ワイヤレスゲートは地合い悪化の影響受けたが中期成長力を評価、16年12月期は増額余地

 ワイヤレスゲート<9419>(東1)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを主力として、Wi-Fiインフラ構築・運用サポートやM2M/IoTサービスなども積極推進している。16年12月期2桁営業増益予想で増額余地がありそうだ。株価は地合い悪化の影響で反落したが中期成長力を評価して出直り展開だろう。なお8月4日に第2四半期累計の業績発表を予定している。

■ワイヤレス・ブロードバンドサービスを提供

 通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX、LTE)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。中期成長に向けた重点戦略として、サービス提供エリア拡大、サービスラインナップ拡充、新規事業推進などを掲げている。

 15年12月期の事業別売上高構成比は、ワイヤレス・ブロードバンド事業のモバイルインターネットサービス90.7%、公衆無線LANサービス6.9%、ワイヤレス・プラットフォーム事業1.1%、その他1.3%だった。販売チャネルはヨドバシカメラおよび携帯電話販売最大手ティーガイアを主力としている。月額有料会員数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型収益構造である。16年3月末現在の社員数19名で、社員1人当たり営業利益額の高さも特徴だ。

■市場拡大のSIMカードも積極展開

 SIMカードは14年9月データ通信専用「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」販売開始、14年12月訪日外国人向けデータ通信専用プリペイド型SIMカード販売開始、15年4月音声機能付きSIMカード「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE 音声通話プラン」販売開始、16年3月業界初の全プランLTE通信使い放題とした「FonプレミアムWi-Fi」販売開始した。

 SIMカードサービス自体での差別化は難しい状況だったが、グローバルWi-Fiネットワークを軸にして、LTE帯域を必要に応じて効率的に使うサービスを提供することで、安価でかつ通信速度もアンリミデッドな他社にはないグローバルなサービスを提供していく方針だ。

■Wi-Fiインフラ構築・運用支援、M2M/IoTソリューションを拡大

 新規事業として14年1月、法人向けWi-Fi環境構築・運用支援事業を開始した。公衆無線LAN環境を活用する動きが自治体の災害時通信インフラ、観光地の外国人旅行客誘致、商店街の集客力向上などに広がり、20年東京夏季五輪も追い風となって無線LANの需要拡大が予想されるため、M&A・アライアンスも活用してクラウド型Wi-Fi環境サービスシステムなど法人向けソリューションサービスを拡大する。

 14年8月訪問看護サービスのNフィールドと業務提携してM2M/IoTソリューション「クラウド型みまもりサービス」開始、14年11月Web会議システムのブイキューブと業務提携した。15年3月、移動販売者向けプラットフォームのアンデコ社と資本業務提携、Wi-Fi環境構築・保守のバディネット社と業務提携した。15年4月、経済産業省の大規模HEMS情報基盤整備事業「みやまHEMSプロジェクト」のコンソーシアムメンバーである福岡県みやま市に対して、エプコと共同でLTE回線提供を開始した。

 15年5月ベネフィット・ワンと共同で訪日旅行者向け「飲食店割引サービス」と「Wi-Fi+LTE通信サービス」をセットで提供する「Benefit Station Japan」を台湾で販売開始、15年7月安芸自動車学校と高知県自動車学校の自動車教習生向け「Wi-Fiインフラ」提供開始、16年4月電通、OOHメディア・ソリューション、シーエスイーの3社と共同で展開している「G Free(銀座フリーWi-Fi)」を東急プラザ銀座へ拡大した。

■フォン・ジャパンへ出資してWi-Fiインフラ構築・運用支援を加速

 14年11月スペインFon社および日本法人フォン・ジャパンと業務協力して15年3月日本のWi-Fiインフラ拡充に向けた取り組みを開始、15年11月フォン・ジャパン株式を取得して持分法適用関連会社化した。Fon社の持つグローバルWi-Fiプラットフォームを当社のインフラに加え、Fon社のルータを活用して国内Wi-Fiエリア構築を加速する。

 15年11月一般社団法人ニセコプロモーションボードおよびフォン・ジャパンと共同で北海道「ニセコ」観光エリア一帯をWi-Fi化するプロジェクトを発表、15年12月鎌倉長谷寺のWi-Fiインフラ構築・運用サポート開始、16年2月道の駅の総合プラットフォーム事業を展開するXS社と共同で日本全国の道の駅に対してWi-Fiインフラの設置・運用支援を開始した。16年2月現在で24駅の道の駅が無料Wi-Fiインフラを導入した。

 16年3月FONと共同で東京都浅草地域において無料Wi-Fiサービス提供開始、16年4月浅草六区再生プロジェクトに参画して六区セントラルスクエアにWi-Fiタワー設置を発表した。浅草六区のWi-Fiエリア化を支援する。

 6月22日にはXS社と共同展開している日本全国の道の駅におけるWi-Fiインフラ設置が50施設を突破したと発表している。そして新たな取り組みとして、広告配信プラットフォーム(DSP)事業を展開するマーベリックを加えた3社共同で、道の駅に設置された無料Wi-Fi「Fon」を利用した位置情報連動型広告サービスを開始する。なお日本全国の道の駅へ年内100ヶ所への設置を目指すとしている。

