インテリジェントウェイブは16年6月期増額の可能性、17年6月期も収益拡大期待

 インテリジェントウェイブ<4847>(JQS)は金融分野や情報セキュリティ分野を中心にシステムソリューション事業を展開している。16年6月期営業増益予想で増額の可能性があり、17年6月期も収益拡大が期待される。株価は地合い悪化の影響で反落したが、調整一巡して出直り展開だろう。なお8月3日に16年6月期決算発表を予定している。

■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力

 大日本印刷<7912>の連結子会社で、ソフトウェア開発を中心にソリューションを提供する金融システムソリューション事業、情報セキュリティ分野を中心にパッケージソフトウェアや保守サービスを提供するプロダクトソリューション事業を展開している。15年6月期のセグメント別売上構成比は金融システムソリューション事業89.8%、プロダクトソリューション事業10.2%だった。

 高度な専門性が要求されるクレジットカード決済のフロント業務関連システムで特に高シェアを持ち、クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスを収益柱としている。

 クレジットカード利用承認や銀行ATMネットワーク接続などの決済ネットワークを支える仕組みのNET+1(ネットプラスワン)、クレジットカード不正利用検知のACEPlus(エースプラス)、内部情報漏えい対策システムCWAT(シーワット)などの製品を強みとしている。CWATはPCなど情報端末のファイル操作、メール送信、外部メディアへの書き込み、接続などを監視し、企業の情報を守る情報漏えい対策システムである。

■事業領域拡大に向けて新製品開発を強化

 金融システムソリューション事業ではクレジットカード決済のフロント業務関連システムから、バックオフィス業務関連など基幹業務システム関連への事業領域拡大を目指している。またプロダクトソリューション事業では、サイバー攻撃や情報漏えいに対応したセキュリティ関連のソリューションを強化している。

 新製品開発では14年末から、当社保有技術を活用した新製品OnCore(オンコア)の開発を進めている。NET+1やACEPlus等の機能を搭載し、さまざまなシステム開発におけるプラットフォームの基盤となる製品だ。16年1月から国内販売を開始して大手クレジットカード会社での活用が決定している。さらにハードウェアをセットにしたパッケージ型製品として、金融以外の業界向けや東南アジアでの販売も視野に入れている。

■アライアンス戦略も積極推進

 アライアンス戦略も積極推進し、14年2月ジーフィー(GIFI)と個人投資家向け次世代オンライントレードシステム分野で業務提携、15年2月CyberArk社(イスラエル)と国内販売代理店契約締結、Devexperts Japan社と業務提携、15年5月米パロアルトネットワークス社の標的型攻撃対策ソフトウェア「アドバンストエンドポイント プロテクションTraps」販売開始した。

 16年4月にはソフトバンクと日本IBMの「IBM Watson エコシステムプログラム」のテクノロジーパートナーとして認定された。16年6月にはイリューシブ・ネットワークス社(イスラエル)が開発した新コンセプトのサイバーセキュリティ対策ソリューション「Deception Everywhere」の国内販売を開始した。

■金融業界のシステム投資や案件ごとの採算性が影響する収益構造

 15年6月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期14億26百万円、第2四半期14億18百万円、第3四半期14億57百万円、第4四半期18億58百万円、営業利益は94百万円、89百万円、99百万円、2億01百万円だった。

 金融業界のシステム投資の動向や案件ごとの採算性などが影響しやすい収益構造である。15年6月期は不採算案件が一巡して営業損益が大幅に改善した。売上総利益率は28.9%で14年6月期比8.4ポイント上昇、販管費比率は21.0%で同2.8ポイント上昇、ROEは10.1%で同8.2ポイント上昇、自己資本比率は74.6%で同4.3ポイント低下した。配当性向は28.0%だった。

■16年6月期第3四半期累計は大幅営業増益

 前期(16年6月期)第3四半期累計連結業績は、前年同期比13.6%増収、同51.7%営業増益、同51.9%経常増益、同0.7%最終減益だった。特別損失計上や税金費用増加で最終減益だったが、金融システムソリューション、プロダクトソリューションとも好調に推移して2桁増収・大幅営業増益・経常増益だった。

 売上総利益は同12.8%増加したが、売上総利益率は27.9%で同0.2ポイント低下した。販管費は同0.9%増加にとどまり、販管費比率は19.1%で同2.4ポイント低下した。特別損失では関係会社整理損失引当金繰入額17百万円を計上した。法人税等合計は1億41百万円で前期の4百万円から大幅に増加した。

