JPX日経400定期入替え銘柄、日経225追加銘柄、直近指定替え株など順張り・逆張り=浅妻昭治

<マーケットセンサー>

■「水準より方向」で「政策に売りなし」の投資セオリー通りに

 戦力の逐次投入ではない。2発のバズーカが、間髪を入れずに発射されたのである。日銀は、上場投資信託(ETF)の買入れ額を年間6兆円に倍増させ、安倍内閣は、経済対策の事業規模を28兆1000億円にまで膨らませた。サマーラリーがスタートする舞台は整ったはずだった。にもかかわらず株価の反応は冷たいもので、日経平均株価は、日銀の金融政策決定会合で追加緩和策が決定された7月29日から486円も下げてしまった。第2次安倍内閣第3次改造内閣への「ご祝儀相場」も、日銀が、8月4日にETFを707億円買入れるまで待たなくてはならず、その歓迎ぶりも日経平均株価で171円高と湿っぽいままにとどまった。

 しかも、翌日の前週末5日の日経平均株価は、0.44円安の小反落と2014年4月17日以来2年4カ月の小動きと方向感を喪失した。2014年4月17日は、4月1日に消費税が8%に引き上げられ日経平均株価も1万3885円まで売られた直後で、為替相場も、1ドル=102円台の円高水準にあった。今年7月末の記者会見で、黒田東彦総会は、次回の9月20日~21日開催の金融政策決定会合で異次元・三次元金融緩和策の「総括的な検証」を行うと発言したが、「アベノミクス」と「クロダノミクス」によって順調に浮揚してきた景気と上昇してきた株価が一つの屈折点を迎えたのがこの時であった。なんとも奇妙な符合である。

 もっとも前週末5日の株価の小動きは、その日の夜に発表が予定されていた米国の7月の雇用統計の発表を控えて様子見姿勢を強めたことが大きく響いてはいた。黒田総裁の「総括的な検証」発言以来、長期金利が上昇し円高・ドル安を招き、米国の雇用統計次第では、米国の政策金利再引き上げが後退して、一段の円高・ドル安が進行するのではないかと警戒したものだ。

 この米国の7月の雇用統計は、フタを開けてみれば「吉」と出たようだ。非農業部門の雇用者数が、25万5000人増加して市場予想の18万人を上回って、平均時給も2.6%増え、労働市場の底固さから米連邦準備制度理事会(FRB)の年内再利上げの環境が整ったからだ。ここから予想される日米金利差の拡大は、円安・ドル高への逆転につながるはずである。現に5日の米国の為替市場では、円は1ドル=101円台後半で引けたものの、一時は102円台と円安に振れた。この為替レートは、トヨタ自動車<7203>(東1)が、今3月期第1四半期(4~6月期)決算を発表、3月通期業績を下方修正した際に見直した1ドル=102円にあとちょっとだが、この際は、「水準より方向」が重視されるはずで、このまま方向指示器通りに円安・ドル高に進むか、今後の日米中央銀行の金融政策決定会合への期待が高まる。

 となると、当面は為替相場の「水準より方向」を先取りし、投資セオリーの「政策に売りなし」にトライするのが手っ取り早い。「政策に売りなし」とは、日銀のETF買いの6兆円は、ハンパな額ではなく、過小評価するのは得策でなくその買い増しによる需給相場にコラボするということである。ETF買いは、相場の下支え要因とするのが一般的だが、最近ではかつて東証株価指数(TOPIX)が前日比1%以上下落した際に執行されたETF買入れのルールが、それ以下の下落率でも買入れられるケースも増えているだけに、買入れ額の倍増とともにインパクトはそれだけ大きくなっている。

 具体的にはまずETF買いそのものだが、インデックス運用より個別銘柄でのインデックスを上回るパフォーマンスを狙うアクティブ投資家も少なくないはずだ。こうした向きには定石通りに指数ウエートの大きい銘柄がターゲットとなり、日経平均型では値がさ株のファナック<6954>(東1)、KDDI<9433>(東1)、ファーストリテイリング<9983>(東1)、ソフトバンクグループ<9984>(東1)、TOPIX型では、時価総額の大きい順にトヨタ自動車、メガバンク株などとなる。分かりきった定石を外し銘柄選択の幅を広げたい投資家は、日本取引所グループ<8697>(東1)と日本経済新聞が、このタイミングの前週末5日に定期入れ替えを発表したJPX日経インデックス400構成銘柄に追加された34銘柄(除外33銘柄)や、今年7月以降に東証第1部に指定替え・市場変更された銘柄、日経平均株価の構成銘柄に追加された銘柄などが対象となる。この45銘柄から株価水準や業績動向などで精査してターゲットを絞り込めば、あるいは株価指数を上変わるパフォーマンスが期待できるかもしれない。

■JPX日経400定期入替え銘柄、日経225追加銘柄、直近指定替え株など順張り・逆張り

 JPX日経インデックス400構成銘柄の定期入替えでは、PERがJPX日経400の平均PER(14.1倍)を下回る銘柄のうち、株価水準が今年7月以降に年初来高値をつけた銘柄への順張りと、逆に年初来安値水準へ売られた銘柄への逆張りに絞りたい。順張り銘柄では、コード番号順に東急建設<1720>(東1)、九電工<1959>(東1)、住友大阪セメント<5232>(東1)、ノジマ<7419>(東1)、SCREENホールディングス<7735>(東1)、阪和興業<8078>(東1)が該当する。一方、逆張り銘柄は、コロプラ<3668>(東1)、三菱ガス化学<4182>(東1)、竹内製作所<6432>(東1)、東京TYフィナンシャルグループ<7173>(東1)、JAL<9201>(東1)が浮上する。順張り銘柄でも逆張り銘柄でも、強弱感の対立で信用取組が株不足で逆日歩がつく銘柄も含まれており、需給相場に輪を掛けることも想定される。

 日経平均株価への直近入替え銘柄では、除外されたシャープ<6753>(東2)に代わって8月1日に追加されたヤマハ発動機<7272>(東1)、同じく除外されるユニーグループ・ホールディングス<8270>(東1)に代わって8月29日に追加されるファミリーマート<8028>(東1)、株式移転による持株会社としてサツドラホールディング<3544>(東1)が8月16日に新規上場されるために8月10日に上場廃止となるサッポロドラッグストアー<2786>(東1)が対象銘柄となる。

 東証1部への直近指定替え・市場変更銘柄では、東証マザーズからの市場変更でビューティーガレージ<変更日7月26日)<3180>(東1)、Hamee(同7月27日)<3134>(東1)、フリービット(同7月27日)<3843>(東1)、デザインワン・ジャパン(同8月12日)<6048>(東マ)、東証2部から東証1部への指定替えでアドバンスクリエイト(指定日7月22日)<8798>(東1)、THEグローバル社(同7月29日)<3271>(東1)、オンリー(同8月10日)<3376>(東1)、ローツェ(同8月10日)<6323>(東1)と続き、指数連動型のファンドなどの組み入れのための買い需要は、日銀のETF買入れ額の倍増でさらに拡大する計算になる。(本紙編集長・浅妻昭治)

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