【アナリスト水田雅展の銘柄診断】VOYAGE GROUPの16年9月期第2四半期累計は減益だが、通期は増収増益期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 VOYAGE GROUP<3688>(東1)は、インターネット広告配信プラットフォーム運営などのアドテクノロジー事業、ポイントサイト「ECナビ」などオンラインメディア運営のメディア事業などを展開している。また日本ブロックチェーン協会の設立に参画するなど、FinTech(フィンテック)領域への取り組みも強化している。16年9月期第2四半期累計は減益だったが、需要拡大基調で通期は増収増益が期待される。株価は調整が一巡して反発のタイミングだろう。

■インターネット領域でアドテクノロジー事業とメディア事業などを展開

 インターネット領域において、広告配信プラットフォーム運営などのアドテクノロジー事業、ポイントサイト「ECナビ」などオンラインメディア運営のメディア事業を展開する事業持株会社である。戦略的投資・アライアンス戦略も活用して、その他インターネット関連事業などにも業容を拡大している。さらにフィンテック領域への取り組みも強化している。

■アドテクノロジー事業はSSP運営が主力

 アドテクノロジー事業では、媒体社(広告を掲載するWebサイトやアプリを運営する会社)に対して、広告収益の最大化を支援するSSP(Supply Side Platform)運営を中心に展開し、スマートフォン分野においてはアドネットワークも展開している。

 連結子会社のfluct(15年12月にKauliを吸収合併)は日本最大級の媒体社向けSSP広告配信プラットフォーム「fluct」運営および「Kauli」運営、Zucksはスマートフォンなどモバイル向け広告配信プラットフォーム「Zucks」運営、intelishはプライベートマーケットプレイス運営、SAICRAFTはキャラクターを活用した収益化支援事業を展開している。

 16年1月にはSAICRAFTがテレビ東京コミュニケーションズと共同で、無料ランチャーアプリ「スヌーピー for APUSテーマ」を開発し、世界16カ国への配信を開始した。

■SSP市場は拡大基調で「fluct」は国内SSP売上高トップ

 近年のインターネット広告市場においては、膨大なデータを活用することで、オーディエンス(広告配信対象者)単位に最適な広告をリアルタイムで配信し、広告単価も需要と供給によって逐次変動するオークション方式で決まるRTB取引(Real Time Bidding=広告プラットフォームを通じて広告が表示される瞬間に、オークション形式で最も条件の良い広告を掲載する広告取引)が急速に普及している。

 DSP(Demand Side Platform)とは、広告枠を買う広告主の側に近い広告配信プラットフォームで、なるべく低コストで高い広告効果を出したい広告主に対して、ユーザー属性などに基づいた最適な広告枠の選定、広告枠の買い付け、入札単価の調整、配信条件の最適化など、広告主のために最適化を支援する広告配信プラットフォームである。

 一方のSSP(Supply Side Platform)とは、広告枠を売る媒体社の側に近い広告配信プラットフォームで、さまざまなDSP、アドネットワーク、アドエクスチェンジなどと連携し、広告枠を高く販売したい媒体社に対して、広告配信の最適化、広告収益の最大化、広告枠販売の効率化を支援する広告配信プラットフォームである。

 そしてプログラマティック取引とは、広告枠の買い手である広告主と広告枠の売り手である媒体社が、DSPやSSPなどの広告配信プラットフォームを介してオンライン上で自動取引する手法で、プログラマティック取引市場(プログラマティック取引を可能とする広告流通市場)は急拡大している。

 SSP広告配信プラットフォーム「fluct」運営は独自の広告配信最適化アルゴリズムを活用し、オーディエンス単位で広告収益が最大化されるように最適化された広告を自動配信するとともに、専任コンサルタントが媒体社の収益性を改善するためのコンサルティングサービスを提供するなど、媒体社に対して広告収益最大化を実現するプロダクトやサービスのワンストップコンサルティングを強みとしている。

 SSP広告配信プラットフォーム「fluct」を通じて配信されたDSPやアドネットワークからの広告収入が当社の売上となり、媒体社に対して支払う広告掲載料が原価となる収益構造である。プログラマティック取引市場拡大に合わせてSSP広告取引流通額も急拡大している。

