アルコニックスは調整一巡して戻り試す、17年3月期2桁営業増益予想で指標面に割安感

 アルコニックス<3036>(東1)は商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指してM&A戦略も積極活用している。17年3月期は負ののれん発生益が一巡して最終減益だが、積極的なM&A戦略が奏功して2桁営業増益予想である。株価は地合い悪化も影響して水準を切り下げたが、指標面の割安感は強く、調整一巡して戻りを試す展開だろう。なお8月4日に第1四半期の業績発表を予定している。

■商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」

 軽金属・銅製品(伸銅品、銅管、アルミフィン材など)、電子・機能材(レアメタル・レアアース、チタン・ニッケル製品など)、非鉄原料(アルミ・亜鉛地金など)、建設・産業資材(配管機材など)を取り扱う非鉄金属商社である。

 レアメタル分野に強みを持つことも特徴だが、中期成長に向けて商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。

 16年3月期のセグメント別売上高構成比は軽金属・銅製品43.1%、電子・機能材34.6%、非鉄原料16.1%、建設・産業資材6.2%で、経常利益構成比(連結調整前)は軽金属・銅製品60.1%、電子・機能材35.0%、非鉄原料1.2%、建設・産業資材3.9%だった。

 なお17年3月期からセグメント区分を変更し、新セグメントは商社・流通(電子・機能材、アルミ・銅)および製造(金属加工、装置・材料)とする。製造業の利益が連結業績の過半を占めるようになったため、流通を手掛ける連結子会社は商社流通、製造を手掛ける連結子会社は製造に再編する。

■M&Aを積極活用して業容拡大

 13年1月金属・化成品メーカーの米ユニバーティカル社を子会社化、13年3月アルミ合金スクラップ販売の大阪アルミセンターを子会社化、13年4月産業機械用精密加工部品メーカーの大羽精研を子会社化、14年4月住宅建設関連資材メーカーのケイ・マックを持分法適用関連会社化、14年11月アルミ銅センター(大阪アルミセンターが14年9月1日付で商号変更)が稲田商会の銅リサイクル事業(稲田銅センター)を譲り受けた。

 15年7月中間持株会社アルコニックス・トーカイが溶接材料製造ならびに溶射加工事業の東海溶業を子会社化、15年10月非鉄金属専門商社の平和金属を子会社化、16年2月中間持株会社アルコニックス・エムティが金属製品非破壊検査(表面探傷検査)および金属マーキングの国内トップ企業であるマークテックを子会社化した。

■収益は非鉄金属の市況が影響するが積極的なM&A効果も寄与

 四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期484億04百万円、第2四半期485億96百万円、第3四半期546億06百万円、第4四半期499億37百万円、経常利益が17億13百万円、13億95百万円、13億02百万円、7億95百万円で、16年3月期は売上高が529億30百万円、482億55百万円、524億29百万円、481億41百万円、経常利益が12億71百万円、10億43百万円、10億34百万円、6億85百万円だった。

 レアメタル・レアアースなど非鉄金属の市況、持分法投資損益、M&Aに伴うのれん償却や負ののれん益なども収益変動要因となるが、積極的なM&Aの効果も寄与して収益拡大基調である。

 16年3月期の売上総利益は同0.8%増加し、売上総利益率は6.0%で同横ばいだった。販管費は同11.8%増加し、販管費比率は4.2%で同0.5ポイント上昇した。営業外では受取配当金が増加し、為替差損益が改善したが、持分法投資利益が減少し、ケイ・マックを持分法適用関連会社化したことに伴う負ののれん発生益が一巡した。

 特別利益には平和金属の株式取得に伴う負ののれん発生益を計上した。ROEは17.8%で同2.9ポイント上昇、自己資本比率は26.8%で同2.5ポイント低下した。NET/DERは0.6倍(15年3月期は0.7倍)だった。配当は同4円増配の年間44円(第2四半期末22円、期末22円)で配当性向は11.4%だった。利益配分については将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続的に実施していくことを基本方針としている。

■16年3月期は負ののれん発生益で最終増益

 16年3月期連結業績は15年3月期比0.1%増収、同17.3%営業減益、同17.8%経常減益、同42.0%最終増益だった。スマホ・タブレット端末の高機能機種向け電子材料や、船舶・発電設備向け熱交換器用チタン展伸材の輸出などが伸長し、第3四半期から新規連結した平和金属も貢献して増収だが、非鉄原料やレアメタル・レアアースの市況低迷、販管費の増加で営業減益、ケイ・マックの負ののれん発生益一巡で経常減益だった。純利益は平和金属の負ののれん発生益が寄与して大幅増益だった。

