ピックルスコーポレーションは調整一巡して4月高値を試す、17年2月期大幅増益予想

 ピックルスコーポレーション<2925>(JQS)は漬物やキムチ製品の最大手である。主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのブランド力向上に伴って収益力が向上し、惣菜分野への事業展開も加速している。17年2月期はM&A効果も寄与して大幅増益予想である。指標面の割安感は強く、調整が一巡して4月の年初来高値を試す展開だろう。

■漬物製品の最大手、主力の「ご飯がススム キムチ」のブランド力向上

 漬物・浅漬・キムチなど漬物製品の最大手メーカーで、ブランド力の向上、新製品の積極投入、成長市場である惣菜製品の強化などを推進し、主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのブランド力向上とともに収益力が大幅に向上している。

 なお16年3月期の販路別売上高構成比は量販店・問屋等が73.2%、コンビニが14.5%、外食・その他が12.2%だった。セブン&アイ・ホールディングス<3382>など大手量販店・コンビニが主要取引先である。品目別売上高構成比は自社製品が66.9%(浅漬・キムチが46.4%、惣菜が18.4%、ふる漬が2.1%)、商品(漬物・青果物)が33.2%だった。

■M&Aも活用して業容拡大

 M&Aも活用して業容拡大を推進している。14年8月には漬物製造の尾花沢食品(山形県尾花沢市、民事再生)から資産を取得し、子会社の尾花沢食品を設立して事業を承継した。15年6月には青果市場を運営する県西中央青果(茨城県古河市)を子会社化(15年9月から連結)した。主要原材料である国産野菜の調達方法の多様化を図るとともに、国産野菜の産地における生育状況や取引価格動向などの情報収集の強化を図る。

 16年3月にはフードレーベルホールディングス(FLH)(東京都台東区)を子会社化(17年2月期から連結)した。FLHは牛角ブランドを使用した製品をチルド製品(キムチ等)やドライ製品(醤油だれ等)などで展開し、高い企画力を生かして有名店や有名シェフなどとのコラボレーションを積極的に展開している。また製品製造については国内外に多数の協力工場ネットワークを構築している。FLHを子会社化することによって、当社グループの事業領域拡大や効率化を図り、グループ全体の成長を加速させる。

■利益は原料野菜価格の影響を受けやすい収益構造

 15年2月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)68億18百万円、第2四半期(6月~8月)73億04百万円、第3四半期(9月~11月)63億18百万円、第4四半期(12月~2月)63億65百万円、営業利益は第1四半期3億83百万円、第2四半期2億94百万円、第3四半期2億13百万円、第4四半期1億66百万円だった。

 利益は原料野菜の価格動向の影響を受けやすい収益構造である。なお15年2月期の売上総利益率は23.7%で14年12月期比0.5ポイント上昇、販管費比率は19.7%で同0.1ポイント低下、ROEは7.3%で同1.3ポイント低下、自己資本比率は41.5%で同9.4ポイント低下した。配当性向は17.3%だった。利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続的に実施していくことを基本方針としている。

■16年2月期は原料野菜価格高騰の影響で営業減益

 前期(16年2月期)連結業績は売上高が前々期(15年2月期)比12.5%増の301億52百万円、営業利益が同11.9%減の9億31百万円、経常利益が同11.2%減の9億75百万円だった。純利益は県西中央青果ののれん発生益計上や前々期計上の減損損失一巡が寄与して同37.4%増の6億92百万円だった。

 既存取引先への拡販、新規取引先の開拓、新商品の投入などの効果で、キムチ製品や惣菜製品が好調に推移して計画を上回る2桁増収だったが、春や秋の天候不順の影響で主要原料野菜の白菜や胡瓜の価格が高騰したため利益は計画を下回り、営業減益、経常減益だった。

 品目別売上高は自社製品が同10.4%増の201億56百万円(浅漬・キムチが同11.1%増の139億93百万円、惣菜が同8.1%増の55億38百万円、ふる漬が同16.4%増の6億23百万円)、商品(漬物・青果物)が同17.0%増の99億96百万円だった。また販路別売上高は量販店・問屋等が同11.8%増の220億83百万円、コンビニが同0.2%増の43億82百万円、外食・その他が同37.8%増の36億86百万円だった。

 売上総利益は7.1%増加したが、売上総利益率は22.5%で同1.2ポイント低下した。天候不順の影響で主要原料野菜の白菜や胡瓜の価格が高騰した。販管費は同10.9%増加したが、販管費比率は19.4%で同0.3ポイント低下した。特別利益では負ののれん発生益1億17百万円を計上した。特別損失では前々期計上の減損損失1億32百万円が一巡した。配当は同2円増配の年間17円(期末一括)で配当性向は12.2%だった。ROEは9.8%で同2.5ポイント上昇、自己資本比率は45.1%で同3.6ポイント上昇した。

