【アナリスト水田雅展の銘柄分析】フライトホールディングスは17年3月期黒字化予想、新製品も寄与して収益改善期待

 フライトホールディングス<3753>(東2)は電子決済ソリューションを主力として、システム開発やECソリューションなども展開している。6月2日には電子マネー対応版「ペイメント・マイスター」新製品を発表した。第一弾の対応ブランドはNTTドコモ<9437>の「iD」である。16年3月期は赤字が拡大したが17年3月期は黒字化予想である。次世代型マルチ決済装置の新製品「incredist premium」なども寄与して収益改善基調が期待される。株価は17年3月期黒字化予想や、5月31日発表のEU圏Credoraxとの業務提携を材料視して動意づいた。モミ合いから上放れて大底圏を脱する形だ。続伸展開だろう。

■システム開発や電子決済ソリューションなどを展開

 フライトシステムコンサルティングが13年10月、持株会社に移行してフライトホールディングスに商号変更した。システム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、電子決済ソリューションなどのサービス事業、B2B向けECサイト構築パッケージなどのECソリューション事業を展開している。

 14年10月にECサイト構築パッケージソフト「イーシー・ライダー」のDRAGON TECHNOLOGYを子会社化(14年11月イーシー・ライダーに商号変更)し、ECソリューション事業も強化している。

■電子決済ソリューション分野に強み

 電子決済ソリューションの分野では、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末「incredist(インクレディスト)」と、スマートデバイス決済専用アプリケーション「ペイメント・マイスター」の展開を強化している。

 スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」は10年9月に提供開始した。iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末にする大企業向けの、国内初のBtoB向け決済ソリューションである。高級ホテル、レストラン、観光タクシー、旅行代理店など幅広い業種に導入されている。

 そして13年4月には、J-Debit、電子マネー、銀聯カード、クレジットカードといったカードの読み取りを1台で実現できる、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末「incredist」の販売を開始した。

■アライアンスも活用して事業展開

 14年9月には、スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」に関して、フォウカスとスマートデバイスを用いたモバイルPOS決済システムで協業した。

 15年4月には、スマートデバイスを活用したクレジットカード・銀聯カードなど複数の決済処理が可能な新サービス「ペイメント・マイスター for J-Mups(ジェイマップス)」を加盟店向けに提供開始した。接続先決済センターを三菱UFJニコスとJR東日本メカトロニクスが共同で運営する「J-Mups」として、顧客ニーズに合わせたさまざまな拡張性の高い決済を実現する。そして15年11月には「ペイメント・マイスター for J-Mups」をバージョンアップし、訪日外国人向けの外貨建てカード決済サービスに対応した。

 15年9月には、子会社イーシー・ライダーがラクーン<3031>と業務提携して、イーシー・ライダーのBtoB向けECサイト構築システム「EC-Rider B2B」と、ラクーンのBtoB掛売り・請求書決済代行サービス「Paid」との連携を開始した。

 15年12月には子会社フライトシステムコンサルティングが、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」の法人モデル「Pepper for Biz」向けロボアプリの開発者などを総合的に支援する「Pepperパートナープログラム」において、ロボアプリパートナーとして認定された。

 16年4月には子会社イーシー・ライダーがportia(ポーシャ、東京都)と業務提携し、イーシー・ライダーのBtoB向けECサイト構築システム「EC-Rider B2B」と、ポーシャが新しく提供する企業向けオンラインリアルタイム決済システム「portia」を連携させたサービスを提供すると発表した。

 また16年4月には子会社イーシー・ライダーが、GMOインターネット<9449>のクラウドサービス「ConoHa byGMO(コノハ)」を基盤に採用した「EC-Rider B2B」の新プランを提供すると発表した。

■海外展開も加速

 14年12月には、海外での「ペイメント・マイスター」および「incredist」の拡販に向けて、米国子会社FLIGHT SYSTEM USAを設立した。今後のICチップ付きクレジットカード決済(EMV決済)および、Apple PayなどのNFC決済においてグローバル展開を推進する。

 また15年12月には、アジアを中心とした海外での電子決済ソリューション事業の展開に向けて、台湾に100%子会社(FLIGHT台湾)を設立した。

 5月31日には子会社フライトシステムコンサルティングが、EUでクレジットカード・アクワイアリング事業を行うCredorax(クレドラクス)との業務提携を発表した。フライトシステムコンサルティングの「ペイメント・マイスター」をCredoraxに接続し、クレジットカード決済装置の新製品「incredist premium」を活用したタブレット連動型カード決済ソリューションをEU圏で広く展開していく。なお接続完了は16年8月頃の予定としている。

■新製品を積極投入

 15年10月には子会社フライトシステムコンサルティングが、米国子会社FLIGHT SYSTEM USAを通じて、北米市場向けにタブレット連動型クレジットカード決済装置「incredist」の新製品「incredist premium」を発表した。磁気クレジットカード、接触型ICクレジットカード(EMV)、非接触型ICクレジットカード(コンタクトレスEMV)、および日本独自の電子マネーに対応した決済端末である。

 また米国子会社FLIGHT SYSTEM USAは米国の大手決済センター事業者PIVOTALと業務提携した。PIVOTALのGlobalOneサービスと協業して新製品「incredist premium」の北米での販売を強化する。

 そして16年3月、新製品「incredist premium」の日本国内での販売を開始した。米国では現在セキュリティー基準の審査を依頼中であり、審査が終了次第、米国子会社FLIGHT SYSTEM USAを通じて米国での販売を開始する予定としている。

