【アナリスト水田雅展の銘柄診断】山田コンサルティンググループは16年3月期営業増益・増配予想、17年3月期も増収増益基調期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 山田コンサルティンググループ<4792>(JQS)は経営・財務・M&A・不動産関連のコンサルティング事業を主力として、経営コンサルティング事業では「事業再生」「事業成長」「事業承継・M&A」コンサルを3本柱とするビジネスモデルを推進している。4月15日にはシンガポールのリサーチファームの子会社化が完了した。日本企業の海外事業展開に対する支援も強化する方針だ。16年3月期増収営業増益・増配予想で、17年3月期も増収増益基調が期待される。株価は安値圏だが、4%近辺の配当利回りなど指標面の割安感も見直し材料であり、調整が一巡して反発のタイミングだろう。

■各種コンサルティング事業を展開する純粋持株会社

 各種コンサルティング事業を展開するグループの純粋持株会社である。

 傘下の事業会社は、山田ビジネスコンサルティングが経営・財務・事業承継・M&A支援などの経営コンサルティング事業、山田FASがM&A・企業再編の財務アドバイザイリー業務や中堅・中小企業対応M&A関連業務などの資本・株式・株主に関するコンサルティング事業、山田不動産コンサルティングが不動産有効活用などの不動産コンサルティング事業、東京ファイナンシャルプランナーズがFP資格取得講座などのFP関連事業、キャピタルソリューションおよび投資事業有限責任組合が投資・ファンド事業(事業承継・再生関連のファンド)を展開している。

■中期的にROE20%以上を目指す

 中期経営目標としてROE20%以上を掲げ、重点戦略としては大手金融機関・証券会社・地方金融機関・提携会計事務所との連携強化、中堅・中小企業対応M&A関連分野の拡大、中国現地法人およびシンガポール支店を拠点とした中国・アジア展開の強化などを推進している。投資・ファンド事業では、事業承継問題を抱えている優良な中堅・中小企業をターゲットとして、投資リスクを最小限に抑えながら投資案件を発掘している。

 またコンサルティングニーズが「事業再生」だけでなく「事業成長」も顕在化しているため、こうしたニーズに対応すべく、主力の経営コンサルティング事業では「事業再生コンサル」「事業成長コンサル」「事業承継・M&Aコンサル」を3本柱とするビジネスモデルを推進している。そして事業再生や事業承継を切り口としてM&Aコンサルを拡大している。

■日本企業の海外展開支援を強化

 3月14日に連結子会社の山田ビジネスコンサルティングが、シンガポールのリサーチファームであるSPIRE Research and Consulting(SPIRE)の株式80%を取得すると発表し、4月15日に株式取得・子会社化が完了したと発表している。

 SPIRE社は2000年にシンガポールで創業し、現在はシンガポール・インドネシア・マレーシア・インド・中国・ベトナム・韓国に事務所を構え、主に日本・アメリカ・欧州・アジアの多国籍企業を顧客として、新興国地域への事業展開のための市場調査を主要サービスとしている。SPIRE社を子会社化することで、多様化する日本企業の海外進出・既存海外事業に関するコンサルティングニーズに一層充実した体制で対応する。

■案件によって変動しやすい収益構造

 15年3月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)20億86百万円、第2四半期(7月~9月)20億59百万円、第3四半期(10月~12月)18億25百万円、第4四半期(1月~3月)25億11百万円、営業利益は第1四半期5億33百万円、第2四半期4億28百万円、第3四半期2億48百万円、第4四半期8億円だった。

 好採算案件や大型案件の有無で四半期利益が変動しやすい収益構造だ。15年3月期のM&A関連売上は、経営コンサルタント事業で28件・10億22百万円(14年3月期は17件・5億円)、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業で15件・5億53百万円(同8件・1億67百万円)だった。件数は増加基調で大型案件も寄与した。15年3月期のROEは17.8%で14年3月期比6.4ポイント低下、自己資本比率は81.9%で同5.2ポイント低下した。配当性向は34.8%だった。

