【アナリスト水田雅展の企業レポート】バルクホールディングスは17年3月期減収減益予想だが、クラウドサービス伸長して収益構造転換期待

企業レポート

 バルクホールディングス<2467>(名セ)はコンサルティング事業、マーケティング事業、IT事業、住宅関連事業を展開する持株会社である。16年3月期は計画超の増収増益で純利益は黒字化した。17年3月期はコンサルティング事業における競争激化や住宅関連事業における人手不足の影響などを考慮して減収減益予想としているが、クラウドサービスの伸長などで上振れ余地があるだろう。そして中期的には収益構造転換も期待される。株価は年初来安値圏だが、調整のほぼ最終局面だろう。

■コンサルティング事業などを展開する持株会社

 コンサルティング事業、マーケティング事業、IT事業、住宅関連事業を展開する持株会社である。94年9月バルク(旧)設立、05年12月名証セントレックス市場に新規上場、07年3月分社型新設分割によりバルク(旧)が純粋持株会社に移行して現社名に変更した。

 連結子会社のバルク(新)(コンサルティング事業、マーケティング事業)、マーケティング・システム・サービス(13年3月子会社化、マーケティング事業)、ヴィオ(10年5月子会社化、IT事業)、ハウスバンクインターナショナル(14年1月子会社化、住宅関連事業)を置き、アトラス・コンサルティングを持分法適用関連会社としている。

 16年3月期のセグメント別(連結調整前)売上構成比は、コンサルティング事業9%、マーケティング事業34%、IT事業7%、住宅関連事業50%だった。また営業利益構成比はコンサルティング事業36%、マーケティング事業38%、IT事業10%、住宅関連事業16%だった。

■プライバシーマーク・ISO27001認定取得支援に強み

 主力のコンサルティング事業は、連結子会社バルクが、個人情報保護などの情報セキュリティマネジメント分野において、プライバシーマーク認定取得支援・ISO27001(ISMS)認証取得支援、および運用支援を主力としている。

 プライバシーマーク認定取得では、大企業から中小企業まで国内トップクラスの1600件超、ISO27001認証取得では、500件超の取得支援実績を誇っている。情報セキュリティマネジメント分野のリーディングカンパニーである。

 自社社員によるコンサルタント、ISMS審査員資格保有者の在籍、自社開発の支援ITツールによる作業負担軽減、教育支援メニューや取得後の継続維持・運用サポートメニューの充実などを強みとして、あらゆる業種・業態への対応実績を持つ。このため企業にとっては短期間での取得が可能になる。

■クラウドサービスを強化

 15年6月には、業界初の情報セキュリティマネジメントシステム運用支援クラウドサービス「V-Cloud」をリリースした。進捗状況が一目瞭然などで運用スケジュールが簡単に管理できるなどの特徴があり、プライバシーマーク更新やマイナンバー制度対応のセキュリティコンサルティングサービスも含めて、顧客囲い込み戦略を推進する方針だ。

 なお「V-Cloud」リリース後は更新比率が大幅に上昇し、クラウド利用社数が大幅に増加した。導入実績は200アカウントを突破している。月額課金型のため顧客囲い込みによってストック収益拡大にも繋がる。

 5月13日には「V-Cloud」の新機能・メニュー追加を発表した。運用マニュアルを付加してほしいというリクエストに対応して、eラーニング(v-assist動画教育システム)の機能を、新たに「V-Cloud」に搭載した。この新機能搭載により、顧客における運用効率の改善と自力運用を強力にサポートするツールとなった。

 また5月13日には、企業の情報漏洩や内部統制リスクを分析して対策を支援する、効果測定型コンプライアンスリスク診断プログラム「V-Risk」のサービス提供開始を発表した。Web調査により企業内部の潜在化・顕在化するリスクを分析し、コンプライアンス診断~様々なコンプライアンスリスクの対策提案および対策支援~その後の効果測定まで提供する、今までにないオールインワンサービスである。大企業向けに販売する方針だ。

■マーケティング事業は新製品モニター調査などが主力

 マーケティング事業は、連結子会社バルクがマーケティングリサーチ事業、連結子会社マーケティング・システム・サービスがSP(セールスプロモーション)事業や広告代理業を展開している。

 連結子会社バルクのマーケティングリサーチは、大手メーカーの新製品開発時のモニター調査などを主力としている。ネットリサーチ・インタビューなどの調査手法をベースとして、調査の企画・設計・分析・実査から商品企画などのマーケティング戦略支援まで、企業のマーケティング活動における課題を総合的にワンストップで解決・支援する。

