【アナリスト水田雅展の銘柄分析】京写の17年3月期は大幅営業増益予想、収益改善基調を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 京写<6837>(JQS)はプリント配線板の大手メーカーである。16年3月期は内製稼働率の低下や円安による輸入調達コスト上昇などで減益だったが、17年3月期は新規取引も寄与して大幅営業増益予想である。収益改善基調だ。さらに自動車ヘッドライトのLED化進展や、京都大学との次世代無線通信技術「カオスCDMA」共同研究も注目点となる。株価は戻りが鈍く安値圏だが、指標面の割安感が強く売られ過ぎ感も強めている。収益改善基調を見直して反発のタイミングだろう。

■プリント配線板の大手メーカー

 プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を収益柱として、実装治具関連事業も展開している。

 プリント配線板は防塵対策基板、高熱伝導・放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持ち、生産は国内、中国、インドネシアに拠点展開している。また実装治具関連事業も強化し、14年10月にはキクデンインターナショナルからフロー半田付け搬送キャリア事業を譲り受けた。

 15年3月期の製品用途別売上高構成比は、自動車関連が29.4%、家電製品が26.3%、事務器が12.8%、映像関連が7.0%、アミューズメント関連が5.6%、その他が18.9%だった。幅広い用途と顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得し、さらにLED照明関連の需要拡大も背景として、製品サイクルの長い自動車関連や家電関連を一段と強化している。

 なお海外展開に関しては、中国における韓国LGエレクトロニクスとの取引拡大に向けて15年9月に韓国駐在員事務所を設置し、自動車関連の拡販に向けてメキシコに販売会社を設立準備中である。

■LED照明普及促進政策や自動車ヘッドライトのLED化進展も期待

 成長に向けた重点戦略として、LED照明関連など環境対応製品の強化、ボリュームゾーンである片面プリント配線板分野における圧倒的トップシェアの獲得、グローバル戦略強化と海外生産の拡大、技術革新やコスト対応による収益力向上、基板・実装関連に次ぐ第3の事業の確立に取り組んでいる。

 LED照明関連については、直管型LED照明の普及進展に加えて、自動車ヘッドライトのLED化進展も期待されている。自動車ヘッドライト関連の大手メーカーへの供給も拡大しているようだ。さらに政府が省エネ対策として、エネルギー消費の少ないLED照明の普及を促進するため、エネルギー効率の悪い白熱灯に対する規制を強化する方針を示したことも追い風となりそうだ。

■京都大学と次世代無線通信技術「カオスCDMA」を共同研究

 15年7月に京都大学との共同研究契約締結を発表した。梅野健教授(京都大学大学院情報学研究科)の研究室と、次世代無線通信技術の「カオスCDMA」の産業利用化を目的として共同研究する。

 梅野健教授がカオス理論を用いて開発した「カオスCDMA」は、非常に高い通信安定性、高速通信、限られた周波数帯域で、多数の端末の同時アクセスを可能にする周波数共有技術である。有線通信と同等の性能を持ち、セキュリティ上重要な機密性も非常に高い無線技術で、信頼性や安定性の面で無線LANの課題を解決できるとされている。

 この技術の実用化が実現した場合、産業機器などのように、これまで有線通信が前提だった製品の無線通信化が可能になるため、配線の束が不要になるなどコストダウンや利便性の向上が図られる。また通信分野、工作機械、監視カメラ、ドローン、自動車など、さまざまな用途への利用や製品展開も期待できるとしている。

 なお15年12月には「動く産業用機械の配線を不要とする無線化技術」について、京都大学と共同で特許出願している。

■LED照明関連の市場拡大が収益に追い風

 15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)41億65百万円、第2四半期(7月~9月)44億41百万円、第3四半期(10月~12月)45億35百万円、第4四半期(1月~3月)45億36百万円、営業利益は第1四半期2億53百万円、第2四半期2億33百万円、第3四半期2億39百万円、第4四半期1億91百万円だった。

 自動車や家電などの生産動向の影響を受けやすいが、LED照明関連の市場拡大が追い風である。なお15年3月期の売上総利益率は20.2%で14年3月期比横ばい、販管費比率は15.0%で同0.2ポイント低下した。ROEは12.3%で同0.3ポイント上昇、自己資本比率は44.5%で同3.2ポイント上昇した。配当性向は16.7%だった。

■16年3月期は大幅減益、内製稼働率低下などが影響

 前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比9.6%増の193億79百万円、営業利益が同43.5%減の5億17百万円、経常利益が同44.9%減の5億14百万円、そして純利益が同30.9%減の4億73百万円だった。

 国内はプリント配線板事業でスマートメーター等を新規受注し、LED照明の家電製品分野が堅調に推移した。実装事業も堅調だった。海外では自動車関連分野が大幅伸長した。全体として増収だったが、中国の景気減速の影響で片面板の受注が減少するなどプリント配線板事業が全体として伸び悩み、海外工場における内製稼働率の低下、円安に伴う輸入販売品や原材料などの調達コスト増加、搬送用治具事業譲受に伴う人件費の増加などで大幅減益だった。

 売上総利益は同2.8%減少し、売上総利益率は17.9%で同2.3ポイント低下した。販管費は同11.2%増加し、販管費比率は15.3%で同0.3ポイント上昇した。営業外収益では保険返戻金が減少(前々期45百万円計上、前期19百万円計上)した。営業外費用では為替差損益が悪化(前々期は差損9百万円計上、前期は差損31百万円計上)した。特別利益では投資有価証券売却益1億90百万円を計上した。特別損失では事業構造改善費用19百万円を計上した。

 配当は前々期と同額の年間8円(期末一括)とした。配当性向は24.2%となる。またROEは7.5%で同4.8ポイント低下、自己資本比率は47.7%で同3.2ポイント上昇した。

 セグメント別に見ると、日本は売上高が同2.2%減の76億49百万円で営業利益(連結調整前)が同57.1%減の89百万円、中国は売上高が同23.5%増の100億08百万円で営業利益が同26.0%減の5億38百万円、インドネシアは売上高が同1.5%減の17億21百万円で営業利益が同1億23百万円の赤字(前々期は33百万円の赤字)だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)46億97百万円、第2四半期(7月~9月)46億81百万円、第3四半期(10月~12月)50億92百万円、第4四半期(1月~3月)49億09百万円、営業利益は第1四半期1億94百万円、第2四半期60百万円、第3四半期2億21百万円、第4四半期42百万円だった。

■17年3月期は新規取引も寄与して大幅営業増益予想、収益改善基調

 今期(17年3月期)の連結業績予想(4月28日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比3.2%増の200億円、営業利益が同44.9%増の7億50百万円、経常利益が同36.0%増の7億円、純利益が同5.6%増の5億円としている。配当予想は前期と同額の年間8円(期末一括)としている。予想配当性向は22.9%となる。

 売上面では自動車・家電製品分野のLED照明関連が堅調に推移し、中国における韓国LGエレクトロニクス向け新規取引も寄与する。利益面では販売価格の是正、内製稼働率の上昇、中国およびインドネシアにおける人員削減効果などの効果で大幅営業増益予想だ。なお九州工場(熊本県玉名市)は4月19日から通常どおり稼働している。

■株価は戻り鈍く安値圏だが売られ過ぎ感

 株価の動きを見ると、戻りが鈍く安値圏300円近辺で推移している。ただし売られ過ぎ感も強めている。

 5月23日の終値294円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS34円89銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は2.7%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS444円12銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約43億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、指標面の割安感が強く売られ過ぎ感も強めている。収益改善基調を見直して反発のタイミングだろう。

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