【アナリスト水田雅展の銘柄分析】マーケットエンタープライズは16年6月期減額して減益予想だが、17年6月期は成長軌道へ回帰

 マーケットエンタープライズ<3135>(東マ)はネット型リユース事業を展開している。販売サイトのサービスブランドを15年9月リリースの新ブランド「ReRe」に統一して成長戦略を加速し、さらに新サービス構築による事業ドメイン拡大も推進する。16年6月期は一時的要因で減額修正して減益予想となったが、17年6月期は成長軌道への回帰が期待される。株価は年初来高値圏から急反落したが、売り一巡して出直り展開だろう。

■インターネットに特化したリユース品買取・販売事業を展開

 インターネットに特化してリユース(再利用)品を買取・販売するネット型リユース事業を展開している。

 買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」など、自社運営26カテゴリーのWEB買取サイトを通じて、一般消費者や法人からリユース品を仕入れ、全国7拠点(15年12月末時点)のリユースセンターで在庫を一括管理する。

 そして複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトで一般消費者や法人向けに販売する。なお販売サイトのサービスブランドについて、従来は「安く買えるドットコム」だったが、15年9月リリースの新リユースブランド「ReRe(リリ)」に統一した。

 販売の実店舗を持たずにEC(電子商取引)によってリユース品の売買を行うサービスであり、ITとリアルを融合させて仕入・販売ともに、マルチチャネル対応で全国的な仕入・販売網を構築していることが強みだ。なお累計買取依頼数は14年5月に50万件を突破し、15年3月には月間買取依頼数が約26千件に達している。

■サイト運営、コンタクトセンター、リユースセンターまで一気通貫

 総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、26カテゴリーの買取専門サイトを自社構築・運営している。自社サイトを運営することで顧客ニーズに合ったコンテンツマーケティングを行うことが可能になり、ネットサービスを有する大手企業との効果的なアライアンスを展開することも可能になる。

 コンタクトセンターにおける事前査定サービス、3つのチャネル(出張買取、宅配買取、店頭買取)による買取サービス、全国のリユースセンター(16年4月に仙台リユースセンターを新規開設して東京、仙台、横浜、埼玉、名古屋、大阪、神戸、福岡の8拠点)での在庫一括管理という、コンタクトセンターからリユースセンターまで一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。そして独自の単品管理ステムと全国販売網によって、高い在庫回転率(14年実績で年間14.2回転)を実現している。

 事前査定~仕入~在庫管理~販売のオペレーションに関しては、自社開発のITシステムおよびデータベース(複数の買取依頼チャネルや複数の買取手法に対応したマルチチャネル買取システム、査定データベース、商品管理システム、在庫連動システム、受注管理システムなど)によって運営し、効率性の高いオペレーションを実現している。

 なお15年9月に新リユースブランド「ReRe(リリ)」をリリースした。ギフトボックスでの丁寧なラッピング、ブランドマークを印刷したボックスによる梱包など、当社の「安心できるリユースをすべての方に・・・for Real Reuse」との思いを込めたサービスとしている。そして販売サイトのサービスブランドを新ブランド「ReRe」に統一して成長戦略を加速する。

■アライアンス戦略も強化

 大手企業とのアライアンスも強化している。15年2月にはヤフー<4689>が運営する「Yahoo!買取」で、法人向け在庫買取サービスを開始した。15年6月にはコープサービスが運営する「ライフなび くらしのサービス」と提携して、関東信越6生協組合員向けに総合買取サービスの提供を開始した。

 15年10月には、ネクスト<2120>グループが運営する引越し見積もり・予約サイト「HOMES引越し」と共同で、買取サービスの提供を開始した。またヤフーと電通<4324>の共同企画で、11月スタートのリユース活用型クラウドファンディングサービス「reU funding(リユーファンディング)」に協力した。

 さらに16年1月には、リユースサービス「ReRe」のうち買取領域システムを、Warrantee(大阪市)が運営するスマホアプリによる保証書電子化サービス「Warrantee(ワランティ)」に提供すると発表した。「Warrantee」のサーバー上にユーザーが購入した製品情報が登録されているため、スマホアプリ画面に商品の状態を入力するだけで査定金額が表示され、宅配・出張・店頭の3通りの買取方法で依頼できる。

■中期成長に向けて事業ドメイン拡大を推進

 中期経営目標としては3~5年の間に売上高100億円、営業利益10億円の達成を目指すとしている。中期成長戦略では収益基盤強化を目指し、事業拠点拡大の水平展開、取扱商品拡大の垂直展開、そして新サービス構築による事業ドメイン拡大を推進する。

 水平展開では仕入基盤のさらなる拡充に向けて、全国主要都市への新規リユースセンターの開設を推進する。リユースセンター新設によって、出張・店頭買取における人口カバー率の向上や買取コンバージョン率の向上を目指している。

 垂直展開では取扱商品のさらなる拡大に向けて、比較サイト運営・専門企業などとのアライアンスによって、高単価・低粗利益率帯の車・バイク・不動産など、低単価・高粗利益率帯の衣類・本など「未取扱商材」や「依頼情報」のマネタイズゾーン拡充を図る。そして「シェアードエコノミー」を実現する社会的インフラの一翼を担うべく、積極的なIT投資によって新サービスを創造・拡充させるとしている。

