【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ゼリア新薬工業は調整一巡して出直り、17年3月期増収増益・増配予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ゼリア新薬工業<4559>(東1)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。医療用医薬品事業では潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」が伸長し、コンシューマーヘルスケア事業ではヘパリーゼ群が好調に推移している。16年3月期は大幅増益・増配だった。そして17年3月期も増収増益・増配予想である。株価は調整が一巡して出直り展開だろう。

■消化器分野が中心の医薬品メーカー

 消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。

 医療用医薬品事業では、潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」を主力として、H2受容体拮抗剤「アシノン」や亜鉛含有胃潰瘍治療剤「プロマック」なども展開している。13年6月には自社開発の機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」を発売し、アステラス製薬<4503>と共同で早期の市場浸透を目指している。

 コンシューマーヘルスケア事業では、ヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力としている。15年10月には肝臓水解物・イノシトール配合の滋養強壮保健剤「ヘパリーゼ・プラス2」(第3類医薬品)を全国の薬局・ドラッグストアにおいて発売開始した。さらに関節痛・腰痛治療薬「コンドロイチンZS錠」(第3類医薬品)の錠剤を小型化した製品の販売を開始した。また16年3月にはコンビニエンスストア向け清涼飲料水「ヘパリーゼWプレミアム」を発売開始し、製品ラインアップを充実した。

 なお16年3月期の事業別売上高構成比は、医療用医薬品事業が53.8%、コンシューマーヘルスケア事業が46.0%、その他(保険代理業・不動産賃貸収入)が0.3%だった。

■グローバル展開を推進

 M&Aを活用してグローバル展開も推進している。08年10月基礎化粧品のイオナ、09年9月「アサコール」の開発会社ティロッツ社(スイス)、10年9月コンドロイチン原料のZPD社(デンマーク)を子会社化した。

 13年8月にはビフォーファーマ社(スイス)と鉄欠乏症治療剤「Ferinject」の日本国内における独占的開発・販売契約を締結した。またZPD社の株式を追加取得して完全子会社化した。

 15年4月にはベトナムの中堅医薬品製造販売会社F.T.Pharma社の株式49.0%取得を発表した。当社グループのアジア地域における事業展開の拠点とする。

■アストラゼネカのIBD治療剤の権利を取得

 15年7月には消化器領域に特化した子会社のティロッツ社(スイス)が、アストラゼネカ社が販売している炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」(一般名:ブデソニド)の、米国を除く全世界における権利を取得する契約を締結した。取得額は2億15百万米ドル(約265億円)である。

 炎症性腸疾患(IBD)は潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)を含めて、世界中に約500万人の患者が存在すると推定されている疾患である。米国を除く全世界40ヶ国以上でCDを適応として販売されているIBD治療剤「Entocort」の権利を取得することにより、IBD治療においてUCの第1選択薬として用いられている「アサコール」を補完することが可能になる。

■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進

 新薬開発は消化器分野を最重点領域と位置付けて、国際的に通用する新薬の創製を念頭に置き、自社オリジナル品の海外での臨床試験を積極的に推進するとともに、海外で実績のある薬剤を導入して国内での開発を進めている。

 14年8月にはエーザイの新規化合物「E3710」(プロトンポンプ阻害剤:PPI)に関するライセンス契約を締結した。エーザイは当社に対して「E3710」の日本における独占的開発権、共同販促権、非独占的製造権を付与し、開発および製造販売承認は当社が行う。承認取得後は両社で共同販促を行う。

 14年9月には、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品「プレフェミン」(要指導医薬品)を販売開始した。

 アストラゼネカから導入したクローン病を適応症とする糖質コルチコイド「ブデソニド」(炎症性腸疾患治療剤「Entocort」)は、15年10月に国内製造販売承認申請を実施した。販売名は「ゼンタコート」の予定としている。

 国内消火器系分野の「Z-206」(一般名メサラジン、協和発酵キリンとの共同開発)は、フェーズ3段階である。潰瘍性大腸炎を適応症として「アサコール」の用法・用量を追加する。

 膵臓癌を適応症とする「Z-360」は、日本を含むアジア地域においてフェーズ2国際共同治験を実施している。エーザイ<4523>から導入した長時間作用型プロトンポンプ阻害剤「Z-215」は、逆流性食道炎を適応症としたフェーズ2を実施している。その他の分野では、子宮頸癌を適応症とする「Z-100」が、日本を含むアジア地域においてフェーズ3国際共同治験を実施している。ビフォーファーマ社から導入した鉄欠乏性貧血治療剤「Z-213」はフェーズ3を開始した。

 海外は、中国で潰瘍性大腸炎を適応症として「Z-206」(メサラジン)を承認申請中である。潰瘍性大腸炎を適応症とする「TP05」(メサラジン)は欧州・カナダでフェーズ3を実施している。自社開発の「Z-338」(アコファイド)は、欧州において機能性ディスペプシアを対象としたフェーズ3を実施し、北米ではフェーズ2が終了した。導入品で家族性大腸腺腫症を適応症とする「TP09」は欧州・米国でフェーズ3を実施している。

■15年3月期は新規開発テーマ導入費用や研究開発費を想定以上に投入

 なお15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)147億15百万円、第2四半期(7月~9月)154億21百万円、第3四半期(10月~12月)156億46百万円、第4四半期(1月~3月)152億30百万円、営業利益は第1四半期8億58百万円、第2四半期14億21百万円、第3四半期10億61百万円、第4四半期6億62百万円の赤字だった。

