【アナリスト水田雅展の銘柄分析】JFEシステムズは年初来高値更新して15年高値に接近、17年3月期も増収増益・増配予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 JFEシステムズ<4832>(東2)は鉄鋼向けシステム構築を主力とする情報サービス企業で、一般顧客向け複合ソリューション事業なども拡大している。16年3月期は計画超の増益で過去最高益を更新した。17年3月期も増収増益・増配予想で、さらに上振れ余地がありそうだ。株価は年初来高値を更新して15年1月高値に接近している。指標面の割安感も強く、好業績や増配を評価して上値を試す展開だろう。

■JFEグループの情報サービス企業

 川崎製鉄(現JFEスチール)のシステム部門を分離した情報サービス企業である。鉄鋼向け情報システム構築事業を主力として、ERPと自社開発ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業や、自社開発のプロダクト・ソリューション事業も強化している。なお16年4月に連結子会社KITシステムズの商号をJFEコムサービスに変更した。

 16年3月期の事業別売上高は、鉄鋼が161億円、一般顧客が143億円(内訳は自動車が約40~50億円、金融が約30億円、ソリューションが約40億円、プロダクトが約20億円)、基盤サービスが28億円、子会社(JFEコムサービス)が38億円だった。

 アライアンス戦略では、13年5月に大阪ガス<9532>子会社オージス総研と協業、ビジネスブレイン太田昭和<9658>と資本・業務提携している。

■中期経営計画で18年3月期EPS150円以上目指す

 16年3月期スタートの中期経営計画では高収益事業への構造転換を目指し、目標数値に最終年度18年3月期の売上高400億円以上、経常利益20億円以上、純利益12億円以上、EPS150円以上を掲げている。

 重点課題としては、JFEスチール製鉄所業務プロセス改革に向けたシステム刷新の遂行、ERPに自社ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業の拡大、基盤サービス事業の拡大に向けたクラウドサービスの立ち上げを掲げ、自動車など製造業顧客基盤の拡大、e-文書(電子帳票)ソリューションなど自社プロダクト拡販の推進も継続する。

 JFEスチール製鉄所の業務プロセス改革への対応で多くの技術・ノウハウを蓄積し、基盤サービス事業やソリューション事業に活用して一般顧客向け売上拡大を目指す戦略だ。製造業向けERPなど基幹系システムやサプライチェーン計画系システムに組み合わせて拡販し、高収益な事業構造への転換を推進する。

■鉄鋼はJFE製鉄所システム刷新に対応

 鉄鋼事業ではJFEグループの海外展開を支援すべく、タイCGL(溶融亜鉛めっきライン)工場向けで開発した海外グループ会社向け標準システムを適用し、インドネシアCGL工場でシステムを構築(16年1月稼働)した。

 さらにJFEスチール製鉄所の業務プロセス改革に向けて、システムを刷新して生産管理システムの高度化・共通化を推進する。16年からの本格対応に向けて製鉄所システムプロジェクトを新設し、JFEスチールの製鉄所業務プロセス改革斑との連携を強化している。

 16年3月には、SAPジャパンがパートナー企業を表彰する「SAP AWARD OF EXCELLENCE 2016」にて、優秀賞「プロジジェクト・アワード」を受賞した。受賞対象プロジェクトはJFE電制の基幹システム刷新プロジェクトで、エンジニアリング向けテンプレートを採用することにより12ヶ月間で構築した。

■一般顧客向け複合ソリューションを拡大

 ERPに自社ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューションは自動車メーカー向けなどに新規受注が増加している。さらなる事業拡大に向けてアライアンス戦略も積極活用する。

 15年6月にはセールスフォース・ドットコム社と、同社のクラウド・アプリケーション「Sales Cloud」およびクラウド・アプリケーション開発基盤「Force.com」に関する販売パートナー契約を締結した。

 同社の「Force.com」を利用して親会社JFEスチール向けに「販売情報共有システム」を構築した実績を持ち、15年5月には経済産業省と東京証券取引所が企画する「攻めのIT経営銘柄」(18銘柄)にJFEホールディングス<5411>が選定された。JFEスチールの「販売情報共有システム」が選考のポイントの一つとして挙げられている。