 セグメント別に見ると、金融システムソリューションは売上高が同10.1%増の43億46百万円、営業利益が同13.2%増の4億56百万円だった。売上高は金融業界やクレジットカード業界の新規設備投資案件が好調に推移して、ソフトウェア開発が同12.7%増の26億54百万円、他社製パッケージが同94.3%増の3億40百万円だった。保守とハードウェアは微減、自社製パッケージは横ばいだった。

 プロダクトソリューションは売上高が同52.7%増の5億39百万円、営業利益が26百万円の赤字(前年同期は1億20百万円の赤字)だった。売上高はサイバーセキュリティ対策関連が好調に推移し、自社製パッケージが同22.4%増の2億62百万円、他社製パッケージが同98.6%増の2億76百万円だった。

 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期13億31百万円、第2四半期16億65百万円、第3四半期18億90百万円、営業利益は第1四半期34百万円、第2四半期1億68百万円、第3四半期2億27百万円だった。

■16年6月期通期2桁営業増益予想で増額の可能性

 前期(16年6月期)通期の連結業績予想(8月5日公表)については、売上高が前々期(15年6月期)比5.5%増の65億円、営業利益が同11.6%増の5億40百万円、経常利益が同10.2%増の5億40百万円、純利益が同25.7%減の3億50百万円としている。特別損失計上や税金費用増加で最終減益だが、サイバーセキュリティ関連の好調などで増収・2桁営業増益・経常増益予想である。配当予想は前期と同額の年間5円(期末一括)で予想配当性向は37.6%となる。

 セグメント別の計画は、金融システムソリューションの売上高が同3.0%増の57億円で営業利益が同29.0%減の5億40百万円、プロダクトソリューションの売上高が同27.6%増の8億円で営業利益が0百万円(前期は2億76百万円の赤字)としている。金融システムソリューションはハードウェアと自社製パッケージで減収を見込み、ソフトウェア開発は増収だが利益率の低下を見込んでいる。プロダクトソリューションは、サイバーセキュリティ関連の他社製パッケージソフトの増収と経費削減効果で、営業損益が大幅に改善する見込みだ。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.2%、営業利益が79.5%、経常利益が82.6%、純利益が81.7%と高水準である。そして金融システムソリューションは第3四半期の受注が好調だったため、通期は売上、利益とも上振れ見込みとしている。新製品OnCore(オンコア)も売上計上される見込みだ。

 需要が高水準であり今期(17年6月期)も収益拡大が期待される。なお韓国の子会社の清算が6月28日をもって結了したため、17年6月期から連結決算を単独決算に変更(7月1日付リリース)する。

■クレジットカード・金融業界のシステム投資は高水準

 クレジットカード・金融業界では、システム・ハードウェア更新投資、クレジットカード会社の資本関係変化に伴うシステム開発投資、不正検知を含むFEPシステム投資、ブランドプリペイドカードやモバイル端末決済など決済サービス多様化に対応したシステム投資、訪日外国人旅行客の増加に伴うコンビニエンスストアATMや海外カードに対応した新規投資などで、設備投資が高水準に推移する見通しだ。

 そして中期成長戦略として、需要変動や採算性の影響を受けやすい開発請負型から、ASP方式によるセキュリティソフト・システム利用課金などストック型収益構造への転換を推進する方針だ。中期経営目標値としては売上高100億円、営業利益10億円を目指している。高水準の投資需要を背景にクレジットカード・金融関連の開発案件受注増加が期待され、さらにサイバー攻撃対策や情報漏えい対策などセキュリティ関連の需要増加も期待される。中期的に収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は6月末に実施、セキュリティ製品を贈呈

 株主優待制度は、毎年6月末現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、Dr.Web社のセキュリティ製品(Windows版またはMac版)1ライセンス(PC1台用)を贈呈する。

■株価は調整一巡して出直り

 株価の動きを見ると、地合い悪化が影響して6月24日に382円まで調整したが、その後は切り返しの動きを強めている。

 7月13日の終値444円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS13円29銭で算出)は33~34倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は1.1%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS183円55銭で算出)は2.4倍近辺である。なお時価総額は約117億円である。

 週足チャートで見ると一気に26週移動平均線を割り込んだが、2月の年初来安値315円まで下押すことなく切り返している。調整一巡して出直り展開だろう。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る