【アナリスト水田雅展の銘柄分析】フォーカスシステムズの17年3月期は先行投資負担で減益予想だが上振れ余地

 フォーカスシステムズ<4662>(東1)は、公共関連・民間関連のシステム構築・保守・運用を主力としてセキュリティ機器関連事業も展開している。16年3月期は計画超で増収増益だった。17年3月期は先行投資負担で減益予想だが、受注は高水準である。上振れ余地がありそうだ。株価は17年3月期減益・減配予想を嫌気して反落したが、指標面の割安感を強めている。マイナンバー関連やサイバーセキュリティ関連のテーマ性も注目点となる。売り一巡して反発展開だろう。

■システム構築・保守・運用を主力としてセキュリティ機器関連事業も展開

 公共関連・民間関連のシステム構築・保守・運用・管理サービスを主力として、セキュリティ機器関連事業も展開している。

 顧客別に見るとNTTデータ<9613>関連、および日本IBM関連を主力として、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)<4739>関連、沖電気<6703>関連、ソフトバンク<9984>関連などが続いている。主要顧客上位3社向け売上高の占める割合は14年3月期47.4%、15年3月期47.8%だった。
 
■女性活躍推進法に基づく「えるぼし」の最上位認定を取得

 15年12月には、公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)が行っているトップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」を通じて、スケト・ショートトラックの齋藤悠(さいとうゆう)選手の採用を内定したと発表した。アスリートの採用は初めてだが、スポーツに取り組む社員の応援を通じて組織の一体感の醸成、士気高揚を実現したいとしている。

 また次世代育成支援の取り組みとして、次世代育成支援対策推進法の基本理念に沿って、従業員の仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備や、子育てをしていない従業員も含めた多様な労働条件の整備などを目的として第3回行動計画(15年4月1日~17年3月31日)を策定している。この行動計画に基づいて、結婚・出産等の家庭の事情により退職した社員を対象に、16年4月1日から再雇用制度(ジョブリターン)制度を導入した。

 また5月13日には監査役の退職慰労金制度の廃止を発表した。監査役の報酬体系を見直し、退職慰労金を廃止して固定報酬に一本化することで、監査役の経営に対する独立性を高め、コーポレートガバナンスの一層の強化を図る。16年6月29日開催予定の定時株主総会終結の時をもって廃止する。

 そして5月17日には、16年4月1日全面施行の女性活躍推進法に基づく厚生労働大臣認定「えるぼし」企業に認定されたと発表している。認定は基準を満たす項目数に応じて3段階あり、最も高い「3段階目」の最上位認定を受けた。なお一般事業主行動計画の策定および策定した旨の届出が義務付けられている301人以上の大企業における届出数は4月末現在1万3087社(届出率85.0%)で、そのうち認定を受けた企業は46社である。

■中期成長に向けて対応領域拡大を推進

 中期成長に向けた重点戦略として、需要が潤沢なインフラビジネス分野における技術者の育成、ノウハウ蓄積にも繋がる運用系業務分野におけるシェア拡大、業務アプリケーション分野における専門技術への取り組み強化による対応領域拡大を推進している。また民間関連事業では関東圏・近畿圏に加えて、東海圏での業務拡大に取り組んでいる。

 15年7月には東京国税局に対するICT関連の技術支援等コンサルティング業務の提供開始を発表した。デジタル・フォレンジック技術と豊富な不正調査の経験を活かしたコンサルティングサービスを提供する。

 15年9月にはベトナムの日系ソフトウェア開発会社であるインディビジュアルシステムズ(IVS)社への出資を決定し、16年1月に出資を行った。IVS社は02年の創業以来、ベトナムのエンジニア育成と日本向けオフショア開発で実績を伸ばし、現在では日系IT企業としてトップクラスの200名を超えるエンジニアを抱えている。当社は13年からオフショア事業での取引関係を続けてきたが、今回の出資によって協業関係を一段と強化する。

 15年10月には富士ゼロックスのサービス提供会員制ポータルサイト「富士ゼロックスダイレクト」のプラットフォームを、企業内のIT環境を集約して各業務アプリケーションの全社横断的な運用を可能にするシステム共通基盤「intra-mart(イントラマート)」を用いて構築したと発表した。

 また15年10月にはエプソン販売と連携して、同社が販売するスマートヘッドセットMOVERIO Pro「BT-2000」と連動できるBeaconの提供開始を発表した。

 15年12月には松久産業(福井県福井市)から、パケットログ収集・保管装置(監視・警告機能等搭載済み)「サイバーガーディアン・パケット(略称CGP)」(商標登録出願中)の供給を受け、機器販売および付帯する調査・解析サービス事業を構築すると発表した。収集・保管したログの調査・解析サービスは16年4月開始を予定している。

