【アナリスト水田雅展の銘柄分析】トシン・グループは16年5月期第3四半期累計は営業微減益だったが通期は増益予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 トシン・グループ<2761>(JQS)は首都圏を中心に電設資材などの卸売事業を展開する持株会社である。専門部署による得意先営業活動支援サービスなどを特徴として、営業拠点網拡充などで事業基盤を強化している。16年5月20日期第3四半期累計は営業微減益だったが、通期は増益予想である。株価は年初来安値圏だが調整一巡感を強めている。0.6倍近辺の低PBR、継続的な自己株式取得という積極的な株主還元姿勢も評価して反発のタイミングだろう。

■首都圏中心に電設資材や住宅設備機器の卸売事業を展開

 首都圏を中心として、電設資材や住宅設備機器などの卸売事業を展開する持株会社である。小口多数販売や、専門部署による得意先営業活動支援サービスなどを特徴としている。

 取扱商品や営業拠点網の拡充などで事業基盤強化を推進している。15年1月に小山営業所、15年6月に佐野営業所、16年2月に橋本営業所、16年3月にひたちなか営業所を開設した。また4月25日に船橋営業所を開設する。

■新設住宅着工戸数など建設関連投資が影響

 15年5月20日期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(5月21日~8月20日)110億05百万円、第2四半期(8月21日~11月20日)115億38百万円、第3四半期(11月21日~2月20日)106億94百万円、第4四半期(2月21日~5月20日)120億34百万円、営業利益は第1四半期4億81百万円、第2四半期6億円、第3四半期5億55百万円、第4四半期5億88百万円だった。

 新設住宅着工戸数など建設関連投資の動向が影響し、第4四半期の構成比がやや高い収益構造だ。15年5月20日期の売上総利益率は20.4%で14年5月20日期比横ばい、販管費比率は15.5%で同0.8ポイント上昇、ROEは5.8%で同0.7ポイント低下、自己資本比率は79.6%で同2.3ポイント低下した。また配当性向は25.2%だった。

■16年5月20日期第3四半期累計は営業微減益だが売上総利益率は上昇

 4月1日に発表した今期(16年5月20日期)第3四半期累計(5月21日~2月20日)連結業績は、売上高が前年同期比2.7%減の323億41百万円、営業利益が同1.5%減の16億12百万円、経常利益が同2.2%増の23億05百万円、純利益が同1.0%増の13億55百万円だった。

 新設住宅着工戸数の回復力が鈍く、販売価格の下落なども影響して微減収、営業微減益だった。ただし売上総利益率は20.8%で同0.3ポイント上昇した。販管費比率は15.9%で同0.3ポイント低下した。特別損失では減損損失21百万円を計上した。なお40回を迎えた毎年恒例の「秋の展示会」を、今期は「ジャンボ夏まつり」として、分散開催からグループ全営業所合同開催に変更して8月末日に開催した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(5月21日~8月20日)108億09百万円、第2四半期(8月21日~11月20日)115億27百万円、第3四半期(11月21日~2月20日)100億05百万円、営業利益は第1四半期5億75百万円、第2四半期5億88百万円、第3四半期4億49百万円だった。

■16年5月期通期は微増収・微増益予想

 今期(16年5月20日期)通期の連結業績予想は前回予想(7月3日公表)を据え置いて、売上高が前期比0.1%増の453億円、営業利益が同3.9%増の23億10百万円、経常利益が同2.7%増の32億20百万円、純利益が同2.0%増の18億80百万円としている。配当予想(7月3日公表)は前期と同額の年間52円(第2四半期末26円、期末26円)で予想配当性向は24.6%となる。

 17年4月の消費税の追加増税を控えていることに加えて、円安に伴う原材料価格の上昇など厳しい事業環境が続くとして、微増収・微増益の会社予想だ。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が71.4%、営業利益が69.8%、経常利益が71.6%、純利益が72.1%である。やや低水準の形だが、新設住宅着工戸数など建設関連投資の動向が影響し、第4四半期の構成比がやや高い収益構造であることを考慮すれば通期会社予想は達成可能だろう。

 新規出店による営業拠点網の拡充、新規得意先の獲得と既存得意先の深掘りによる実売軒数の増加、小口多数販売の強化、当社独自の得意先営業活動支援サービスの体制・機能強化など、グループ総合力を活かした戦略で収益拡大が期待される。

■自己株式取得で積極株主還元

 15年8月17日発表した自己株式取得(取得株式総数の上限50万株、取得価額総額の上限15億円、取得期間15年8月18日~16年7月31日)について、4月7日に自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)によって900株を取得した。この結果、16年4月7日時点の累計で取得株式総数5万8900株、取得価額総額1億3900万2900円となった。

■株価は年初来安値圏だが調整一巡感

 株価の動きを見ると、2月の年初来安値2185円からの戻りが鈍く、200円台の年初来安値圏で推移している。ただし大きく下押す動きも見られず調整一巡感を強めている。

 4月12日の終値2231円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS211円53銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間52円で算出)は2.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3671円89銭で算出)は0.6倍近辺である。なお時価総額は約254億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、2月安値を割り込まず調整一巡感を強めている。0.6倍近辺の低PBR、さらに継続的な自己株式取得という積極的な株主還元姿勢も評価して反発のタイミングだろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る