 セグメント別動向を見ると、軽金属・銅製品は売上高が同14.8%増の870億20百万円、経常利益は同14.3%減の25億73百万円だった。業務用空調向け銅管などが伸長し、平和金属のCAN材や伸銅品が加わり、さらに大羽精研も貢献したが、ケイ・マックの負ののれん発生益が一巡して減益だった。電子・機能材は売上高が同7.3%減の697億77百万円、経常利益は同13.6%減の14億98百万円だった。スマホ・タブレット端末の高機能機種向け電子材料、チタン展伸材の輸出取引が伸長したが、レアメタル・レアアースが減収となり、めっき材料の価格下落も影響した。

 非鉄原料は売上高が同10.6%減の325億32百万円となり、経常利益が同81.7%減の49百万円だった。アルミ再生塊や金属珪素の取り扱いが減少し、アルミ・銅スクラップを取り扱うアルミ銅センターの不振も影響した。建設・産業資材は売上高が同11.5%減の124億26百万円、経常利益が同19.7%減の1億66百万円だった。東海溶業が貢献したが、国内配管機材の取り扱いが減少した。

■17年3月期は負ののれん発生益一巡で最終減益だが、2桁営業増益予想

 今期(17年3月期)の連結業績予想(5月13日公表)については、売上高が前期(16年3月期)比9.0%増の2200億円で、営業利益が同12.1%増の42億50百万円、経常利益が同2.8%増の44億円、純利益が同37.7%減の31億円としている。純利益は平和金属の負ののれん発生益が一巡して減益予想である。配当予想は前期と同額の年間44円(第2四半期末22円、期末22円)で、予想配当性向は18.3%となる。

 非鉄の需要・市況とも急回復は見込めない状況だが、平和金属および東海溶業の通期連結やマークテックの新規連結が貢献し、半導体実装機用部品を手掛ける国内製造子会社の業績が好調に推移して増収、2桁営業増益予想としている。売上総利益は同23.2%増の150億円、売上総利益率は同0.8ポイント上昇の6.8%、販管費は同28.2%増の107億50百万円、販管費比率は同0.7ポイント上昇の4.9%の計画としている。

 なおセグメント別(旧セグメントベース)の計画については、軽金属・銅製品の売上高が同11.5%増の970億円で経常利益が同2.8%減の25億円、電子・機能材料の売上高が同26.1%増の880億円で経常利益が同6.8%増の16億円、非鉄原料の売上高が同29.3%減の230億円で経常利益が同2.0倍の1億円、建設・産業資材の売上高が同3.4%減の120億円で経常利益が同20.4%増の2億円としている。

 軽金属・銅製品は平和金属の通期連結で大幅増収だが、アルミ・銅の市況低迷で減益見込みとしている。電子・機能材は米ユニバーティカル社の業績回復やマークテックの新規連結で増収増益見込みとしている。非鉄原料はアルミ再生塊の頭打ちやアルミ銅センターのスクラップ取り扱い減少で減収だが、市況下落のマイナス要因が一巡して増益見込みとしている。建設・産業資材は国内向け配管機材の取り扱いが減少するが、東海溶業の通期連結や配管機材の海外取引増加で増益見込みとしている。

■新中期経営計画で19年3月期ROE13~15%程度目標

 16年5月策定の新中期経営計画(17年3月期~19年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、経営目標値として19年3月期の経常利益65億円超、純利益46億円超、ROE13~15%程度、NET/DER1.0~1.3倍程度を掲げ、3年間の投融資総額はM&A・事業投資を中心に200億円の計画としている。商社機能と製造業を融合した「非鉄金属の総合企業」を目指し、アクションプランとして、営業収益力の強化と投資案件の推進を掲げている。

 営業収益力の強化では、電子材料分野における原料(レアメタル・レアアース)から製品(電子材料・機能材料)までを網羅したビジネスモデルの展開、環境対応関連分野における省エネ・環境対応素材からリサイクル事業までの幅広い事業展開、そして海外事業展開(地場取引の拡大、三国間ビジネスの拡大、海外ネットワーク充実に向けた拠点拡大)を推進する。

 投資案件の推進では、短期間での業容拡大に有効なM&A、新たな商流を創出するための金属加工・販売事業等への事業投資、およびリサイクルを含む資源確保のための投資を重点施策として推進する。積極的なM&A戦略も奏功し、グループのシナジー効果を高めて中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡して戻り試す

 株価の動きを見ると、4月の戻り高値圏1600円台から地合い悪化も影響して水準を1400円台に切り下げた。ただし2月の年初来安値1050円まで下押す動きは見られない。

 7月7日の終値1450円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS240円77銭で算出)は6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は3.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS2311円32銭で算出)は0.6倍近辺である。時価総額は約187億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を割り込んだが、指標面の割安感は強く、調整一巡して戻りを試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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