 15年3月期は、薬価改定や後発品使用促進の影響、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場構築遅れ、ライセンス収入やロイヤリティ収入の減少、広告宣伝費の増加、成長戦略に欠かせない新薬パイプラインの充実を図るため当初予定していなかった新規開発テーマの導入費用の発生、ヨーロッパとアジア地域で実施している治験の進捗による研究開発費の想定以上の増加などで大幅減益だった。

 15年3月期の差引売上総利益率は69.7%で14年3月期比0.7ポイント低下、販管費比率は65.3%で同5.9ポイント上昇した。ROEは4.2%で同6.9ポイント低下、自己資本比率は65.0%で同6.0ポイント上昇した。配当性向は62.3%だった。

■16年3月期は研究開発費の減少も寄与して大幅増益・増配

 5月13日発表した前期(16年3月期)の連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比2.4%増の624億75百万円、営業利益が同70.4%増の45億65百万円、経常利益が同60.7%増の44億50百万円、純利益が同37.4%増の35億13百万円だった。

 売上高は計画をやや下回ったが、各利益は計画超の大幅増益だった。コンシューマーヘルスケア事業が好調に推移し、研究開発費の減少も寄与して医療用医薬品事業の損益が大幅に改善した。なお海外売上高比率は20.0%で同2.8ポイント上昇した。

 差引売上総利益は同4.7%増加し、差引売上総利益率は71.3%で同1.6ポイント上昇した。販管費は同0.3%増加にとどまり、販管費比率は64.0%で同1.3ポイント上低下した。研究開発費は同13.2%減少して85億79百万円だった。営業外費用では為替差損益が悪化(前々期は差損6百万円計上、前期は差損1億36百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益が減少(前々期15億07百万円計上、前期10億87百万円計上)した。特別損失では投資有価証券評価損1億18百万円を計上したが、減損損失が減少(前々期2億73百万円計上、前期1億43百万円計上)した。また前々期計上した買収調査費用95百万円が一巡した。

 配当については5月13日に期末1円増額を発表して、同1円増配の年間31円(第2四半期末15円、期末16円)とした。配当性向は46.9%となる。ROEは5.6%で同1.4ポイント上昇、自己資本比率は53.5%で同11.5ポイント低下した。

 セグメント別動向を見ると、医療用医薬品事業は売上高が同0.5%減の335億80百万円、営業利益(連結調整前)が同56.5%増の30億24百万円だった。売上面では、潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」は国内が順調だったが、海外がスイスフラン高の影響を受けたため、全体として横ばいだった。H2受容体拮抗剤「アシノン」や亜鉛含有胃潰瘍治療剤「プロマック」は、後発医薬品使用促進の影響を受けて苦戦した。機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」は、市場構築が計画に対して遅れている状況だが、医療機関における疾患および治療法などの認知度向上に努めている。

 コンシューマーヘルスケア事業は売上高が同6.1%増の287億41百万円、営業利益が同13.4%増の66億16百万円だった。主力のヘパリーゼ群が製品認知度向上効果や製品ラインナップ充実効果などで好調だった。コンドロイチン群も圧倒的な市場シェアを堅持した。その他(保険代理業・不動産賃貸収入)は売上高が同3.4%減の1億52百万円、営業利益が同2.8%増の2億40百万円だった。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)147億25百万円、第2四半期(7月~9月)156億18百万円、第3四半期(10月~12月)167億11百万円、第4四半期(1月~3月)154億21百万円、営業利益は第1四半期10億27百万円、第2四半期10億87百万円、第3四半期16億78百万円、第4四半期7億73百万円だった。

■17年3月期も増収増益・増配予想

 今期(17年3月期)の連結業績予想(5月13日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比5.6%増の660億円、営業利益が同5.1%増の48億円、経常利益が同3.4%増の46億円、純利益が同2.5%増の36億円としている。配当予想は同1円増配の年間32円(第2四半期末16円、期末16円)としている。予想配当性向は47.2%となる。

 医療用医薬品事業では、国内は薬価改定や後発品の影響を受けるが、潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」が海外で伸長し、炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」の通期寄与、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場構築などで増収を見込んでいる。コンシューマーヘルスケア事業では、ヘパリーゼ群やコンドロイチン群が引き続き好調に推移する。研究開発費が高水準で推移し、広告宣伝費も増加するが、増収効果で吸収して増益・増配予想である。

■株主優待は毎年9月末と3月末の年2回実施、優待品を追加

 株主優待制度については、毎年9月末および3月末現在の株主に対して自社グループ商品を贈呈している。

 5月13日に優待品の追加を発表した。1000株以上所有株主に対しては、従来はA~Eの5コースの中から1コースを選択していたが、Fコースを追加して6コースの中から1コースを選択する。なお100株以上~1000株未満所有株主に対しては、内容については従来から変更はなく、コース名をFコースからGコースに変更して贈呈する。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、直近安値圏1300円台から切り返して調整一巡感を強めている。17年3月期増収増益・増配予想も好感したようだ。

 5月23日の終値1454円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS67円78銭で算出)は21~22倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間32円で算出)は2.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1199円94銭で算出)は1.2倍近辺である。時価総額は約772億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を回復し、戻りを押さえている26週移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して出直り展開だろう。

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