 なお「fluct」導入媒体数は15年9月期末現在7000以上(14年9月期末は5500以上)となり、また「fluct」を通じて配信可能な広告表示回数(SSP配信imp数)は15年9月期2951億回(14年9月期比24.3%増加)となった。市場環境の変化を追い風として大幅に増加している。そしてSSP売上高は14年9月期比38.4%増の70億12百万円となり、国内SSP市場でトップと推定されている。

 15年12月には子会社fluctがターゲティング配信可能な「fluct Direct Reach」を発表した。SSP「fluct」と提携するメディアは広告枠を直接広告主に販売することが可能になり、広告主は「fluct」と提携する7000以上のメディアの広告枠を直接買い付けることが可能になる。fluctとKauliのノウハウを融合してプライベート取引を強化し、メディアの収益最大化を支援する。

■メディア事業はポイントサイトなどを運営

 メディア関連事業は、自社メディアによる女性向け主力のBtoC販促メディア・コンテンツメディア運営、および提携メディア運営支援などのBtoB各種マーケティングソリューション事業を展開している。

 親会社VOYAGE GROUPがポイントサイト「ECナビ」を運営し、連結子会社ではVOYAGE MARKETINGがポイント交換プラットフォーム「PEX」運営、リサーチパネル(クロス・マーケティング社と提携)が国内最大級のアンケートモニターサイト「リサーチパネル」運営、メルメディアが「朝時間.jp」などライフスタイルに特化したコンテンツメディア運営、そしてゼノシスが化粧品通販事業を展開している。

 ポイントサイト「ECナビ」は無料で登録したユーザーが、提携ショップでのネットショッピング、スポンサーサイトへの訪問・資料請求、ゲーム、アンケートへの回答などを通じてポイントを貯めるオンラインメディアである。ポイントサイト「ECナビ」やアンケートモニターサイト「リサーチパネル」で貯めたポイントは、ポイント交換プラットフォーム「PEX」を通じて現金、マイレージ、電子マネー、ギフト券などと交換できる。

 主な収入は、ポイントサイト「ECナビ」が提携ショップでのネットショッピングやスポンサーサイトへの訪問・資料請求に応じた手数料、および各種広告掲載料、ポイント交換プラットフォーム「PEX」が各種広告掲載料およびポイント交換手数料、アンケートモニターサイト「リサーチパネル」がクライアント企業からの調査料のうちクロス・マーケティング社から受け取るパネル利用料である。

 15年9月期末時点でポイントサイト「ECナビ」は登録会員数478万人、累計ポイント発行額120億円相当、ポイント交換プラットフォーム「PEX」は登録会員数137万人、月間ポイント交換額(流入額)は3.5億円相当額、アンケートモニターサイト「リサーチパネル」は登録会員数157万人となっている。

 なお今後の新たな成長領域として、無料ウェブ百科事典「コトバンク」を中心としたコンテンツメディアへの取り組みを推進している。そして15年12月にはグルメメディア「appeti(アペティ)」を、16年3月にはマンガ・アニメに特化したコミュニティサービス「マンガペディア」をリリースした。

■その他インターネット関連事業

 その他のインターネット関連事業は、連結子会社のVOYAGE SYNC GAMESが海外のスマートフォン向けゲームをプロモーションするゲームパブリッシング事業、VOYAGE VENTURESがインターネット領域に特化したベンチャーキャピタル事業、サポーターズが就職活動支援サービス「サポーターズ」運営、ソーシャランドがFacebookを主軸としたソーシャルメディアマーケティング事業を展開している。

 15年9月にはVOYAGE SYNC GAMESが、世界200以上の地域にオンラインゲーム事業を展開するグローバルゲームディベロッパーであるIGG社(シンガポール)の作品「デッキヒーローズ」をリリースした。全世界700万ユーザー突破の本格的カードバトルゲームである。

 VOYAGE VENTURESは、15年10月にはクラウド家事代行サービス「CaSy」運営のCaSy(東京都、14年1月設立)に出資、15年11月には知識・スキルをワンコイン(500円)で販売するCtoCオンラインマーケット「ココナラ」運営のココナラ(東京都、12年設立)に出資した。

