【アナリスト水田雅展の銘柄分析】三洋貿易の16年9月期第2四半期累計は計画超の2桁営業増益、通期も増額余地

 三洋貿易<3176>(東1)は、自動車業界向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社で、業容拡大に向けてM&A戦略も加速している。16年9月期第2四半期累計は計画超の2桁営業増益だった。通期も営業増益予想で増額余地がありそうだ。株価は年初来高値圏から反落してモミ合い展開だが、1桁台の予想PERや3%台の予想配当利回りと指標面の割安感は強い。自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。

■自動車業界向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社

 ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に事業展開する専門商社である。

 15年9月期セグメント別(連結調整前)売上構成比は、化成品(従来のゴム・化学品を16年9月期から化成品に名称変更)41%、機械資材27%、海外現地法人22%、国内子会社10%、その他0%で、営業利益構成比は化成品30%、機械資材42%、海外現地法人10%、国内子会社14%、その他4%だった。

 メーカー並みの技術サポート力に加えて、財務面で実質無借金経営であることも特徴だ。業界別売上構成(単体ベース)で見ると、自動車業界向けが過半を占め、OA・家電、塗料・インキ、その他化学などが続いている。

 主力の自動車業界向けは、各種合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサーなど)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーターはカーボンファイバー仕様の市場を独占し、ランバーサポートは世界市場6割を占有している。

 飼料・エネルギー・リサイクル関連では飼料や固定燃料などを製造するペレットミルが高シェアだ。国内子会社のコスモス商事は地熱・海洋資源開発関連分野で掘削用機材の輸入販売・レンタルを手掛けている。

■重点領域への経営資源集中とM&Aも活用した業容拡大戦略を推進

 グループとして重点志向する事業領域への経営資源集中を進めるとともに、国内外でのM&Aも活用して業容拡大を図る戦略を推進している。15年3月にはエレクトロニクス関連商品卸売の連結子会社アロマンの株式をタクミ商事に譲渡した。

 15年9月には連結子会社ケムインターが、工業用洗剤輸入販売を手掛けるコムスタージャパンの全株式を取得して子会社化(当社の孫会社化)した。工業用洗剤市場に参入して当社既存事業とのシナジー効果を目指す。

 16年1月には科学機器事業部において仏FORMULACTION社製品の総代理店販売を開始した。液中分散安定性の評価を行うタービスキャンシリーズ、マイクロレオロジー評価装置、塗膜乾燥工程評価装置などを取り扱う。

 16年2月にはソート(東京都)の全株式を取得して子会社化した。同社は紫外線吸収剤、光重合開始剤、ウレタン硬化剤など工業化学薬品の輸入を手掛け、当社既存のインキ・塗料・コーティング業における販売拡大と相乗効果が期待される。

 海外は米国、メキシコ、タイ、中国(上海、香港)、インド、ベトナム、インドネシアに展開している。15年7月にはシンガポールの工業用フィルム販社であるBPS社を子会社化(シンガポール三洋貿易に社名変更)した。15年10月には、タイに子会社Sanyo Trading(Thailand)を設立した。

■3月決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高い収益構造

 15年9月期は6期連続の最高益更新だった。売上総利益率は15.6%で14年9月期比0.8ポイント上昇、販管費比率は9.6%で同0.3ポイント上昇した。営業外収益では受取配当金、為替差益、匿名組合投資利益が増加し、純利益はアロマン株式譲渡に伴う税負担減少も寄与した。ROEは15.9%で同3.2ポイント上昇、自己資本比率は62.1%で同7.4ポイント上昇、D/Eレシオは0.06倍で同0.02ポイント低下した。配当は5期連続増配で、配当性向は25.1%だった。配当の基本方針は連結配当性向25%を下限の目途としている。

