【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ジャパンインベストメントアドバイザーは公募増資を嫌気することなく、中期成長力を評価して上場来高値更新の展開

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)<7172>(東マ)は、オペレーティング・リースおよび環境エネルギーファンドを中心に金融ソリューション事業を展開している。純利益毎期50%以上の成長を目指して業容を拡大し、16年12月期は営業利益倍増予想である。株価は4月8日発表の公募増資を嫌気することなく、上げ足を速めて上場来高値更新の展開だ。利益確定売りで一旦反落したが、中期成長力を評価する流れに変化はなく、自律調整一巡後に上値を試す展開だろう。なお5月6日に第1四半期業績発表を予定している。

■オペレーティング・リース主力に金融ソリューションを展開

 設立(06年9月)時からのオペレーティング・リース事業を主力として、07年2月にM&Aアドバイザリー事業、14年5月に太陽光発電第1号ファンドを組成して環境エネルギーファンド事業を開始した。14年12月には投資銀行本部を設置して金融ソリューション事業の本格展開を開始した。

 主力のオペレーティング・リース事業は、11年8月設立の子会社JPリースプロダクツ&サービシイズ(JLPS)が第二種金融商品取引業登録業者として、航空機や海上輸送用コンテナを主対象に展開している。

 なお米国CAI社(NY証券取引所上場)と07年1月合弁で設立したCAIJ社(コンテナ・オペレーティング・リース事業)について、3月31日に米国CAIが保有する全株式(出資比率80%)を取得(払込4月下旬予定)して、当社の完全子会社化すると発表した。オペレーティング・リース事業の拡大に寄与するとしている。

 14年9月の東証マザーズ上場によって知名度・信用力が向上し、資金調達力や営業力も向上した。案件供給面では、オペレーティング・リース事業における航空機部門および海運コンテナ部門とも、レッシー(賃借人)からの引き合いが途絶えることなく、潜在需要が豊富な状態が続いている。また環境エネルギーファンド事業においても潜在的な案件数は豊富である。

 販売面では知名度・信用力の向上に伴って、全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社等からの顧客紹介が増加している。主要顧客である中堅・中小企業の収益改善や法人実効税率の段階的引き下げ実施期待も背景として、全国に広がる顧客(投資家)の投資意欲は高水準である。航空機オペレーティング・リースは賃借人が欧米の一流航空会社であることも好評の一因のようだ。太陽光発電ファンドも為替リスクのない安定利回り商品として投資家ニーズが高く、短期間で完売する状況が続いている。

■オペレーティング・リース事業の対象領域を拡大

 15年10月には船舶を対象とした日本型オペレーティング・リース第1号案件の組成を完了した。対象物件として航空機・船舶・海上輸送用コンテナのすべての領域をカバーすることになり、投資対象の多様化という顧客ニーズに応えて収益拡大を加速する。

 また15年10月には航空機を対象としたパーツアウト・コンバージョン事業の開始を発表した。パーツアウト事業は退役航空機を解体して各部品を在庫管理し、世界の整備会社・リース会社・航空会社等へ販売する事業、コンバージョン事業は機齢の経った旅客機を輸送機等に改造してリサイクルする事業である。

 15年11月にはルクセンブルクに子会社JIAルクセンブルクを設立した。航空機を対象としたパーツアウト・コンバージョン事業を推進するため、関連する海外企業に対する出資・貸付の実施を目的とする。そして15年11月にはJIAルクセンブルクを通じて、パーツアウト・ビジネスの専門業者であるフランスVAG社に出資して資本・業務提携した。同社との資本・業務提携で、航空機パーツアウト・ビジネスへの自己投資による収益機会拡大、オペレーティング・リース案件とは異なる新しいタイプの投資商品の開発、オペレーティング・リース案件の対象航空機の換価処分をスムーズに進めるためのツールとしての活用を実現する。

■中期成長に向けて環境事業を拡大

 主力のオペレーティング・リース事業に加えて、中期成長に向けてM&Aも積極活用しながら環境関連事業を拡大する。

 15年5月にLEシステム(福岡県)の株式を取得して資本業務提携した。同社の電力備蓄用バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)は、太陽光発電の出力抑制に有効な蓄電システムとして期待されている。バイオマス発電に関するノウハウも豊富であり、当社の投資ネットワークやファイナンス技術との補完によって、再生エネルギー分野でのシナジー効果を創出する。今後LEシステムへの出資比率引き上げも含めて、環境エネルギー事業を一段と拡大させる方針だ。

 15年9月にはあすかグリーンインベストメント(AGI)の株式を取得(発行済株式数600株のうち300株)して資本・業務提携した。AGIはウクライナ、カザフスタンなど主に中央アジア、南アジアにおいて再生可能エネルギーや省エネルギー事業を展開している。AIGの環境ビジネスのノウハウと当社のファイナンス技術などとのシナジー効果を創出して、相互の事業発展を目指す。

 15年10月には環境エネルギー関連の新たな取り組みとして汚泥削減システムのフジ・エコ・テクノス(FET社、大阪市)に出資(46.7%)した。FET社は、汚泥に水撃圧を加えて生物処理層へ返送することができる新しい汚泥削減システム(水撃法)を開発して特許を取得している。また噴流炭化システムの開発を行っており、当社が推進しているバイオマス発電事業などに大きく寄与するとしている。

