松田産業は戻り歩調で1月の年初来高値に接近、低PBRも評価して上値試す

 松田産業<7456>(東1)は貴金属関連事業および農林水産品販売事業を展開している。17年3月期は貴金属相場回復も寄与して増収増益予想である。中期経営計画では19年3月期売上高2100億円、営業利益50億円を掲げ、西日本における生産拠点として岐阜県関市で不動産を取得した。株価は戻り歩調で1月の年初来高値に接近してきた。0.7倍近辺の低PBRも評価して上値を試す展開だろう。

■貴金属リサイクルや農林水産品販売を展開

 貴金属リサイクル(貴金属事業)や産業廃棄物処理(環境事業)などの貴金属関連事業、および農林水産品を扱う食品関連事業を展開している。16年3月期の売上高構成比は貴金属関連事業64%、食品関連事業36%、営業利益構成比は貴金属関連事業75%、食品関連事業25%だった。

 貴金属リサイクルでは、半導体・電子材料部材・化成品などの貴金属製品をエレクトロニクス業界へ販売するとともに、半導体や電子部品を製造する過程で規格外となった部品(スペックアウト品)などの貴金属含有スクラップを国内外のメーカーから回収・処理・製錬することで、貴金属(金・プラチナ・パラジウムなど)をリサイクルする。

 産業廃棄物処理では、写真の感光材料からの銀の回収、廃酸や廃アルカリの無害化中間処理など、産業廃棄物の回収・処理を行っている。無害化処理技術に強みを持ち、全国47都道府県での収集運搬業許可を得ている。

 貴金属関連事業では「東アジアNO.1リファイナー」を目指し、国内外の拠点拡充、貴金属原料の確保と化成品などの製品販売強化、および製品・技術開発強化を推進している。海外は中国、台湾、シンガポール、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナムに展開し、ベトナムでは貴金属製錬工場の建設を進めている。

 16年8月には、貴金属関連事業の西日本地域における生産処理拠点の拡充による機能強化を図るため、岐阜県関市で不動産(土地・建物等、総額約7億円)を取得した。埼玉県入間市と合わせて国内生産二拠点化を推進する。

 食品関連事業では、すりみ・エビ・貝類などの水産品、鶏卵・鶏肉・ポーク・ビーフなどの畜産品、乾燥野菜・冷凍野菜などの農産品を取り扱っている。取扱商品の豊富さとグローバルな調達ネットワークが強みだ。16年2月には水産品専門商社のガルフ食品の全株式を取得した。海外は中国、タイに拠点展開している。

■エレクトロニクス業界の生産動向や貴金属・食品市況が影響する収益構造

 四半期別業績推移を見ると、16年3月期の売上高は第1四半期450億14百万円、第2四半期403億52百万円、第3四半期407億69百万円、第4四半期359億30百万円、営業利益は第1四半期9億68百万円、第2四半期10億79百万円、第3四半期7億09百万円、第4四半期3億69百万円だった。収益は半導体・電子部品などエレクトロニクス業界の生産動向、貴金属および食品市況の影響を受けやすい。

 16年3月期はエレクトロニクス業界の生産減少、写真感材の市場縮小、金を除く貴金属相場下落などで減収減益だった。売上総利益は15年3月期比8.8%減少したが、売上総利益率は9.5%で同0.1ポイント上昇した。販管費は同7.0%上昇し、販管費比率は7.5%で同1.1ポイント上昇した。営業外収益では持分法投資利益が増加した。またROEは5.0%で同1.8ポイント低下、自己資本比率は74.1%で同4.4ポイント上昇した。配当は株式公開20周年記念配当2円を加えた年間28円(第2四半期末14円、期末14円)で配当性向は28.8%だった。

 セグメント別に見ると、貴金属関連事業は売上高が同16.3%減の1041億59百万円、営業利益が同47.4%減の23億47百万円だった。金を除いた販売価格の下落も影響した。食品関連事業は売上高が同5.2%増の579億05百万円だったが、営業利益が同18.1%減の7億77百万円だった。