 15年9月にはITホールディングス<3626>グループのTISと、当社のデータ分析基盤構築テンプレート「KPIMart(ケイピーアイマート)」の販売代理店契約を締結した。ビジネス・インテリジェンス(BI)およびデータウェアハウス(DWH)分野で協業し、製造業への一層の販路拡大を図る方針だ。

■食品の品質情報管理分野のデファクト化目指す

 食の安全・安心を支える食品業界全体の品質情報管理向上への取り組みを強化している。15年7月には自社開発「MerQurius Net(メルクリウスネット)原料規格書サービス」登録サプライヤ企業が3000社を超えた。原料規格書は食品メーカーがサプライヤから購入する原料の品質に係る情報である。

 15年10月には食品品質情報管理ソリューション「MerQurius」のクラウドサービス「MerQurius クラウド」の販売を開始し、16年1月からクラウドサービスを開始した。

 製菓、冷凍食品、調味料など大手食品メーカー中心に200社以上の利用実績を持つ「MerQurius」をクラウド環境で利用可能とするもので、同時に加入する「MerQurius Net 原料規格書サービス」と連携して原料規格書の授受を効率化する。クラウドサービスによって売上高100億円未満の中堅・中小食品メーカー約1200社をターゲットに拡販を推進してデファクト化を目指す方針だ。

 また16年2月には自社開発の配合・食品法規マネジメント「Quebel(キューベル)」について、15年4月施行の新食品表示法にも対応した商品開発支援テンプレートの販売を開始した。

■e-文書(電子帳票)ソリューション分野も強化

 e-文書(電子帳票)分野では15年10月に、電子帳票システム「FiBridge2」事例として第一生命保険<8750>の導入事例を公開している。

 15年11月には、シーイーシー<9692>と税務関係書類の管理分野において提携し、両社が強みとする製品を組み合わせた電子データ化・長期保存ソリューションの提供を開始した。

■厚生労働省「均等・両立推進企業表彰」で東京労働局長賞を受賞

 なお15年10月には、厚生労働省が実施する平成27年度「均等・両立推進企業表彰」の均等推進企業部門において「東京労働局長奨励賞」を受賞した。

 「均等・両立推進企業表彰」は、女性労働者の能力発揮を促進するための積極的な取組(ポジティブ・アクション)および仕事と育児・介護との両立を支援する取組について、他の模範ともいうべき取組を推進している企業を「均等・両立推進企業」として表彰するものである。平成27年度東京労働局長賞は当社を含めて5社が選定された。

 また3月30日には女性活躍推進法に関する行動計画の策定を発表している。計画期間は16年4月1日~21年3月31日で、目標は「管理職(係長級以上)登用者に占める女性の割合を全社の女性在籍比率(25%)並みとする」とした。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)77億69百万円、第2四半期(7月~9月)89億33百万円、第3四半期(10月~12月)84億38百万円、第4四半期(1月~3月)106億67百万円、営業利益は第1四半期83百万円の赤字、第2四半期5億28百万円、第3四半期4億77百万円、第4四半期7億79百万円だった。

 3月期決算企業の年度末にあたる第4四半期の構成比が高い収益構造である。なお15年3月期の売上総利益率は18.6%で14年3月期比1.6ポイント上昇、販管費比率は13.8%で同0.1ポイント低下、ROEは8.4%で同2.5ポイント上昇、自己資本比率は49.5%同1.8ポイント低下、配当性向は26.3%だった。

■16年3月期の利益は計画超で着地、最高益更新

 前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比3.4%増の370億30百万円、営業利益が同15.1%増の19億57百万円、経常利益が同16.1%増の19億53百万円、純利益が同35.8%増の11億34百万円だった。5期連続増収増益で、売上高、経常利益、純利益とも過去最高を更新した。

 売上高は計画をやや下回ったが、製造や金融などの一般向け、さらにJFEスチール向けが順調に推移して増収だった。利益は営業・経常微減益の計画だったが、増収効果や利益率改善効果で、いずれも計画超となり2桁増益で着地した。純利益は税制改正も寄与した。

