【水田雅展の銘柄分析】インフォマートは16年12月期第1四半期減益だが、通期は増収増益基調期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インフォマート<2492>(東1)はフード業界向けを中心に、企業間電子商取引プラットフォーム「BtoBプラットフォーム」各種システムを提供している。4月28日発表の16年12月期第1四半期はソフトウェア償却費増加などで減益だったが、利益は期初計画を上回ったようだ。利用企業数増加に伴ってシステム利用収入が増加するストック型ビジネスモデルであり、通期は増収増益基調が期待される。中期経営計画では2020年までに、あらゆる業界にBtoBプラットフォームを提供し、グローバルなBtoBインフラ企業を目指すとしている。株価は年初来安値圏だが中期成長シナリオに変化はなく、下値固めが完了して反発のタイミングだろう。

■BtoB(企業間取引)プラットフォームを運営

 企業間で行われている世界共通の商行為を電子化する企業間電子商取引プラットフォーム「BtoBプラットフォーム」を運営している。16年1月に、従来の商行為ごとに特化した個別ASPシステム(ASP受発注システム、ASP規格書システム、BtoB電子請求書プラットフォーム、ASP商談システム)から発展させて、サービスブランドを「BtoBプラットフォーム」に変更した。

 そして新サービス名は、企業間の受発注業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注、食の安全・安心の商品仕様書DBであるBtoBプラットフォーム規格書、企業間の請求書発行・受取業務をWeb上で行うBtoBプラットフォーム請求書、BtoB専用の販売・購買システムであるBtoBプラットフォーム商談とした。

 現在はフード業界向け「FOODS info Mart」で、外食チェーンと食材卸の間の受発注をWeb上で行うBtoBプラットフォーム受発注を主力サービスとしている。

 16年1月には食品卸会社のデータ受注拡大を支援する新サービス「BtoBプラットフォーム受発注ライト機能」をリリースした。また4月には「BtoBプラットフォーム規格書」に食品メーカー向け新機能「販促支援機能」を搭載して提供開始した。またサービス拡充の一環として、フード業界企業向け総合マーケティングサービス「BtoB F-Marketing」や、フード業界向け情報発信の総合ポータルサイト「フーズチャネル」も運営している。

 子会社はインフォライズがクラウドサービス事業、インフォマートインターナショナル(香港)が海外「BtoBプラットフォーム」事業を展開している。なお15年3月に日立システムズとの合弁事業契約を解消し、インフォライズに対する日立システムズ出資分49%を譲り受けてインフォライズを完全子会社化した。

 なお「BtoBプラットフォーム」15年1月~12月のECO実績は、A4紙伝票枚数2億9407万枚、杉の木19万7835本のCO2削減効果となった。「電子商取引はECOにつながる」活動が順調に拡大している。

■事業セグメント区分を変更

 16年1月にサービスブランドを変更したことに伴い、16年12月期から事業セグメント区分を変更した。新セグメントは受発注事業(BtoBプラットフォーム受発注)、規格書事業(BtoBプラットフォーム規格書)、ES事業(BtoBプラットフォーム請求書およびBtoBプラットフォーム商談)、その他(海外・メディア事業など)としている。

■利用企業数、取引高、月額システム使用料収入は増加基調

 15年12月期末時点の「FOODS info Mart」利用企業数(海外事業を除く)は、14年12月末比1868社増加の3万9028社(売り手企業が同1917社増加の3万1836社、買い手企業が同49社減少の7192社)となった。15年12月期末の利用事業所数は22万7243事業所で、フード業界全体の118万6312事業所(総務省「平成24年度経済センサス-活動調査」14年2月26日公表)に対するシェアは19.1%となった。

 そして「FOODS info Mart」における15年の年間システム取引高は14年比20.0%増の1兆1768億円となった。外食産業の仕入金額(13年外食産業市場規模23兆9046億円の30%を前提として算出した7兆1713億円)に占める割合は、13年の12.4%、14年の13.6%から、15年には16.4%に上昇した。

 BtoB電子請求書プラットフォーム(14年11月開始)は15年12月末時点の契約社数(有料ID・PW発行ベース)が884社(受取モデル657社、発行モデル227社)となり、16年2月時点では1050社(受取モデル764社、発行モデル286社)に拡大した。利用企業数は15年12月末時点で4万8478社となり、16年2月には利用企業数5万社、利用者数5万6543ID、16年1月の月間流通金額が370億円を突破したと発表している。

■業界標準化に向けたシステム連携を強化

 中期成長戦略として、業界標準化に向けたシステム連携によるフード業界向けBtoBビジネスの強化、ASP受発注システムの業態およびエリアの拡大、他業界BtoB展開としての美容業界向け「BEAUTY info Mart」や医療業界向け「MEDICAL info Mart」による事業領域拡大、次世代BtoB&クラウドプラットフォームの拡販、顧客ニーズに対応した新機能・サービスのリリース、そして海外事業などを推進している。

