ヨコレイは16年9月期大幅増益予想で増額余地、9月末の株主優待も注目

 ヨコレイ(横浜冷凍)<2874>(東1)は冷蔵倉庫の大手である。低温物流サービスの戦略的ネットワーク構築に向けて積極投資を継続し、食品販売事業はノルウェーHI社との資本業務提携で業容拡大戦略を推進している。16年9月期は大幅増益予想で増額余地がありそうだ。そして17年9月期も収益拡大基調だろう。株価は調整一巡して出直りが期待される。9月末の株主優待も注目点だ。

■冷蔵倉庫事業と食品販売事業を展開

 冷蔵倉庫事業、および水産品・畜産品・農産品などの食品販売事業を展開している。15年9月期のセグメント別売上高構成比は冷蔵倉庫事業16%、食品販売事業84%、営業利益(連結調整前)構成比は冷蔵倉庫事業80%、食品販売事業20%だった。

■冷蔵倉庫事業は低温物流サービスの戦略的ネットワークを構築

 冷蔵倉庫事業では低温物流サービスの戦略的ネットワーク展開に向けて積極投資を継続している。

 国内では14年4月北海道小樽市・石狩第2物流センター、14年6月大阪市・夢洲物流センター、14年10月宮崎県都城市・都城第2物流センターが竣工し、北海道・十勝第3物流センターが16年8月竣工、北海道河西郡芽室町のヨコレイ十勝ソーティングスポット(仮称)が16年9月竣工予定、埼玉県・幸手物流センター(仮称)が17年6月竣工予定である。海外はASEAN地域への展開で14年2月タイ・ワンノイ物流センター2号棟が竣工、15年8月タイ・バンパコン第2物流センターが竣工した。タイヨコレイ全体の保管収容能力はタイ国内トップシェアである。

 15年11月には、森永乳業が所有する東京都大田区京浜島の土地と平和島の土地を取得(契約締結15年9月)したと発表している。取得する平和島の土地に冷蔵倉庫を所有・運営するパックス冷蔵(森永乳業の100%子会社)の全株式を取得する。京浜島の土地には最新鋭物流センターを建設する計画だ。一連の総投資額は90億円~100億円の予定としている。

 16年3月には冷蔵倉庫建設用地として、福岡市アイランドシティ港湾関連用地4工区E区画の取得を発表した。引渡は18年3月予定である。16年8月には北海道・十勝第3物流センターを新設したと発表している。隣接する2センターを含む3センター合計の収容能力は6万トンを超え、道内最大級の低温物流基地となる。

 なお16年8月、講談社から出版された田宮寛之著書「新しいニッポンの業界地図 みんなが知らない超優良企業」に掲載されたとリリースしている。タイで冷蔵倉庫事業を積極展開していることが評価された。

 また9月5日には、夢洲物流センター(大阪市此花区)が国土交通省近畿運輸局から「環境に優しい最先端の技術を終結した冷蔵倉庫」として、平成28年度交通関係環境保全優良事業者として表彰を受けたと発表している。

■食品販売事業ではノルウェーの大手水産加工会社と包括的業務提携

 食品販売事業では15年8月、ノルウェーの大手水産加工会社ホフセスインターナショナル(HI社)と包括的業務提携した。業務提携によって、HI社が生産するノルウェー産アトランティックサーモン加工品の北米・欧州の大手量販店向け輸出販売を開始し、日本国内向けビジネスでは鮭ハラス製品の独占販売権を取得した。またHI社と共同出資でHFSアライアンス社を設立し、サーモンオイルを成分としたサプリメントの中国向けネット通販を開始する。

 16年3月には水産品輸出入の100%子会社アライアンスシーフーズ(ASF社)が、HI社の100%子会社でアトランティックサーモン等の加工製造を行っているSyvde社の全株式を取得した。16年7月には、ASF社とHI社が合弁で設立したHIYR AS社(ノルウェー)が、トラウト養殖事業会社Fjordlaks Aqua AS(ノルウェー、FA社)を連結子会社化した。

 また16年8月にはASF社がノルウェーでサプリメントの製造販売を手掛けるHofseth Biocare ASA(HBC社)の第三者割当増資を引き受けて筆頭株主(出資比率14.4%)になると発表した。HBC社はサーモン製品を加工する際に発生する頭、骨、皮などの端材を原料として人用、ペットフード用、養殖のエサ用に利用されるオイル、プロテイン、カルシウムなどのサプリメントを製造販売している。

 Syvde社およびFA社の子会社化でノルウェーサーモン、トラウト事業において生産から加工・販売に至るまでの一貫した垂直統合モデルを完結させ、さらに今回のHBC社への出資により、加工段階で発生する端材を有効活用したサプリメント製品を循環させることで、世界自然保護基金(WWF)の理念に合致した持続可能性(サステナビリティ)事業に関与する。

■15年9月期は減価償却費増加

 15年9月期の四半期別業績推移を見ると、売上高は第1四半期399億38百万円、第2四半期350億45百万円、第3四半期395億69百万円、第4四半期402億15百万円、営業利益は12億95百万円、5億28百万円、12億28百万円、8億23百万円だった。