■PE投資やIR支援も積極展開

 プライベート・エクイティ(PE)投資や上場企業のIR支援などにも進出して事業の多角化も加速している。

 15年8月にはプライベート・エクイティ(PE)投資事業に本格的に進出するため、100%出資のPEファンドJPE第1号を設立してバリューアップ投資を開始すると発表した。当面は3億円を上限として当社100%出資で運営するが、将来的には投資家からの資金も受け入れる予定だ。

 第1号案件として日本マンパワーのグループ会社で人材派遣・紹介事業を展開するNMPスペシャリストの全株式を取得した。NMPスペシャリストは当社グループ入りと同時に日本マンパワーと包括的業務提携を締結し、当社の主要顧客である全国の優良な中堅・中小企業向け人材供給、ならびに人材育成・教育やキャリアアップへの参画を図る。3年後の上場を目指すとしている。

 15年9月には日本証券新聞および日本証券新聞リサーチの全株式を取得して子会社化した。両社を通じて新聞・出版・広告を中心としたメディア関連事業、およびIR(投資家向け広報)支援事業に進出する。当社が持つ金融機関や会計事務所などとのネットワークを最大限活用し、さまざまな金融情報の提供、全国の上場会社へのIR支援業務を積極的に展開する方針だ。

 またIR支援サービスの日本証券新聞リサーチと、人材派遣・紹介事業のNMPスペシャリストが連携して、人材難に悩む企業に対して中小企業診断士や社外取締役などを紹介・マッチングする事業なども展開する。

 16年1月にはM&Aアドバイザリー事業の専門子会社ジャパンM&Aアドバイザー(略称JMA)を設立した。豊富な経験・ノウハウを持つプロフェッショナル専門家集団によって、事業承継案件や事業再生案件などを幅広く手掛け、当社グループのネットワークを最大限活用して事業展開する。

■フィンテック企業を中心にIPOコンサルティング事業も開始

 16年1月には金融ソリューション事業の一つとしてIPOコンサルティング事業を開始すると発表した。第1弾としてIT技術を駆使した投資コンサルティング事業会社とコンサルティング契約を締結した。同社は東京証券取引所への上場を目指している。また既に出資を実行した海外企業を含めて数社とIPOコンサルティング契約を交渉中である。

 本業の金融ソリューション事業とのシナジーが見込まれるIT・サービス分野、特に金融とITの融合に寄与するフィンテック企業を中心にIPOコンサルティング事業の拡大を目指すとしている。またプライベート・エクイティ(PE)事業においてもITを駆使した新たな金融サービスを提供する企業・技術への投資活動を積極化させる方針だ。

■案件組成・出資金販売・管理などに伴う手数料収入が収益柱

 オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業の組成・出資金販売・管理などに伴う手数料収入が収益柱である。会計上の売上高認識基準は、顧客(投資家)から案件ごとに募集している出資金の販売が、すべて終了した時点において出資金に含まれる手数料を売上高として計上する。

 従来は営業費用に計上していた紹介手数料および案件組成に係る弁護士費用、営業外費用に計上していた案件組成に係る金融費用について、売上との直接的な対応関係を明確にするため、15年12月期から売上原価に計上している。

■15年12月期は大幅増収増益

 前期(15年12月期)連結業績は売上高が前々期(14年12月期)比2.7倍の28億05百万円で、営業利益が同2.2倍の11億55百万円、経常利益が同85.9%増の12億67百万円、そして純利益が同80.6%増の7億64百万円だった。配当は無配を継続した。

 出資金販売額はオペレーティング・リース事業が同80.0%増、環境エネルギー事業が同87.8%増と大幅伸長した。売上総利益率は66.3%で同20.3ポイント低下、販管費比率は25.1%で同10.5ポイント低下した。

 営業外収益では商品出資金売却益が増加(前々期36百万円計上、前期1億37百万円計上)し、匿名組合投資利益が増加(前々期29百万円計上、前期1億16百万円計上)したが、為替差損益が悪化(前々期は差益1億34百万円計上、前期は差損15百万円計上)し、営業外費用では支払利息が増加(前々期48百万円計上、前期1億06百万円計上)した。ROEは46.3%で同1.6ポイント上昇、自己資本比率は20.5%で同10.8ポイント上昇した。

 組成は合計12件(航空機3件・233億16百万円、船舶1件・11億76百万円、コンテナ2件・92億63百万円、太陽光発電6件・36億52百万円)で、販売(完売)は合計18件(航空機8件・148億37百万円、船舶1件・3億36百万円、コンテナ3件・28億95百万円、太陽光発電6件・33億82百万円)だった。

 販売ネットワーク(ビジネスマッチング契約先)は、15年12月期末時点の提携先が、税理士・会計事務所88事務所(14年12月期末比21増加)、銀行22行(同11増加)、証券会社7社(同1増加)、合計117件(同33増加)となった。

