【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アーバネットコーポレーションは16年6月期第3四半期累計が減益だが、通期は増収増益・増配予想

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アーバネットコーポレーション<3242>(JQS)は投資用マンションの開発・販売を主力としている。投資用マンションの需要は高水準であり、開発物件の分野を拡大する方針だ。16年6月期第3四半期累計は一過性要因で減益だったが、通期は増収増益・増配予想である。株価は急伸した4月の年初来高値圏から利益確定売りで反落したが、1桁台の予想PERや5%近辺の高配当利回りと指標面の割安感は強い。自律調整が一巡して反発展開だろう。

■東京23区中心に投資用マンションの開発・販売

 東京23区を中心に、投資用・分譲用マンションの開発・販売事業を展開している。徹底したアウトソーシングで固定費を極小化していることが特徴だ。15年6月期末の役職員数は43名で、15年3月期の販管費比率は7.8%だった。

 15年3月には収益基盤強化に向けて、連結子会社アーバネットリビングを設立(15年7月操業)した。当社は投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売や分譲マンションの開発などのBtoB卸売、子会社アーバネットリビングは当社開発物件の戸別販売、他社物件の買取再販、マンション管理・賃貸などのBtoC小売を基本事業とする。

 自社開発物件のブランドは、アジールコート(ワンルームマンション)、アジールコフレ(コンパクトマンション)、グランアジール(ファミリーマンション)、アジールヴィラ(戸建住宅)である。

 なお4月22日には、一般社団法人全国住宅産業協会第6回優良事業審査会による審査の結果、中高層分譲住宅部門において当社開発物件の分譲マンション「アジールコフレ新中野」が、企画・開発部門において当社開発物件の投資用ワンルームマンション「AXAS大森西アジールコート」が、W受賞したと発表している。これまでにも第1回、第3回、第4回において受賞している。

 REIT、ファンド、海外投資家の参入などで、投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛である。日銀の異次元金融緩和、20年東京夏季五輪、脱デフレ、そして日本経済再生の流れも追い風となる。

■開発物件の分野を拡大方針

 16年3月には、最近の東京23区における事業用地購入の環境、ならびに将来の不動産市場の環境を考慮し、これらへの積極対応として開発物件の分野拡大を発表した。

 当社グループは東京23区駅10分以内を開発用地に特化して、投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売を事業の中核として成長し、さらにリーマン・ショック以降には、分譲用ファミリーマンションならびにコンパクトマンションの開発・販売も行っている。

 当該開発地域においての事業用地については、都心への人口流入や開発の一極集中による価格上昇もあり、優良事業用地の確保が若干難しい状況となっている。こうした環境に積極的に対応するため、従来の投資用ワンルームマンション用地としては取得してこなかった狭小用地についてもアパートや戸建住宅として開発し、開発物件分野の拡大による業績の向上を目指す方針だ。

 なお当社グループの役割分担について、アパートならびに戸建住宅に関しては親会社アーバネットコーポレーションが開発し、子会社アーバネットリビングに物件譲渡したうえで、子会社アーバネットリビングから販売する。

■海外投資家への直接販売も強化

 都心部での事業用地取得難、土地価格上昇と建設コスト上昇による売上総利益率低下傾向という事業環境に対して、投資意欲旺盛な台湾・シンガポール・香港・中国本土の海外投資家への直接販売など販売手法の多様化、川崎市や横浜市など人口増加・優良地域への開発エリアの拡大、売上総利益率安定化に向けた分譲物件開発の平準化などの施策を強化している。

 海外投資家への直接販売については、14年7月売買契約締結した投資用ワンルームマンション「アジールコート銀座イースト」(39戸、15年6月期売上計上)が第一弾となり、14年11月に投資用ワンルームマンション「アジールコート新宿」(38戸、16年5月竣工・16年6月期売上計上予定)の売買契約を締結した。

 15年2月には投資用ワンルームマンション「AXAS大森西アジールコート」(15年6月竣工、マンション74戸、店舗1戸)の店舗1戸の売買契約(15年6月期売上計上)を締結した。15年10月には、投資用ワンルームマンション「アジールコート麻布十番(仮称)」(16年12月末竣工・引き渡し予定、56戸うち店舗1戸)の売却を発表した。東急リバブルソリューションン事業本部の仲介で海外法人との売買契約が成立した。

 15年12月には投資用ワンルームマンション「錦糸町IVPJ(仮称)」(16年6月竣工・16年7月引き渡し予定、96戸)について、国内法人への1棟販売が確定したと発表した。売上計上は17年6月期で、本物件の取引は信託受益権売買としている。

 16年1月には投資用ワンルームマンション「芝公園PJ(仮称)」(16年12月竣工・17年1月引き渡し予定、56戸)の売却確定を発表した。売上計上は17年6月期の予定である。国内個人投資家への1棟販売である。

