- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- ゼリア新薬工業は基調転換確認して戻り試す、17年3月期増収増益・増配予想、9月末の株主優待も注目
ゼリア新薬工業は基調転換確認して戻り試す、17年3月期増収増益・増配予想、9月末の株主優待も注目
- 2016/9/9 08:28
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東1)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。17年3月期はアストラゼネカ社から権利取得した炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」も寄与して増収増益・増配予想である。さらに増額余地がありそうだ。株価は基調転換を確認して戻りを試す展開だろう。9月末の株主優待も注目点だ。
■消化器分野が中心の医薬品メーカー
消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。16年3月期のセグメント別売上高構成比は、医療用医薬品事業53.8%、コンシューマーヘルスケア事業46.0%、その他(保険代理業・不動産賃貸収入)0.3%だった。海外売上高比率は20.0%だった。
医療用医薬品事業は潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」を主力として、H2受容体拮抗剤「アシノン」や亜鉛含有胃潰瘍治療剤「プロマック」なども展開している。13年6月には自社開発の機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」を発売し、アステラス製薬<4503>と共同で早期の市場浸透を目指している。
コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力としている。16年7月には化粧品分野でコンドロイチン、スクワラン、エーデルワイスエキス、浸透型アミノ酸、NMF(天然保湿因子)の5つの保湿成分を配合したリップクリーム「モレナ リッチリップ」を販売開始した。
また9月1日には、坐薬タイプの便秘薬「ウィズワン坐剤」(第3類医薬品)を全国の薬局・ドラッグストアで販売すると発表した。
■グローバル展開を推進
M&Aを活用してグローバル展開も推進している。08年10月基礎化粧品のイオナ、09年9月「アサコール」の開発会社ティロッツ社(スイス)、10年9月コンドロイチン原料のZPD社(デンマーク)を子会社化した。13年8月ビフォーファーマ社(スイス)と鉄欠乏症治療剤「Ferinject」の日本国内における独占的開発・販売契約締結、ZPD社の株式を追加取得して完全子会社化した。15年4月ベトナムの中堅医薬品製造販売会社F.T.Pharma社の株式49.0%を取得した。当社グループのアジア展開の拠点とする。
■アストラゼネカのIBD治療剤の権利取得
15年7月には子会社ティロッツ社(スイス)がアストラゼネカ社から、炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」(一般名:ブデソニド)の米国を除く全世界における権利を取得し、クローン病を適応症として15年10月国内製造販売承認を申請した。販売名は「ゼンタコート」を予定している。
炎症性腸疾患(IBD)は、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)を含めて、世界中に約500万人の患者が存在すると推定されている疾患である。米国を除く全世界40ヶ国以上でCDを適応として販売されているIBD治療剤「Entocort」の権利取得により、IBD治療においてUCの第1選択薬として用いられている「アサコール」を補完することが可能になる。
■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進
新薬開発は消化器分野を最重点領域と位置付けて、国際的に通用する新薬の創製を念頭に置き、自社オリジナル品の海外での臨床試験を積極的に推進するとともに、海外で実績のある薬剤を導入して国内での開発を進めている。
14年8月エーザイ<4523>の新規化合物「E3710」(プロトンポンプ阻害剤:PPI)に関するライセンス契約を締結した。エーザイは当社に対して「E3710」の日本における独占的開発権、共同販促権、非独占的製造権を付与し、開発および製造販売承認は当社が行う。承認取得後は両社で共同販促を行う。
14年9月には日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品「プレフェミン」(要指導医薬品)を販売開始した。
潰瘍性大腸炎を適応症として「アサコール」の用法・用量を追加する「Z-206」(一般名メサラジン、協和発酵キリンとの共同開発)は承認申請中、膵臓癌を適応症とする「Z-360」は日本を含むアジア地域でフェーズ2国際共同治験中、エーザイから導入した長時間作用型プロトンポンプ阻害剤「Z-215」は逆流性食道炎を適応症としてフェーズ2段階、子宮頸癌を適応症とする「Z-100」は日本を含むアジア地域でフェーズ3国際共同治験中、ビフォーファーマ社から導入した鉄欠乏性貧血治療剤「Z-213」はフェーズ3段階である。
海外は、中国で潰瘍性大腸炎を適応症として「Z-206」(メサラジン)を承認申請中、潰瘍性大腸炎を適応症とする「TP05」(メサラジン)は欧州・カナダでフェーズ3段階である。自社開発「Z-338」(アコファイド)は欧州で機能性ディスペプシアを対象としたフェーズ3を実施し、北米ではフェーズ2が終了した。導入品で家族性大腸腺腫症を適応症とする「TP09」は欧州・米国でフェーズ3段階である。
■16年3月期は新規開発テーマ導入費用や研究開発費が減少して収益改善
四半期別業績推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期147億15百万円、第2四半期154億21百万円、第3四半期156億46百万円、第4四半期152億30百万円、営業利益が8億58百万円、14億21百万円、10億61百万円、6億62百万円の赤字、16年3月期は売上高が147億25百万円、156億18百万円、167億11百万円、154億21百万円、営業利益が10億27百万円、10億87百万円、16億78百万円、7億73百万円だった。
15年3月期はライセンス収入やロイヤリティ収入の減少、新規開発テーマ導入費用の発生、治験進捗による研究開発費の増加などで大幅減益だったが、16年3月期は研究開発費減少も寄与して医療用医薬品事業の損益が大幅に改善した。
