ミロク情報サービスは上場来高値更新の展開、17年3月期も増収増益・増配予想

 ミロク情報サービス<9928>(東1)は財務・会計ソフトの開発・販売やコンサルティングサービスなどを展開し、クラウドサービスやFinTech分野など新規事業を強化している。17年3月期も増収増益・増配予想である。株価は上場来高値更新の展開となった。自律調整を交えながら上値を追う流れだろう。

■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス収入が収益柱

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなど業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。

 会計事務所が抱えている課題を解決することで中堅・中小企業支援にも繫がるトータルソリューションを強みとしている。全国約8400の会計事務所ユーザー、および約1万7000社の中堅・中小企業ユーザーを有し、サービス収入などのストック型収益構造を特徴としている。

 13年10月には連結会計システム開発のプライマルと資本・業務提携し、連結会計や連結納税までグループ経営支援ソリューションの提供を強化した。16年1月施行のマイナンバー制度関連対応サービスも強化し、15年9月にマイナンバー管理システム「MJSマイナンバー」(オンプレミス版・クラウド版)を開始、15年10月に中堅・中小企業向けにマイナンバー収集・保管など一連の業務を代行する「MJSマイナンバーBPO」サービスを開始した。

 6月16日には子会社クラウドインボイスと協業して、会計事務所向け記帳代行支援サービス「丸投げ記帳代行」を7月1日から提供開始すると発表した。会計事務所の業務効率化をサポートする。

 収益はシステム導入契約売上高(システム導入契約時のハードウェア、ソフトウェア、システム導入支援サービスなどのユースウェア販売)と、サービス収入(会計事務所向け総合保守サービスTVS、ソフト使用料収入、企業向けソフトウェア運用支援サービス、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入など継続的な役務の対価)である。16年3月期の売上高構成比はシステム導入契約売上高62.1%、サービス収入35.1%、その他2.7%だった。ストック型のサービス収入の構成比が上昇して収益力が向上している。

■中期計画でROE17年3月期15%、21年3月期30%目指す

 第3次中期経営計画(15年3月期~17年3月期)では、経営目標値に17年3月期売上高260億円、経常利益40億円、純利益24億50百万円、売上高経常利益率15%、ROE15%、さらに新たな成長ステージとなる21年3月期に売上高500億円、経常利益率30%、ROE30%を目指している。

 重点戦略として、顧客基盤拡大に向けた販売戦力増強と販路拡大(市場ポテンシャルに合わせた人的リソース配分適正化、販社M&Aも活用したエリア拡大、顧客サポート体制と経営情報サービスの充実など)、新規顧客を創造する新製品・サービス開発・提供(マルチデバイス対応クラウドサービスなど)、新規事業による新たな収益基盤確立(利益率向上に向けた事業ポートフォリオ再設計、中小企業の事業承継・事業再生支援サービスへの参入など)を推進している。

■M&A・アライアンス戦略も活用して新規事業分野を強化

 新規事業関連では、登録会員数約130万人の中小・ベンチャー企業支援ビジネス情報サイト「bizocean(ビズオーシャン)」のクラウド拡充とネットビジネスへの展開、マルチデバイス対応お金管理アプリ「マネトラ」による消費者間取引(CtoC)市場への参入、経済団体・FC企業への会計クラウドサービスの提供などを推進している。またM&A・アライアンスも積極活用している。

 14年5月に全国商工会連合会会員事業者向け「会計・税務のクラウド型アプリケーションソフト」を開発、14年8月にソフトテックス社から完全Web対応クラウド販売管理システム「商い哲人EX」を譲り受け、14年9月に中小企業の事業承継や事業再生を支援する子会社MJS M&Aパートナーズを設立、14年10月にCtoC向けクラウド型会計アプリ「フリビズbyマネトラ」提供を開始、韓国の電子金融専門企業Webcash(ウェブキャッシュ)社と資本業務提携して日本法人(14年11月MWI社に社名変更)の株式取得、14年12月にクラウド型POSシステムのオフィス24グループと業務提携した。

 15年1月には次世代Web標準言語HTML5を活用したWebソリューション開発に強みを持つニューフォリアに出資、15年4月には一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)へ加盟、15年11月にはMWI社への出資比率を高めて連結子会社化、15年12月にはSAPジャパンとOEMパートナー契約を締結、会計事務所向けに記帳代行サービスを提供するクラウドインボイスを完全子会社化した。

■FinTech分野にも参入

 16年2月には英国における中小企業向け融資仲介のフィンテックベンチャーであるSkwile(スクワイル)社と資本業務提携してFinTech分野に参入すると発表した。

 16年3月には中小企業の経営・業務改善を支援するBtoBクラウドプラットフォーム「bizsky(ビズスカイ)」を構築し、同プラットフォーム上で稼働する最初のクラウドサービスとして、受領した請求書に対する振込・支払業務を当社が代行するサービス「楽(らく)たす振込」を開始すると発表した。

 なお17年3月までに、中小企業の資金調達機会改善・拡大を支援するFinTech分野の融資仲介サービスを「bizsky」上で提供する予定としている。また中小企業の業務効率化やコスト削減を支援する各種クラウドサービスとして新ブランド「楽たす」シリーズを展開する。振込、請求書発行・入金消込、給与明細配信、アカウントアグリケーション、資金繰り管理など新たなFinTech分野サービスを「bizsky」上で展開する。