 また16年1月には、スマホ向けゲーム関連事業を展開するSYNC GAMES(東京都)の第三者割当増資を引き受けて持分法適用関連会社化した。これまでVOYAGE VENTURESを通じて同社株式を取得し、14年8月に同社と合弁でVOYAGE SYNC GAMESを設立したが、さらに同社を持分法適用関連会社化することで協業関係を一層強化する。

■事業開発に向けて戦略的投資・アライアンスを積極推進

 インターネット広告のバリューチェーンにおいて「規模・シェアの拡大×垂直統合」による成長を目指し、戦略的投資・アライアンス戦略を積極推進している。また「人を軸にした事業開発会社」として、インターネット事業領域においてさまざまな事業開発および事業投資を推進している。

 15年9月期はアドテクノロジー事業を中心として、戦略的投資および合弁を合計7件(総投資額約21億円)実行した。7件は14年12月合弁会社メルメディア設立、15年2月合弁会社intelish設立、15年4月ドゥ・ハウス持分法適用関連会社化、15年4月Kauli連結子会社化(15年12月31日付でfluctが吸収合併)、15年6月ログリー持分法適用関連会社化、15年6月メディア・ヴァーグ持分法適用関連会社化、15年7月マーケティングアプリケーションズ持分法適用関連会社化である。

 15年10月には、マルチデバイス向けリッチメディア広告・動画広告の制作・配信ソリューションを提供し、エンターテインメント・一般消費財・自動車など多くのナショナルクライアントの豊富な利用実績を有するゴールドスポットメディアの第三者割当増資を引き受けて資本・業務提携(持分法適用関連会社化)した。

 さらに16年4月には持分法適用関連会社ゴールドスポットメディアの株式を追加取得して完全子会社化した。リッチメディア・動画広告分野は成長市場であり、SSP「fluct Direct Reach」における動画広告案件の取り扱い拡大など、広告配信プラットフォームとしての競争力強化や付加価値向上に繋げる。

■フィンテック領域への取り組み強化

 フィンテック領域への取り組みも強化している。16年1月にはブロックチェーンやビットコインなど新しい技術を活用したフィンテック領域の研究開発を行うFinTech Labを設立した。FinTech Labでフィンテック領域に関する事例研究や関連企業・団体などとの接点を広げて情報収集を行うとともに、連結子会社VOYAGE VENTURESがフィンテック領域のベンチャー企業に対して積極的に投資を行っていく方針だ。

 16年1月には連結子会社VOYAGE MARKETINGが、ビットコインの販売・取引所の運営およびブロックチェーンを活用した新サービスの研究開発を行うbitFlyerと提携し、VOYAGE MARKETING運営のポイント交換サイト「PEX」でのPEXポイントからビットコインへの交換を開始した。bitFlyer社は、仮想通貨ビットコインについて14年4月から国内初となる販売所(取引所)を運営するなど、ビットコインに関する総合プラットフォームを提供している。

 4月27日にはブロックチェーンの政策提言を行う一般社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)の設立に参画したと発表している。FinTech領域のベンチャー企業への投資を強化するとともに、JBA会員として、FinTech領域も含めた事業開発ノウハウを活かし、ブロックチェーンによる日本経済の発展に取り組むとしている。

■アドテクノロジー事業のSSP運営が牽引して増収増益基調

 前期(15年9月期)連結業績はアドテクノロジー事業の成長が牽引し、売上高は15期連続増収で過去最高、営業利益は2期連続で過去最高を更新した。四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(10~12月)44億23百万円、第2四半期(1~3月)45億90百万円、第3四半期(4~6月)42億83百万円、第4四半期(7~9月)44億33百万円、営業利益は第1四半期6億22百万円、第2四半期6億08百万円、第3四半期4億60百万円、第4四半期5億46百万円だった。

 なおアドテクノロジー関連の収益認識基準を、報告書到達(確定数値)基準から役務提供完了(概算数値)基準に変更した。従来の報告書到達基準では収益の発生期間と会計期間との間で1ヶ月のズレがあったが、役務提供完了基準下の数値の精度が向上したため、事業実態をより適切に反映した。

 増収効果で売上総利益は同8.8%増加、人件費増加などで販管費は同6.0%増加した。売上総利益率は37.0%で同2.6ポイント低下したが、販管費比率は24.4%で同2.4ポイント低下し、のれん償却前営業利益は同17.4%増加した。特別利益ではリサーチ事業再編に伴う持分変動利益3億93百万円を計上した。ROEは31.8%で同6.3ポイント低下、自己資本比率は47.8%で同7.0ポイント上昇した。配当性向は14.4%だった。