 15年1月には、全国の商工会議所・商工会等が運営する「ザ・ビジネスモール(B-MALL)」の事務局を務める大阪商工会議所と、全国の企業へ電子請求を推進することを目的として業務提携した。BtoB電子請求書プラットフォームによる企業のコスト削減・効率化で企業の利益アップを応援する。

 15年4月には企業の受発注・請求業務の生産性向上を提供するため、内田洋行<8057>やミロク情報サービス<9928>など19社24ソリューションが提供する販売管理・会計・店舗管理システムとのデータ連携を強化した。そして15年末現在で「BtoBプラットフォーム受発注」は約66社が提供する販売管理・会計・店舗管理など79システムとデータ連携している。

 企業の受発注業務、請求業務、会計処理などにおける生産性向上を提供し、BtoB標準のプラットフォームを実現するため、他社とのシステム連携戦略を強化し、今後3年間で利用企業数100万社への普及を目指すとしている。

■ストック型ビジネスモデルで収益拡大基調

 顧客企業はネット環境さえあれば月々低料金で最新サービスを利用できるため、大手の食材卸売企業や外食・中食チェーンも利用し、電話やFAXからWebに切り替えて受発注する企業・店舗が増加基調だ。そして利用企業数の増加に伴って月額課金のシステム使用料収入が増加するストック型ビジネスモデルである。

 四半期別の業績推移を見ると、14年12月期の売上高は第1四半期(1月~3月)11億57百万円、第2四半期(4月~6月)12億06百万円、第3四半期(7月~9月)12億66百万円、第4四半期(10月~12月)13億48百万円、営業利益は第1四半期4億23百万円、第2四半期4億17百万円、第3四半期5億46百万円、第4四半期5億57百万円だった。

 15年12月期の売上高は第1四半期13億10百万円、第2四半期14億04百万円、第3四半期14億32百万円、第4四半期14億86百万円、営業利益は第1四半期5億11百万円、第2四半期4億77百万円、第3四半期5億44百万円、第4四半期5億62百万円だった。

 売上総利益率は13年12月期65.7%、14年12月期77.0%、15年12月期72.9%である。14年12月期は既存プラットフォームの期間短縮による償却が13年12月期に完了したことも寄与した。また販管費比率は13年12月期40.4%、14年12月期38.0%、15年12月期35.7%である。販管費比率は増収効果で低下傾向である。

 ROEは13年12月期20.6%、14年12月期32.3%、15年12月期19.5%となった。自己資本比率は13年12月期65.3%、14年12月期70.8%、15年12月期85.2%で、配当性向は13年12月期48.9%、14年12月期49.1%、15年12月期56.3%だった。配当政策については個別業績に応じた配当性向50%を基本方針としている。

 15年12月期末のBtoBプラットフォーム受発注は、買い手企業が同248社増加の1706社、店舗数が同5010店舗増加の3万5314店舗、売り手企業が同1884社増加の2万8240社、そしてシステム取引高が同22.4%増の1兆1419億円だった。またBtoB電子請求書プラットフォームは、契約社数が同588社増加の884社(受取モデルが同458社増加の657社、発行モデルが同130社増加の227社)だった。

 なお商品ブランド変更および事業セグメント変更に伴って、利用社数などの表記も変更する。変更後の表記によると業界は全業界(従来はフード業界中心)で、社数は無料利用を含む社数(従来は有料利用社数)で15年12月期実績は6万2039社、事業所は本社・支店・営業所・店舗(従来は無料利用社数を含む本社・支店・営業所・店舗)で15年12月期実績は28万167事業所、流通金額は全業界の受発注金額と請求書金額(従来はフード業界の受発注金額)で15年12月期実績は1兆3678億円となる。

■16年12月期第1四半期はソフトウェア償却費増加などで減益

 4月28日発表した今期(16年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比12.0%増の14億67百万円、営業利益が同7.5%減の4億72百万円、経常利益が同10.7%減の4億56百万円、そして純利益が同4.1%減の2億94百万円だった。

 BtoBプラットフォーム各システムの開発強化に伴うソフトウェア償却費の増加、人員増による人件費の増加、テレビCMなど販促費の増加で一時的に減益だったが、2桁増収である。利用企業数増加基調に変化はないようだ。なお期初計画との比較では売上高が計画をやや下回ったが、利益は販促費の期ズレで計画を上回ったとしている。売上総利益は4.8%増加したが、売上総利益率は70.6%で同4.8ポイント低下した。販管費は18.1%増加し、販管費比率は38.4%で同2.0ポイント上昇した。営業外費用では為替差損15百万円を計上した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、受発注事業は利用企業数が順調に増加して売上高が同16.3%増の8億81百万円、営業利益が同16.5%増の4億45百万円だった。規格書事業は利用企業数が順調に増加して売上高が同25.6%増の2億69百万円、営業利益が同2.1%増の77百万円だった。ES事業売上高が同7.2%減の2億91百万円、営業利益が46百万円の赤字(前年同期は60百万円の黒字)だった。請求書が大幅に増加したが、商談のシステム利用料が減少した。その他は売上高が同2.2%増加の34百万円、営業利益が3百万円の赤字(前年同期は4百万円の赤字)だった。

