日本エム・ディ・エムは調整一巡して上値試す、17年3月期増収増益・増配予想

 日本エム・ディ・エム<7600>(東1)は整形外科分野の医療機器商社である。米国子会社ODEV製品の拡販で自社製品売上構成比が上昇し、17年3月期増収増益・増配予想である。日本特殊陶業<5334>と資本業務提携して中期的にも収益拡大基調が期待される。株価は5月の年初来高値から反落したが、調整一巡して上値を試すだろう。06年以来の1000円台が視野に入る。

■整形外科分野の医療機器商社、メーカー機能を強化して自社製品構成比上昇

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器商社である。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品の拡販を推進し、メーカー機能を強化して高収益体質への転換を推進している。自社製品比率が上昇して売上総利益率は上昇傾向だ。米ODEV社製の人工膝関節製品は中国でも薬事承認を取得している。

■日本特殊陶業と資本・業務提携

 16年4月に日本特殊陶業<5334>との資本・業務提携を発表した。08年7月に伊藤忠商事<8001>と締結した資本業務提携は解消し、伊藤忠商事が保有する当社株式全て(発行済株式総数の割合30.00%)を日本特殊陶業が取得(5月16日)した。

■自社製品開発を中心に品揃え強化

 自社製新製品は、米国で14年1月米ODEV社製の人工膝関節製品「BKS-Momentum」と「E-Vitalize」を販売開始、日本で14年5月人工膝関節製品「BKSオフセットティビアルトレイ」を販売開始、14年9月米ODEV社製人工股関節大腿骨ステム「OVATION Tributeヒップシステム」とステムヘッド「ODEV BIOLOX deltaセラミックヘッド」を販売開始した。米ODEV社は人口膝関節製品「KASM」の米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得して販売開始した。

 15年5月には米ODEV社製の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」の販売を開始し、販売中の「バランスド・ニー・システム」シリーズにHigh-Flexタイプの製品が加わった。15年7月にはベルギーのMaterialise社と3D技術を用いた人工股関節置換術に使用する患者毎の手術器械PMIに関して取引契約を締結した。17年から順次販売予定で人工股関節製品の販売拡大に寄与する。

 15年9月にはアイスランドのオズール社製造のハローベストシステム「ReSolveハローシステムCE」を販売開始した。15年11月には米ODEV社製の人工股関節の新製品「Alpine ヒップシステム」の薬事承認を取得し、16年2月から順次販売している。本製品導入によって人工股関節市場における主要なセグメントを網羅することになる。

 16年4月には米ODEV社製の人工股関節新製品「Alpine Cemented Hip System」が米国食品医薬品局(FDA)の薬事承認を取得した。米国で販売中の「Alpine Hip System」の間接固定(骨セメントを用いて固定)タイプで16年5月から米国で販売している。また16年5月には米ODEV社製人工股関節新製品「Alpine Cemented Hip System」の日本国内での薬事承認を取得し、16年6月から販売開始している。

■下期の構成比が高い収益構造

 15年3月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)26億32百万円、第2四半期(7月~9月)26億87百万円、第3四半期(10月~12月)31億59百万円、第4四半期(1月~3月)33億77百万円、営業利益は第1四半期2億39百万円、第2四半期2億53百万円、第3四半期5億38百万円、第4四半期2億65百万円だった。

 15年3月期の純利益は税制改正等に伴う繰延税金資産取崩が影響して赤字だったが、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、当社の業績も下期の構成比が高い傾向があるとしている。15年3月期の自社製品売上比率は14年3月期比5.6ポイント上昇して80.0%、売上総利益率は同0.7ポイント低下して69.9%、販管費比率は同4.6ポイント低下して59.0%だった。

■16年3月期は大幅営業・経常増益、最終黒字化で増配

 前期(16年3月期)連結業績は売上高が前々期(15年3月期)比9.9%増の130億24百万円、営業利益が同31.8%増の17億07百万円、経常利益が同41.4%増の15億36百万円、純利益が8億円(前々期は3億91百万円の赤字)だった。下期の売上が暖冬の影響などで伸び悩んだが、全体として米ODEV社製人工関節製品を中心に好調に推移した。製造コスト低減、医療工具の運用改善等による減価償却費の削減なども寄与して各利益は計画超の増益だった。

 地域別・主要品目別の外部顧客への売上高は、日本国内が同7.1%増の87億33百万円(人工関節が同6.7%増の40億97百万円、骨接合材料が同2.6%増の29億36百万円、脊椎固定器具が同48.0%増の12億81百万円、その他が同28.5%減の4億17百万円)で、米国販売は同15.9%増の42億91百万円(人工関節が同17.0%増の40億95百万円、脊椎固定器具が同3.8%減の1億96百万円)だった。自社製品売上高は110億84百万円で同16.6%増加、自社製品売上比率は85.1%で同5.1ポイント上昇した。

 日本国内は償還価格引き下げで厳しい事業環境だったが、人工関節分野では米ODEV社製人工関節製品「オベーションヒップシステム」が好調に推移し、骨接合材料分野では「MDMプリマヒップスクリューシステム」が堅調だった。脊椎固定器具分野では米ODEV社製「Pagodaスパイナルシステム」および14年12月販売開始した「IBISスパイナルシステム」が大幅伸長した。