 16年4月には、日立製作所<6501>のシステム運用に必要なあらゆる情報を関連付けて一元管理できるクラウドサービス「Hitachi Cloudアプリケーション運用ナビゲーションサービス」の販売パートナーになったと発表した。当社の強みであるintra-martとの連携導入も可能なため、システム構築から運用までをトータルにサポートする。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)35億83百万円、第2四半期(7月~9月)37億03百万円、第3四半期(10月~12月)35億90百万円、第4四半期(1月~3月)42億05百万円、営業利益は第1四半期99百万円、第2四半期1億96百万円、第3四半期2億40百万円、第4四半期4億05百万円だった。

 年度末にあたる第4四半期の構成比が高い収益構造だ。そして公共関連事業やセキュリティ機器関連事業が好調に推移して、営業損益は改善基調である。なお15年3月期の売上総利益率は14.0%で14年3月期比0.1ポイント上昇、販管費比率は7.7%で同0.1ポイント上昇、ROEは10.0%で同0.8ポイント上昇、自己資本比率は47.2%で同4.7ポイント上昇した。配当性向は29.3%だった。

■16年3月期は計画超の増収増益

 5月13日発表した前期(16年3月期)非連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比9.3%増の164億82百万円、営業利益が同1.4%増の9億53百万円、経常利益が同5.9%増の9億50百万円、純利益が同24.6%増の7億38百万円だった。

 受注が堅調に推移して売上高、利益とも計画を上回り、営業減益予想から一転して営業増益での着地となった。売上総利益は同4.4%増加したが、売上総利益率は13.3%で同0.7ポイント低下した。販管費は同6.8%増加したが、販管費比率は7.6%で同0.1ポイント低下した。なお特別利益に投資有価証券売却益2億08百万円を計上した。

 配当は年間16円(期末一括、普通配当12円50銭+記念配当3円50銭)とした。15年10月1日付株式2分割を考慮して年間32円に換算すると、前々期の年間25円(期末一括、普通配当10円+特別配当15円)に対して、実質的に7円増配となる。配当性向は30.0%である。ROEは10.4%で同0.4ポイント上昇、自己資本比率は49.6%で同2.4ポイント上昇した。

 セグメント別に見ると、公共関連事業は売上高が同6.7%増の57億34百万円、営業利益(連結調整前)が同2.4%減の8億35百万円だった。売上面では社会保険関連、航空管制関連の受注増加が寄与して順調だったが、利益面ではマイナンバー関連業務の一部で当初想定していた規模の受注が得られず利益率が低下した。民間関連事業は売上高が同12.8%増の97億38百万円、営業利益が同13.1%増の11億87百万円だった。インフラ構築・運用サービス、ERP関連製品のカスタマイズなどが順調だった。またセキュリティ機器関連事業は売上高が同6.1%減の10億09百万円、営業利益が同12.7%減の1億73百万円だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)35億42百万円、第2四半期(7月~9月)39億52百万円、第3四半期(10月~12月)42億02百万円、第4四半期(1月~3月)47億86百万円、営業利益は第1四半期26百万円、第2四半期1億75百万円、第3四半期2億98百万円、第4四半期4億54百万円だった。

■17年3月期は減益予想

 今期(17年3月期)の非連結業績予想(5月13日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比3.1%増の170億円、営業利益が同16.1%減の8億円、経常利益が同19.0%減の7億70百万円、純利益が同33.7%減の4億90百万円としている。配当予想は記念配当を落として同3円50銭減配の年間12円50銭(期末一括)としている。予想配当性向は35.3%となる。

 受注は高水準に推移するが、優秀な人材確保のための採用投資、より高付加価値をつけるための技術者への教育投資、ガバナンス強化を目的とした社内管理体制へのシステム投資および人的投資など、中期成長に向けた先行投資の影響で減益予想としている。純利益は前期計上した投資有価証券売却益一巡も影響する。ただし会社予想には保守的な印象も強い。上振れ余地があるだろう。

■株価は17年3月期減益・減配予想を嫌気した売り一巡

 株価の動き(16年3月4日付で東証2部から東証1部へ指定替え)を見ると、17年3月期減益・減配予想を嫌気して4月高値圏600円近辺から反落し、水準を切り下げている。5月26日には476円まで調整した。

 5月26日の終値483円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS35円39銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円50銭で算出)は2.6%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS535円58銭で算出)は0.9倍近辺である。時価総額は約79億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだ。ただし指標面の割安感を強めている。マイナンバー関連やサイバーセキュリティ関連のテーマ性も注目点となる。17年3月期減益・減配予想を嫌気した売りが一巡して反発展開だろう。

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