【アナリスト水田雅展の銘柄分析】久世は調整一巡して出直り、16年3月期黒字化で17年3月期も収益改善基調期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 久世<2708>(JQS)は外食・中食産業向け業務用食材卸売事業を首都圏中心に展開している。仕入価格上昇や物流コスト上昇などで営業損益が悪化していたが、16年3月期は物流費削減などの効果で黒字化予想である。そして17年3月期も収益改善基調が期待される。株価は直近安値圏から反発している。戻り歩調の展開だろう。なお5月10日に16年3月期決算発表を予定している。

■業務用食材卸売事業を首都圏中心に展開

 首都圏を中心に、ファーストフード・ファミリーレストラン・カフェ、居酒屋・パブ、ディナーレストラン・ホテル・専門店、デリカ・惣菜・ケータリング・娯楽施設・その他など、外食・中食産業向けに業務用食材の卸売事業を展開し、大手飲食チェーンも主要顧客としている。子会社のキスコフーズは国内(静岡市)とニュージーランドで業務用高級ソース・高級スープの製造、久世フレッシュ・ワンは東京都内を中心に生鮮野菜など農産品の卸売を展開している。

 16年3月期第2四半期累計(4月~9月)の販売チャネル別の売上構成比(単体ベース)は、ファーストフード・ファミリーレストラン・カフェが34.8%、居酒屋・パブが28.2%、ディナーレストラン・ホテル・専門店が22.3%、デリカ・惣菜・ケータリング・娯楽施設・その他が14.7%だった。

■販路拡大戦略を推進

 中期成長に向けた重点戦略として、首都圏・関西圏・中部圏での販路拡大、全国物流ネットワークの強化、中食市場や高齢者施設給食市場の開拓強化、PB商品の拡販や製造利益の拡大、海外事業の基盤確立などを推進している。

 販路拡大に向けたM&A・アライアンス戦略では、12年6月に中部圏で酒類販売大手サカツコーポレーションと業務提携し、14年4月には高級飲食店向けに強みを持つ水産物中卸会社の旭水産を子会社化した。

 15年3月には、海外子会社の久世(香港)が所有する中国・上海峰二食品有限公司の株式(保有割合10%)を国分に譲渡した。09年から上海峰二食品有限公司と業務用食材分野で協力関係にあり12年に出資したが、上海峰二食品有限公司が国分の資本参加を受けた機会に譲渡した。なお中国事業は久華世(成都)商貿有限公司を軸に継続する。

 なお子会社の久世フレッシュ・ワンは、15年9月に横浜中央市場の青果仲卸会社である丸ユ商店(横浜市)と業務提携した。良質な商品の安定的仕入に加えて、協働して産地開拓と商品開発も行う。また15年10月に横浜事業所を開設し、神奈川エリアへの営業展開を強化している。

■15年3月期は仕入価格上昇や物流コスト上昇で赤字

 15年3月期は、新規顧客の開拓や既存顧客の底上げなど営業強化の効果で14年3月期比9.3%増収だったが、仕入価格の上昇、物流コストの上昇、人件費の増加などが影響して各利益とも赤字だった。

 売上総利益は同9.1%増加したが、売上総利益率は16.6%で同0.1ポイント低下した。販管費は13.1%増加し、販管費比率は17.2%で同0.6ポイント上昇した。ROEはマイナス8.8%で同10.9ポイント低下、自己資本比率は23.5%で同1.7ポイント低下した。配当は14年3月期と同額の年間12円だった。

 なお15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)163億73百万円、第2四半期(7月~9月)172億19百万円、第3四半期(10月~12月)183億76百万円、第4四半期(1月~3月)160億76百万円で、営業利益は第1四半期1億79百万円の赤字、第2四半期91百万円の赤字、第3四半期23百万円の黒字、第4四半期1億18百万円だった。