 四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)76億83百万円、第2四半期(6月~8月)80億53百万円、第3四半期(9月~11月)73億70百万円、第4四半期(12月~2月)70億46百万円、営業利益は第1四半期2億69百万円、第2四半期3億64百万円、第3四半期1億14百万円、第4四半期1億84百万円だった。

■17年2月期は野菜価格安定やM&A効果などで大幅増収増益予想

 今期(17年2月期)連結業績予想(4月14日公表)は売上高が前期(16年2月期)比22.1%増の368億17百万円、営業利益が同50.6%増の14億02百万円、経常利益が同48.2%増の14億45百万円、純利益が同29.7%増の8億97百万円としている。配当予想は前期と同額の年間17円(期末一括)で予想配当性向は9.5%となる。

 キムチ製品や惣菜製品のブランド力向上、全国の製造・販売拠点を活用した営業活動、積極的な広告宣伝・販売促進活動、新製品開発・投入や他の食品メーカーとのコラボレーションなどの効果で、既存取引先への拡販や新規取引先の開拓が一段と進展する。増収効果に加えて、原料野菜価格の安定による原価率改善、県西中央青果の通期連結(前期は下期から連結)、FLHの新規連結、ピックルスコーポレーション札幌およびピックルスコーポレーション関西の収益改善なども寄与して大幅増収増益予想だ。

 品目別の売上高は、自社製品が同11.0%増の223億63百万円(浅漬・キムチが同12.8%増の157億82百万円、惣菜が同8.1%増の59億86百万円、ふる漬が同4.7%減の5億94百万円)、商品(漬物・青果物)が同44.6%増の144億54百万円の計画としている。販路別の売上高は、量販店・問屋等が同27.0%%増の280億48百万円、コンビニが同5.0%増の46億円、外食が同13.1%増の41億68百万円の計画としている。

 原料野菜価格は平年並みを想定し、売上総利益率は23.2%で同0.7ポイント上昇の計画としている。販管費はFLHの新規連結などで増加するが、販管費比率は19.4%で同横ばいの計画としている。設備投資はピックルスコーポレーション関西の生産能力増強のための工場増築、九州の新工場建設のための土地取得などで合計14億61百万円の計画としている。前期実績の2億56百万円から大幅に増加する。M&A効果も寄与して増収基調に変化はなく、原料野菜価格の落ち着きで収益拡大基調が期待される。

■漬物業界は大手による寡占化が進展、収益拡大基調

 漬物業界はコメの消費減少、食の多様化、少子高齢化などで市場の縮小が続いている。また家族経営など中小・零細企業も多いため、大手による寡占化が一段と進展すると予想される。

 こうした事業環境も背景として、主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのリニューアルや積極的な新製品開発・投入、既存取引先への拡販や新規取引先の開拓、事業エリア拡大、ピックルスコーポレーション関西の生産能力増強、契約栽培拡大や県西中央青果の子会社化などによる原料野菜の安定調達、原材料購買方法の見直し、市場の規模が大きい惣菜分野への事業展開を加速している。またFLHにおける低採算取引の縮小や新ブランド立ち上げも推進する方針だ。

 中期経営目標には、19年2月期の売上高404億05百万円、営業利益14億52百万円を掲げている。売上高の品目別内訳は、自社製品245億89百万円(浅漬・キムチ173億50百万円、惣菜66億23百万円、ふる漬6億15百万円)、商品(漬物・青果物)158億16百万円である。利益面ではピックルスコーポレーション関西の新工場立ち上げ負担などを考慮しているが、積極的な事業展開とブランド力向上効果で中期的に収益拡大基調だろう。

■安定株主作り進展

 14年11月実施のTOBによる自己株式取得によって、第1位株主の東海漬物の保有割合が27.20%に低下して親会社に該当しないこととなった。親会社の経営戦略の影響を受けずに、当社独自の経営判断で企業価値向上を図ることのできる体制を構築する。

 15年5月には第三者割当による自己株式処分(処分株式数34万2000株、処分価格1329円)を実施した。割当先は武蔵野銀行<8336>、三菱商事フードテック、味の素<2802>、高速<7504>など8社で、いずれも長期保有の方針としている。

 また安定株主作りの一環として、当社取引先が継続的かつ安定的に当社株式を取得することを目的に、ピックルスコーポレーション取引先持株会を設立して運営開始した。現在40社が参加し、今後さらに参加社数を増やす方針としている。

■株価は調整して4月高値試す

 株価の動きを見ると、4月の年初来高値1321円から反落したが、6月16日の直近安値1072円から切り返している。調整が一巡したようだ。

 6月21日の終値1164円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS178円28銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1508円72銭で算出)は0.8倍近辺である。時価総額は約74億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。指標面の割安感は強く調整が一巡して4月の年初来高値を試す展開だろう。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

 

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る