 15年7月には店頭調査「Shoppers Direct」をリリースした。実際のお店に来店するお客様の「行動の観察」や「インタビュー」を行うことで、従来の調査では知ることのできない「気付き」を得ることができるなどの特徴を持つ。

 連結子会社マーケティング・システム・サービスのマーケティング事業は、食品関連流通事業者(スーパー、食品卸など)のフリーペーパー、食品・飲料メーカーのSPツール・ノベルティ制作などで、クライアントの課題解決を総合的に支援している。関東の大手スーパー向けを主力としている。

■IT事業は開発リソースをグループ内システム開発にも活用

 IT事業は連結子会社ヴィオが、大手SIベンダーからのビジネスアプリケーションなどの受託開発を主力として、オリジナルのパッケージソフトを活用したITソリューションサービスも展開している。

 企業間ネットワーク業務提携事業では、顧客とヴィオが業務提携し、共同事業でシステム導入に伴う収益を、双方の負担に応じてレベニューシェアする方式を目指している。

 またグループ内にシステム開発会社を持つことで、開発リソースをコンサルティング事業の運用支援ツールなど、グループ内のシステム開発に活用できるメリットがある。

■住宅関連事業は京都で地域密着の事業展開

 住宅関連事業は連結子会社ハウスバンクインターナショナルが、戸建住宅建築請負工事およびリフォーム工事全般を展開している。

 天井やフローリングなどに天然木を使用した「天然木の家」を主力として、地域密着(京都府長岡京市)の事業展開を推進している。25年の歴史を持ちリフォーム実績件数は5000件以上である。

■アライアンス戦略も推進

 15年8月には連結子会社バルクが、IT全般のコンサルティング事業を行うITbook<3742>とコンサルティング事業分野で業務提携した。相互の顧客紹介、相互の製品・サービスの販売、共同提案やセミナー共催など販売活動における協調、両社の強みを生かした共同事業の創出を推進する。

 15年12月には連結子会社バルクがブーメランイット・ジャパン(BIJ社)と情報セキュリティ分野で業務提携した。BIJ社の紛失物回収サービス「マイブーメラン」をバルク社で販売するとともに、情報セキュリティ市場における共同提案やセミナー共催など販売活動における協調、情報セキュリティ市場における共同事業の創出を推進する。

 BIJ社は米国ブーメランイット社との独占ライセンス契約に基づいて、国内初の国際的紛失物回収サービス「マイブーメラン」を提供している。スマートフォン、パソコン、入退室カードなどに貼付・装着するためのシリアルナンバー(番号)を記載したラベル等を提供し、紛失物の回収を代行するサービスである。MDM(モバイルデバイス管理)システムを補完して情報セキュリティ対策の完成度を高めるサービスのため、バルク(新)の情報セキュリティコンサルティングサービスとの高い親和性も有している。

 15年12月にはパイプドHD<3919>グループのパイプドビッツと、マイナンバー対応が求められる企業の役員および担当者を対象に、マイナンバー対応セミナーを共催した。

 16年1月には連結子会社バルクがPICC社(東京都)と業務提携した。PICC社は個人情報保護に関する中小企業向けの第三者認証制度JAPHIC(ジャフィック)マークの認定審査機関として付与審査業務を行っている。今回の提携によってバルクが、PICC社の提携コンサルタント企業として、プライバシーマーク認定やISO27001(ISMS)認証では負担が過大となっていた小規模事業者向けに、JAPHICマーク認証取得支援サービスを提供する。

■営業損益改善基調

 15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)4億23百万円、第2四半期(7月~9月)5億29百万円、第3四半期(10月~12月)5億56百万円、第4四半期(1月~3月)5億52百万円、営業利益は第1四半期26百万円の赤字、第2四半期25百万円、第3四半期32百万円、第4四半期11百万円だった。

 また15年3月期の売上総利益率は26.8%で14年3月期比0.4ポイント上昇、販管費比率は24.8%で同横ばいだった。マーケティング・システム・サービスの株式取得時に発生したのれん減損損失42百万円を計上したため純利益は15百万円の赤字だったが、営業損益は改善基調のようだ。自己資本比率は44.0%で同4.6ポイント低下した。

■16年3月期は計画超の増収増益で純利益は黒字化

 前期(16年3月期)連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比9.2%増の22億50百万円となり、営業利益が同61.2%増の68百万円、経常利益が同40.3%増の69百万円、そして純利益が51百万円(前々期は15百万円の赤字)で黒字化した。

