【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンフーズは年初来高値更新、17年3月期増益予想で1倍割れPBRに割安感

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ジャパンフーズ<2599>(東1)は飲料受託生産の最大手である。飲料受託事業の収益力強化に加えて、新規ビジネス分野への展開も推進している。16年3月期は計画超の大幅増益だった。そして17年3月期も増益予想である。16~18年度の新中期経営計画では、目標数値として19年3月期連結純利益10億円、ROE10%などを掲げている。株価は年初来高値更新の展開となった。1倍割れPBRで依然として割安感が強い。上値追いの展開だろう。

■飲料受託生産の国内最大手

 伊藤忠商事<8001>系で飲料受託生産(OEM)の国内最大手である。品目別では炭酸飲料と茶系飲料を主力として、コーヒー飲料、果汁飲料、機能性飲料、酒類飲料、ファーストフード店のディスペンサーでサービスされる業務用濃縮飲料(ウーロン茶、アイスコーヒーなど)を製造している。

 主要得意先はアサヒ飲料、キリンビバレッジ、伊藤園<2593>、サントリー食品インターナショナル<2587>などの大手飲料メーカーである。容器別ではペットボトル飲料が主力で、缶飲料は戦略的に減少させている。

 16年3月期製造数量(ケース数)の品目別構成比は炭酸飲料62.5%、茶系飲料14.0%、酒類飲料6.6%、コーヒー飲料5.7%、果実飲料4.9%、機能性飲料等6.4%だった。また容器別構成比はPETボトル70.8%(うち大型PET24.0%、小型PET・ボトル缶46.7%)、缶19.8%、広口ボトル缶(TEC缶含む)6.0%、瓶1.9%、その他1.6%だった。

■フレキシブルで効率的な生産に強み

 本社工場では12年7月に世界最新鋭の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン(Eライン)が稼動し、14年3月には既存の大型ペットボトルライン(Tライン)もリバイタライズ(機能増強)で炭酸・非炭酸兼用無菌充填ライン化した。

 さまざまな容器(ペットボトル、瓶、缶)の飲料を世界最大級の本社1工場で生産し、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産を強みとしている。容器のコストダウンなどにも積極的に取り組んでいる。

 また本社工場のある千葉県長柄町は、首都圏に近いロケーションという競争優位性に加えて、表層地盤の揺れやすさが0.4~0.6と安定しているため災害優位性にも優れている。

■新規ビジネスも積極推進

 また新規ビジネス分野(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品)への展開も積極推進している。

 国内で水宅配事業を展開するウォーターネット(当社出資比率34%)、中国で飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(常熱)有限公司(東洋製罐との合弁、当社出資比率24.9%)を、17年3月期に連結化してグループ経営を強化する方針だ。なおウォーターネットは黒字が定着し、東洋飲料は受託数量の増加で16年度黒字化目途としている。

 東洋飲料(常熱)は中国における日系初の飲料受託製造会社で、国際的な認証規格「FSSC22000」も取得している。第1期として2ライン(12年8月および9月)、第2期として2ライン(13年5月および8月)が稼働し、さらに15年8月には1ラインを大型PET対応に改造した。16年度は中国系メーカーを中心に受託製造数量が大幅に増加する見込みだ。

 自社ブランド商品に関しては、本社工場がある千葉県産の農林水産物を使用した商品「おいしい房総サイダー」シリーズなどを千葉県中心に販売している。16年4月には「千葉の醤油サイダー」を新たに「千葉のしょうゆサイダー」としてリニューアル販売開始した。また「千葉のトレインボトルの水」いすみ鉄道・銚子電鉄2品種を数量限定で販売する。

■上期(4月~9月)が繁忙期、下期(10月~3月)が閑散期の収益構造

 15年3月期の四半期別業績推移を見ると、受託製造数量は第1四半期(4月~6月)1344万6千ケース、第2四半期(7月~9月)1068万9千ケース、第3四半期(10月~12月)735万3千ケース、第4四半期(1月~3月)926万ケース、売上高は第1四半期89億32百万円、第2四半期67億28百万円、第3四半期45億49百万円、第4四半期46億53百万円、営業利益は第1四半期6億37百万円、第2四半期1億54百万円、第3四半期4億67百万円の赤字、第4四半期2億65百万円の赤字だった。

 飲料業界全体が、夏場の上期(4月~9月)が繁忙期となり、冬場の下期(10月~3月)が閑散期となって生産量が減少するため、下期は営業損益が赤字となる収益構造だ。ただし15年3月期の第4四半期は、第3四半期に比べて赤字が大幅に縮小した。15年3月期は消費増税の影響や夏場の天候不順の影響を受けたが、受託製造数量増加や生産性向上などで営業損益は改善基調となった。

■16年3月期から一部取引形態と減価償却方法を変更

 なお16年3月期から、一部飲料メーカーとの取引形態変更(有償支給から無償支給に変更)に伴って、見かけ上の売上高は大幅に減少するが、実質的な売上高である加工料収入に影響はない。また建物およびリース資産を除く有形固定資産の減価償却方法について、16年3月期から「主として定率法」を「主として定額法」に変更した。

■16年3月期は大幅増益

 前期(16年3月期)の非連結業績は、売上高が一部飲料メーカーとの取引形態変更に伴って前々期(15年3月期)比36.5%減の157億75百万円だが、営業利益が同18.2倍の10億72百万円、経常利益同17.7倍の10億60百万円、純利益が4億34百万円の黒字(前々期は24百万円の赤字)だった。計画超の大幅増益だった。