■引越しシーズンの第4四半期(4月~6月)の構成比が高い収益構造

 15年6月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)8億33百万円、第2四半期(10月~12月)9億61百万円、第3四半期(1月~3月)10億04百万円、第4四半期(4月~6月)11億89百万円、営業利益は第1四半期3百万円の赤字、第2四半期50百万円、第3四半期76百万円、第4四半期1億13百万円だった。

 転居に伴う商品の買い替えや新規購入などのニーズが高まり、買取依頼・販売が集中する春季の引越しシーズンにあたる第4四半期(4月~6月)の構成比が高くなる一方で、第1四半期(7月~9月)は売上高が減少して営業損益が低水準となる収益構造だ。

■16年6月期第3四半期累計は増収・減益

 5月12日発表した今期(16年6月期)第3四半期累計(7月~3月)の非連結業績は、売上高が前年同期比27.4%増の35億66百万円だったが、営業利益が同15.4%減の1億05百万円、経常利益が同13.5%減の1億04百万円、純利益が同15.0%減の62百万円だった。

 リユース市場・EC市場拡大も背景に、買取・販売とも順調に推移して2桁増収だったが、将来的な収益拡大に向けた新サービス開発、内部管理体制充実に向けた人材採用、商品取扱量増大や生産性向上に向けた既存拠点施設増強など、基盤拡充にむけた先行投資負担の影響で減益だった。売上総利益は同26.4%増加したが、売上総利益率は46.6%で同0.5ポイント低下した。販管費は同30.7%増加し、販管費比率は43.7%で同1.1ポイント上昇した。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)10億56百万円、第2四半期(10月~12月)12億84百万円、第3四半期(1月~3月)12億26百万円、営業利益は第1四半期7百万円、第2四半期80百万円、第3四半期18百万円だった。

■16年6月期通期は減額して減益予想

 5月12日に今期(16年6月期)通期の非連結業績予想を減額修正した。前回予想(8月7日公表)に対して、売上高を3億10百万円、営業利益を1億69百万円、経常利益を1億71百万円、純利益を1億20百万円減額し、修正後の通期予想は売上高が前期比23.9%増の49億40百万円、営業利益が同36.5%減の1億51百万円、経常利益が同34.1%減の1億50百万円、純利益が同41.5%減の80百万円とした。配当予想については無配継続としている。

 第4四半期(4月~6月)に、将来的な収益獲得に向けた基盤拡充、および内部体制整備のために人的リソースを配分するため、買取済み商品の商品化、メンテナンス、ECサイトへの出品等に一時的な遅延が生じ、結果として販売量が一時的に減少する見込みとしている。

 また将来的な収益を極大化するための基盤拡充に向けた先行投資(新サービス開発や内部管理体制充実に向けた人材採用、商品取扱量増大や生産性向上に向けた既存拠点施設増強など)を行い、第4四半期も4月に仙台リユースセンターを新規開設し、6月には徳島コンタクトセンターを新規開設する予定で、当初想定に対して拠点開設を前倒しで実施している。さらに今後見込まれている大手企業各社とのアライアンス展開に備えて、積極的な人員採用と設備投資を加速している。

 このため第4四半期において、特に人件費、地代家賃、設備投資費用が計画を上回り、販管費比率が期初計画(15年6月期と同水準の41.6%程度)に対して3ポイント上昇する見込みとなった。

 なお新規拠点開設では15年10月の神戸リユースセンター新設に続き、16年4月には東北エリア初となる仙台リユースセンターを開設した。また16年6月に徳島コンタクトセンター開設を予定し、4月18日に徳島県と覚書調印式を行った。

 修正後の通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72.2%、営業利益69.5%、経常利益が69.3%、純利益77.5%である。今期(16年6月期)は一時的要因で減益予想となったが増収基調に変化はなく、積極的な事業展開や先行投資の効果で来期(17年6月期)は成長軌道への回帰が期待される。

■「リユース市場×EC市場」は拡大基調

 リユース市場とEC(電子商取引)市場はともに拡大基調である。環境省調査によると、12年度のリユース品購入経路の54.0%がインターネット経由(インターネットオークション28.7%、インターネットショッピングサイト25.3%)となり、インターネット経由が過半を占める状況になってきた。

 「リユース市場×EC市場」は拡大基調であり、事業拠点拡大の水平展開、取扱商品拡大の垂直展開、そして新サービス構築による事業ドメイン拡大も奏功して、中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は16年6月期減額修正を嫌気した売り一巡して反発

 株価の動き(16年1月1日付で株式2分割)を見ると、4月25日の年初来高値1492円まで上伸し、その後16年6月期業績予想の減額修正を嫌気して急反落した。ただし1000円近辺で下げ渋り、売り一巡感を強めている。

 5月26日の終値1005円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS15円78銭で算出)は64倍近辺、前期実績PBR(前期実績に株式2分割を考慮したBPS174円11銭で算出)は5.8倍近辺である。時価総額は約51億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を割り込んだが、2月の上場来安値652まで下押すことなく、1000円近辺で下げ渋る動きだ。売り一巡して反発展開だろう。

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