【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンディスプレイ下値切り上げて強基調に転換、車載用能力増強も好感

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 中小型液晶ディスプレイ製造のジャパンディスプレイ<6740>(東1)の株価は、14年10月の上場来安値311円をボトムとして下値を切り上げている。22日は車載用の能力増強も好感して前日比26円高の399円まで上伸する場面があった。強基調に転換した形であり、来期(16年3月期)の収益改善期待で出直り展開だろう。

 ソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズの3社が統合して12年4月に事業を開始した。モバイル分野(スマートフォン・タブレット)向けを主力として、車載・C&I・その他分野(車載分野、デジタルカメラ分野、医療分野)向けに、高精細・高画質・低消費電力・薄型・軽量の中小型液晶ディスプレイを製造・販売している。

 前期(14年3月期)の得意先別売上構成比はアップル向けが約3割を占めた。製造は国内の5拠点と、海外は中国、フィリピン、台湾に展開し、車載事業強化に向けて米デトロイトに新規オフィスを開設している。

 競争力の高い技術力と生産能力を強みとしている。12年6月石川サイト能美工場、13年6月茂原工場の最先端LTPS(低温ポリシリコン)液晶ラインが稼働した。また14年6月には台湾の子会社TDIを通じて、台湾の液晶ディスプレイモジュール製造の中日新科技股份有限公司(STC)を子会社化した。STCが有する中国・珠海市のモジュール製造工場を活用して中国でのビジネス基盤を強化し、中国市場でのシェア拡大を目指す戦略だ。

 中期的には、国内外でスマートフォンの高精細ディスプレイ比率が上昇する見通しであり、モバイル分野に比べて需要変動の小さい車載用でもカーナビやインパネ関連で高精細ディスプレイの需要増加が予想されるため、高精細WQHD(1440×2560画素)の市場シェア拡大戦略を推進している。

 また14年7月、産業革新機構(INCJ)、当社、ソニー<6758>、パナソニック<6752>が、ソニーおよびパナソニックが有する有機ELディスプレイパネルの研究開発機能を統合してJOLED(ジェイオーレッド)を設立(15年1月)することで合意した。当社はJOLEDに15%出資して研究開発を加速させる方針だ。

 14年10月には新しい駆動方式の高速応答液晶ディスプレイを開発した。車載向けやカメラ向けなど幅広い製品用途への適用が期待され、15年度中の量産確立を目指すとしている。

 1月22日には、台湾の子会社である高雄晶傑達光電科股份有限公司(KOE)の車載用ディスプレイモジュール組立生産能力を、16年度末までを目途に現在の月産18万台から月産45万台に増強すると発表した。車載事業強化に向けたデザインイン活動の成果で、車載事業の売上高が16年度に13年度比約1.5倍の規模に拡大することが見込まれ、さらに18年度には同2倍以上にすることを目指しているため組立工程を拡充するとしている。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(10月15日に売上高・利益とも2回目の減額、11月13日に貸倒引当金計上に伴って純利益を減額)は、売上高が前期比20.4%増の7400億円、営業利益が同76.5%減の65億円、経常利益が同92.1%減の15億円、純利益が121億32百万円の赤字(前期は339億18百万円の黒字)としている。

 純利益は深谷工場閉鎖(16年4月予定)に伴う減損損失約70億円の計上も影響する。通期の想定為替レートは1ドル=105円としている。期末配当予想は未定としている。

 第2四半期累計(4月~9月)は大口顧客向けの出荷遅れ、単価下落、中国のLTE対応機種向け「Full-HD」市場立ち上がり遅れなどの影響で売上高が想定を下回り、単価下落に対するコストダウン対応の遅れ、在庫評価損の計上、貸倒引当金計上も影響して各利益は赤字だった。

 下期(10月~3月)は、欧米の大口顧客向けの売上回復、中国・アジアのスマートフォンメーカーからの大口案件受注、ディスプレイ高精細化に伴う中国・アジア向け「Full-HD」「WQHD」「Pixel Eyes」の売上増加と売上構成比上昇、茂原工場の稼働率向上やコストダウンなどの効果で収益改善を図るとしている。

 来期(16年3月期)は、デザインイン活動の成果による車載事業の売上拡大も寄与して営業損益改善が期待される。さらに中期的にも技術・コスト競争力の強化、車載事業の拡大に加えて、深谷工場閉鎖に伴う固定費削減効果(年間約70億円)も寄与して高収益化が期待されるだろう。

 株価の動きを見ると、14年10月の上場来安値311円をボトムとして、11月317円、12月351円と下値を切り上げている。そして15年1月は概ね350円~390円近辺で推移し、22日は車載用の能力増強も好感して前日比26円(6.97%)高の399円まで上伸する場面があった。

 1月22日の終値394円を指標面で見ると、前期実績PBR(前期実績の連結BPS673円28銭で算出)は0.6倍近辺である。週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線を突破した。また13週移動平均線が上向きに転じた。下値固めが完了して強基調に転換した形であり、来期の収益改善を期待して出直り展開だろう。

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