神鋼商事は基調転換の動き、17年3月期減益予想の織り込み完了

 神鋼商事<8075>(東1)は鉄鋼・鉄鋼原料・非鉄金属関連の専門商社である。そしてKOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核となるグローバル商社を目指している。株価は基調転換の動きを強めている。17年3月期減益予想の織り込みが完了したようだ。指標面の割安感は強い。上げ足を速める可能性があるだろう。なお16年10月1日付で10株を1株に併合し、単元株式数を1000株から100株に変更する。

■KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核商社

 神戸製鋼所<5406>系で鉄鋼製品、鉄鋼原料、非鉄金属、機械・情報、溶接材料・機器などを扱う専門商社である。M&Aも積極活用し、KOBELCO(神戸製鋼グループ)の中核となるグローバル商社を目指している。

 14年7月筒中金属産業が新設分割で設立した国内卸売事業会社(現コベルコ筒中トレーディング)を子会社化、15年5月コベルコ筒中トレーディングが韓国でアルミ高精度厚板の切断加工・卸売事業を展開している韓国筒中滑川アルミニウム(現ケーティーエヌ)を子会社化、15年8月ミャンマー・ヤンゴン市に神鋼商事ヤンゴン支店を開設した。

 16年1月非鉄金属材料の素材・加工品を販売する中山金属が新設分割で設立した国内外卸売事業会社の株式80%を取得し、国内外卸売事業会社および海外子会社を子会社化した。株式取得対象の国内外卸売事業会社の商号は中山金属(新)で、海外子会社は中国(上海)、タイ、インドネシアの3社である。16年4月神戸製鋼所の子会社で溶接材料、溶接機器、産業用機械などを扱う商社エヌアイウエル(現エスシーウエル)の株式80%を取得して子会社化した。

■メキシコ線材二次加工拠点でグローバル展開加速

 14年9月メキシコにおける線材二次加工拠点となる合弁会社を設立した。出資比率は当社40%、メタルワン25%、神戸製鋼所10%、大阪精工10%、メキシコGrupo Simec10%、米O&k American5%である。

 メキシコは世界の自動車・自動車部品メーカーの進出で自動車関連産業の成長が期待されており、自動車用ファスナーや冷間鍛造部品などの素材となる冷間圧造用鋼線を製造する。

■売上総利益率は改善傾向

 四半期別推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期2140億42百万円、第2四半期2124億16百万円、第3四半期2140億78百万円、第4四半期2298億71百万円、経常利益が16億38百万円、13億59百万円、17億44百万円、18億34百万円で、16年3月期は売上高が2163億60百万円、2031億23百万円、1893億35百万円、1825億24百万円、経常利益が20億49百万円、12億46百万円、13億33百万円、12億80百万円だった。

 16年3月期は、資源価格下落や期末にかけてのドル安・円高などの影響で、鉄鋼・半導体・電機業界向け取扱数量が減少し、鋼板製品の市況低迷、輸入鉄鋼原料の販売価格下落、国内人員増加による人件費増加なども影響して減収減益だった。売上総利益は同2.4%増加し、売上総利益率は3.4%で同0.4ポイント上昇した。販管費は同8.3%増加し、販管費比率は2.6%で同0.4ポイント上昇した。売上総利益率は改善傾向だ。

 営業外では為替差損益が悪化したが、デリバティブ評価損益が改善した。営業外収益では受取配当金が増加し、持分投資利益も増加した。特別利益では固定資産売却益が減少した。ROEは8.2%で同2.0ポイント低下、自己資本比率は17.1%で同0.7ポイント低下した。配当性向は20.4%だった。配当については企業体質の強化と将来の事業展開に必要な内部留保等を考慮しつつ、各期の業績に応じた配当を継続していくことを基本方針としている。

 セグメント別(連結調整前、経常利益)動向を見ると、鉄鋼は同1.1%減収で同11.5%減益、鉄鋼原料は同21.3%減収だが同53.8%増益、非鉄金属は同0.8%減収で同16.3%減益、機械・情報は同6.2%減収で同6.9%減益、溶材は同3.9%減収で同55.6%減益だった。

 鉄鋼は国内の数量減少や鋼板製品の市況低迷が影響した。鉄鋼原料は輸入鉄鋼原料の取扱数量が減少し、価格も下落したが、チタン原料の取扱量が増加した。非鉄金属は半導体向け銅板条、空調用銅管、輸出用缶材、銅・アルミスクラップなどの取扱量が減少した。機械・情報はタイヤ機械、小型蒸気発電機、太陽電池関連機材などが減少した。溶材は建設機械向け溶接材料、中国の化工機向け溶接材料などが減少した。

■17年3月期第1四半期は大幅減益だが売上総利益率上昇

 今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比17.8%減の1777億78百万円、営業利益が同53.3%減の7億93百万円、経常利益が同40.6%減の12億17百万円、純利益が同95.1%減の66百万円だった。鉄鋼、半導体、電機業界向けの取り扱いが減少して大幅減収・減益だった。

