クレスコは自律調整一巡して8月高値に接近、2000年高値も視野

 クレスコ<4674>(東1)はビジネス系ソフトウェア開発を主力として、カーエレクトロニクス関連など組込型ソフトウェア開発も展開している。受注が高水準で17年3月期増収増益・連続増配予想である。8月29日には業績低迷していたクレスコ上海の解散・清算を発表している。また14年11月発行の新株予約権(TIP・2014モデル)の残りを9月9日付で取得・消却している。株価は自律調整が一巡して8月高値に接近している。8月高値を試す展開で、2000年高値も視野に入りそうだ。

■ビジネス系ソフトウェア開発が主力

 ビジネス系ソフトウェア開発(アプリケーション開発、基盤システム構築)事業を主力として、組込型ソフトウェア開発事業、その他事業(商品・製品販売)も展開している。

 16年3月期のセグメント別売上構成比は、ソフトウェア開発事業が82.6%(金融関連が41.7%、公共・サービスが19.4%、流通・その他が21.5%)、組込型ソフトウェア開発事業が17.0%(通信システムが3.0%、カーエレクトロニクスが6.8%、その他が7.2%)、その他事業が0.4%だった。

 中期成長に向けた重点施策として、コア事業(システム基盤、アプリケーション開発、組み込み)を組み合わせたビジネスの推進、デジタル変革をリードする先端技術(AI、Robotics、IoT)の研究・拡大、品質・生産性の徹底的追求、サービスビジネスの推進、グループシナジーの強化およびM&A・アライアンスの推進、開発体制の拡充(ニアショア、オフショア、ビジネスパートナー)、積極的な情報発信(PR、IR)などを推進している。

 オリジナル製品・サービスでは「インテリジェントフォルダ」「クレアージュ」などの拡販を推進している。16年3月には企業向けIoTプラットフォーム「KEYAKI」を発表した。Beaconプラットフォーム「BeaconBridge」の後継ソリューションで、NFC等の近距離無線機器、各種センサー、マイクロサーバー、スマートフォンなど多種多様で大量のIoTデバイスに対応し、外部アプリケーションサービスの接続を担うIoTプラットフォームである。

 なお15年7月「IBM Watsonエコシステムプログラム」の初期エコシステムパートナーに選定され、テクノロジーパートナーとしてPepperをはじめとするロボット、モバイル、パソコンに対するさまざまなアプリケーション開発を通じてWatsonによるビジネス変革を支援している。またロボットプラットフォーム「まるロボ」のビジネスケースを策定中としている。

■M&A・アライアンスも積極活用してグループ力強化

 13年4月ソリューション事業のクリエイティブジャパンを子会社化、企業コンサルティング事業のエル・ティー・エスを持分法適用会社化、14年12月受託ソフトウェア開発のエー・アイ・エム・スタッフを持分法適用会社化、15年3月高速クラウド構築支援サービスのSkeedの第三者割当増資を引き受けて提携関係強化、15年4月SAP社の基幹業務パッケージの導入支援を主力とするエス・アイ・サービスを完全子会社、15年5月子会社クレスコ北陸がアップゾーンと資本業務提携してモバイルポータル事業に参入した。

 15年9月Kii社、KDDI<9433>、大日本印刷<7912>が設立したIoT時代の新たな企業間連携を生み出す企業連合「Kiiコンソーシアム」に参加した。15年10月Web制作のメディア・マジックを子会社化した。また16年4月連結子会社を再編し、SAP社のERPの導入支援・保守運営を展開する子会社クレスコ・イー・ソリューションがエス・アイ・サービスを吸収合併した。

 16年7月にはエヌシステムの全株式を取得(9月1日)して子会社化すると発表した。同社はJA(農業協同組合)グループの旅行事業を担う農協観光の出資で創業し、旅行業をはじめとする多種多様なフィールドでソリューションサービスを提供している。旅行業向け分野のシステム開発拡大が期待される。

 なお8月29日、子会社のクレスコ上海を解散・清算(17年3月清算完了見込み)すると発表した。中国市場の縮小や日本企業の中国撤退などで業績が低迷していたため、経営資源を他事業に集中することがグループの今後の発展に重要であるとの結論に至った。連結業績への影響は軽微としている。

■第4四半期の構成比が高い収益構造

 四半期別の業績推移を見ると、15年3月期は受注高が第1四半期58億81百万円、第2四半期61億19百万円、第3四半期68億79百万円、第4四半期64億09百万円、売上高が58億10百万円、61億89百万円、61億55百万円、69億09百万円、営業利益が3億80百万円、5億89百万円、5億43百万円、5億01百万円で、16年3月期は受注高が72億86百万円、70億27百万円、78億08百万円、70億09百万円、売上高が65億64百万円、72億55百万円、72億71百万円、76億85百万円、営業利益が4億23百万円、7億85百万円、7億43百万円、5億33百万円だった。

 第4四半期の構成比が高く、案件別の採算性も影響する収益構造だ。また第4四半期の受注高は第3四半期に比べて減少する傾向がある。16年3月期は企業の高水準のIT投資を背景として計画超の大幅増収増益だった。ソフトウェア開発事業では金融・保険分野や公共・サービス分野、組込型ソフトウェア開発事業ではカーエレクトロニクス分野が好調だった。売上総利益は15年3月期比16.0%増加し、売上総利益率は18.2%で同0.2ポイント上昇した。販管費は同10.0%増加したが、販管費比率は9.6%で同0.4ポイント低下した。

