クリーク・アンド・リバー社は調整一巡して切り返し、17年2月期大幅増益予想

 クリーク・アンド・リバー社<4763>(東2)は、クリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開し、事業領域拡大戦略を加速している。17年2月期は大幅増益予想である。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが切り返しの動きを強めている。調整一巡して反発展開だろう。なお7月7日に第1四半期の業績発表を予定している。

■クリエイティブ分野を中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

 日本のクリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版などの制作)で活躍するクリエイターを対象としたエージェンシー(派遣・紹介)事業、ライツマネジメント(著作権管理)事業、およびプロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業を主力としている。また韓国のクリエイティブ分野、および医療・IT・法曹・会計などの分野におけるエージェンシー事業も展開し、事業領域拡大戦略を加速している。

 16年2月期セグメント別売上高構成比は、日本のクリエイティブ分野61%、韓国のクリエイティブ分野15%、医療分野12%、その他12%だった。

 日本のクリエイティブ分野では、13年8月公開のテレビ朝日開局55周年記念劇場公開映画「少年H」(モスクワ映画祭特別賞受賞)の制作を担当したことが評価されて、TV番組制作受託事業が拡大している。

 当社が制作協力した日本人の老後の現実と希望を描いたドキュメンタリー映画「抱擁」は平成27年度文化庁映画賞(文化記録映画部門)文化記録映画優秀賞を受賞した。また当社、白組およびハウステンボスが共同制作した劇場公開用3DCGアニメ「GAMBAガンバと仲間たち」が15年10月から公開され、この公開にあわせてスマホゲームアプリ「GAMBA RACER」の配信を開始した。

 6月24日には、第19回上海国際映画祭会場で併設されたフィルム・マート(6月12日~14日)において、中国の映画・ドラマ制作会社など約200社と商談を行ったとリリースしている。共同制作案件が急増しているようだ。

 なお韓国のクリエイティブ分野はクリーク・アンド・リバー韓国、医療分野はメディカル・プリンシプル、IT分野はリーディング・エッジ、法曹分野はC&Rリーガル・エージェンシー、会計分野はジャスネットコミュニケーションズ、ファッション分野はインター・ベル(13年12月子会社化)、広告分野はプロフェッショナルメディア(15年4月子会社化)の各連結子会社が事業展開している。

■新規分野に積極展開して事業領域拡大戦略を加速

 新規事業分野として電子書籍取次事業、および作家、オンラインクリエイター、建築、ファッションクリエイター、シェフ、プロフェッサー分野のエージェンシー事業へ展開し、M&Aも積極活用している。当面は人件費などの費用が先行するが、順次収益化を見込んでいる。

 15年4月プロフェッショナルメディア(トータルブレーンが運営する人材紹介・派遣事業および広告業界特化型情報事業「広告転職.com」「クリエイティブ派遣.com」を新設分割して設立)を連結子会社化した。15年5月エコノミックインデックスを持分法適用関連会社化した。同社のデータ解析技術を活かして商品・サービスの販売促進、広告効果の検証、企業イメージの動向把握と維持向上、ブランド価値の定量化などを提供する。15年6月ベトナム最大のマルチチャンネルネットワーク(MCN)であるPOPSと業務提携した。

 15年10月オンラインクリエイター分野において、YouTuberと企業のマッチング・分析を行う新ソーシャルクリエイターマッチング・分析プラットフォーム「EUREKA(エウレカ)」をリリースした。また教授や準教授をはじめとする研究者に特化したエージェンシー事業の本格的始動を発表した。

 16年2月法曹分野の子会社C&Rリーガル・エージェンシー(CRLA社)が、世界中の弁護士のためのSNSプラットフォーム「JURISTERRA(ジュリステラ)」の開発を発表し、16年4月からβ版の運用を開始した。16年8月から本格オープンを予定している。なお米国におけるサービス基盤拡充は16年3月設立した子会社CREEK & RIVER Global(米国)が行う。

 16年3月ゲームやアプリなどの優れたコンテンツを世界へ発信するプロジェクトを本格始動した。第一弾としてアラビア語圏・ロシア語圏に向けて、親子で楽しめる知育アプリ「えほんであそぼ!じゃじゃじゃじゃん」(開発・提供:フォーリー社)の翻訳・吹き替えを実施し、155の国と地域に配信した。16年4月ソーシャルゲームインフォと連携してスマホアプリ先行予約サービス「Social Game Info@先行予約」の提供を開始した。

 16年5月子会社メディカル・プリンシパル社(MP社)が、メンタルヘルスケアのEAP(従業員支援プログラム)事業者として国内最大規模のアドバンテッジリスクマネジメントと提携し、ストレスチェックにおける「医師面接」領域での提携関係を構築した。また大学や企業などの研究機関に所属する研究者のための情報サイト「Technologist’s magazine」をオープンした。

■日本クリエイティブ分野は拡大基調、医療分野は期前半に利益偏重の特性

 15年2月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期60億92百万円、第2四半期56億97百万円、第3四半期55億42百万円、第4四半期55億95百万円、営業利益は第1四半期5億78百万円、第2四半期3億50百万円、第3四半期1億69百万円、第4四半期1億99百万円だった。医療分野が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重し、第3四半期と第4四半期は赤字となるため、全体として上期の構成比が高くなる収益構造だ。主力の日本のクリエイティブ分野は売上・営業利益とも四半期ベースで拡大基調である。