 なお15年9月期の四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(10~12月)153億86百万円、第2四半期(1~3月)156億16百万円、第3四半期(4~6月)156億82百万円、第4四半期(7~9月)139億88百万円で、営業利益は第1四半期9億82百万円、第2四半期10億54百万円、第3四半期10億68百万円、第4四半期5億02百万円、経常利益は第1四半期11億48百万円、第2四半期10億47百万円、第3四半期12億09百万円、第4四半期7億06百万円だった。

 設備投資関連の商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期(1月~3月)の構成比が高くなりやすい収益構造である。

■16年9月期第2四半期累計は計画超の2桁営業増益

 今期(16年9月期)第2四半期累計(10月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.1%増の313億33百万円で、営業利益が同13.3%増の23億05百万円、経常利益が同8.3%増の23億76百万円、純利益が同2.8%減の14億72百万円だった。売上高は計画をやや下回ったが、機械資材の好調で売上総利益率が改善し、各利益は計画超となった。営業利益は2桁増益だった。

 売上総利益は同6.5%増加し、売上総利益率は16.6%で同0.8ポイント上昇した。販管費は同1.7%増加し、販管費比率は9.3%で同0.1ポイント上昇した。営業外収益では為替差益が減少(前期1億25百万円計上、今期27百万円計上)した。特別損失では前期計上の減損損失25百万円と関係会社株式売却損12百万円が一巡したが、和解金32百万円を計上した。なお純利益は、アロマン株式譲渡に伴う税負担減少効果が一巡(法人税等を前期5億91百万円計上、今期8億45百万円計上)したため微減益だった。

 セグメント別(連結調整前)の動向を見ると、化成品は売上高が同2.3%減の118億94百万円となり、営業利益が同8.9%減の5億80百万円だった。ゴム関連製品で主力の自動車・家電・情報機器向け合成ゴムおよび副資材が低調だった。化学品関連では工業用フィルムの輸出や電材が低調だった。

 機械資材は売上高が同11.7%増の101億48百万円となり、営業利益が同21.0%増の13億04百万円だった。産業資材関連では自動車内装用部品が好調で、シート用高機能性部品・原材料も伸長した。科学機器関連では各種分析・試験機器、機械・環境関連では飼料用ペレットミルが好調だった。木質バイオマス関連は案件実現の端境期だった。

 海外現地法人は売上高が同6.3%減の59億28百万円となり、営業利益が同26.0%減の1億92百万円だった。三洋物産貿易(上海)は自動車用各種部品が好調だった。SCOA(米国)は自動車用各種部品が伸長したが、吸水性樹脂やフィルムが低調だった。San-Thap(タイ)はタイパーツ安による輸入品の採算悪化で低調だった。国内子会社は売上高が同2.5%減の31億76百万円だが、営業利益が45.7%増の4億13百万円だった。コスモス商事の海洋・船舶関連大型案件が寄与した。ケムインターは化学品、機械・電子部品とも低調だった。

 なお地域別の売上高は、日本が同6.5%増の215億82百万円(売上構成比68.9%)となり、中国は同1.8%減の30億04百万円(同)9.6%、米国は同6.9%減の31億91百万円(同10.2%)、その他は同16.5%減の35億56百万円(同11.3%)だった。日本では自動車用各種部品を中心に機材資材が好調だった。その他では欧州や韓国向けが低調だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)163億87百万円、第2四半期(1月~3月)149億46百万円、営業利益は第1四半期13億11百万円、第2四半期9億94百万円だった。

■16年9月期通期は営業・経常増益予想、増額余地

 今期(16年9月期)通期の連結業績予想は前回予想(11月6日公表)を据え置いて、売上高が前期比5.5%増の640億円、営業利益が同12.3%増の40億50百万円、経常利益が同3.4%増の42億50百万円、純利益が同7.0%減の26億円としている。

 純利益はアロマン株式譲渡に伴う税負担減少効果が一巡して減益予想だが、自動車用各種部品など高付加価値の主力商材が国内外で好調に推移して増収、営業増益、経常増益予想である。8期連続経常増益見込みである。売上総利益率は同1.0ポイント上昇の10.1%、販管費比率は同1.2ポイント上昇の7.8%を計画している。

