の健全化を図るため、資本準備金および利益準備金の額の減少ならびに剰余金の処分を発表した。純資産の部における科目間の振替処理であり、当社の純資産額に変動はない。16年3月25日開催予定の第37期定時株主総会に付議する。

 また2月16日に監査等委員会設置会社への移行を発表した。16年3月25日開催予定の第37期定時株主総会に付議する。

■株価は昨年来高値更新の展開

 株価の動きを見ると、地合い悪化の影響は限定的で昨年来高値更新の展開だ。15年2月の265円、そして14年11月の291円を突破して2月24日には316円まで上伸した。

 3月1日の終値299円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円78銭で算出)は108倍近辺、実績連結PBR(15年12月期の連結BPS104円45銭で算出)は2.9倍近辺である。なお時価総額は約51億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から急反発して高値を更新した。強基調を確認した形だ。財務基盤改善や中期成長に向けた積極投資を評価する流れに変化はなく、13年4月高値372円を目指す展開だろう。

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