 なお15年2月期の売上総利益率は31.6%で14年2月期比0.6ポイント上昇、販管費比率は25.9%で同0.2ポイント上昇した。ROEは17.0%で同3.9ポイント上昇、自己資本比率は52.6%で同5.8ポイント上昇した。配当性向は19.9%だった。

■16年2月期は先行投資負担で減益だが、増収基調は変化なし

 前期(16年2月期)連結業績は、前々期(15年2月期)比8.7%増収、同9.1%営業減益、同15.5%経常減益、同15.8%最終減益だった。積極的な人材投資、初の大型自社開発ゲーム関連の販促費、プロフェッショナルメディア新規連結の影響などで減益だったが、売上面では主力の日本のクリエイティブ分野を中心に既存事業分野が好調に推移した。グループ全体での派遣稼働者数、紹介成約者数は過去最高水準を更新した。増収基調に変化はない。

 売上総利益は10.4%増加し、売上総利益率は32.1%で同0.5ポイント上昇した。既存事業分野の好調が牽引した。ゲーム・Web分野を中心に自社制作強化・利益率向上を目的として、制作スタジオを拡張して内制化を推進したことも寄与した。販管費は14.7%増加し、販管費比率は27.4%で同1.5ポイント上昇した。積極的な人材投資を実施したため人件費が増加した。16年2月期末の人員数は15年2月期末比125人増加の889人となった。また初の大型自社開発ゲーム「戦国修羅SOUL」の配信開始(15年12月)に伴って販促費用が増加した。

 営業外費用では、期初時点では計画していなかったエコノミックインデックスの持分法適用関連会社化に伴って、持分法投資損失68百万円を計上した。特別利益では投資有価証券売却益が増加(前々期10百万円、前期80百万円)した。特別損失では投資有価証券評価損が増加(前々期10百万円、前期22百万円)した。ROEは13.2%で同3.8ポイント低下、自己資本比率は52.8%で同0.2ポイント上昇した。配当は前々期比1円増配の年間8円(期末一括)で配当性向は26.5%だった。

 セグメント別(連結調整前)動向を見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が同6.3%増の152億36百万円、営業利益が同10.6%減の7億18百万円だった。韓国のクリエイティブ分野は売上高が同16.6%増の38億20百万円、営業利益が同43.0%減の23百万円だった。医療分野は売上高が同6.5%増の29億08百万円、営業利益が同13.3%増の4億09百万円だった。その他事業(IT・法曹・会計他の事業)は売上高が同13.3%増の29億68百万円、営業利益が同71.5%減の24百万円だった。

 新規事業領域では、電子書籍取次事業はダウンロード数・売上高とも順調に増加して黒字定着した。オンラインクリエイター事業は動画再生回数が順調に増加して黒字化メドとなった。また第1四半期にシェフ・エージェンシー事業、第2四半期にプロフェッサー・エージェンシー事業を立ち上げ、作家、建築、ファッション、シェフ、プロフェッサーの各エージェンシー事業における先行投資負担の営業利益への影響額は合計で約2億10百万円(前々期は約1億50百万円)だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期63億69百万円、第2四半期65億03百万円、第3四半期57億07百万円、第4四半期63億30百万円、営業利益は第1四半期4億58百万円、第2四半期4億49百万円、第3四半期1億03百万円、第4四半期1億67百万円だった。

■17年2月期は大幅増益予想

 今期(17年2月期)の連結業績予想(4月7日公表)については、売上高が前期(16年2月期)比6.4%増の265億円、営業利益が同35.9%増の16億円、経常利益が同38.9%増の15億50百万円、純利益が同27.7%増の8億円としている。配当予想は前期比1円増配の年間9円(期末一括)で予想配当性向は23.4%となる。

 売上面では日本のクリエイティブ分野を中心に既存事業分野が好調に推移する。利益面では引き続き積極的な人材投資で販管費が増加するが、内制化進展による売上総利益率改善や、新規事業分野の収益化(建築およびファッションクリエイター事業で収支均衡を計画)も寄与して大幅増益予想だ。

 セグメント別(連結調整前)の計画を見ると、日本のクリエイティブ分野は売上高が165億円で営業利益が10億円、韓国のクリエイティブ分野は売上高が35億円で営業利益が30百万円、医療分野は売上高が30億50百万円で営業利益が4億60百万円、その他は売上高が34億80百万円で営業利益が1億20百万円としている。戦略的投資の効果や新規事業領域の収益化で増収増益基調が期待される。

■中期成長戦略で18年2月期営業利益30億円をイメージ

 中期成長戦略では既存事業で年率10~15%の成長を見込み、新規事業分野の積み上げや収益化も寄与して、18年2月期売上高300億円、営業利益30億円をイメージしている。事業領域拡大戦略を加速して、中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株価は調整一巡して切り返し

 株価の動き(16年2月26日付でJASDAQから東証2部に市場変更)を見ると、地合い悪化の影響で6月24日に408円まで調整する場面があったが、2月の年初来安値350円まで下押すことなく切り返しの動きを強めている。

 6月29日の終値503円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS38円50銭で算出)は13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間9円で算出)は1.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS227円55銭で算出)は2.2倍近辺である。時価総額は約114億円である。

 週足チャートで見ると戻りを押さえていた26週移動平均線突破の動きを強めている。調整一巡して反発展開だろう。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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