任天堂の「ポケモノミクス」の追随セクターとして敢えてPSVR関連株に「拡張現実」化を期待=浅妻昭治

 下世話的にいえば「リンダ相場」である。山本リンダのかつてのヒット曲の歌詞にあるように、株価急騰が「どうにもとまらないから」だ。任天堂<7974>(東1)である。今月6日に米国など海外で配信を開始したスマホゲーム「ポケモンGO」が、1日当たりの利用者が2100万人とスマホゲームとして世界歴代最大となって、米国で社会問題化するほどの大ヒットとなったことで、同社の株価も、ストップ高を交えて棒上げ、6月28日につけた年初来安値から短期間に倍化、売買代金も、前週末15日には4760億円と個別銘柄として過去最高となる大賑わいとなり、東証1部全体の約15%を占めた。

 しかもこの株価大化けは、同社株の独歩高にとどまらず「ポケモノミクス」とネーミングされるように関連株に広く及んだ。これは、東証1部の前週の週間値上がり率ランキングでも歴然で、任天堂が第2位にランクインしたほか、トップがサノヤスホールディングス<7022>(東1)、第3位がイマジカ・ロボット ホルディングス<6879>(東1)、第4位が京都銀行<8369>(東1)と上位を占めた。通常、ゲーム株の人気化場面では、人気が波及するのはゲーム関連株限定となるものだが、「ポケモノミクス」相場ではサノヤスHDや京都銀行のオールドエコノミー株、さらに低位株の第一屋製パン<2215>(東1)にまで波及した。今月7月中には国内でも発売と伝えられ、その前人気の高さ、エネルギーとスケールの大きさを窺わせた。

 しかも前週末は、前日14日に今8月期業績の3回目の下方修正を発表したファーストリテイリング<9983>(東1)が、前回2回の下方修正時とは真逆に、四半期ベースでは収益改善がみられ大手証券の投資判断・目標株価引き上げも加わってストップ高し、さらに日米両市場で今年最大のIPO(新規株式公開)案件となったLINE<3938>(東1)が、公開価格3300円に対して4900円で初値をつけ5000円まで買い進まれたことも「リンダ相場」に拍車を掛けた。お陰で日経平均株価も、英国の「欧州連合(EU)離脱ショック」で突っ込んだ1万4861円安値から1万6607円高値まで急反発し、ショック安前の水準を回復した。

 3連休明けの今週も、この大賑わい、週間で日経平均株価が1390円高、19年ぶりの上昇幅となった反動安が懸念されるなか、「リンダ相場」が続くかどうかは、「ポケモノミクス」がさらにニューマネーを市場に呼び込むか、外国人投資家が買い攻勢を強めるかにかかっている。相場環境的にも、前週末には東京市場が終了したあとのフランスでテロ事件、トルコでは軍事クーデターの発生が伝えられ、1ドル=105円台にまで円安にふれた為替相場が、安全資産志向で再び円高懸念を強めるなどややアゲインストである。しかも、与党の統一候補に対して与党が分裂選挙となる東京都知事選挙で、参議院選挙に続いて与党が勝利できるのか、今週からスタートする3月期決算会社の第1四半期(4~6月期)業績の発表で、企業業績がどうなるか、仮に下方修正が続くとしてもファーストリテイリングと同様に織り込み済みとなるのか、また市場が、「ヘリコプターマネー」などと期待し先取りしている追加金融緩和策が、7月28日~29日開催の日銀の金融政策決定会合で本当に決定されるのかどうか不透明な部分もあるからだ。

 結局、これは任天堂の株価持続力にかかっていることになる。仮に外部環境や為替相場、企業業績が懸念された通りにネガティブに推移するとしても、これも下世話的にいえば「カラスの勝手でしょ」とばかりにニューマネーが同社株に殺到して「リンダ相場」にさらに拍車がかかるかどうかである。もちろん一本足打法は、相場展開としては不安定だから、引き続きファーストリテイリングやLINEなどの後押しのある二本足・三本足打法が望ましい。そこで、二本足・三本足打法がさらにバラエティーに富む広角打法に発展して安定化するのがベストであることはいうまでもない。この候補株として、ソニー<6758>(東1)と同社が今年10月に発売を予定している「プレイステーションVR(PSVR)」に関連するAR(拡張現実)/VR(仮想現実)関連株に注目してみたい。

 「PSVR」は、ソニーの子会社が今年6月に続いて7月23日から販売予約を再開するとしたことで、前週末にソニーの株価が、年初来高値を更新したほか、関連株も揃って買われた。ソニー自体も、主力輸出株のなかで唯一、円高が業績の上方修正要因となる業容となっており、折からの今3月期1Q決算発表で業績の順調な推移が確認することになれば、人気を加速する展開も有力となり、関連株にも買い余地が高まってくる。

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