 一部飲料メーカーとの取引形態変更(有償支給から無償支給に変更)に伴って見かけ上の売上高は大幅減収だが、受託数量増加によって実質的な売上高となる加工料収入は増加した。受託製造数量は同1.2%増の4124万ケースだった。飲料総研調べによると、消費増税などの影響が一巡して飲料業界全体の販売数量が同2.8%増(ミネラルウォーターを除くと同1.4%増)と上向いた。さらに積極的な営業活動による新規商材の獲得も寄与した。なお有償支給取引は全体の約2割に低下したようだ。

 売上総利益は同57.8%増加した。加工料収入の増加に加えて、新規商材獲得に伴うプロダクトミックス改善も寄与した。販管費は4.5%増加した。なお営業利益増減要因分析では、増益要因が加工料売上増加4億59百万円、電力・燃料等ユーテリティ関連コストの低減4億23百万円、減価償却方法変更に伴う減価償却費減少4億37百万円、減益要因が修繕費や労務費などの増加3億66百万円としている。

 また特別利益では国庫補助金10億76百万円、特別損失では固定資産圧縮損7億71百万円、関係会社株式評価損3億80百万円を計上した。配当は前々期と同額の年間27円(第2四半期末10円、期末17円)とした。配当性向は29.9%となる。ROEは6.0%で同6.3ポイント上昇(前々期はマイナス0.3%)、自己資本比率は37.4%で同8.8ポイント低下した。

 四半期別業績推移を見ると、受託製造数量は第1四半期(4月~6月)1405万7千ケース、第2四半期(7月~9月)1122万9千ケース、第3四半期(10月~12月)637万3千ケース、第4四半期(1月~3月)958万1千ケースだった。売上高は第1四半期55億28百万円、第2四半期40億56百万円、第3四半期26億33百万円、第4四半期35億58百万円、営業利益は第1四半期10億54百万円、第2四半期5億10百万円、第3四半期5億45百万円の赤字、第4四半期53百万円の黒字だった。

■17年3月期も増益予想

 今期(17年3月期)の非連結業績予想(4月26日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比8.1%減の145億円、営業利益が同1.6%増の10億90百万円、経常利益が同3.8%増の11億円、純利益が同38.0%増の6億円としている。

 新規商材受託などで受託製造数量が増加し、実質的な売上高となる加工料収入および売上総利益が増加基調である。操業度上昇効果やコストダウン効果も寄与して増益予想である。配当予想は前期と同額の年間27円(第2四半期末10円、期末17円)としている。予想配当性向は21.7%となる。

■新中期経営計画「“JUMP+2018”-躍動-」を策定

 16年4月策定の16年度~18年度新中期経営計画「“JUMP+2018”-躍動-」では、成長戦略の方向性・キーワードを「戦略的パートナーシップ」「自立自発」「100年企業」「イノベーション」とした。

 そして2つの成長戦略として、コアビジネス(国内飲料受託製造事業)の収益拡大と、新規ビジネス(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品)の着実な推進を掲げている。

 コアビジネス(国内飲料受託製造事業)では「名実ともに日本一のパッカー」を目指して、経営課題としている「ふ(防ぐ)」「け(削る)」「か(稼ぐ)」を確実に実行する。品質向上の追求、ローコストオペレーション(生産効率・稼働率・原単位の向上)、新規商材の取り込みを積極推進するとともに、既存設備スクラップ&ビルドなどの積極投資を推進して競争力向上を図る方針だ。

 また新規ビジネス分野(海外飲料受託製造事業、国内水宅配事業、自社ブランド商品)では、もう一つの経営基盤構築に向けて、戦略的パートナーシップも活用して業容拡大を目指す方針だ。国内で水宅配事業を展開するウォーターネットは販売数量が順調に増加して黒字が定着した。中国で飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(常熱)有限公司(東洋製罐との合弁)は、受託数量が16年度に大幅増加するため黒字化の目途が立ったとしている。

 そして17年3月期から連結決算を開始する方針で、経営目標値としては最終年度19年3月期連結ベースで売上高168億円、営業利益19億円、経常利益16億円、当期純利益10億円、総資産209億円、株主資本93億円、ROE10.0%、ROA4.0%を掲げている。また3期合計(17年3月期は非連結)の設備投資額は95億円としている。

■飲料受託生産の役割・存在感が一段と高まる

 飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの内製拡大による受託製造量の減少を懸念する見方もあるようだが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。

 また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。このため飲料受託生産の役割や存在感は一段と高まっている。そして当社は飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮して受託製造量の増加が期待される。中期的に収益拡大基調だろう。

■株主優待で積極還元

 配当の基本方針は、健全な財務体質を目指し、将来の事業発展に備えた設備投資等のための内部留保を確保する一方、業績に応じた安定かつ継続的な配当を行うとしている。

 また株主優待制度を実施して積極還元姿勢を示している、株主優待制度は毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈している。

■株価は年初来高値更新、1倍割れPBRに依然として割安感

 株価の動きを見ると、3月高値1200円を突破して年初来高値更新の展開となった。5月20日には1244円まで上伸した。好業績を評価する流れだろう。

 5月20日の終値1240円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想EPS124円41銭で算出)は10倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は2.2%近辺、前期実績PBR(前期実績BPS1531円29銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約63億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって水準を切り上げ、年初来高値を更新して15年7月高値1210円も突破した。上昇トレンドの形だ。1倍割れPBRで依然として割安感が強い。上値追いの展開だろう。

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