 セグメント別業績は、日本の売上高が同7.1%増の87億33百万円、営業利益(連結調整前)が同80.7%増の9億93百万円、米国の売上高(内部取引を含む)が同29.5%増の80億19百万円、営業利益が同29.8%増の7億円だった。米国ではドル高・円安に伴う換算額増加も寄与した。

 売上総利益は同11.1%増加し、売上総利益率は70.7%で同0.8ポイント上昇した。ドル高・円安進行や償還価格引き下げの影響を受けたが、増収効果や自社製品比率上昇が寄与した。販管費は米ODEV社の販売拡大に伴う支払手数料(コミッションなど)の増加、給料・手当の増加、ドル高・円安の影響などで同7.2%増加したが、販管費比率は57.6%で同1.4ポイント低下した。

 営業利益増減分析は、増益要因が自社製品の売上増加による粗利益増加が11億28百万円、販管費削減等が76百万円、減益要因が償還価格引き下げ影響に伴う粗利益減少が2億11百万円、人件費増加が1億88百万円、米国販売増加に伴うコミッション・ロイヤリティ等支払手数料増加が2億47百万円、研究開発費増加が1億45百万円としている。

 特別損失では医療工具など固定資産除却損が増加(前々期1億09百万円計上、前期3億24百万円計上)した。また繰延税金資産取崩の影響が一巡して法人税等が減少(前々期13億56百万円、前期4億10百万円)した。ROEは7.2%(前々期はマイナス3.6%)だった。自己資本比率は56.2%で同2.4ポイント上昇した。配当は同1円増配の年間6円(期末一括)で配当性向は19.8%だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)30億46百万円、第2四半期(7月~9月)31億26百万円、第3四半期(10月~12月)33億円、第4四半期(1月~3月)35億52百万円、営業利益は第1四半期3億29百万円、第2四半期3億62百万円、第3四半期5億25百万円、第4四半期4億91百万円だった。

■17年3月期も増収増益予想

 今期(17年3月期)連結業績予想(4月28日公表)は売上高が前期(16年3月期)比7.5%増の140億円、営業利益が同5.4%増の18億円、経常利益が同7.4%増の16億50百万円、そして純利益が同24.9%増の10億円としている。配当予想は同1円増配の年間7円(期末一括)で予想配当性向は18.5%となる。

 米ODEV社製の人工股間接製品「オベーションヒップシステム」や脊椎固定器具「Pagodaスパイナルシステム」「IBISスパイナルシステム」、当社と米ODEV社が共同開発した骨接合材料製品「MODE」シリーズなど、主力製品の販売が日本および米国において引き続き好調に推移する。新製品投入も寄与する。

 地域別・主要品目別の外部顧客への売上高の計画は、日本国内が同6.5%増の93億円(人工関節が同8.9%増の44億60百万円、骨接合材料が同1.5%増の29億80百万円、脊椎固定器具が同24.1%増の15億90百万円、その他が同35.4%減の2億70百万円)で、米国販売は同9.5%増の47億円(人工関節が同9.9%増の45億円、脊椎固定器具が同1.9%増の2億円)としている。

 なお想定として、為替レートは1米ドル=115円、米国販売の米ドルベースの売上高は同14.3%増の408億69百万円、自社製品売上高は同11.0%増の123億円、自社製品売上比率は同2.8ポイント上昇の87.9%、売上総利益率は同0.3ポイント上昇の71.0%、そして販管費比率は同0.5ポイント上昇の58.1%としている。自社製品比率上昇も寄与して大幅増益予想である。

■中期経営計画で18年3月期ROE8.0%目指す

 15年4月策定した新中期経営計画「MODE2017」では、中期経営指針を「成長領域への積極投資を通じ新たなステージへ成長を加速させる」として、顧客ニーズに対応した自社新製品の開発強化、10品目以上の自社開発新製品群の継続的市場投入、整形外科領域周辺・隣接分野での調達力強化、製品ラインナップの強化、北米市場での販売拡大、自社製造能力(米ODEV社)の拡大と製造コストのさらなる低減、品質管理の強化、製造から販売・市販後まで一貫した安全管理体制の整備、などの施策を推進する。

 経営目標数値としては18年3月期売上高160億円、営業利益20億円、経常利益18億円、ROE8.0%を掲げている。17年3月期業績会社予想ではROEは9.0%に上昇する見込みであり、18年3月期目標値を前倒しで達成する可能性が高まっている。高齢化社会到来も背景として、利益率の高い自社製品の拡販が牽引して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して上値試す、06年以来の1000円台視野

 株価の動きを見ると、5月19日の年初来高値885円から利益確定売りや地合い悪化で一旦反落したが、700円近辺から切り返す動きだ。

 6月20日の終値702円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS37円79銭で算出)は18~19倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間7円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS427円69銭で算出)は1.6倍近辺である。時価総額は約186億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返す動きだ。調整が一巡して上値を試す展開だろう。06年以来の1000円台が視野に入る。(アナリスト水田雅展)

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