【アナリスト水田雅展の銘柄分析】カーリットホールディングスは強基調で14年6月高値に接近、自己株式取得や低PBRを評価して上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 自動車用緊急保安炎筒などを展開するカーリットホールディングス<4275>(東1)の株価は、戻り高値を突破して14年6月高値685円に接近している。強基調の形であり、自己株式取得や0.7倍近辺の低PBRを評価して上値を試す展開だろう。

 日本カーリットが純粋持株会社を設立して13年10月東証1部市場に上場した。化学品事業(産業用爆薬、自動車用緊急保安炎筒、化成品関連、電子材料・機能性材料、信号炎管、危険性評価試験受託、2次電池試験受託など)、ボトリング事業、産業用部材事業(半導体用シリコンウェーハ、研削材、耐火・耐熱金物、スプリングワッシャー)を展開している。

 自動車用緊急保安炎筒は新車装着用・車検交換用を展開し、国内市場シェアは約8~9割と想定されている。ボトリング事業は伊藤園<2593>向けが主力だ。半導体用シリコンウェーハは小口径4~6インチのニッチ市場を主力としている。海外は中国・上海、シンガポールに展開している。

 前中期経営計画「飛躍500」では「事業領域の拡大、市場の拡大、シェアの拡大という、3つの拡大戦略により売上高500億円の化学会社への成長」を基本方針として、グループ収益基盤と総合力強化に向けたM&A戦略を積極展開して事業を多様化してきた。

 12年1月に工業用塗料販売・塗装工事の富士商事、12年8月に耐火・耐熱金物製造販売の並田機工、13年10月に一級建築士事務所の総合設計を子会社化した。そして14年2月には東洋発條工業を子会社化した。自動車・建設機械向けを中心とした各種スプリング分野に展開し、耐火・耐熱金物の並田機工などと合わせた産業用部材事業を新たな収益柱とする方針だ。

 そして次なる100年企業への礎作りとして、18年度を最終年度とする新中期経営計画を15年2月に発表予定としている。M&A戦略も奏功して中期的に収益拡大基調だろう。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(5月15日公表)は売上高が前期比18.0%増の470億円、営業利益が同0.3%増の16億円、経常利益が同1.4%増の17億円、純利益が同28.1%減の9億円、配当予想が前期と同額の年間10円(期末一括)としている。M&A効果も寄与して増収見込みだ。

 第2四半期累計(4月~9月)は、持株会社移行前の日本カーリットの前年同期との比較で、新規連結子会社ののれん償却、新規事業の受託試験設備の償却負担、ボトリング事業での設備メンテナンスなどが影響して減益だったが、産業用部材事業での新規顧客の獲得や東洋発條工業の新規連結も寄与して増収だった。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は低水準だが、通期ベースでは緊急脱出用ガラス破壊器具付き自動車用緊急保安炎筒「ハイフレヤープラスピック」の拡販、新規事業の2次電池充放電受託試験の本格稼働、工業薬品のシェア拡大、光機能性材料の車載用・建材用熱線遮蔽フィルムの拡販、ボトリング事業での生産性向上、並田機工のごみ焼却場向け需要増加、新規連結の東洋発條工業の寄与などで挽回が期待される。

 なお12月24日に自己株式取得を発表した。取得株式総数の上限40万株(自己株式除く発行済株式総数に対する割合1.94%)、取得価額総額の上限2億60百万円、取得期間15年1月7日~4月30日としている。

 株価の動きを見ると戻り高値を突破して上伸している。12月17日の直近安値565円から切り返し、12月29日に638円を付けて12月8日の戻り高値630円を突破した。そして1月15日には652円まで上伸して14年6月高値685円に接近している。

 1月16日の終値645円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS43円71銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.6%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS922円98銭で算出)は0.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると、26週移動平均線近辺から切り返して戻り高値を突破した。サポートラインを確認して強基調の形だ。自己株式取得や0.7倍近辺の低PBRを評価して14年6月高値685円を試す展開だろう。

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