16年3月期の差引売上総利益は15年3月期比4.7%増加し、差引売上総利益率は71.3%で同1.6ポイント上昇した。販管費は同0.3%増加したが、販管費比率は64.0%で同1.3ポイント上低下した。研究開発費は同13.2%減少して85億79百万円だった。ROEは5.6%で同1.4ポイント上昇、自己資本比率は53.5%で同11.5ポイント低下した。配当は同1円増配の年間31円(第2四半期末15円、期末16円)で配当性向は46.9%だった。
セグメント別動向を見ると、医療用医薬品事業は売上高が同0.5%減の335億80百万円、営業利益(連結調整前)が同56.5%増の30億24百万円だった。潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」は国内が順調だったが、海外がスイスフラン高の影響を受けたため全体として横ばいだった。H2受容体拮抗剤「アシノン」や亜鉛含有胃潰瘍治療剤「プロマック」は後発医薬品使用促進の影響を受けて苦戦した。機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」は市場構築がやや遅れている。
コンシューマーヘルスケア事業は売上高が同6.1%増の287億41百万円、営業利益が同13.4%増の66億16百万円だった。ヘパリーゼ群が製品認知度向上や製品ラインナップ充実などで好調に推移し、コンドロイチン群も圧倒的な市場シェアを堅持した。その他(保険代理業・不動産賃貸収入)は売上高が同3.4%減の1億52百万円、営業利益が同2.8%増の2億40百万円だった。
■17年3月期第1四半期は大幅増益
今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比12.0%増の164億88百万円で、営業利益が同67.4%増の17億20百万円、経常利益が同3.1倍の18億32百万円、純利益が同49.0%増の13億28百万円だった。
医療用医薬品事業、コンシューマーヘルスケア事業とも伸長し、利益率改善も寄与して大幅増益だった。差引売上総利益は同21.0%増加し、差引売上総利益率は74.0%で同5.5ポイント上昇した。販管費は同15.7%増加し、販管費比率は63.6%で同2.0ポイント上昇した。営業外では為替差損5億54百万円が一巡した。特別利益では投資有価証券売却益が減少(前期10億06百万円、今期2億16百万円)した。
セグメント別には、医療用医薬品事業は売上高が同16.9%増の94億13百万円、営業利益(連結調整前)が同88.0%増の11億76百万円だった。潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」は国内が薬価改定などで苦戦したが、海外が堅調で全体として増収だった。15年7月アストラゼネカ社から権利取得した炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」も寄与した。機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」は市場構築がやや遅れている。
コンシューマーヘルスケア事業は売上高が同6.2%増の70億41百万円、営業利益が同8.6%増の18億91百万円だった。コンビニ向けヘパリーゼW群が製品ラインナップ強化などで好調だった。コンドロイチン群も圧倒的な市場シェアを堅持した。その他(保険代理業・不動産賃貸収入)は売上高が同18.0%減の33百万円、営業利益が同4.8%減の59百万円だった。
■17年3月期も増収増益・増配予想
今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月13日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比5.6%増の660億円、営業利益が同5.1%増の48億円、経常利益が同3.4%増の46億円、純利益が同2.5%増の36億円としている。配当予想は同1円増配の年間32円(第2四半期末16円、期末16円)で予想配当性向は47.2%となる。
医療用医薬品事業では、国内は薬価改定や後発品の影響を受けるが、潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」が海外で伸長し、炎症性腸疾患(IBD)治療剤「Entocort」の通期寄与、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」の市場構築などで増収を見込んでいる。コンシューマーヘルスケア事業では、ヘパリーゼ群やコンドロイチン群が引き続き好調に推移する。研究開発費が高水準に推移して広告宣伝費も増加するが、増収効果で吸収して増益・増配予想である。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が25.0%、営業利益が35.8%、経常利益が39.8%、純利益が36.9%と高水準である。通期予想に増額余地がありそうだ。
■株主優待は毎年9月末と3月末の年2回実施、優待品を追加
株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主に対して自社グループ商品を贈呈している。5月13日に優待品の追加を発表した。1000株以上所有株主に対しては、従来はA~Eの5コースの中から1コースを選択していたが、Fコースを追加して6コースの中から1コースを選択する。なお100株以上~1000株未満所有株主に対しては、内容については従来から変更はなく、コース名をFコースからGコースに変更して贈呈する。
■株価は基調転換確認して戻り試す
株価の動きを見ると、7月の年初来高値1690円から反落したが、8月31日の直近安値1438円から切り返している。そして9月8日には1551円まで戻した。
9月8日の終値1547円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS67円78銭で算出)は22~23倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間32円で算出)は2.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1199円94銭で算出)は1.3倍近辺である。なお時価総額は約822億円である。
週足チャートで見ると上向きに転じた26週移動平均線近辺から切り返しの動きを強めている。9月末の株主優待も注目点であり、基調転換確認して戻りを試す展開だろう。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)