【アナリスト水田雅展の銘柄診断】日本マニュファクチャリングサービスは水準切り上げの動き、収益改善基調を評価して出直り展開

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 製造請負大手の日本マニュファクチャリングサービス<2162>(JQS)の株価は水準切り上げの動きを強めている。1月8日は445円まで上伸して14年11月の474円に接近する場面があった。収益改善基調を評価して出直り展開だろう。

 製造請負・派遣のIS(インラインソリューション)事業、修理・検査受託のCS(カスタマーサービス)事業、技術者派遣のGE(グローバルエンジニアリング)事業、子会社の志摩グループとTKRグループが展開する開発・製造受託のEMS(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)事業を展開している。なお今期(15年3月期)からIS事業、CS事業、GE事業を総称してHS(ヒューマンソリューション)事業とした。

 基本コンセプトとして、日本、中国、アセアン諸国における人材ビジネス事業とEMS事業の融合によるトータルソリューションサービス「neo EMS」を掲げている。製造アウトソーシング企業NO.1を目指す戦略に大きな変化はないが、サービスの一段の高付加価値化に向けて開発・設計といった製造業の上流プロセス分野の機能を強化している。単なる製造アウトソーサーから、キーテクノロジーを有して技術競争力を備えた企業グループへの変革を推進する戦略だ。

 13年10月にはTKRが日立メディアエレクトロニクス(日立ME)の電源事業、トランス事業、車載チューナー事業、映像ボード事業を譲り受け、水沢工場(岩手県奥州市)を取得した。そして14年10月にはパナソニック<6752>から車載向け除く電源・電源関連部品事業(高圧電源、低圧電源、マグネットロール、トランス)を譲り受け、受け皿会社のパワーサプライテクノロジー(PST)が新たに操業を開始した。

 日立MEおよびパナソニックからの事業譲受により、当社グループの電源事業は国内電源メーカー上位に匹敵する規模となった。電源に関する技術ノウハウの蓄積・融合を図り、電源関連事業を当社グループのキーテクノロジー分野として、LED照明、空気清浄器、エアコン、複写機向けなどに新規顧客開拓を推進し、EMS事業の高付加価値化も推進する。また14年9月には子会社TKRが検査工程の自動化・省力化装置のカスタマイズ受託生産を本格的に開始した。

 14年10月には日本通運<9062>と、国内外の製造業務と物流業務を組み合わせた新たなワンストップサービスの構築に向けて業務提携した。製造業をターゲットに物流分野のサービスを拡充し、19年度に売上高300億円を目指すとしている。

 中国での事業展開に関しては、14年3月施行の「中国労務派遣暫定規定」によって中国の労働政策が派遣から請負に転換する見込みとなり、5月には当社および子会社の北京中基衆合国際技術服務有限公司が、中国労務派遣専門委員会において発足した承欖(製造請負)研究プロジェクトに参画した。16年3月の承欖(製造請負)法制化を目指しており、中国の製造業において製造請負の市場拡大が予想されるとともに、プロジェクトに参画している当社の競争優位性が期待されている。

 アジアでは14年9月に子会社nmsタイランドを設立し、カンボジアの人材エージェントと連携して製造業向けにタイ人とカンボジア人の派遣を開始した。10月には子会社nmsベトナム(ホーチミン市)がNMSIR(ハノイ市)と事業提携し、ベトナムでの労働派遣ライセンスを取得した。さらに12月には子会社nmsタイランドが、カンボジアの人材会社SOKおよびUNGの2社と、カンボジア人材のタイへの派遣事業について業務提携した。今後3年間でカンボジア人派遣在籍数1万人を目指すとしている。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(5月15日公表)は、売上高が前期比16.5%増の488億円、営業利益が4億90百万円の黒字化(前期は6億43百万円の赤字)、経常利益が5億10百万円の黒字化(同1億75百万円の赤字)、純利益が負ののれん発生益一巡で同50.7%減の3億20百万円、配当予想が前期と同額の年間3円(期末一括)としている。

 パナソニックから譲り受けた電源・電源関連部品事業については、パワーサプライ事業(PS事業)として第4四半期(1月~3月)から新規連結する。今期の業績見通しに対する影響については明らかになりしだい公表するとしている。

 第2四半期累計(4月~9月)は前年同期比14.2%増収となり、営業利益、経常利益、純利益とも黒字化した。EMS事業の収益改善が寄与して利益は期初計画を大幅に上回った。通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.8%、営業利益が48.2%、経常利益が28.6%、純利益が25.6%である。

 通期ベースでは、EMS事業の日本、中国、マレーシアにおける既存案件の増産効果、中国における人件費上昇といった一過性要因の一巡、TKR香港における為替レート見直しなどオペレーション改善や事業構造改革の効果、日立MEから譲り受けた案件の本格稼働などが寄与して、収益改善が本格化する見込みだ。第4四半期のPS事業の新規連結も寄与して通期見通しに増額余地があるだろう。

 パナソニックから引き継いだ顧客は国内外で合計約200社に達するため、nmsグループの各種サービス提供に向けた営業機会の拡大にも繋がる。来期(16年3月期)はPS事業も本格寄与して収益改善基調だろう。

 株価の動きを見ると、400円近辺での短期モミ合いから上放れて水準切り上げの動きを強めている。1月8日は前日比22円(5.20%)高の445円まで上伸して14年11月の474円に接近する場面があった。

 1月7日の終値432円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS34円50銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.7%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS451円79銭で算出)は1.0倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると26週移動平均線を回復した。そして8月安値360円、9月安値370円、10月安値376円、11月安値385円、12月安値390円と着実に下値を切り上げている。収益改善基調を評価して出直り展開だろう。

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