■中期成長に向けて新サービスも展開

 15年10月米nCore社に出資(総額30万ドルのマイノリティ出資)した。米nCore社の「LTE over WiFi」技術を活用したサービス展開を企図し、将来的に日本を含めた全世界で展開することを目指す。

 15年11月落し物追跡タグ「MAMORIO」を提供する落し物ドットコムに出資(総額2990万円のマイノリティ出資)した。新サービスの共同展開を加速させる。

■月額有料会員の積み上げによるストック型ビジネスモデル

 四半期別業績推移を見ると、15年12月期の売上高は第1四半期26億18百万円、第2四半期28億59百万円、第3四半期28億76百万円、第4四半期29億58百万円、営業利益は第1四半期2億08百万円、第2四半期2億98百万円、第3四半期2億71百万円、第4四半期2億88百万円だった。

 個人向けワイヤレス・ブロードバンド事業は有料会員に対する月額課金収入、法人向けWi-Fiインフラ事業はアクセスポイント管理(クラウド管理)に対する月額課金収入が主力であり、有料会員数およびアクセスポイント数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型ビジネスモデルである。

 15年12月期の売上総利益率は26.3%で同1.0ポイント低下、販管費比率は16.9%で同1.7ポイント上昇した。SIM事業の営業利益押し下げ要因は約2億20百万円だった。ROEは27.6%で同4.6ポイント上昇、自己資本比率は45.5%で同12.6ポイント低下した。配当性向は38.8%だった。株主還元についてはDOE(株主資本配当率)を重視し、機動的かつ柔軟な自社株買いも実施する方針としている。

■16年12月期第1四半期は大幅営業増益

 今期(16年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比15.7%増の30億29百万円、営業利益が同46.3%増の3億04百万円、経常利益が同17.7%増の2億44百万円、純利益が同14.1%増の1億49百万円だった。

 主力の「ワイヤレスゲートWi-Fi+WiMAX」サービスがWiMAX3+ギガ放題プランを中心に好調に推移した。また「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」はサービスラインナップのリニューアルによって新規顧客の獲得数が増加した。M2M/IoTサービスやWi-Fiインフラ事業も新規案件獲得が進捗している。

 事業別売上高はワイヤレス・ブロードバンド事業のモバイルインターネットサービスが同17.8%増の28億03百万円、公衆無線LANサービスが同12.7%減の1億78百万円、ワイヤレス・プラットフォーム事業が同41.3%増の39百万円、その他が同46.4%増の8百万円だった。公衆無線LANサービスは店頭での主な獲得活動を「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」にシフトしているため、想定どおりの減収だった。

 利益面では増収効果に加えて、NTTドコモからの帯域借受単価変更に伴う遡及返還額が想定よりも大きかったことも押し上げ要因となった。SIM事業の利益押し下げ要因は約47百万円で、前年同期の約58百万円に比べて改善した。売上総利益は同9.9%増加したが、売上総利益率は25.6%で同1.3ポイント低下した。販管費は同5.4%減少し、販管費比率は15.5%で同3.5ポイント低下した。

■17年12月期通期も2桁増収・営業増益予想で増額余地

 今期(16年12月期)通期の連結業績予想(2月12日公表)は、売上高が前期(15年12月期)比13.4%増の128億32百万円、営業利益が同17.4%増の12億50百万円、経常利益が同0.5%増の10億67百万円、そして純利益が同3.5%減の6億60百万円としている。

 会員数増加に伴う原価・販管費の増加、SIM事業のサービス見直しに伴う販管費増加、管理体制強化に向けた人材採用に伴う人件費増加、案件獲得に伴う技術人材や業務委託の増加、収益貢献に見合った従業員向けインセンティブプランの導入などコストアップ要因があるが、増収効果で吸収して2桁営業増益予想だ。SIM事業は今期中の単月黒字化を目指している。

 営業外費用ではフォン・ジャパンを持分法適用関連会社化したことに伴うのれん償却(10年で約16億円を償却予定)を計上し、また市場変更関連費用を計上するため経常利益は同横ばい、純利益は同微減益見込みとしている。配当予想は同1円増配の年間27円(期末一括)で予想配当性向は41.9%となる。

 第1四半期の進捗率を見ると、通期予想に対しては売上高が23.6%、営業利益が24.3%、経常利益が22.9%、純利益が22.6%とやや低水準の形だが、第2四半期累計に対しては売上高が49.0%、営業利益が55.4%、経常利益が54.5%、純利益が54.8%と高水準である。ワイヤレス・ブロードバンド事業が順調に推移しており、ストック型ビジネスモデルであることを考慮すれば通期会社予想に増額余地がありそうだ。

■株価は地合い悪化の影響受けたが中期成長力を評価

 株価の動き(16年3月1日付で東証1部へ市場変更)を見ると、5月10日の年初来高値2453円から反落し、地合い悪化の影響で6月24日には1501円まで下押す場面があった。ただし27日は切り返しの動きを強めている。

 6月27日の終値1654円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS64円49銭で算出)は25~26倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間27円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS261円99銭で算出)は6.3倍近辺である。時価総額は約171億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。中期成長力を評価して出直り展開だろう。
(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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