 配当予想は同3円減配の年間46円(第2四半期末23円、期末23円)で予想配当性向は25.3%となる。配当の基本方針は連結配当性向25%を下限の目途としている。

 セグメント別(連結調整前)の売上高は、化成品がソートの子会社化も寄与して同5.5%増の249億円、機械資材が北米自動車市場の好調などで同7.4%増の190億円、海外現地法人がゴム関連製品や自動車用部品の堅調推移で同7.7%増の133億円、国内子会社がケムインターの低調で同4.2%減の65億円、その他が同30.4%増の3億円の計画としている。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は、売上高が49.0%、営業利益が56.9%、経常利益が55.9%、純利益が56.6%で、利益進捗率が高水準である。通期会社予想に増額余地がありそうだ。

■長期ビジョンで20年9月期までにROE15%以上目指す

 15年11月に16年9月期~17年9月期の2年間を対象とする中期経営計画を発表し、目標数値には17年9月期売上高670億円、経常利益44億50百万円を掲げた。

 重点戦略は(1)コアビジネスの収益の強化と安定化、(2)新規事業は地熱・海洋資源開発機材など資源エネルギー分野、木質バイオマス機材など環境関連分野、医薬中間体・医療用原材料・バイオなどライフサイエンス分野へ展開、(3)グローバル展開(自動車産業を中心に日系企業の進出が続くアセアン+インド、中国、北中米に主軸)、(4)投資案件への積極的取り組み(既存事業との相乗効果、成長性、グローバル展開を目指すM&A含む投資案件)、(5)マンパワーの強化と人材育成とした。

 そして15年10月1日から20年9月30日までの5年間を対象期間とする長期ビジョン「VISION2020」では、目標数値として20年9月期までに経常利益50億円、ROE15%以上、自己資本比率50%以上を掲げている。

 基本方針は(1)盤石な財務基盤、(2)強みを通じた価値創造、(3)自由闊達な社風と機会創出の組織として、6つの戦略に、戦略A:既存ビジネスの深化、戦略B:ビジネスポートフォリオの明確化、戦略C:新規ビジネスのプロジェクト立ち上げ、戦略D:グローバル展開の加速、戦略E:新規投資案件の推進、戦略F:国内外の組織の強化を掲げた。

 戦略Cの新規プロジェクト立ち上げでは、20年までに具現化可能な新規ビジネスとして、地熱・海底資源開発関連機材、医薬中間体・原体、特殊フィルムの海外展開、木質バイオマス・ガス化発電関連機材を推進する。なお16年の成約として、ブルクハルト社ガス化熱電併給装置、コールバッハ社サーマルオイルボイラー、CPM社ペレットミル、ステラ社ベルト式低温ドライヤー関連機器を見込んでいる。

 戦略Eの新規投資案件では、新規投資目標を5件以上として、会社方針に符合する案件にM&A・商権譲渡・資本参加・JV設立などの形で積極投資を行う。そして16年2月に、UVインキ・塗料・光硬化型樹脂などに強みを持つソートを子会社化した。

 戦略Fの国内外の組織の強化では、グローバル化に対応すべく、約260人のグループ社員を20年には300人以上に増強する方針だ。

■株価は自律調整一巡して上値試す、指標面に割安感

 株価の動きを見ると、3月~4月の年初来高値圏1500円近辺から反落し、5月以降は1400円近辺でモミ合う展開だが、大きく下押す動きは見られない。自律調整の範囲だろう。

 6月1日の終値1367円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS181円77銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間46円で算出)は3.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1314円11銭で算出)は1.0倍近辺である。時価総額は約198億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺でモミ合う形だ。1桁台の予想PERや3%台の予想配当利回りと指標面の割安感は強い。自律調整が一巡して上値を試す展開だろう。

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