久世の前期16年3月期は微減収ながら大幅増益で黒字転換

■前期に大きく取り組んだテーマは採算性重視、物流の効率化

 久世<2708>(JQS)は、5月17日に決算説明会を開催した。

 2016年3月期の事業環境は、外食産業業界では、依然として消費者の節約志向というのは根強いものがあった。昨年の10月以降から、若干薄日が差してきたが、今年の1月、2月、3月と低迷した。総じて業界全体としては、若干プラスとなった。

 その様な状況の中で、前期16年3月期は微減収ながら大幅増益となり黒字転換となった。前期に大きく取り組んだテーマは、採算性重視と物流の効率化であった。前々期の赤字の主原因がこの2つにあったので、この2点に絞って取り組んできた。その結果、計画を大幅に上回り着地することが出来た。

 売上高は、671億93百万円と前年を9億96百万円下回った。この原因は、今年1月末に、大口取引先との取引が終了したことにある。他にも不採算の取引先との取引解消もあったが、新規開拓を進め、カバーに努めたことで、1.5%の微減に留まった。

 売上総利益については、118億21百万円と前年を4億24百万円上回った。15年3月期の売上総利益率が16.7%であったのに対して、16年3月期は17.6%と0.9ポイント改善することが出来た。

 販売費及び一般管理費は、113億82百万円と前年に対し3億04百万円減少した。売上高販管費率は0.2ポイント改善した。

 その結果、16年3月期の営業利益は、4億39百万円(前年同期△2億88百万円)、経常利益5億93百万円(同△1億99百万円)、純利益4億85百万円(同△4億12百万円)と大幅増益で黒字転換となった。

■本部長、所属長クラスでプロジェクトを組成、価格改定の見える化も行う

 15年3月期は上場以来初の赤字転落となったことから、16年3月期は収益の大幅な改善に取り組んだ。

 まず、本部長、所属長クラスでプロジェクトを組成し、収益に対する改善を目的に、顧客毎にメリハリをつけて対応を行った。また、昨年は一昨年に引き続き、円安の影響で、軒並みの大幅な商品の値上げがあった。そのため、価格の改定を早急に行う必要があり、価格改定の見える化を行った。顧客毎、単品毎の価格が、一目で分かる仕組みを作り、この結果、粗利の改善に繋がった。
 販管費については、3億04百万円減少した。この大きな要因は、物流費が2億14百万円減少したことによるもの。

 これらの取組により、営業利益以下が大幅増益となった。最終利益については、投資有価証券売却益85百万円を特別利益として計上したことで、大幅な増益となった。

■今期17年3月期は減収ながら営業利益2ケタの増益

 今期17年3月期連結業績予想は、売上高630億円(前期比6.2%減)、営業利益4億85百万円(同10.4%増)、経常利益5億30百万円(同10.7%減)、純利益3億80百万円(同21.8%減)を見込んでいる。
 売上高が減収となるのは、今年1月末に、大口取引先との取引が終了した影響による。
 営業利益は、減収ながら2ケタの増益を見込むのは、前期の取組の成果が表れ、収益率の改善によるもの。
 純利益が大幅減益になるのは、前年同期に投資有価証券売却益85百万円を特別利益として計上した影響によるもの。

 今期17年3月期は、第3次C&G中期経営計画の2年目にあたる。グループの基本戦略としては、1)チェーン戦略(KZN)、2)エリア戦略、3)フルライン戦略、4)商品開発・加工・製造戦略、5)海外事業戦略を“5つを柱”としている。

 チェーン戦略は、効率的な全国の物流ネットワークの構築と機能の強化を目指している。

 エリア戦略は、3大都市圏の繁華街を中心により狭く、より深くエリアの特性に合った戦略を強化していく。

 フルライン戦略では、加工食品、冷凍食品だけでなくノンフードや、素材、生鮮食品を揃え、フルライン機能を強化することで、顧客の要望に応える。

 商品開発・加工・製造戦略では、マーチャンダイジング機能やブランディング力を高めていく。そのために商品開発をさらに進め、ドルチェーゼというデザートブランドやスープ・ソースを製造しているグループ子会社のキスコフーズを一層強化していく。

 海外事業戦略については、着実に展開していくことで、新しいマーケットを開拓していく。

 以上の取組を進めることで、安定収益の確保、業務効率の改善、グループ総合力の発揮により、「三大都市圏でNO.1」、「お客様満足度NO.1」を目指す。

■既存得意先のインストアシェアアップと新規得意先の開拓を推進

 今期の取組としては、環境変化への対応を行うための体質改善に努める。営業部門では、既存得意先のインストアシェアアップと新規得意先の開拓を進める。そのために、業態や客単価等、お客の特性に対応した取組を行う。
 チェーン戦略とエリア戦略では、引き続き首都圏・中部圏・関西圏の三大都市圏を中心に対応する。また、2020年の東京オリンピックを見据え、首都圏(主に東京・神奈川)を重点地区として取り組む。広域チェーン店との取引については、久世全国ネットワーク(KZN)を利用して、取引条件を見直しながら対応する。

 物流部門では、物流費の削減に努めるため、配送コースの組み替えにより、車輌台数の削減を進め、一方で、センター在庫の適正化に努める。
 業務品質の向上に関しては、発注支援システム、音声システム、輸配送管理システム、工程管理システムといった物流システムを導入することで品質を向上する。

 商品部門では、前期に引き続き、カテゴリー別に対象商品をピックアップし、商品の集約を推進する。
 また、品質や価格等において優位性のある商品の開発・販売に努める。今期は、久世PB商品では、新商品を10アイテム発売する予定。

 子会社の取組については、キスコフーズでは、高品質、高価格帯マーケットのニーズに合った商品開発を推進する。
 久世フレッシュ・ワンは、都内重点地区に加え、横浜地区の業務を拡大する。また、産地銘柄野菜を既存得意先に拡販し、インストアシェアアップに努める。11月には、豊洲新市場へ移転する。
 旭水産も豊洲新市場に11月に移転する。10月には、「築地魚河岸」へ出店し、BtoCビジネスを展開する。
 海外事業については、製造事業では、キスコフーズインターナショナル・ルー製品の開発輸入へ着手する。
 卸売事業では、久華世(成都)は、上海日生物流食品との連携強化により、成都、重慶での業務を拡大する。ドルチェーゼ商品のテスト販売も中国でスタートする。
 生鮮事業については、旭水産が東南アジア、北米向けに輸出を拡大する。

 以上の取組を行うことで、中期経営計画の最終年度である2018年3月期には、売上高670億円、営業利益6億70百万円、営業利益利率1.0%、自己資本比率28.7%、ROE10.4%の達成を目指す。

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