■16年3月期第3四半期累計は大型案件なく減収減益

 前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.3%増の60億49百万円、営業利益が同14.0%減の10億40百万円、経常利益が同26.8%減の10億60百万円、純利益が同27.0%減の6億55百万円だった。

 人員増強による人件費の増加や業容拡大に向けたコストの増加で減益だった。売上総利益率は89.3%で同0.9ポイント上昇、販管費比率は72.2%で同4.1ポイント上昇した。営業外収益では投資有価証券売却益14百万円を計上したが、為替差益が悪化(前々期は差益2億16百万円計上、前期は差損31百万円計上)した。特別損失では事務所移転費用12百万円、和解金13百万円を計上した。

 セグメント別(連結調整前)動向を見ると、経営コンサルタント事業は売上高が同3.1%増の43億19百万円、営業利益が同7.4%減の7億13百万円、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業は売上高が同13.6%減の6億69百万円、営業利益が同68.5%減の58百万円、不動産コンサルティング事業は売上高が同10.4%増の6億37百万円、営業利益が同2.3%減の2億06百万円、FP関連事業は売上高が同19.1%増の5億51百万円、営業利益が同68.7%増の68百万円、投資・ファンド事業は売上高が0百万円(前年同期は40百万円)、営業利益が3百万円の赤字(前年同期は2百万円の赤字)だった。なお投資・ファンド事業では新規投資1件(43百万円)を実行した。

 なお四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)18億44百万円、第2四半期(7月~9月)22億25百万円、第3四半期(10月~12月)19億80百万円、営業利益は第1四半期1億80百万円、第2四半期5億57百万円、第3四半期3億03百万円だった。

■16年3月期増収営業増益・増配予想、17年3月期も増収増益基調期待

 前期(16年3月期)通期の連結業績予想(4月28日公表)は、売上高が前々期(15年3月期)比6.1%増の90億円、営業利益が同4.9%増の21億10百万円、経常利益が同2.1%減の21億60百万円、純利益が同1.2%増の14億円としている。なお為替動向によっては経常利益が営業利益を下回る可能性があるとしている。

 配当予想(4月28日公表)は同10円増配の年間110円(第2四半期末55円、期末55円)で予想配当性向は37.6%となる。

 事業承継・成長関連やM&A関連の引き合い・受注が順調なため、経営コンサルタント事業は増収増益、資本・株式・株主に関するコンサルティング事業は前期並みの営業利益を確保する見込みだ。不動産コンサルティング事業は提携会計事務所からの案件受注が好調のため増収増益見込み、FP関連事業は法人向けFP関連講座や実務研修の受注が好調のため増収増益見込みとしている。投資・ファンド事業では投資株式の売却を予定していない。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が67.2%、営業利益が49.3%、経常利益が49.1%、純利益が46.8%である。低水準の形だが、好採算案件や大型案件の有無によって四半期別収益が変動しやすい構造であり、通期ベースでは増収営業増益を期待したい。また今期(17年3月期)も増収増益基調が期待される。

■自己株式取得終了だが積極還元姿勢

 15年4月28日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限6万株、取得価額総額の上限2億円、取得期間15年5月1日~16年3月18日)については、16年3月18日時点の累計で、取得株式総数3万4000株、取得価額総額1億0842万4200円となって終了した。

 自己株式取得は終了したが、積極還元姿勢に変化はないだろう。

■株価は安値圏だが指標面の割安感を見直し

 株価の動きを見ると、地合い悪化も影響して4月8日の年初来安値2573円まで調整した。その後は2700円近辺で推移して調整一巡感を強めている。

 4月19日の終値2706円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS292円80銭で算出)は9~10倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間110円で算出)は4.1%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1695円57銭で算出)は1.6倍近辺である。時価総額は約135億円である。

 週足チャートで見ると4月の年初来安値圏の下ヒゲで調整一巡感を強めている。4%近辺の配当利回りなど指標面の割安感も見直し材料であり、調整が一巡して反発のタイミングだろう。

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