 4月11日には、台湾投資家への当社の浸透を図ることを目的として、アンビシャス・コンサルタント・インターナショナル(台湾台北市)が台湾在住の投資家を対象に日本の不動産を紹介する拠点として開設する「M.I.J.サロン」(台北市4月15日オープン)に、当社常設ブースを設置すると発表している。

■物件売上計上で四半期業績は変動

 前期(15年6月期)の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(非連結7月~9月)29億47百万円、第2四半期(非連結10月~12月)18億84百万円、第3四半期(連結1月~3月)53億91百万円、第4四半期(連結4月~6月)16億88百万円で、営業利益は第1四半期3億63百万円、第2四半期1億33百万円、第3四半期9億51百万円、第4四半期2億05百万円だった。

 物件売上計上で四半期収益は変動しやすい収益構造である。また固定費比率が低いため、利益の出やすい収益構造である。15年6月期の売上総利益率は21.7%(14年6月期非連結ベースの18.8%に対して2.9ポイント上昇)だった。ROEは21.1%、自己資本比率は32.6%だった。配当性向は31.3%だった。

 なお配当性向についての基本方針は、従来は当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の30%を配当するとしていたが、16年6月期より当期純利益から法人税等調整額の影響を排除した数値の35%を配当するとしている。

■16年6月期第3四半期累計は減益

 5月12日発表の今期(16年6月期)第3四半期累計(7月~3月)連結業績は、売上高が前年同期比8.2%増の110億59百万円、営業利益が同25.5%減の10億78百万円、経常利益が同32.6%減の8億50百万円、そして純利益が同31.1%減の5億53百万円だった。自社開発物件の売上計上が減少し、利益率の低い買取再販と用地転売を売上計上したため全体の利益率が低下した。また6月の本社移転による販管費増加も影響して減益だった。ただし一過性要因としている。

 自社開発物件に関しては、前期からの継続2棟を含む投資用ワンルームマンション10棟の戸別決済ならびに1棟販売で、合計412戸を売上計上した。また他社物件の買取再販物件を1棟販売含めて合計32戸、土地転売を1物件売上計上した。前年同期は自社開発物件485戸の売上計上だった。

 事業別売上高は不動産開発販売が同6.5%減の94億57百万円、不動産仕入販売が15億14百万円(前年同期はなし)、その他が同22.3%減の87百万円だった。売上総利益は同6.1%減少し、売上総利益率は17.9%で同2.7ポイント低下した。販管費は同36.2%増加し、販管費比率は8.2%で同1.7ポイント上昇した。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)17億55百万円、第2四半期(10月~12月)61億04百万円、第3四半期(1月~3月)32億円、営業利益は第1四半期93百万円、第2四半期8億21百万円、1億64百万円だった。

■16年6月期通期は増収増益・増配予想

 今期(16年6月期)通期の連結業績予想は前回予想(3月10日に増額修正)を据え置いて、売上高が前期(15年6月期)比42.7%増の170億円、営業利益が同16.2%増の19億20百万円、経常利益が同16.1%増の16億20百万円、純利益が同16.8%増の10億20百万円としている。配当予想(3月10日に増額修正)は、前期比2円増配年間15円(第2四半期末7円、期末8円)としている。予想配当性向は36.7%となる。

 通期の売上計上は、投資用ワンルームマンション15棟・657戸および戸建4棟の自社開発物件合計661戸(全戸販売契約済)、買取再販物件1棟(30戸)および戸別販売7戸(販売契約済32戸、販売中3戸)の予定である。売上総利益率は同3.1ポイント低下の18.6%、販管費比率は同0.5ポイント低下の7.3%の想定としている。第4四半期(4月~6月)に国内外投資家への1棟販売が2物件あるため、売上総利益率が良化する見込みだ。

 来期(17年6月期)については、投資用ワンルームマンション14棟・650戸(販売契約済598戸、未契約52戸)、ファミリーマンション1棟・49戸+店舗2戸(販売準備中)、アパート1棟・12戸(未契約)の、自社開発物件合計713戸(販売契約済598戸、未契約115戸)の売上計上を予定している。買取再販物件は検討中である。

 低金利の継続、相続税増税による不動産投資の見直し需要の高まり、海外投資家が加わり、投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛である。増収増益基調が期待される。

■株価は年初来高値圏から反落したが、指標面に割安感

 株価の動きを見ると、急伸した4月20日の年初来高値366円から利益確定売りで一旦反落したが、5月20日の直近安値302円から切り返す動きだ。自律調整が一巡したようだ。

 5月23日の終値314円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS40円84銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は4.8%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS203円43銭で算出)は1.5倍近辺である。時価総額は約78億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。サポートラインを確認した形だろう。1桁台の予想PERや5%近辺の高配当利回りと指標面の割安感は強い。自律調整が一巡して反発展開だろう。

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