■17年3月期第1四半期は減収減益

 今期(17年3月期)第1四半期(4~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比13.8%減の388億円、営業利益が同45.4%減の5億29百万円、経常利益が同55.7%減の5億41百万円、純利益が同58.2%減の3億30百万円だった。貴金属関連事業、食品関連事業とも低調だった。

 売上総利益は同4.7%減少したが、売上総利益率は10.0%で同1.0ポイント上昇した。販管費は同8.1%増加し、販管費比率は8.6%で同1.8ポイント上昇した。営業外では持分法投資利益が減少(前期1億77百万円、今期1億19百万円)し、為替差損益が悪化(前期差益2百万円、今期差損27百万円)した。また投資有価証券評価損96百万円を計上した。

 セグメント別動向を見ると、貴金属関連事業は売上高が同18.2%減の243億86百万円、営業利益が同43.0%減の3億73百万円だった。貴金属リサイクルおよび産業廃棄物処理の取扱量は横ばいで推移したが、銀を除く貴金属製品および電子材料等の販売数量が減少し、貴金属販売価格の下落も影響した。食品関連事業は売上高が同5.2%減の144億29百万円、営業利益が同50.3%減の1億55百万円だった。水産品および畜産品の販売数量が減少し、全体的な販売価格下落も影響した。

■17年3月期通期は増収増益予想

 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月13日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比11.1%増の1800億円、営業利益が同12.0%増の35億円、経常利益が同3.1%増の39億円、純利益が同1.0%増の26億円としている。配当予想は前期と同額の年間28円(第2四半期末14円、期末14円)で予想配当性向は28.4%となる。

 貴金属関連事業では国内外の拠点強化を推進するとともに、新規の需要開拓を積極的に推進する。食品関連事業では、顧客ニーズを的確にとらえた営業活動を推進する。通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が21.6%、営業利益が15.1%、経常利益が13.9%、純利益が12.7%である。低水準の形だが、貴金属相場の回復などで第2四半期以降の挽回に期待したい。

■中期経営計画で19年3月期営業利益50億円目指す

 16年5月策定の中期経営計画(16~18年度)では目標に19年3月期売上高2100億円、連結営業利益50億円を掲げている。既存事業の収益拡大化、新たな収益源の構築、東アジア地区での積極拡大、最適な管理体制の構築、人材育成・確保の5項目を重点方針とした。貴金属関連事業と食品関連事業の両分野において、製品・技術開発、国内外の拠点整備・機能拡充など事業拡大に必要な成長戦略を行う。

 貴金属関連事業では、長年培った貴金属リサイクルおよび環境保全に関するノウハウやインフラを最大限活用し、資源リサイクルの総合力で顧客ニーズにマッチしたアイテム拡充と省金化への対応により、環境価値の高い商品・サービスを提供することでシェア拡大と収益性向上を図る。

 食品関連事業では、これまで培った品質保証等に関するノウハウや調達力を活かして、安全・安心かつ高品質な食品原材料を安定的に供給することで顧客ニーズに対応し、海外を含めた市場拡大と収益向上を図る。水産品においては、16年2月に株式取得したガルフ食品との相乗効果を含めて事業拡大を図る。

■株主優待制度の対象を1年以上保有株主に変更

 株主優待制度については対象を変更した。従来は毎年3月31日現在で当社株式1単元(100株)以上保有する国内在住株主を対象としていたが、今後は1単元以上を継続1年以上保有する国内在住株主を対象とする。17年3月31日現在の株主から変更後の新制度を適用する。ただし新制度導入初年度に限り、1単元以上を半年以上継続保有する株主に対しても株主優待品を贈呈する。

■株価は戻り歩調で1月の年初来高値に接近、低PBRも評価して上値試す

 株価の動きを見ると、戻り歩調で1月の年初来高値1466円に接近している。9月27日には1390円まで上伸した。

 9月27日の終値1390円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS98円73銭で算出)は14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間28円で算出)は2.0%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1967円65銭で算出)は0.7倍近辺である。時価総額は約402億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線近辺がサポートラインとなって上昇トレンドの形だ。また26週移動平均線も上向きに転じた。戻り歩調に変化なく0.7倍近辺の低PBRも評価して上値を試す展開だろう。
(日本インタビュ新聞アナリスト水田雅展)

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