参議院選挙と同時進行の大型IPO関連株は「0.5回答」をフォローして合わせ技相場展開の素地=浅妻昭治

編集長の視点

<マーケットセンサー>

 今年4月28日の日銀金融政策決定会合の「ゼロ回答」ほどではないが、「0.5回答」程度と評価されたようだ。6月1日の通常国会閉会後の安倍晋三首相の記者会見である。もともとこの記者会見は、3点セットとするのが市場の期待であった。そのうち第1点目の衆参同時選挙は早い段階でドロップしたものの、残り2点の消費税増税の再延期と経済対策の編成は、一部には先取りの動きさえあった。ところがメーンテーマの消費税増税延期ははっきり表明したが、もう一つの柱の経済対策について、編成規模について言及がなく、10兆円規模まで膨らんでいたものが、敢えなく潰えてしまったからだ。

 日経平均株価は、金融政策決定会合後の5月相場と同様に急落、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)閉幕後の安倍首相の記者会見をテコに3日間で462円高したのに、その後の2日間で672円安と往って来い以上に売られた。しかも、6月14日~15日に開催されるFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)でも「ゼロ回答」となる懸念が強まった。前週末3日発表の5月の雇用統計で、非農業部門の雇用者数の増加が市場予想を大きく下回り、6月の早期利下げ観測が大きく後退したからで、為替相場は、5月末の1ドル=111円台から106円台と大きく円高になって返ってきている。

 時は「政治の季節」である。安倍首相の消費税増税再延期表明を境に7月10日の投票日に向け、事実上の参議院選挙がスタートしている。株価が最も嫌うのが、政権の不安定化、政局の混乱である。参議院選挙の争点は、消費税増税の延期では野党側にも異論がなく、憲法改正も表舞台から消え、「アベノミクス」を信任するかしないかに絞られてきた。「アベノミクス」のここまでの唯一で最大の成果といえば、「円安」と「株高」である。その株価が波乱模様となり、為替相場も、円高・ドル安再燃に向け逆ネジが働くようなら、ことによると有権者の投票行動を左右しかねないかと心配になる。

 思い出すのが、2000年代前半の政治混迷である。選挙のたびに衆議院と参議院の多数党が異なる「衆参ねじれ国会」が常態となって、「何も決められない政治」で1年ごとに首相の顔が変わり、「政権交代」が、新語・流行語大賞を受賞するブームとなった。当時は、日経平均株価が、1000円変動すると内閣支持率も10%アップ・ダウンするとの政局方程式なども試算されたりした。安倍内閣の「一強体制」にカゲリが差し、ヒビが入るようなら、あの「何も決められない政治」の苦い記憶が、投資家の買いの手を止め、市場に向かう足に待ったをかけることになるかもしれないのである。

 もちろん株式市場そのものは、これから相次ぐ大手新聞・テレビ・政治ジャーナリズムなどの選挙情勢分析、票読みに反応する「政局相場」を展開し、各党の選挙公約(マニフェスト)に反応する「政策銘柄」が動意付き、突然、理由もなく急騰する「政治銘柄」が跋扈するなど、賑わいをみせるはずである。

 6月1日に大手各紙に観測報道された無料通話アプリ大手のLINE(東京都渋谷区)の新規株式公開(IPO)も、そうした流れの一貫としたらうがち過ぎだろうか?同社株のIPO観測は、これまで何回も繰り返され、そのたびに空ぶりとなってきたが、今回は、日米同時上場で、しかも7月に東証第1部にIPOされるとされるタイミングからいっても、なかなか微妙なのである。観測記事に反応して関連株にはメディア工房<3815>(東マ)、GMO TECH<6026>(東マ)のようにストップ高した銘柄を筆頭に、年初来高値更新銘柄、値上がり率上位銘柄などのオンパレードとなっており、これに伴って市場参加者の投資マインドが好転し、「アベノミクス」を信任する有権者のポジティブな投票行動につながれば、結果オーライとなる。

 問題は、このLINE関連株の株価航続力である。参院選の投票日とされる7月10日まで一直線に上値を追い続けると考えるには無理がある。そこでことIPO市場に関しては、合わせ技相場が続くのではないかと推察されるのである。今年のIPO銘柄については、すでに昨年末からIPO銘柄数が、昨年の92社を上回る100社超と観測され、今年6月末までに40社のIPOが承認され、同じ時点での昨年のIPO数の43社をやや下回っているだけにこれから拍車がかかるはずである。大型IPO銘柄の下馬評もしきりで、今回のLINEもその一角で、そのほかJR九州(福岡市博多区)、コメダ(愛知県名古屋市)、ZMP(東京都文京区)などが観測された。

 このうちJR九州は、今年4月14日に発生した熊本地震で100億円超の被害計上見込みと、今3月期中のIPO方針にやや不透明要素が交錯しているが、コメダは、すでに今年5月26日に上場が承認され、所属部は東証第1部か第2部かは未定なものの、持株会社のコメダホールディングス<3543>が6月29日にIPO予定である。こうなると俄然、マーケットの注目度が集まるのが、ZMPである。自動運転のキースパーソン株とされて、LINEと同様に既上場の関連株は広範囲に及ぶからだ。選挙期間中にLINE、コメダ、ZMPのIPO3本柱の関連株がとっかけひっかけ逆行高を演じるとすれば、先行したLINE関連株に続きまずはコメダHDから始めて、ZMPの関連株にまで網を張って待ち伏せするのも有効になるかもしれない。(本紙編集長・浅妻昭治)

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