■16年3月期第3四半期累計は営業損益改善して黒字化

 前期(16年3月期)第3四半期累計(4月~12月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.1%増の521億23百万円となり、営業利益が2億55百万円の黒字(前年同期は2億円の赤字)、経常利益が3億89百万円の黒字(同1億20百万円の赤字)、純利益が3億25百万円の黒字(同1億03百万円の赤字)だった。

 収益性を意識した営業を推進したため売上高は伸び悩んだが、高付加価値商品やPB商品の拡販、仕入価格上昇に対する代替商品・メニューの提案や価格改定交渉を推進したことに加えて、営業損益悪化の主因となっていた物流コストについて、徹底した物流業務効率化による物流費削減を推進し、営業損益が大幅に改善した。

 売上総利益は3.7%増加し、売上総利益率は17.3%で同0.6ポイント上昇した。販管費は同1.5%減少し、販管費比率は16.8%で同0.3ポイント低下した。営業外収益では保険解約益60百万円を計上した。特別利益では投資有価証券売却益60百万円を計上した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、食材卸売事業は売上高が同0.9%増の487億18百万円、営業利益が同10.5倍の4億42百万円、食材製造事業は売上高が同10.2%減の34億13百万円、営業利益が同3.2%減の3億63百万円、不動産賃貸事業は売上高が同横ばいの1億09百万円、営業利益が同6.3%増の85百万円だった。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)165億02百万円、第2四半期(7月~9月)172億73百万円、第3四半期(10月~12月)183億48百万円、営業利益は第1四半期1億30百万円の赤字、第2四半期99百万円の黒字、第3四半期2億86百万円の黒字だった。営業損益は改善基調だ。

■16年3月期通期黒字化予想、17年3月期も収益改善基調期待

 前期(16年3月期)通期の連結業績予想(5月12日公表)は、売上高が前々期(15年3月期)比6.4%減の637億円、営業利益が1億20百万円の黒字(前々期は3億65百万円の赤字)、経常利益が2億35百万円の黒字(同1億99百万円の赤字)、純利益が2億20百万円の黒字(同4億12百万円の赤字)としている。配当予想は前々期と同額の年間12円(期末一括)で予想配当性向は21.2%である。

 主要得意先であるモンテローザとの取引(15年3月期の売上高約97億円)を16年1月末に終了するため減収予想だが、新規取引先の開拓、既存取引先のインストアシェアアップ、物流業務効率化による物流費削減などで黒字化予想としている。なおモンテローザとの取引終了の影響については、同社向け店舗配送・商品保管・庫内作業等の物流業務は全て外部委託しており、これらの諸経費も取引終了に伴ってなくなるため、収益性が現状より悪化することはないとしている。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が81.8%、営業利益が212.5%、経常利益が165.5%、147.7%で、各利益は計画を超過達成している。増額余地がありそうだ。また今期(17年3月期)も収益改善基調が期待される。

■中期経営計画で成長加速

 第3次C&G中期経営計画では、目標数値に18年3月期売上高700億円、営業利益7億円、自己資本比率27.0%、ROE8.0%を掲げている。グループ事業の基本戦略として、チェーン戦略(KZN)、エリア戦略、生鮮品・高付加価値食材戦略、商品開発・製造戦略、海外事業戦略を推進する。

■株主優待制度は毎年3月末に実施

 株主優待制度については15年3月期から実施している。毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として、保有株数に応じて当社ブランド特選無洗米(山形県天童産はえぬき・新米)を贈呈する。100株以上~1000株未満保有株主には2.5kg、1000株以上~3000株未満保有株主には5kg、そして3000株以上保有株主には10kg贈呈する。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、3月の戻り高値圏800円台から一旦反落したが、4月上旬の直近安値圏700円近辺から反発している。調整が一巡したようだ。

 4月27日の終値761円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS56円72銭で算出)は13~14倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は1.6%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1188円85銭で算出)は0.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると一旦割り込んだ13週移動平均線と26週移動平均線を素早く回復した。そして下値を切り上げている。調整が一巡して出直り展開だろう。

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