 営業外収益では有価証券売却益が増加した。ROEは14.8%で同0.7ポイント上昇、自己資本比率は63.3%で同2.5ポイント上昇した。配当は同12円増配の年間50円(第2四半期末23円、期末27円)で配当性向は32.8%だった。配当に関しては、特別損益を零とした場合に算出される当期純利益の40%相当額をメドとした配当を継続的に実現することを目指している。

 セグメント別動向を見ると、ソフトウェア開発事業は売上高が同14.8%増の237億67百万円(金融関連が同16.2%増の120億03百万円、公共・サービスが同10.4%増の55億72百万円、流通・その他が同16.2%増の61億91百万円)で、営業利益(連結調整前)が同20.2%増の29億04百万円だった。

 組込型ソフトウェア開発事業は売上高が同15.6%増の49億01百万円(通信システムが同9.8%減の8億70百万円、カーエレクトロニクスが同25.3%増の19億48百万円、その他が同21.0%増の20億82百万円)で、営業利益が同16.0%増の6億62百万円だった。その他事業(商品・製品販売等)は売上高が同9.6%減の1億06百万円で、営業利益が39百万円の赤字(前々期は30百万円の赤字)だった。

■17年3月期第1四半期増収増益で順調

 今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.9%増の70億14百万円、営業利益が同11.1%増の4億70百万円、経常利益が同1.9%増の5億35百万円、純利益が同1.9%増の3億68百万円だった。企業のIT投資が高水準に推移し、売上高、利益とも順調だった。受注高は同11.4%増の81億17百万円だった。

 売上総利益は同12.3%増加し、売上総利益率は17.7%で同0.9ポイント上昇した。販管費は同13.0%増加し、販管費比率は11.0%で同0.6ポイント上昇した。営業外収益では有価証券売却益が減少(前期35百万円、今期18百万円)した。特別利益では投資有価証券償還益10百万円を計上したが、保険解約返戻金24百万円が一巡した。

 セグメント別に見ると、ソフトウェア開発事業は売上高が同5.0%増の57億18百万円(金融・保険分野が同3.8%増の29億26百万円、公共・サービス分野が同4.4%増の14億円、流通・その他の分野が同8.3%増の13億92百万円)で、営業利益(連結調整前)が同17.0%増の6億08百万円だった。

 組込型ソフトウェア開発事業は売上高が同18.4%増の12億84百万円(通信システム分野が同32.0%減の1億54百万円、カーエレクトロニクス分野が同14.3%増の5億18百万円、情報家電・その他分野が同51.3%増の6億11百万円)で、営業利益が同19.8%増の1億80百万円だった。その他事業(商品・製品販売等)は売上高が同64.9%減の11百万円で、営業利益が15百万円(前年同期は13百万円の赤字)だった。

■受注高水準で17年3月期増収増益・連続増配予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月9日公表)については売上高が前期(16年3月期)比8.1%増の311億円、営業利益が同10.7%増の27億50百万円、経常利益が同5.0%増の30億円、そして純利益が同17.3%増の20億円としている。配当予想は同2円増配の年間52円(第2四半期末26円、期末26円)で予想配当性向は29.5%となる。

 金融関連を中心とするシステム開発案件の受注が高水準に推移して、増収増益・連続増配予想である。国内のIT投資需要はセキュリティ意識の高まりも背景に、クラウドやモバイル端末を活用したシステムへの移行、ITシステム基盤の統合・再構築、ビジネスプロセスの可視化・最適化、ビッグデータの分析と活用、仮想化技術の導入、ソーシャル・テクノロジーのビジネス活用などで高水準に推移する見込みだ。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が22.6%、営業利益が17.1%、経常利益が17.8%、純利益が18.4%である。低水準の形だが第4四半期の構成比が高い収益構造のためネガティブ要因とはならない。通期も好業績が予想され、中期的にも収益拡大基調だろう。

■株価は自律調整一巡して8月高値に接近、2000年高値も視野

 なお8月9日、14年11月発行の第2回新株予約権(残存数15万個=15万株)および第3回新株予約権(同50万個=50万株)(TIP・2014モデル)について、9月9日付で全部を取得し、取得後直ちに全部を消却すると発表した。現時点における資金状況および市場環境等を考慮した結果、TIP・2014モデルによる資金調達を終了し、株主還元の一環として取得・消却すべきと判断した。

 株価の動きを見ると、2000年以来の高値水準である8月2日高値2698円から利益確定売りで一旦反落したが、8月19日の2100円から切り返した。そして9月7日には2480円まで上伸して8月高値に接近している。自律調整が一巡したようだ。

 9月13日の終値2429円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS176円43銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間52円で算出)は2.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1078円35銭で算出)は2.3倍近辺である。時価総額は約291億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から切り返してサポートラインを確認した形だ。自律調整が一巡して8月高値2698円を試す展開だろう。2000年高値3288円も視野に入る。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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