■ビジネス情報サイト「bizocean」事業を分社、IPO目指す

 16年4月にビジネス情報サイト「bizocean」事業を会社分割し、新たに設立した100%子会社ビズオーシャンが同事業を継承した。同サイトは中小・ベンチャー企業の経営者や個人事業主、ビジネスパーソンを対象に、ビジネスに関連した情報を提供するポータルサイトである。170万人超の登録会員で月間約1500万PVを誇っている。

 ビジネス情報サイト「bizocean」事業によるネットビジネスを今後の成長基盤の一つと位置付け、将来の株式公開も視野に入れて同事業の飛躍的な成長を実現する方針としている。

■サービス収入が拡大するストック型の収益構造

 15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)56億22百万円、第2四半期(7月~9月)56億41百万円、第3四半期(10月~12月)54億77百万円、第4四半期(1月~3月)56億43百万円、営業利益は第1四半期5億96百万円、第2四半期7億06百万円、第3四半期4億56百万円、第4四半期7億66百万円だった。

 ソフト保守サービス契約率上昇などでストック型サービス収入が積み上がる収益構造だ。15年3月期の差引売上総利益率は64.0%で14年3月期比1.9ポイント上昇、販管費比率は52.7%で同1.4ポイント上昇、ROEは13.7%で同1.0ポイント上昇、自己資本比率は67.8%で同4.2ポイント上昇した。配当性向は26.9%だった。

■16年3月期は2桁営業増益

 前期(16年3月期)の連結業績は売上高が前々期(15年3月期)比5.6%増の236億36百万円、営業利益が同20.4%増の30億39百万円、経常利益が同18.6%増の30億68百万円、純利益が同8.4%増の19億06百万円だった。

 顧客基盤拡大に向けた多彩なセミナー・研修会の継続的開催など積極的な販促活動の展開、主力システムの機能強化、マイナンバー制度関連新製品「MJSマイナンバー」や「MJSマイナンバーBPOサービス」開始、新規事業である中小企業の事業承継・事業再生支援事業への積極取り組みなどが奏功し、売上面ではシステム導入契約売上高、サービス収入とも好調に推移した。利益面ではストック型収益であるサービス収入の売上構成比上昇も寄与した。

 システム導入契約売上高は同3.2%増の146億83百万円(内訳はハードウェアが同6.1%増の28億01百万円、ソフトウェアが同0.1%減の89億49百万円、ユースウェアが同11.3%増の29億32百万円)だった。サービス収入は同8.3%増の83億07百万円(内訳は会計事務所向け総合保守サービスTVSが同1.9%増の18億51百万円、ソフト使用料が同19.0%増の10億09百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービスが同8.0%増の35億38百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービスが同7.2%増の12億11百万円、サプライ・オフィス用品が同16.0%増の6億95百万円)で、その他は同33.7%増の6億45百万円だった。

 差引売上総利益は同7.5%増加し、差引売上総利益率は65.1%で同1.1ポイント上昇した。販管費は同4.7%増加したものの、販管費比率は52.3%で同0.4ポイント低下した。また特別利益では前々期計上した投資有価証券売却益2億91百万円が一巡した。ROEは14.0%で同0.3ポイント上昇、自己資本比率は70.2%で同2.4ポイント上昇した。配当は同2円増配の年間17円(期末一括)で配当性向は28.3%だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)58億88百万円、第2四半期(7月~9月)59億45百万円、第3四半期(10月~12月)59億98百万円、第4四半期(1月~3月)58億05百万円、営業利益は第1四半期6億86百万円、第2四半期7億47百万円、第3四半期8億16百万円、第4四半期7億90百万円だった。

■17年3月期も増収増益・増配予想

 今期(17年3月期)連結業績予想(5月13日公表)は売上高が前期(16年3月期)比10.0%増の260億円、営業利益が同29.3%増の39億30百万円、経常利益が同30.4%増の40億円、純利益が同28.5%増の24億50百万円としている。システム導入契約売上高およびサービス収入とも順調に拡大して人件費増加などを吸収する。配当予想は同3円増配の年間20円(期末一括)で予想配当性向は25.7%となる。

 新規顧客拡大と収益基盤強化に注力するとともに、クラウドなどの新製品・サービス、中小企業の事業承継・事業再生支援サービス、FinTech分野も強化している。ストック型の収益構造であり、サービス収入の拡大で売上総利益率の上昇も期待される。収益拡大基調に変化はないだろう。

■株価は上場来高値更新の展開

 株価の動きを見ると、好業績を評価する形で99年の上場来高値1284円を突破し、6月13日には1525円まで上伸した。上場来高値を更新して上値追いの展開だ。

 6月20日の終値1381円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS77円77銭で算出)は17~18倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS443円22銭で算出)は3.1倍近辺である。時価総額は約481億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートして上昇トレンドの形だ。収益拡大基調に変化はなく、自律調整を交えながら上値を追う流れだろう。(アナリスト水田雅展)

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