 6月2日には子会社フライトシステムコンサルティングが、スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」の新たなラインナップとして、トッパン・フォームズ<7862>のグループ会社であるTFペイメントサービス(TFPS)と連携し、電子マネー対応版「ペイメント・マイスター for Thincacloud」を開発し、加盟店向けに提供開始すると発表した。

 接続先決済センターを、TFPSが運営する電子マネー専用クラウド型決済プラットフォームサービス「Thincacloud(シンカクラウド)」として、電子マネー決済を実現する。第一弾の電子マネーブランドとしてNTTドコモ<9437>の「iD(アイディー)」がサービスインする。

■大型案件も影響する収益構造

 15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)3億59百万円、第2四半期(7月~9月)3億円、第3四半期(10月~12月)2億38百万円、第4四半期(1月~3月)6億95百万円、営業利益は第1四半期7百万円の赤字、第2四半期58百万円の赤字、第3四半期77百万円の赤字、第4四半期83百万円の黒字だった。

 サービス事業における大型案件の売上計上有無も影響する収益構造で、15年3月期は新規大型案件の先送りが影響した。ただし第4四半期に黒字化して営業損益は改善基調だ。

■16年3月期は大型案件が一巡して赤字拡大

 5月20日発表した前期(16年3月期)の連結業績は、売上高が前々期(15年3月期)比22.8%増の19億55百万円、営業利益が92百万円の赤字(前々期は59百万円の赤字)、経常利益が1億28百万円の赤字(同62百万円の赤字)、純利益が1億62百万円の赤字(同84百万円の赤字)だった。配当は無配を継続した。

 サービス事業で新製品「incredist premium」の大型案件を納品して大幅増収だったが、同製品の開発費発生や、ECソリューション事業における固定費先行などで利益面では赤字が拡大した。売上総利益は23.5%増加し、売上総利益率は25.9%で同0.1ポイント上昇した。販管費は同27.5%増加し、販管費比率は30.6%で同1.1ポイント上昇した。営業外では為替差損益が悪化(前々期は差益13百万円計上、前期は差損7百万円計上)した。特別損失ではソフトウェア評価損10百万円を計上した。自己資本比率は22.0%で同10.8ポイント低下した。

 セグメント別(連結調整前)に見ると、C&S事業は売上高が同6.2%減の5億82百万円、営業利益が同3.3倍の11百万円だった。サービス事業は売上高が同40.2%増の13億51百万円、営業利益が同8.0%増の1億77百万円だった。ECソリューション事業は売上高が同54.8%増の36百万円、営業利益が46百万円の赤字(前々期は19百万円の赤字)だった。

 C&S事業では物流企業向けシステム開発やマイナンバー対応システム開発支援などを行い、引き合いも堅調だったが、人材採用が計画どおりに進まず、またサービス事業の立ち上げに要員を投入したため減収だった。営業損益は改善した。サービス事業では、新製品「incredist premium」の大型案件を納品して大幅増収だが、同製品の開発費発生のため営業損益は伸び悩んだ。ECソリューション事業は事業立ち上げのため固定費が先行して発生している。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)1億83百万円、第2四半期(7月~9月)2億61百万円、第3四半期(10月~12月)1億73百万円、第4四半期(1月~3月)13億38百万円で、営業利益は第1四半期1億43百万円の赤字、第2四半期79百万円の赤字、第3四半期1億33百万円、第4四半期2億63百万円だった。第4四半期はサービス事業における新製品「incredist premium」の大型案件納品が寄与した。

■17年3月期は黒字化予想、新製品も寄与して収益改善期待

 今期(17年3月期)の連結業績予想(50月20日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比7.4%増の21億円、そして営業利益が60百万円の黒字(前期は92百万円の赤字)、経常利益が50百万円の黒字(同1億28百万円の赤字)、純利益が30百万円の黒字(同1億62百万円の赤字)としている。配当は無配継続としている。

 C&S事業においては、前期からの仕掛案件や既存顧客のデータセンター移転案件に注力するほか、新たな取組としてクラウド移行の専門部隊を立ち上げ、ITインフラのクラウド移行の営業を強化する。サービス事業においては、既存大口顧客に対する追加導入の提案活動、Apple Payを含むコンタクトレスEMVや電子マネーにも対応する新製品「incredist premium」の開発・販売活動に注力する。ECソリューション事業では、強みであるカスタマイズ対応や越境ECにフォーカスして、BtoB向けECサイト構築パッケージ「EC-Rider B2B」の販売活動に注力する。

 利益面では、新製品「incredist premium」販売活動で、前期に積み残した北米での検定費用、EU圏、台湾、シンガポールなどでの検定費用、およびApple Pay到来に伴う決済センターとの接続など、1億円規模の開発費が発生する見込みだが、増収効果で吸収して黒字化予想だ。なおApple Pay開始時期が未確定のため、Apple Payが開始された場合に想定し得る売上については織り込んでいない。Apple Payが開始されたタイミングで売上・利益に関する見直しを行う予定としている。新製品も寄与して収益改善が期待される。

■株価はモミ合い上放れて大底圏脱出

 株価の動きを見ると、17年3月期黒字化予想や、5月31日発表のEU圏Credoraxとの業務提携を材料視して動意づいた。5月31日には447円まで急伸して1月の470円に接近する場面があった。300円~350円近辺でのモミ合いから上放れる形だ。

 6月2日の終値360円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS5円29銭で算出)は68倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS32円92銭で算出)は11倍近辺である。時価総額は約34億円である。

 週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線と26週移動平均線を一気に突破した。モミ合いから上放れて大底圏を脱する形だ。続伸展開だろう。

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