 売上総利益は同10.5%減少したが、売上総利益率は3.4%で同0.2ポイント上昇した。販管費は同3.7%増加し、販管費比率は3.0%で同0.6ポイント上昇した。営業外収益では受取配当金が減少(前期5億円、今期3億04百万円)したが、デリバティブ評価益が増加(前期72百万円、今期1億26百万円)し、持分法投資利益も増加(前期66百万円、今期1億91百万円)した。特別損失では投資有価証券評価損10億11百万円を計上した。

 セグメント別(連結調整前、経常利益)動向を見ると、鉄鋼は同11.3%減収で同33.0%減益、鉄鋼原料は同30.6%減収で同35.4%減益、非鉄金属は同15.9%減収で同32.5%減益、機械・情報は同15.3%減収で41百万円の赤字(前年同期は1億25百万円の黒字)、溶材は同9.8%増収で同19.3%増益だった。

 鉄鋼では、国内鋼板数量が在庫調整進展で増加したが、市況低迷と円高進行で価格が下落した。線材製品は国内外とも数量が減少し、市況低迷と円高進行で価格が下落した。鉄鋼原料では、輸入鉄鋼原料の数量が減少し、価格も下落した。合金鉄、チタン原料は数量が増加したが、価格が下落した。非鉄金属では、空調用銅管、ハードディスク用ブランク材、銅・アルミスクラップなどの数量が減少した。機械・情報では、タイヤ機械、金属成膜装置などが減少した。溶材では、溶接材料は韓国LNG案件の数量が増加し、溶接関連機器は鉄骨溶接ロボットなどが堅調だった。

■17年3月期減収減益予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(4月28日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比4.0%減の7600億円、営業利益が同26.3%減の43億円、経常利益が同25.5%減の44億円、純利益が同22.4%減の27億円としている。国内人員増加やメキシコ新工場立ち上げ費用などで減益予想だ。

 配当予想は、16年10月1日付の株式併合(10株を1株に併合)により、併合前の第2四半期末が4円、併合後の期末が40円としているが、実質的には前期の年間8円(第2四半期末4円、期末4円)と同額である。予想配当性向は26.2%となる。

 セグメント別計画(連結調整前)を見ると、鉄鋼は売上高が2940億円で経常利益が21億円、鉄鋼原料は売上高が1890億円で経常利益が5億50百万円、非鉄金属は売上高が2160億円で経常利益が12億円、情報・機械は売上高が780億円で経常利益が9億円、溶材は売上高が460億円で経常利益が3億50百万円としている。機械・情報の損益が改善するが、鉄鋼および鉄鋼原料が大幅減益予想の見込みとしている。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が23.4%、営業利益が18.5%、経常利益が27.7%、純利益が2.5%である。営業利益と純利益が低水準の形のため通期下振れに注意が必要となるが、第2四半期以降の挽回に期待したい。

■新中期経営計画で21年3月期経常利益80億円目標

 新中期経営計画(16年度~20年度)では、10年後の姿をイメージした長期経営ビジョン(10年度発表)のもと、3つの全体戦略(グローバルビジネス加速、商社機能強化、経営基盤充実)を柱に諸施策を推進するとした。

 そして経営目標数値には、21年3月期売上高8900億円、経常利益80億円(鉄鋼35億円、鉄鋼原料13億円、非鉄金属24億円、機械・情報14億円、溶材6億円)、純利益52億円、海外取引比率50%(16年3月期実績40.5%)、自己資本比率20%以上、ROE8%以上、D/Eレシオ1.0倍、期末人員1840人(16年3月期末1508人)を掲げた。

 投資計画は4年間合計300億円で、鉄鋼(80億円)は北米・メキシコ・インドにおける線材二次加工設備増強、厚板溶断設備増強、鉄鋼原料(100億円)は北米・豪州・他における原料権益への投資、非鉄金属(50億円)はメキシコ・中国・韓国・ASEANなど海外事業拠点の増強、新事業拠点の設立、機械・情報(20億円)は国内外における機械メーカー、エンジニアリング、サービス会社への出資、溶材(10億円)は流通取引先への出資、本社(IT投資他)(40億円)はM&Aの検討、業務システム改善などを推進する。

■株価は基調転換の動き、17年3月期減益予想の織り込み完了

 5月19日に単元株式数の変更および株式併合を発表した。16年10月1日付で単元株式数を1000株から100株に変更するとともに、10株を1株に併合する。

 株価の動きを見ると、6月の年初来安値156円から徐々に水準を切り上げている。そして8月31日には176円まで上伸した。

 8月31日の終値175円を指標面(16年10月1日付の株式併合前)で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS30円49銭で算出)は5~6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は4.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS475円36銭で算出)は0.4倍近辺である。時価総額は約155億円である。

 週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線を突破した。基調転換の動きだ。指標面の割安感は強い。26週移動平均線を突破すれば上げ足を速める可能性があるだろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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