【鈴木雅光の投信Now】増えすぎた投資信託をロボアドで選定する愚行

日インタビュ新聞ロゴ

 某インターネット証券会社が、スマホ上で簡単な説明に答えるだけで、たったの30秒で個々人のリスク許容度に応じたポートフォリオを提示するサービスを始めたそうです。
 いわゆる、フィンテック領域におけるロボアドバイザーアプリのひとつです。

 この証券会社の担当者が、なぜ、このアプリを開発するに至ったのか、という記事を読んだので、それについて思ったことを記しておきましょう。

 開発のきっかけは、「お客さまのニーズを聞かせていただくと、『何を買えばよいのかわからない』という声が一番多いです」ということからのようですが、投資信託の本数が多すぎて商品選択に苦労するなんてことは、もう20年以上も前から言われています。そんなことを今更、大事なことに気づいたかのように言っている、この証券会社の開発担当者の愚鈍さには、嗤いを禁じ得ないわけですが、そのソリューションとして出してきたものが、これまた流行りもののロボアドというところが、証券業界の想像力の無さを物語っているようで、もの悲しくさえなります。

 投資信託の運用本数は、この数年で急増しています。アベノミクス前夜の2012年12月時点の運用本数は、全部で4384本でした。それが2016年4月時点では5919本です。何と1535本も増えているのです。これでは、何を買ったら良いのか分からなくなるのも、無理はありません。

 投資信託の運用本数増は、ファンドマネジャー1人あたりの管理本数増につながり、ずさんな運用につながる恐れがあります。過去、それを問題視して、投資信託の本数を減らそうという動きが、投資信託業界を挙げて行われました。それが奏功し、1995年8月に6457本あった運用本数が、2004年7月には2525本まで減少しました。

 運用本数を減らしさえすれば、「何を買えばよいのかわからない」などと、大切なお客様の頭を悩ませるような事態は避けられるでしょう。

 ロボアドバイザーアプリを開発する暇があったら、運用本数を思い切って整理し、残された投資信託を大事に育てることに時間を割いた方が、顧客満足につながるはずです。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■北海道大樹町で飛行、安全性と着地精度を実証  ホンダ<7267>(東証プライム)の研究開発部門で…
  2. ■自社で自動運転システムを持たない企業にも施工自動化を提供  日立建機<6305>(東証プライム)…
  3. ■年間約36万人が犠牲に、二輪事故対策が急務  豊田合成<7282>(東証プライム)は6月11日、…
2025年7月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

ピックアップ記事

  1. ■5月訪日客数が過去最高、6月も好調持続の見込みで市場活況  足元のインバウンド需要は、好調に推移…
  2. ■インバウンド関連株は「トランプ関税」のリーチ圏外で小型割安株特性を発揮  「たかが1%、されど1…
  3. ■内需株に広がる「トランプ・ディール」回避の波  東京電力ホールディングス<9501>(東証プライ…
  4. ■日米関税交渉、7月9日に運命の日「90日猶予」迫る潮目  「三日、三月、三年」とは、潮目、変わり…
  5. ■祝日と金融政策が交錯する7月  7月は、7月21日が「海の日」が国民の祝日に制定されてからフシ目…
  6. ■「MMGA」効果の造船株・海運株は「海の日」月間キャンペーン相場も加わり一段高を期待  あと1カ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る