【中期経営計画でみる株価】アセアン進出先駆者の日本精密、アセアンで大輪の花咲かせる、時計ベルトの一大供給体制を構築

中期経営計画と株価

■セイコーも大量発注

 アセアン進出の先駆者として注目される日本精密<7771>(JQ・1000株)が、アセアンで大輪の花を咲かせようとしている。2018年(平成30年)を最終年度とした『アセアンプロジェクト』を推進中で最終年度に計画していた売上100億円は1期早く達成できることから、計画最終の売上を114億円へ上方修正した。日本のモノ作り技術をベトナムへ持ち込み、時計ベルト生産では圧倒的な強さを持つに至り、このほどセイコーが月産5万本の高級時計ベルトを10年間にわたって同社から納入を受ける契約を結んだ。今後、一貫生産の強みを持つ同社に世界の高級時計メーカーが相次いで発注してくる可能性があり、アセアンで大きい花が開く楽しみがある。

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 1994年にベトナムに工場進出したのがアセアン展開の最初。同社の井藤秀雄常務(写真)は、「現地での一貫生産体制を構築したことにより、顧客からの高い信頼を得、コスト競争力と相まって成長していることから2013年に、『アセアンプロジエクト』を作成した。カンボジアに工場を建設、ベトナム工場とのシナジー創出によるさらなる生産体制の拡充を図るとともに、同地域において一大サプライチェーン構築を視野に入れた計画である」という。

 今春、新たにセイコーとの間で10年間の安定供給契約を結んだ。カンボジア工場の敷地内に新工場を16年9月着工で建設し17年春に月産5万本の時計ベルト生産を稼動させる。生産準備金を受領することから2017年3月期・第1四半期に特別利益として2億円を計上する。

 ただ、『アセアンプロジェクト計画』の最終18年3月期売上は予定の100億円は114億円に上方修正だが、営業利益は従来の8億円には届かず4億7100万円(16年3月期は2億8100万円)の見通しだ。為替変動の影響により売上が増加する一方で 為替変動がメガネフレーム販売子会社の商品仕入れ価格上昇、バトナムにおける想定以上の賃金上昇による労務費の増加によるためだ。

 しかし、この労務費アップは同社にとってプラスに作用するものとみられている。既に、中国では労務費の高騰と高齢化や後継者不足で生産は限界にきている。今回、セイコーが同社に発注したのもこうした背景がある。同社は、中国の協力工場をカンボジア工場にに誘致するほかベトナム工場のオートメーション化をいっそう進めることで、ベトナム工場とカンボジア工場でアセアンの一大供給体制を構築する。当然、世界の有力時計メーカーも今回のセイコーのように同社に供給先として求めてくるものとみられる。

 17年3月期は売上9.3%増の102億円、営業利益8.5%増の3億0600万円、EPS19.1円、配当無配の見通し。

 株価は14年8月の104円を起点に下値切り上げ型の相場。足元では5月11日の403円を高値に350円前後でモミ合っている。時計ベルトを主力にメガネフレームも手掛けるが、とくに、時計とベルトは夫婦の間柄のようなもの。今後、時計型のウエアブル端末の普及に伴って同分野の需要も予想される。今回、世界のセイコーが同社を認めた効果はたいへん大きく、世界時計メーカーからの発注が予想され、供給体制を持っている強みから業績飛躍の可能性を秘めているといえる。配当実施も遠くないとみられることから株価は中期では700~800円を目指すものとみられる。

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