 なおセグメント別(連結調整前)に見ると、アドテクノロジー事業は売上高が同30.0%増の98億33百万円で営業利益が同24.2%増の13億06百万円、メディア事業は売上高が同1.2%増の76億94百万円で営業利益が同4.6%増の9億84百万円、その他インターネット関連事業は売上高が同25.9%減の8億71百万円で営業利益が53百万円の赤字(前々期は45百万円の赤字)だった。

 SSP売上高(SSP広告配信プラットフォーム「fluct」の売上高)は同38.4%増の70億12百万円(PC向けが同0.7%増の20億34百万円、スマホ向けが同63.5%増の49億77百万円)で、SSP配信imp数(SSP広告配信プラットフォーム「fluct」を通じて配信可能な広告表示回数の合計)は同24.3%増の2951億回だった。

■16年9月期第2四半期累計は増収減益

 今期(16年9月期)第2四半期累計(10~3月)連結業績は、売上高が前年同期比13.4%増の102億17百万円、営業利益が同12.6%減の10億75百万円、経常利益が同25.0%減の9億48百万円、純利益が同21.6%減の6億31百万円だった。

 アドテクノロジー事業の好調が牽引して売上高は過去最高を更新した。利益面ではアドテクノロジー事業の売上総利益率低下、のれん償却費の増加、人員増やインフラ投資といった先行投資負担、メディア事業における「PEX」システムリニューアル遅延などで減益だった。

 売上総利益は同5.0%減少し、売上総利益率は32.0%で同6.2ポイント低下した。販管費は同0.7%減少し、販管費比率は21.5%で同3.0ポイント低下した。営業外では為替差損益が悪化(前期差益41百万円計上、今期差損66百万円計上)した。営業外費用では持分法投資損失が拡大(前期15百万円計上、今期70百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益21百万円を計上、特別損失では投資有価証券評価損9百万円を計上した。

 セグメント別に見ると、アドテクノロジー事業は売上高が同23.1%増の61億05百万円、営業利益が同17.0%減の6億32百万円だった。SSP広告配信プラットフォーム「fluct」の導入媒体数が順調に増加し、子会社ZucksのDSP関連も伸長した。利益面では競争激化による全体的な利益率低下、利益率の低いDSPの売上増加、中期成長に向けた人材採用やインフラ投資などの先行投資負担、Kauliの完全子会社化に伴うのれん償却費の増加などで減益だった。

 なお売上高の内訳(セグメント内相殺前)は、SSPが同18.6%増の41億82百万円、DSPが同97.9%増の23億05百万円、その他が同68.0%減の1億71百万円だった。

 メディア事業は売上高が同3.5%増の37億21百万円、営業利益が同9.3%減の4億40百万円だった。粗利益率の高い自社メディアが順調に推移した。主要自社メディア(ECナビとPEXの合計)の売上高は同14.3%増の25億44百万円、QAU(3ヶ月に1回以上、売上にひもづくポイントを獲得したアクティブユーザー数)は同5.7%増の223万人だった。

 その他インターネット関連事業は売上高が同14.1%減の3億89百万円、営業利益が3百万円(前年同期は16百万円の赤字)だった。15年7月にグループ内事業再編に伴ってグローバルリサーチ事業を連結範囲から除外したため減収だが、ゲームパブリッシング事業において15年9月リリースの「デッキヒーローズ」利用者数が順調に増加し、営業損益が改善した。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(10~12月)49億87百万円、第2四半期(1月~3月)52億30百万円、営業利益は第1四半期5億99百万円、第2四半期4億76百万円だった。

■16年9月期増収基調、第2四半期累計の進捗率順調

 今期(16年9月期)通期の連結業績予想については前回予想(10月28日公表、レンジ予想)を据え置いて、売上高が185億円~205億円(前期比4.3%増~15.6%増)、営業利益が20億円~24億円(同10.6%減~7.2%増)、経常利益が20億円~24億円(同8.6%減~9.6%増)、そして純利益が12億円~15億円(同27.1%減~8.9%減)としている。

