【アナリスト水田雅展の銘柄分析】セーラー万年筆の16年12月期は黒字化予想

セーラー万年筆 7992

 セーラー万年筆<7992>(東2)は万年筆の老舗でロボット機器事業も展開している。得意分野や競争力を持った分野に経営資源を集中することで収益改善を目指している。15年12月期は赤字が残ったが、16年12月期は黒字化予想である。株価は2月の昨年来安値圏から徐々に下値を切り上げている。調整が一巡して出直り展開だろう。

■文具事業やロボット機器事業を展開

 文具事業(万年筆、ボールペン、電子文具、景品払出機、ガラスCD、窓ガラス用断熱塗料など)、およびロボット機器事業(プラスチック射出成形品自動取出装置・自動組立装置など)を展開している。

 なお連結子会社だった写楽精密機械(上海)については清算手続きに入り、既に事業を取りやめている。中国市場における当社ロボット機器の販売・保守サービスは現地代理店に委託して代行・継続する。

■文具事業はブランド力の高さが強み

 文具事業はブランド力の高い万年筆を主力として、中期成長に向けて電子文具への事業展開も加速している。また熱を逃がす“冷めやすい塗料”の屋根・壁用太陽光反射・遮熱塗料「アドグリーンコート」の拡販も強化している。

 15年6月には、15年4月発売の新しい超微粒子顔料ボトルインク「STORiA(ストーリア)」が「第24回日本文具大賞2015」デザイン部門・優秀賞に選出された。

 15年9月には「有田焼創業400年記念万年筆」の受注生産の受付を開始した。07年に有田焼窯元の「香蘭社」「源右衛門窯」と当社万年筆のコラボレーションを実現している。そして16年の有田焼創業400年を記念して新たに合計16種類の有田焼万年筆を受注生産する。

■ロボット機器事業はプラスチック射出成形用自動取出ロボットに強み

 ロボット機器事業は1969年に開発に着手した歴史を持ち、09年にはプラスチック射出成形品用自動取出ロボットで世界初の無線ハンディコントローラ搭載RZ-Σシリーズを開発した。

 15年7月には高速・高精度取出機RZ-ΣⅢシリーズが、日刊工業新聞社主催第45回機械工業デザイン賞において日本ロボット工業会賞を受賞した。

■15年12月期は計画を下回ったが赤字縮小

 前期(15年12月期)の連結業績は、売上高が前々期比0.9%減の61億17百万円、営業利益が47百万円の赤字(前々期は91百万円の赤字)、経常利益が82百万円の赤字(同2億38百万円の赤字)、そして純利益が1億51百万円の赤字(同2億09百万円の赤字)だった。配当予想は無配継続とした。

 文具事業の業績回復が計画どおり進まず、売上高、利益とも計画を下回り減収、赤字だった。ただし全体としては、前々期(14年12月期)との比較で赤字が縮小した。売上総利益率は27.2%で同1.0ポイント上昇、販管費比率は28.0%で同0.3ポイント上昇した。

 営業外収益では為替差益が減少(前々期は13百万円計上、前期は7百万円計上)したが、持分法投資利益が増加(前々期は9百万円計上、前期は17百万円計上)した。営業外費用では支払手数料が増加(前々期は9百万円計上、前期は21百万円計上)したが、前々期計上の株式交付費用1億08百万円が一巡した。

 特別利益では投資有価証券売却益が減少(前々期は93百万円計上、前期は5百万円計上)したが、固定資産売却益40百万円を計上した。特別損失では前々期計上の事業整理損29百万円および投資有価証券評価損20百万円が一巡したが、減損損失86百万円を計上した。

 セグメント別に見ると、文具事業は売上高が同1.1%減の41億75百万円、営業利益が87百万円の赤字(前々期は30百万円の赤字)だった。万年筆や複合筆記具の中高級品は順調だったが、法人ギフト市場など低価格品の回復が遅れている。ロボット機器事業は売上高が同0.4%減の19億41百万円、営業利益が40百万円の黒字(前々期は60百万円の赤字)だった。主力の射出成形用ロボットを中心にほぼ計画どおりの売上を確保した。利益面では競合による製品価格低下や材料費上昇で利益率が低下したが、中国子会社の撤退による売上原価率改善などで黒字化した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)16億07百万円、第2四半期(4月~6月)14億78百万円、第3四半期(7月~9月)14億07百万円、第4四半期(10月~12月)16億25百万円で、営業利益は第1四半期29百万円、第2四半期12百万円、第3四半期15百万円の赤字、第4四半期73百万円の赤字だった。

■16年12月期は黒字化予想

 今期(16年12月期)連結業績予想(2月15日公表)は、売上高が前期(15年12月期)比1.0%増の61億80百万円、営業利益が80百万円の黒字(前期は47百万円の赤字)、経常利益が60百万円の黒字(前期は82百万円の赤字)、純利益は20百万円の黒字(前期は1億51百万円の赤字)としている。配当は無配を継続する。

 当社の得意分野や競争力を持った分野に経営資源を集中することで売上の向上を目指し、原価低減プロジェクトへの取り組みや、強みを持つ製品の積極的な市場投入で収益の向上を目指すとしている。文具事業では、強みを持つ中高級クラスの万年筆・複合筆記具を中心とした製品群に、製品開発および販売を集中する。また有望な販売ルートへの取り組みを集中的に行う。ロボット機器事業では、好調な米国、中国、東南アジア市場への納入ルートを足掛かりに積極展開して海外売上の15%アップを目指す。主力の射出成形取出機については汎用機種である「RZ-A」シリーズのコストダウンによって販売増を図る。

■中期計画で文具の新製品開発やロボット機器の拡販を推進

 14年12月期実績が計画を下回ったため、中期経営計画(14年12月期~16年12月期)の最終目標達成年度を1年延長するととともに、新たな数値目標を17年12月期売上高70億70百万円、営業利益2億円、経常利益1億80百万円、純利益1億35百万円、売上高経常利益率2.5%以上、有利子負債11億円以下とした。

 基本戦略としては、文具事業ではターゲットを絞った特徴ある製品の開発、新規販売チャネルの開拓、海外市場の再構築、音声ペンや水処理機器など新規事業の推進、ロボット機器事業では射出成型機用取出ロボットの拡販、海外市場への取り組み強化を推進する方針だ。

 なお15年12月期を含めて数期連続して当期純損失を計上しているため、継続企業の前提に疑義の注記が付されている。

■株価は下値切り上げて調整一巡感

 株価の動きを見ると、2月19日の昨年来安値29円まで調整したが、その後は概ね30円台で推移して徐々に下値を切り上げている。調整が一巡したようだ。

 3月18日の終値33円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS16銭で算出)は206倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS14円61銭で算出)は2.3倍近辺である。時価総額は約41億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。そして週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して出直り展開だろう。

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