 15年9月期は減価償却費増加などで営業減益だった。売上総利益率は7.4%で14年9月期比0.7ポイント低下、販管費比率は4.9%で同0.3ポイント低下した。減価償却費は44億65百万円で同5億83百万円増加した。純利益は減損損失が一巡して増益だった。ROEは4.2%で同1.0ポイント上昇、自己資本比率は51.6%で同0.1ポイント上昇した。配当性向は41.1%だった。

 セグメント別営業利益(連結調整前)の四半期別推移を見ると、冷蔵倉庫事業が14億69百万円、10億70百万円、12億04百万円、10億05百万円、食品販売事業が3億30百万円、67百万円の赤字、5億22百万円、4億04百万円だった。食品販売事業の営業損益は改善基調のようだ。

■16年9月期第3四半期累計は大幅増益

 今期(16年9月期)第3四半期累計(10~6月)の連結業績は売上高が前年同期比1.9%減の1123億36百万円、営業利益が同38.2%増の42億15百万円、経常利益が同40.0%増の44億90百万円、純利益が同40.6%増の28億80百万円だった。

 タイにおける経済停滞やタイパーツ安の影響、食品販売事業における回転率重視の営業政策の影響で全体として減収だったが、14年9月期から順次稼働した4つの物流センターのフル稼働効果、食品販売事業における在庫圧縮などの効果で大幅増益だった。売上総利益は同9.2%増加し、売上総利益率は8.6%で同0.9ポイント上昇した。販管費は同6.2%減少し、販管費比率は4.8%で同0.2ポイント低下した。

 セグメント別に見ると、冷蔵倉庫事業は売上高が同4.0%増の187億01百万円で営業利益(連結調整前)が同22.7%増の45億94百万円だった。入庫取扱量は同4.4%増、出庫取扱量は同6.3%増、平均保管在庫量は同8.4%増と好調だった。利益面では物流センター立ち上げに伴う消耗備品費の減少、設備投資ピークアウトによる減価償却費減少も寄与した。

 食品販売事業は売上高が同3.1%減の935億90百万円だが、営業利益が同59.8%増の12億54百万円だった。回転率重視の営業政策の影響で減収だったが、ノルウェーHI社とのアトランティックサーモン事業が順調に推移し、利益面では円高によって輸入商材の収益環境が安定したことも寄与した。分野別に見ると水産品は増収増益、畜産品は減収減益、農産品は減収増益だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期420億35百万円、第2四半期335億37百万円、第3四半期367億64百万円で、営業利益は18億20百万円、10億33百万円、13億62百万円だった。

■16年9月期通期も大幅増益予想で増額余地

 今期(16年9月期)通期の連結業績予想(11月13日公表)は、売上高が前期(15年9月期)比3.4%増の1600億円、営業利益が同29.1%増の50億円、経常利益が同23.8%増の50億円、純利益が同23.1%増の31億円としている。配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は33.4%となる。

 セグメント別の計画は、冷蔵倉庫事業の売上高が同2.3%増の247億07百万円、営業利益(連結調整前)が同7.4%増の51億円、食品販売事業の売上高が同3.5%増の1352億26百万円、営業利益が同63.0%増の19億38百万円、その他の売上高が同2.1倍の67百万円、営業利益が同26.8%増の46百万円としている。

 冷蔵倉庫事業では荷動きが堅調に推移し、新規稼働物流センターの収益寄与も本格化する。食品販売事業では不採算在庫圧縮徹底や戦略的商材拡販などの効果が期待される。減価償却費の減少(通期ベースで1億44百万円減少見込み)も寄与して大幅増益予想である。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.2%、営業利益が84.3%、経常利益が89.9%、純利益が92.9%である。利益進捗率が高水準であり、通期会社予想に増額余地があるだろう。さらに来期(17年9月期)も収益拡大基調だろう。

■中期経営計画で17年9月期純利益32億円目標

 第5次中期経営計画「Flap The Wings 2017」に基づいて、冷蔵倉庫事業では「クールネットワークのリーディングカンパニー」を目指し、食品販売事業では「安定的な利益追求を基本としながらも、強みのある商材を全社的に展開する」ことを命題としている。

 目標数値は、17年9月期売上高1650億円、営業利益57億円(連結調整前の冷蔵倉庫事業56億65百万円、食品販売事業20億67百万円)、経常利益57億円、純利益32億円、ROE5.1%、配当性向40%、EBITDA100億円、自己資本比率52.0%としている。配当政策の基本方針は安定的な配当を継続して行うとしている。そして企業価値向上に必要な設備・IT投資等を勘案しつつ、配当性向40%以上を維持していくことを目標としている。

■株主優待は9月末に実施

 株主優待制度は毎年9月30日現在の1000株以上保有株主に対して実施している。優待内容は1000株以上~3000株未満保有株主に対して鮭切身詰め合わせ、3000株以上保有株主に対して北海道産ホタテ・いくらセットを贈呈する。

■株価は調整一巡して出直り期待

 株価の動きを見ると、7月の戻り高値圏1100円近辺から反落して水準を切り下げた。9月20日には6月28日以来となる1000円を割り込む場面があった。ただし特にネガティブ要因は見当たらない。

 9月20日の終値1000円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS59円91銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1185円23銭で算出)は0.8倍近辺である。なお時価総額は約525億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線に続いて52週移動平均線を割り込む形となったが、売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直り展開が期待される。(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

 

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