 事業別の売上高は、鉄鋼が同5億円増加の161億円、一般顧客が同10億円増加の143億円、基盤サービスが同1億円増加の28億円、子会社(JFEコムサービス)が同4億円減少の38億円だった。鉄鋼ではJFEスチール製鉄所システム刷新に着手した。一般は自動車や金融向けが増加した。JFEコムサービスは機器販売からサービス事業へのシフトを進めている。

 売上総利益は同3.9%増加し、売上総利益率は18.7%で同0.1ポイント上昇した。販管費は同0.1%増加にとどまり、販管費比率は13.4%で同0.4ポイント低下した。営業外費用では固定資産除却損が減少(前々期36百万円計上、前期25百万円計上)した。特別利益では事業譲渡益39百万円を計上した。

 なお配当は4月26日に増額修正(期末4円増額)して年間34円(期末一括)とした。前々期との比較では6円増配で、配当性向は23.6%となる。またROEは10.6%で同2.2ポイント上昇、自己資本比率は50.6%で同1.1ポイント上昇した。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)80億12百万円、第2四半期(7月~9月)91億74百万円、第3四半期(10月~12月)89億53百万円、第4四半期(1月~3月)108億91百万円、営業利益は第1四半期56百万円、第2四半期4億49百万円、第3四半期4億88百万円、第4四半期9億64百万円だった。

■17年3月期も増収増益・増配予想で上振れ余地

 今期(17年3月期)の連結業績予想(4月26日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比6.4%増の394億円、営業利益が同1.2%増の19億80百万円、経常利益が同2.4%増の20億円、純利益が同13.8%増の12億90百万円としている。6期連続増収増益で過去最高益を更新する見込みだ。そして中期経営計画の18年3月期目標値である売上高400億円以上、経常利益20億円以上、純利益12億円以上、EPS150円以上を1期前倒しで達成する見込みだ。

 事業別売上高の計画は、鉄鋼がJFEスチール製鉄所システム刷新の本格化で同18億円増加の179億円、一般顧客が高水準維持で同1億円増加の144億円、基盤サービスがJFEグループ会社向け情報基盤構築で同3億円増加の31億円、子会社がサービス事業拡大で同2億円増加の40億円としている。

 営業利益と経常利益は小幅増益予想としている。増収や鉄鋼の利益率改善が寄与するが、前期に高収益案件の前倒しなどで一般(特に自動車)が想定以上に好調だったこと、開発労務費が増加(1億40百万円)すること、製鉄所システム刷新関連や採用・人材開発強化など投資が増加(3億10百万円)することを考慮しているようだ。ただし保守的な印象が強く、上振れ余地がありそうだ。

 なお配当予想は同4円増配の年間38円(期末一括)としている。予想配当性向は23.1%となる。4期連続の増配で配当額は上場後の最高となる。

 利益配分については、中長期的な事業計画に基づき、再投資のための内部資金の確保と安定的な配当を念頭に置きながら、財政状態、利益水準および配当性向等を総合的に勘案して決定するとしている。また売上高・利益とも下半期に偏る傾向があるため、中間配当は行わず年1回の期末配当を基本方針としている。

■ウェブサイトの受賞

 15年7月には当社ウェブサイトがモーニングスター「GomezIRサイトランキング2015」において総合91位を獲得し、銅賞を受賞した。15年12月には当社ウェブサイトが、日興アイ・アール「2015年度全上場企業ホームページ充実度ランキング」で最優秀サイト、大和インベスター・リレーションズ「2015年インターネットIR表彰」で優良賞を受賞した。

■株価はゴールデンクロスで先高期待、好業績を評価して上値試す

 株価の動きを見ると、4月27日には年初来高値となる1350円まで上伸し、15年1月高値1400円に接近する場面があった。好業績や増配を好感する動きだろう。

 5月16日の終値1258円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS164円27銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間38円で算出)は3.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1410円16銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約99億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスを示現して先高期待を強めている。指標面の割安感も強く、好業績や増配を評価して上値を試す展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る