 コンサルティング事業において、マイナンバー制度導入を受けた情報セキュリティ体制構築・運用支援関連の受注が想定を上回った。さらにマーケティング事業における大型スポット案件獲得も寄与して計画超の増収増益だった。

 売上総利益は同3.9%増加したが、売上総利益率は25.5%で同1.3ポイント低下した。販管費は同0.8%減少し、販管費比率は22.5%で同2.3ポイント低下した。営業外収益では前々期計上した貸倒引当金戻入額4百万円が一巡したが、持分法投資利益が増加(前々期0百万円計上、前期2百万円計上)した。特別損失では前々期計上した減損損失42百万円が一巡した。

 配当は無配を継続した。ROEは7.9%で同10.4%ポイント上昇、自己資本比率は47.2%で同3.2ポイント上昇した。

 セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、コンサルティング事業は売上高が同20.7%増の2億01百万円、営業利益が同51.2%増の62百万円だった。マイナンバー制度の開始を受けて、特に上期に同制度への対策支援やプライバシーマーク・ISO27001の新規認定・認証取得支援などが特需的に発生した。15年6月リリースした「V-Cloud」の受注も当初想定を上回ったようだ。

 マーケティング事業は売上高が同5.8%増の7億65百万円だが、営業利益が同2.7%減の66百万円だった。セールスプロモーション分野はリピート案件およびスポット案件とも好調に推移したが、マーケティングリサーチ分野は市場の成長が鈍化傾向を強めたようだ。

 IT事業は売上高が同11.0%減の1億59百万円、営業利益が同46.6%増の17百万円だった。企業のIT投資は増加基調だがエンジニア不足が一段と深刻化しているため、グループ各社の中期成長に向けて、グループ内のシステム開発や新規ビジネス開発支援に戦略的に人的リソースを投入した。

 住宅関連事業は、売上高が同12.8%増の11億31百万円で、営業利益が同74.1%増の28百万円だった。継続開催のリフォームイベントや大型改装物件を活用した内覧会など、積極的な広告宣伝活動が奏功して順調に伸長した。

 なお四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)6億39百万円、第2四半期(7月~9月)5億86百万円、第3四半期(10月~12月)5億47百万円、第4四半期(1月~3月)4億78百万円、営業利益は第1四半期9百万円、第2四半期33百万円、第3四半期30百万円、第4四半期4百万円の赤字だった。

■17年3月期は減収減益予想だがクラウドサービス伸長して上振れ余地

 今期(17年3月期)の連結業績予想(5月13日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比5.3%減の21億30百万円、営業利益が同26.8%減の50百万円、経常利益が同30.9%減の47百万円、純利益が同43.9%減の28百万円としている。配当予想は無配継続としている。

 コンサルティング事業において、マイナンバー制度関連の需要が落ち着いたことに加えて、プライバシーマーク認定を新規に取得する企業は比較的小規模なケースが多く、競争も激化しているため案件単価が下落傾向にあるとしている。なお16年5月リリースの効果測定型コンプライアンスリスク診断プログラム「V-Risk」については織り込んでいないとしている。

 セグメント別(連結調整前)売上高は、コンサルティング事業が同14.1%減の1億73百万円、マーケティング事業が同6.4%減の7億17百万円、IT事業が同10.2%減の1億43百万円、住宅関連事業が同2.5%減の11億03百万円としている。

 ただし情報セキュリティマネジメントシステム運用支援クラウドサービス「V-Cloud」の導入数が増加基調であり、16年5月の新機能搭載(v-assist動画教育システム)の効果や、効果測定型コンプライアンスリスク診断プログラム「V-Risk」も寄与してストック型収益の伸長が期待される。今期(17年3月期)業績予想には上振れ余地があるだろう。

 さらに主要ターゲットを大企業にシフトして、ストック型収益を一段と伸長させる方針であり、中期的に収益構造転換と収益拡大が期待される。

■株価は売り一巡して調整の最終局面

 株価の動きを見ると、17年3月期減収減益予想を嫌気して水準を切り下げた。5月30日には年初来安値となる138円まで調整した。ただし6月1日には終値で148円まで切り返している。嫌気売りが一巡したようだ。

 6月1日の終値148円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS3円84銭で算出)は38~39倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS89円63銭で算出)は1.7倍近辺である。時価総額は約11億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、調整のほぼ最終局面と考えられる。反発のタイミングだろう。

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