 なおBtoBプラットフォーム全体の利用企業数(無料利用含む)は15年12月期末比5109社増加の6万7148社、事業所数は同4万9442事業所増加の32万9609事業所となった。

 受発注は買い手企業数が同130社増加の1836社、売り手企業が同373社増加の2万8613社となった。規格書は買い手機能企業数が同21社増加の390社、卸機能企業数が同16社増加の490社、メーカー機能企業数が同66社増加の6120社となった。請求書(無料利用含む)は企業数が同1万4363社増加の5万5086社(うち契約企業数受取側が同206社増加の863社、契約企業数発行側が同86社増加の313社、契約企業数合計が同292社増加の1176社)となった。商談は買い手企業数が同78社減少の6837社、売り手企業数が同114社減少の1838社となった。

■16年12月期通期は増収増益基調

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想は前回予想(2月15日公表)を据え置いて、売上高が前期(15年12月期)比18.1%増の66億49百万円、営業利益が同9.4%増の22億92百万円、経常利益が同12.2%増の22億89百万円、純利益が同13.2%増の14億81百万円としている。

 各システムの利用企業数増加や利用拡大によって月額課金のシステム使用料が順調に伸長する。既存システムのバージョンアップや全業界向けBtoBプラットフォーム開発に伴うソフトウェア償却費の増加、事業成長に向けた人員増に伴う人件費の増加、テレビCMによる販促費の増加などを増収効果で吸収する。第1四半期の売上高が計画をやや下回ったが第2四半期(4月~6月)以降に挽回可能としている。なお売上総利益率は同1.3ポイント低下の71.6%、販管費比率は同1.5ポイント上昇の37.2%の想定としている。

 セグメント別(連結調整前)の計画は、受発注事業の売上高が同14.3%増の38億38百万円、営業利益が同7.4%増の18億62百万円、規格書事業の売上高が同28.0%増の12億28百万円、営業利益が同8.3%増の3億55百万円、ES事業の売上高が同20.7%増の14億73百万円、営業利益が同70.5%増の90百万円、その他の売上高が同7.8%増の1億45百万円、営業利益が9百万円の赤字としている。

 配当予想は同4銭増配の年間11円80銭(第2四半期末5円90銭、期末5円90銭)としている。予想配当性向は51.7%である。配当政策については個別業績に応じた配当性向50%を基本方針としている。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が22.1%、営業利益が20.6%、経常利益が19.9%、純利益が19.9%である。やや低水準の形だが、利用企業数が増加基調であり、請求書の収益寄与も本格化して通期会社予想の達成は可能だろう。

■中期経営計画では18年12月期の受発注5万社と請求書100万社目標

 16年2月策定の中期経営計画(16年12月期~18年12月期)では、中期経営方針を、フード業界における徹底的なシェア拡大(BtoBプラットフォーム受発注の利用拡大)、電子請求プラットフォームのデファクト化(BtoBプラットフォーム請求書の全業界展開、BtoB電子商取引プラットフォームの構築(15年12月期の調達資金をシステム開発へ重点投資)とした。

 フード業界における徹底的なシェア拡大では、18年12月期までの目標として利用企業数5万社(15年12月期実績3.9万社)およびシステム取引高・外食シェア2兆円・30%(同1.2兆円・16%)を目指す。電子請求プラットフォームのデファクト化では、18年12月期までの目標として、利用企業数100万社(同4.8万社)およびシステム取引高3兆円(同1261億円)を目指す。BtoB電子商取引プラットフォームの構築では、システムコンセプトとして全業界対応BtoBプラットフォーム(同フード業界ASPシステム)を目指す。

 経営目標値には、18年12月期の売上高95億円(受発注47億28百万円、規格書15億44百万円、ES28億39百万円、その他4億29百万円)、営業利益36億03百万円、経常利益36億円、純利益24億23百万円を掲げた。中期の配当計画については、個別業績に基づく基本配当性向50%を継続し、17年12月期の年間配当13円08銭、18年12月期の年間配当17円48銭を計画している。

 そして2020年までに、あらゆる業界にBtoBプラットフォームを提供し、グローバルなBtoBインフラ企業を目指すとしている。積極的な事業展開で中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株価は年初来安値圏だが下値固め完了して反発のタイミング

 株価の動きを見ると、4月8日に地合い悪化も影響して年初来安値となる899円まで調整する場面があり、安値圏でモミ合う展開だ。しかし1000円割れ水準で下値固め完了感を強めている。

 5月2日の終値963円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円34銭で算出)は41倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間11円80銭で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS145円16銭で算出)は6.6倍近辺である。時価総額は約625億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、一方で900円台が下値支持線の形だ。中期成長シナリオに変化はなく、下値固めが完了して反発のタイミングだろう。

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