 資金調達枠(コミットメントライン融資枠・当座貸越契約等)は14年12月期比46億円増加の65.3億円となった。なお15年12月期末の有利子負債は66億89百万円だった。今期(16年12月期)以降に販売予定の案件組成に向けて銀行から短期借入を実施したが、商品出資金の販売が好調だったため借入金の返済が進み、14年12月期末比では59億06百万円減少した。

 なお15年12月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)4億30百万円、第2四半期(4月~6月)3億50百万円、第3四半期(7月~9月)10億45百万円、第4四半期(10月~12月)9億80百万円、営業利益は第1四半期1億85百万円、第2四半期94百万円、第3四半期5億26百万円、第4四半期3億50百万円だった。四半期業績は販売計上(完売)時期によって変動する可能性があるが、収益は拡大基調である。

■16年12月期も営業利益倍増予想

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想(2月12日公表)は、売上高が前期(15年12月期)比85.7%増の52億10百万円、営業利益が同2.0倍の23億62百万円、経常利益が同76.1%増の22億32百万円、そして純利益が同75.5%増の13億41百万円としている。

 オペレーティング・リース事業および環境エネルギー事業では、第1四半期に航空機5件、船舶1件、太陽光発電5件の組成を予定している。なおコンテナについては15年12月期末で1件の商品在庫(17億44百万円)の組成を完了している。オペレーティング・リース事業および環境エネルギー事業とも需要が高水準であり、案件組成および出資金販売が大幅伸長する見込みだ。事業開始した航空機対象のパーツアウト・コンバージョン事業などの収益も本格寄与して増収増益基調だろう。

■15年12月期から株主優待制度導入、16年12月期は配当を実施

 株主優待制度については15年12月期から導入した。毎年12月末日時点で1単元(100株)以上保有株主に対して、保有株式数および継続保有期間に応じてクオカードおよび日本証券新聞デジタル版購読券を進呈する。優待内容の例としては、継続保有期間1年以上で1000株以上保有株主に対してクオカード5000円+日本証券新聞デジタル版6ヶ月購読券1万8000円などとしている。

 なお未定としていた16年12月期配当予想については、2月17日に修正を発表し、年間10円(第2四半期末4円、期末6円)の配当を実施する。予想配当性向は8.2%となる。

 利益配分方針は、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、株主への利益還元を重視し、安定した配当を継続していくことを基本方針としている。当該方針のもと配当については業績に応じた利益還元を実施する。16年12月期配当については、15年12月期に6期連続で最高益更新を果たし、16年12月期の業績も好調に推移していることを勘案して、年間配当10円を実施することとした。

 また今後については東証1部への上場を目標として、連結配当性向は概ね20%以上を目指すとしている。

■純利益ベースで毎期50%以上の成長を計画

 中長期成長戦略として、第1ステージは航空機・オペレーティング・リース事業での競争力の高い商品供給による規模の拡大、第2ステージは参入障壁が比較的高く、物件価値が比較的安定しているコンテナ・オペレーティング・リース事業でのラインナップ充実、第3ステージはオペレーティング・リースの代替商品として、太陽光発電を中心とした環境エネルギーファンド事業の強化を推進してきた。

 今後の第4ステージでは優良中堅・中小企業の顧客基盤を十分に拡充しつつ、M&Aアドバイザリー事業、プライベート・エクイティ(PE)投資事業、不動産投資事業、事業承継・再生ファンド事業、ウェルス・マネジメント事業、中小企業に対する人材紹介事業、メディア関連・IR支援関連事業、IPOコンサルティング事業など、金融ソリューション事業を中心にM&Aも積極活用して事業領域を広げ、成長を加速させる方針だ。

 オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業の持続的拡大に向けては、幅広い投資家層ニーズにマッチングした最適な金融商品とソリューションを提供するため、組成面では旺盛な投資家ニーズに対応した案件供給、新規賃借人の開拓、安定かつ機動的な資金調達力の確保、運用型商品の開発、販売面では全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社などとの連携による販売ネットワークの拡充を推進する。中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は上場来高値更新の展開、中期成長力を評価する流れに変化なし

 なお4月8日に新株式発行および株式売出しを発表した。公募による新株式発行95万株、オーバーアロットメントによる売出しのための第三者割当による新株式発行14万2500株(上限)を合わせると、最大109万2500株(16年4月8日現在の発行済株式総数1113万6500株に対する割合9.81%)の株式数増加となる。発行価格および売出し価格は1株につき3355円(4月18日発表)となった。払込期日は4月25日である。調達資金(手取概算額)34億38百万円は運転資金に充当する。

 株価の動きを見ると、14年11月の2756円を突破して上場来高値更新の展開となった。そして4月8日発表の公募増資を嫌気することなく上げ足を速め、4月21日の4310円まで上伸した。その後は利益確定売りで一旦反落したが、中期成長力を評価する流れに変化はないだろう。

 4月25日の終値3705円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS121円80銭で算出)は30~31倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS175円39銭で算出)は21倍近辺である。なお時価総額は約448億円である。

 週足チャートで見るとやや過熱感を残しているが、日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形だ。中期成長力を評価する流れに変化はなく、自律調整一巡後に上値を試す展開だろう。

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