 事業環境の変化が激しいことに加えて、中期成長に向けた積極投資を継続するためレンジ予想としている。純利益は前期計上した持分変動利益3億93百万円が一巡して減益予想だが、アドテクノロジー事業の成長が牽引して増収基調である。配当予想は前期から東証1部上場記念配当10円を落として年間10円(期末一括)としている。予想配当性向は7.9%~9.9%となる。

 通期会社予想の上限値に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.8%、営業利益が44.8%、経常利益が39.5%、純利益が42.1%と概ね順調な水準である。M&Aも含めて中期成長に向けた積極投資を継続するため一時的要因で減益となる可能性もあるが、増収基調に変化はないだろう。

■SSP拡大基調でアドテクノロジー事業中心に中期成長目指す

 日本のインターネット広告市場は順調に拡大している。電通「2014年日本の広告費」によると、14年の市場規模は13年比12.1%増の1兆519億円と1兆円を突破した。特に運用型広告が13年比23.9%増の5106億円と急成長している。

 運用型広告とは、広告配信の最適化を膨大なデータを処理するプラットフォームによって、自動化もしくは即時的に支援する広告手法である。検索連動広告や一部のアドネットワークが含まれ、新しく登場してきたDSP、アドエクスチェンジ、SSPなどが典型例とされている。枠売り広告、タイアップ広告、アフィリエイト広告などは含まれない。

 プログラマティック取引(広告枠の買い手である広告主と、広告枠の売り手である媒体社が、DSPやSSPなどの広告配信プラットフォームを介してオンライン上で自動取引する手法)は、RTB取引(Real Time Bidding=広告プラットフォームを通じて広告が表示される瞬間に、オークション形式で最も条件の良い広告を掲載する広告取引)の普及によって、すでにPCのインターネット広告市場では一般化し、スマホのインターネット広告市場においても急速に拡大している。

 プログラマティック取引市場の拡大を背景として、SSP広告取引流通額も拡大している。VOYAGE GROUPとシード・プランニング デジタルインファクトの共同調査によると、プログラマティック取引の市場規模は13年の1300億円から16年2479億円、18年2794億円に、SSP広告取引の流通額は13年の123億円から16年333億円、18年434億円に拡大すると予測している。スマホ向け需要が市場拡大を牽引する見込みだ。

 15年12月末時点で「SSP fluct」および「Zucksアドネットワーク」合計の取引媒体数は延べ1万1000メディア、また「ECナビ」「PEX」および「リサーチパネル」合計の延べ会員数は789万人に達している。

 アドテクノロジー事業のSSP広告配信プラットフォーム「fluct」運営を中心に、インターネット広告のバリューチェーンにおいて「規模・シェアの拡大×垂直統合」による成長を目指して、連結売上高1000億円の早期達成を目標としている。中期成長が期待される。

■配当実施で株主還元を積極化、株主優待制度も導入

 15年7月に株主還元方針の変更を発表した。事業の継続的な成長のための投資を最優先事項としながらも、継続的な配当および機動的な自己株式取得も実施する。配当額については、連結業績、単体の資金繰りを含めた財務の健全性、将来の事業展開のための内部留保等を総合的に勘案して決定する。これによって15年9月期に初配当を実施した。

 さらに15年9月には株主優待制度の導入を発表した。毎年第2四半期末(3月31日)および期末(9月30日)現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、連結子会社VOYAGE MARKETINGが提供するデジタルギフトサービス「ギフピー」において利用可能なギフトコード1000円分を贈呈する。15年9月30日現在の株主を対象として開始した。

■株価は調整一巡して反発のタイミング

 株価の動きを見ると、3月の戻り高値圏1500円台から反落してやや水準を切り下げた。16年9月期第2四半期累計の減益も嫌気されたようだ。ただし2月の上場来安値943円まで下押すことなく、1200円台で下げ渋り調整一巡感を強めている。

 5月13日の終値1233円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想のレンジ上限連結EPS126円14銭で算出)は9~10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS508円84銭で算出)は2.4倍近辺である。時価総額は約147億円である。

 週足チャートで見ると、26週移動平均線が戻りを押さえる形となり、再び13週移動平均線を割り込んで安値圏だが、2月の上場来安値まで下押す動きは見られない。下値固めは完了しているようだ。調整が一巡して反発のタイミングだろう。

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